間接費とは具体的に何なのか?直接費との違い

 2018.12.19  クラウドERP編集部

新入社員、新規配属の方必見!ERP入門特集

間接費は、製品の製造に直接関係する直接費とは異なり、さまざまな製品の製造や管理業務などにまたがってかかる費用です。直接費と同様、材料費・労務費・経費に分けられますが、製品原価を効果的に削減する方法として、いま重要視されているのが間接費の削減です。本記事では、間接費を削減するポイントや直接費との違い、間接費の計算方法、原価計算の目的や方法などについて解説します。

間接費とは?

間接費は、製品の原価に“直接”関わる費用ではありませんが、製品を製造するうえでは欠かすことができないものです。

間接費の意味

間接費とは、製品の製造やサービスの提供の際に“間接的”に生じる費用のことです。ひとつの製品やサービスだけに対して発生する費用ではなく、複数の製品やサービスにまたがる費用が間接費に該当します。

間接費は、特定の製品の製造に紐付けられないため、どの製品にどのくらいの金額が使用されたのかを把握しづらい面があります。工場全体の光熱費や本社・営業所の管理費などは、製造以外にも複数の部門にまたがって発生します。間接費を削減するには、関係する部門や社内全体での取り組みが必要になることもあり、難しいとされています。

間接費の具体的な例

製品原価は大きく「材料費」「労務費」「経費」に分けることができ、これは直接費も間接費も同様です。間接費の場合は「間接材料費」「間接労務費」「間接経費」となります。

【間接材料費】
特定の製品・サービス本体だけに用いられる材料ではなく、複数の製品・サービスにまたがって支出される材料費用であり、製品の製造には不可欠です。関節材料費は、

  • 製品の組み立て時に共通して使用されるボルトやネジ、軍手や機械油などの「工場消耗品費」
  • 塗料や染料といった「補助材料費」
  • 固定資産以外の工具や機器といった「消耗工具器具備品費」

に分けられます。

【間接労務費】
製品の製造には直接関係のない人件費のことです。従業員の賞与手当や退職給付費用、休業賃金、福利費などのほか、機械の修繕やメンテナンスを行うための間接工賃金が該当します。

【間接経費】
製品の製造に間接的に関係してくる、広範囲にまたがって発生する費用です。間接材料費および間接労務費以外の支出は基本的に間接経費です。通信費、水道光熱費、旅費交通費、賃借料、保険料、修繕費、減価償却費などが該当します。

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間接費と直接費の違いとは?

製品の製造やサービスの提供などにかかる費用は直接費と間接費に分けられます。特定の製品やサービスに直接関係していない費用が間接費であるのに対して、直接費は特定の製品やサービスに紐付けられます。直接費は支出の目的が明確であり、製品・サービスの製造・提供のたびに規則的かつ限定的に発生します。そのため支出された金額は一目瞭然です。

直接費は商品の価格設定に大きく影響します。間接費よりも支出される費用は高額であり、削減できた場合には事業の利益にも大きく貢献します。直接費も間接費同様、「直接材料費」「直接労務費」「直接経費」に分けることができます。

【直接材料費】
製品やサービスに使われる素材などに支出される費用です。原材料費や買入部品費などが該当します。

【直接労務費】
製品の製造やサービスの提供に直接関係する人件費です。特定の製品の製造ラインで就業する従業員の給与などが該当します。管理部門の従業員の給与などは該当しません。

【直接経費】
特定の製品の製造に直接的に関係する費用です。発注を外部に委託する際の外注加工費などが該当します。

間接費を含む原価削減の重要性とは?

事業活動において利益を増加させる方法には、

  • 販売量の増加
  • 売価の値上げ
  • 原価の削減

の三つがあります。なかでも原価の削減は実施しやすい、効果的な収益増加施策です。たとえば年間売上高100億円で平均利益率が3%の企業の場合、純利益は3億円です。「販売量の増加」に取り組んで利益を拡大させ、売上高が10%伸びると売上高は110億円になり、純利益は3億3,000万円に増加します。

原価を削減する場合には、削減したコストがそのまま純利益に反映されるため、より効率的に利益を増加させることが可能です。製造原価を約80%と仮定した場合、80億円の原価を10%削減した場合には8億円のコスト削減が実現します。原価削減が収益増に大きな効果があることがわかります。

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間接費削減のメリットとは?

間接費の削減にはさまざまなメリットがあり、企業の利益増加に貢献します。

売上へのマイナスな影響が小さい

コスト削減を行う場合、直接費を減らすよりも間接費を減らす方が商品の売上に対する影響は小さいと考えられます。直接材料費や直接労務費を削減してしまうと、製品やサービスの品質が低下してしまったり、従業員のモチベーションが下がってしまったりする恐れがあります。

品質が低下した商品は売上減につながり、利益を減少させる要因になります。直接費の削減は売上に対するマイナスのインパクトが大きく表れる可能性が高く、実施する場合には十分に注意する必要があります。一方、間接費は直接、商品の製造には関係していないため、製品の品質低下や従業員のモチベーション低下などにつながる可能性は小さいと考えられます。間接費を見直して削減できれば、利益率の向上が期待できます。

大幅にコスト削減できる

間接費は直接費に比べれば、科目ごとの支出額はそれほど多くありません。ただし、直接費の発生が限定的であるのに対し、間接費は大量に発生します。個別の費用科目ではそれぞれの金額は少額でも、合計した場合には、それなりの金額になります。合計額が売上の10~20%程度になることもあり、この費用を効果的に削減できれば、全体的に見た場合には大幅なコスト削減につながります。

間接費を削減するためのポイントは?

間接費を効率よく減らすには、現状の費用内訳を把握したうえで、ポイントを押さえた施策を実施することが重要です。

現状の間接費を正確に把握する

間接費を減らす際にはまず、現在どれくらいの費用が支出されているのかを正確に把握する必要があります。そのためには、間接材料費、間接労務費、間接経費のそれぞれの内訳をすべて洗い出します。

消耗品費、器具備品費、雑費などは間接費が多く含まれている勘定科目であり、これらを中心に書き出したうえで、購入した品物や購入元、購入目的などがわかるように記載しておきます。書き出された支出を確認し、間接費かどうかを判別して間接費だけをまとめます。間接費と判断された支出の内訳や科目、金額などを整理し、あとからすぐに確認できる状態にしておくと便利です。

整理できた間接費データは可視化しましょう。可視化することにより、どの費用にコストがかかりすぎているのかなどを見つけやすくなり、有効な費用削減案を立てられます。データを可視化するには、エクセルなどの表計算ソフトや、間接費の可視化に使用できるクラウド上のツールなどを利用します。

定量的な削減目標を立てる

無駄な間接費が明確になったら、次は費用の削減目標を立てます。削減目標では「どの費用を、どれくらいの期間で、いくら削減するか」を、いずれも定量的に決めることが重要です。曖昧な金額や表現では、削減策実施後の進捗状況や効果がわかりづらいためです。

細かな作業にかかった人件費や、複数の製品・サービスで使用される消耗品など、算出が難しい費用もあり、場合によっては細かな按分なども必要になってきます。

間接費の各科目の金額はどれも大きなものではありません。個別に見た場合には削減効果が実感しづらく、担当者のモチベーションを維持するのも難しいかもしれません。しかし、定量的な目標値が設定されていれば、削減施策を継続して実施していくことにも前向きに取り組めます。

費用項目ごとに考える

間接費の削減は、費用項目ごとに考えることが重要です。間接材料費、間接労務費、間接経費のそれぞれに適した方法で行えば、スムーズな削減を実現できます。

【間接材料費】
工場消耗品費や補助材料費などが含まれる間接材料費の削減は、仕入れ量を見直したり、仕入単価を削減したり、在庫量を削減したりといった方法で行えます。間接材料費の削減方法としては、

  • 必要な分だけを仕入れ、過剰な在庫は抱えない
  • 一括仕入れすることによって単価を下げる
  • 仕入れ先に対して価格交渉を行い、材料費の削減を図る
  • 在庫管理方法を見直し、過剰在庫に対しては厳格に対処する

などが考えられます。

【間接労務費】
間接労務費を削減する方法には、

  • 業務の見直しを行って、不要な業務は廃止する
  • 業績に対して○○賞などの報奨制度を設けて、従業員のモチベーションをアップさせるとともに、業務の効率化を図る
  • Tツールなどを導入することにより、業務の効率化および人件費の削減を図る
  • 業務を外注したり、アルバイトやパートなどを活用することにより、人件費を抑える

などがあります。間接労務費の削減には上記に挙げたほかにもさまざまな方法が考えられます。なるべく多くの施策を実施することによって、大きな費用削減につなげることが重要です。

【間接経費】
間接経費は、社内のさまざまな局面で発生するものであり、見直しやすい費用です。削減方法としては、

  • 電気代やガス代などをより安い料金プランを提供している会社に変える
  • 事務所をより賃料の安いビルに移転する
  • 工場を地方の地価が安いエリアに移転する
  • 出張手配が可能なツールなどを導入する
  • 法人向けのクレジットカードを使用してポイントを活用する

などが考えられます。

実施後に効果検証を行う

経費削減施策の実施後には、必ず効果検証を行います。たとえば、サプライヤーとの金額交渉を行って間接材料費を削減した場合には、その効果はすぐに検証できます。ただし、社内で費用削減のルールを策定したり、社内体制を整備して費用削減を目指したりする場合や、システムを導入して費用削減を図る場合などは、効果が明確になるまでに時間がかかり、効果検証はすぐにはできません。たとえば、社内に新しく事務処理の自動化ツールなどを導入した場合には、導入後の一定期間は従業員が操作方法を覚えるのに一時的にコストが増加したり、作業効率が低下したりといった問題が発生するかもしれません。ただし、長期的に見れば、間接費は着実に削減されていきます。

コスト削減の効果検証は一度だけでなく、期間を決めて定期的に行うことが重要です。施策を継続実施するうちに、新たな課題や改善方法が見つかるからです。新たな課題を次の削減目標に取り入れて、状況を改善し続けていくことが、さらなる利益の向上につながります。

間接費の計算方法とは?

間接費で問題になるのは、直接費に比べて原価計算の方法が複雑かつ難しいということです。直接費ならば生産にかかった時間や費用を生産数で割れば簡単に計算できますが、間接費の計算ではこうはいきません。間接費は一般的に、何かに比例して製品別に配賦するという原価計算方法を使用します。間接労務費などは、直接作業に使われる時間に比例して配賦します。

原価計算の目的と方法は?

原価計算の目的は、

  • 原価を把握して製品・サービスの販売価格を決定するため
  • 原価管理に用いるため
  • 予算を作成したり、管理したりするため
  • 経営に関する意思決定を行うため

など、さまざまです。企業の財務状況を把握できる財務諸表の作成にも原価計算が必要です。原価計算方法には複数の種類があり、目的に応じた方法を使用します。

1. 個別原価計算と総合原価計算

個別原価計算は製品ごとに原価を計算する方法です。対して、ある一定期間にかかった費用を合計して、製造された製品数量で割る計算方法が総合原価計算です。個別原価計算と総合原価計算とでは適した生産方式が異なります。顧客からの発注にもとづいて製品を生産する受注生産や、多品種少量生産などの場合に適しているのは個別原価計算です。自動車メーカーや食品メーカーなど、同一製品を大量に生産・販売する生産方式の場合には、ある程度まとめて計算できる総合原価計算が適しています。

2. 全部原価計算と部分原価計算

原価の集計範囲で区別する計算方法が全部原価計算と部分原価計算です。製造にかかったすべての原価を計算に含める方法が全部原価計算であり、製造にかかった費用の一部だけを原価として計算するのが部分原価計算です。全部原価計算には「実際原価計算」と「標準原価計算」との2種類の計算方法があります。部分原価計算は会計上では認められていません。対外的なものではなく、社内の計算目的によって費用を部分的に集計するもので、企業業績管理など評価目的のITシステムなどで使用されます。

3. 実際原価計算と標準原価計算

製品を製造する際、実際に発生した費用から原価を計算する方法が実際原価計算です。対して、社内管理目的で使用される方法が標準原価計算で、粗利を計算する場合など、目標とする原価(標準原価)を計算するために用いられます。実際原価計算で算出された原価は、原価管理や標準原価との比較・分析に使用されます。会計上で認められているのは実際原価計算です。財務報告に使用する原価は、前述の全部原価計算かつ実際原価計算で計算されていなければなりません。

原価計算方法を適切に使用し、正確な製品原価を把握することにより、有効な原価削減施策を立案・実施して、利益率の向上を図れます。

間接費の把握や原価計算は正確に行う必要がある

原価計算はもちろん、間接費の把握にも正確性は欠かすことができません。複雑で細かい間接費の把握や原価計算を人手で行うと、ヒューマンエラーが起きやすく、注意が必要です。さまざまなデータを効率的かつ正確に収集し、集計・計算業務を行うには、用途に適したシステムを使用することをおすすめします。

間接費を把握したり、原価計算を正確に行ったりできるシステムとしてERP(Enterprise Resource Planning)があります。ERPは、財務会計などの基幹系システムと、調達・生産・物流といったさまざまな分野別のツールを統合したシステムです。ERPに含まれるすべてのITシステムでは、相互連携によってデータを共有・管理することが可能です。ERPを導入することにより、企業内のさまざまな情報を一元管理できるようになります。社内の膨大なデータが保存されているデータベースから必要なデータを取得し、リアルタイムに分析することが可能になり、スピーディな経営判断の実現にも大きく貢献します。

「NetSuite(ネットスイート)」や「Oracle ERP Cloud」であれば、システム全体から収集したデータをリアルタイムで製品原価計算することが可能です。グローバルレベルで正確なデータを把握することが可能で、海外生産拠点の原価情報もリアルタイムに取得できるようになります。

原価計算を使用した間接費の管理やコスト削減は、企業の利益を向上させる重要な業務のひとつです。ERPソリューションを導入することによってデータを効率的に活用し、適切な経営判断を行って、安定した企業運営の実現を目指してください。

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