経費精算のルールを作成する目的と注意点について

 2021.03.15  クラウドERP実践ポータル

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経費精算に関するルールを明確にすることは、企業全体にとっても従業員にとっても多くのメリットがあり、非常に重要です。当記事では、経費精算のルールを作成する目的や、規定として定めるべき項目、規定を作成する際の注意点などについて解説します。

経費精算のルールを作成する目的と注意点について

経費精算のルールを作成する目的

ルールを作成する目的としては、経費のムダの削減や不正防止、従業員の負担軽減、節税などが挙げられます。以下で詳しく見ていきましょう。

経費のムダの抑制や不正防止

ルールが明確化されていないと、出張時の交通費や宿泊費などが多く発生することがあります。そこで、余計な経費を削減するためにも、宿泊費の上限金額や出張手当の金額を定めるなど、ルール化しておくことが大切です。

また、それらをルール化しておくことは、不正の防止にも有効です。経費を不正に使用することは、企業の利益を損ねるだけでなく、一個人や企業全体の信頼を失墜させる恐れもあります。このような事態を避けるためにも、ルール作成は欠かせません。

社内トラブルの回避

ルールが定められていない、もしくは曖昧な規定となっている場合、ある者は経費として承認される一方で、別の者は承認されないという事態が起こり得ます。その結果、トラブルに発展するリスクも高まります。
そこで、ルールを定め、経費として精算できる種類や金額を明確にしておかなければなりません。そうすれば、従業員間の不公平感を失くし、従業員同士のトラブルへの発展を回避できるでしょう。

経理担当者の負担を削減

ルールが明確になっていない場合、従業員ごとにフォーマットの異なる精算書類が使用されていることもあります。また、支払日が数日前のものもあれば、数ヶ月前のものが出てくることもあるなど、経理担当者に大きな負担がかかってしまうことも考えられます。

そこで、フォーマットの統一や支払期日の設定といったルールを明確にし、経理担当者の負担軽減も目指す必要があります。経費の承認・否認の判断に関しても、明確に定められたルールに従って処理を行うことが大切です。

節税効果

経費精算のルールを定めることは、企業・従業員の双方における節税効果の実現にも寄与します。というのも、きちんと経理規定を設けておけば、非課税対象として経費計上できるものもあるためです。

例えば、出張にかかる旅費交通費や接待交際費などが該当します。出張時に支給される手当については、給与とは別に扱われ、所得税の対象外として受け取ることが可能です。また、接待交際費は基本的に課税対象ですが、一定のルールに従えば、会議費として計上できる場合もあります。

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経費精算ルールの必須項目

経費精算のルールには、さまざまな項目を盛り込む必要があります。ここでは、特に必須となる項目をご紹介します。

目的・適用範囲

まずはルールの目的、およびルールが適用される範囲を明確にすることが大切です。平たくいえば、そのルールが何のために定められたのか、そして対象となる経費の種類・人物などのことです。

例えば、経費精算の対象となる経費の種類に関して、一般的には業務を遂行するうえで必要な経費が対象となります。しかし、さらに細かい部分については、各企業によって判断が異なるため、その詳細を明確に示さなくてはなりません。

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また、雇用形態による適用の可否に関しても、各企業で判断が異なる項目です。役員や社員のみが適用されるのか、もしくは契約社員やアルバイト・パートタイマーなどの非正規雇用も適用されるのかについても、しっかりと明記しておきましょう

上限金額・精算日の設定

経費精算の申請は、つい後回しにされやすい業務です。しかも、時間が経つと領収書やレシートを紛失する可能性も高くなってしまいます。

忙しい従業員にとっては面倒に思われがちな業務ですが、発生した経費について適切な時期に適切な処理を行うことは、企業を経営するうえで大切です。万が一、数ヶ月も前に支払った経費が計上できていないとなると、正しい経費の金額が月次決算や中間決算に反映されず、今後の経営に関する判断を誤ってしまう恐れもあるのです。そのため、精算期日を設定しておくことが重要です。

例えば、精算期日が「支払日から1ヶ月以内」と明確にされていれば、その日までに経費精算をしなければならないという意識が従業員の中で高まり、期日を守った精算が期待できます。
また、精算日を設定すると同時に、上限金額についても明確にしておきましょう。接待交際費や出張手当に関しては、部署・役職によって発生する回数が異なるため、部署・役職ごとに金額を設定しておくとよいでしょう。

領収書がない場合の対処法

経費精算では、しばしば「経費は発生したものの、領収書がない」というケースが発生します。原因としては、「領収書を紛失した」「手間がかかるため発行しなかった」「そもそも発行できなかった」などが考えられます。発行されない例としては、電車やバスにかかる交通費や、自動販売機で購入した飲料代、従業員の冠婚葬祭に贈る慶弔費などが挙げられます。

このように、領収書がない場合の対処法も明示しておきましょう。一般的には、出金伝票を用いて精算します。出金伝票に支払日や支払先、目的、金額などの事項を記載し、これを領収書の代わりとして処理できます。しかし、経費のエビデンスとしては領収書よりも弱いものとなってしまうため、可能な限り領収書を発行し、紛失しないように注意喚起することが大切です。

フォーマットを用意

申請者が申請しやすいよう、フォーマットを用意しておくとよいでしょう。もちろん、フォーマットの指定だけでなく、詳細を明記することも大事です。

例えば、領収書を貼り付ける位置や順番などを指定しておくことで、すべての精算書類が統一され、経理担当者が確認・保管などする際にわかりやすくなります。申請者にとっても、申請にかかる手間や負担が少なくなり、スムーズに申請できるようになります。タイムリーな経費処理が可能となり、経理担当者・申請者の双方によい結果がもたらされるでしょう。

フォーマットを一から作成する手間が惜しい場合は、経費精算システムの導入もおすすめです。経費精算システムにはもとから経費精算書のテンプレートが用意されているため、自社でフォーマットを作成する手間が省けます。中にはOracle社製の経費管理ソリューションのように、ひとつの基盤で経費精算を含む幅広いサポートが可能なものもあります。経費精算の効率化や経理担当者の負担軽減にもつながるため、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

領収書の経費精算ルール

領収書は、経費を計上するうえで非常に重要な証拠書類です。領収書には「日付」「宛名」「金額」「但し書き」「発行者の住所および氏名」の5項目の記載が定められています。このような正式な領収書を受け取ることが最も望ましいですが、領収書が発行できないケースもあります。その場合は、レシートも同じように証拠書類として扱えます。

さまざまな形式のレシートがありますが、上記の領収書記載項目のうち、宛名以外の4項目はクリアしていることが大半です。従業員の中には、領収書でなければ経費精算できないと考えている人もいるかもしれないので、領収書が発行できない場合はレシートでも有効である旨を従業員に周知しておきましょう。

なお、領収書を紛失したり、そもそも発行されなかったりした場合には、先述したように出金伝票を用いた処理となります。出金伝票を記載するのに必要な「支払日」「支払先」「目的」「金額」は、メモとして残しておくよう注意しましょう。

旅費の経費精算ルール

経費精算ルールの中でも旅費に関しては、税務との関係や高額になるケースも多いことから、トラブルが生じる恐れもあります。そのため、旅費については特にしっかりとルールを定め、経理担当者間でも理解を深めておくことが大切です。

例えば、「通常の外出にかかる交通費」と「出張にかかる旅費の定義」を定め、その違いを明確にしておく必要があります。これらは一般的に、移動距離や宿泊を伴うかどうかで判断されることが多い項目です。宿泊費の上限金額や出張手当の金額の設定は、部署・役職で頻度が大きく異なるため、部署や役職ごとに金額を定める方法が有効でしょう。

また、出張中にトラブルに巻き込まれた際の規定もあると、なおよいです。例えば、病気・事故・災害時などの出張手当の規定や、宿泊費の支給についての規定があると、トラブルが起こった際にスムーズに対応できます。

交通費の経費精算ルール

一口に交通費といっても、電車・バス・レンタカー・タクシー・社用車などさまざまな移動手段が考えられます。これらの移動手段ごとに注意事項が異なるため、その点を意識してルールを作成しましょう。

電車やバスの場合は、領収書が発行されないことが多いため、どこからどこまで乗車したのかという利用区間をもとに経費計上します。「複数の経路がある場合は、最安値の経路の金額を計上する」というルールを明確にしておくとよいでしょう。また、通勤目的などで定期券を持っている場合がありますが、定期券を使用した際には定期区間は経費として計上されない旨も、注意事項として記載しておきましょう。

飛行機に関してはビジネスクラスやエコノミークラス、新幹線に関しては自由席・指定席・普通車・グリーン車など、複数の選択肢があります。これらについては役職ごとに規定する場合が多いです。規定を明確にし、従業員が混乱しないようにしましょう。

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経費精算のルールを作成する際の注意点

最後に、経費精算のルールを作成する際の注意点について解説します。

自己決裁を禁止する

まず大切なのが、経費精算の申請から承認まで自らが行うという、いわゆる自己決裁を禁止することです。これは経費精算のルールだけでなく、企業におけるさまざまなルールに適用されます。自己決裁は不正の原因にもなるため、役職に就く者であっても、申請者=承認者とならないよう規定を定めておきましょう。

周知の徹底

ルール作成を終えたら、社内全体・全従業員に周知を徹底することが大切です。全従業員がいつでも規定を確認できるように配布し、経費が発生した際は規定に目を通したうえで、経費精算の申請を行うよう周知します。必要に応じて、従業員を対象に経理担当者からの説明会や、従業員からの質疑応答ができる機会などを設けると、より従業員の理解が深まるでしょう。そのほか、経費が高額な場合の仮払い制度の存在や、例外は一切認めない旨などを周知しておくことも重要です。

まとめ

経費精算に関して明確な規定を作成し運用することは、業務の効率化だけでなく節税効果や無駄な経費の抑制、社内トラブルの防止、企業全体の利益アップなどにつながります。各項目の注意点に配慮しつつ、申請者と承認者の双方が理解しやすい形でルールを作成することが大切です。そして、作成したルールは誰もがいつでも確認できる状態にし、周知するよう努めましょう。

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