【羽入敏祐の未来会計】第2回:つながるシステムを実現するために必要なこと

 2014.10.20  ひので監査法人 羽入 敏祐 氏

グローバル標準のクラウドERP

販売、購買、在庫管理、固定資産管理、給与、資金調達などなど事業運営で発生する取引のほぼ全てを会計データにおきかえて集約する会計システム。かたや業務システムはその用途に応じて現場が利用するツール。理想を言えば、業務システムと会計システムはシームレスにつながっていたいものだが、購買・販売データをノーチェックで取り込む訳にもいかない。異なる用途で流れる様々な経営情報をつなげるシステム実現に向けた留意点について考えてみたいと思います。

つながらない業務処理の日常

事業を立ち上げた方は経験があると思うのですが、独立後、営業はできても、こと契約書、請求書、領収書など商売上の必要資料の提示を求められた時、思いのほか時間と手間を要したのではないでしょうか?設立直後は、エクセルなどで請求書を小奇麗に手作りし、紙出力、会社印鑑を押印後、クライアントに持ち込まれたことと思います。

忙しいさなかに作った請求書フォームをマスターデータ管理の工夫の間もなく業務を引き継ぎ、担当者は社長の指示をただひたすら守り、請求書をエクセルで作成し続けます。売上請求書・仕入請求書の会計処理は月次一括処理、入出金処理は依然としてFBシステムに直接入力、社員の交通費・経費立替精算から勤怠管理に至るまですべてエクセル作成、社長も担当者もお互いが「無駄かな」と思いつつも、今に至る、こうした業務処理はレアケースとは言い難いのです。

ありがちなリソースの浪費

一見、エクセルさえあれば誰でも簡単に管理できそうなものですが、実際には様々な理由で請求日、金額、宛先など内容変更が頻繁に行われるため、文書管理だけでもひと苦労。

せっかく営業担当が入力した営業情報も担当者ごとの個別管理のため、経理担当者は売上管理表を別途作成、取引高管理を行うとともに、さらに会計システムに仕訳入力。

加えて、支払請求書の集計及び振込入力、債権債務の入出金確認、消込処理、残高差異調整など請求以降の残務処理はおのずと管理担当に集中。

紙媒体で営業情報を共有する社内プロセスが、一取引の営業情報を複数回にわたり重複入力させる作業を強いている訳です。

紙媒体による情報共有をもって各部門業務を「ブツ切り」したほうが、他業務への波及もなく、ある意味安心である反面、重複処理の余地が大きく、効率化の視点からすればスタートアップといえども放置されるべきものではありません。

リソースの浪費を軽減する簡素なITインフラ活用から始めてみよう

1ヶ月後の決算報告を待てないからといって日次管理のために営業担当にエクセル管理させるのは大きなリソースの浪費でもあり、社員にとっても大きなストレスをもたらします。

企業運営で感じるストレスの多くは、こうした雑務の積み重ねから生まれるものです。ちょっとしたコストと工夫次第で、企業運営で最も高額な投資である人的リソースの浪費を防止できる新たなサービスが次々に生まれています。まずは、こうしたライトなインフラを上手に活用することで、社内情報共有インフラが事業運営をスムーズにしていくことを体感してみることは、成長とともに必要となるより高度な管理システム構築の第一歩として有意義なことではないでしょうか。

つなげるDataを見極める

売上管理、資金繰りスタートアップに欠かせない最低限の管理体制が安定稼働した次のステップにおいて、社内KPIの設定がスピード経営では必要となります。経営陣は、社内KPIの設定、定義づけ及び運用ルールを確定させ、PDCAサイクルを構築する役割を担うことになります。

KPI確定に際して、視点は幾分異なるかもしれませんが、2012年日経BP社から翻訳出版された「リーン・スタートアップ(エリックリース著・井口幸一訳)」の記述は示唆に富みます。

同著書において、破壊的イノベーションに適したマネジメント手法として提言されている「革新会計(Innovation Accounting)」という記述の中で「行動につながる評価基準(actionable metrics)」選定の際に「①行動しやすさ、②わかりやすさ、③チェックしやすさ」という3つのポイントを挙げています。

大まかにいえば、「①行動しやすさ」とはレポートが行動につながるため、相互の因果関係がはっきりしていること、「②わかりやすさ」とはできる限りシンプルで、全員が理解できるようなものであること、「③チェックしやすさ」とは社員が信じられる(マスターデータとの関係が明確で根拠の明示できる)データであることです。

NetSuite SuiteSuccess 新登場!!

至極当たり前ではありますが、持続的に情報の収集、分析、共有を実現するためには、KPIをできる限り絞り込むのが現実的といえるでしょう。

プロセス自体の簡素化か、プロセスのスピードアップか

会社経営は、情報収集・分析、計画、判断、実行、評価 の各工程を、より良い成果を目指し、幾度となく繰り返し実行されるプロセスの集合体です。それ故、業種を問わず事業の成功確率を高めるには、「①プロセス自体を簡素化」、「②プロセスのスピードアップ」そのいずれか、もしくはその両方に着手し、トライ&エラーのサイクルを早める施策を講じることが合理的です。

「プロセス自体の簡素化」のためには、「承認ステップの簡素化」、「承認事項の見直し」あるいは「承認範囲の明確化」といった社内制度の設計及びその見直しが主たる課題となり、「プロセスのスピードアップ」においては「場所・時間を問わずチェック可能なインフラ整備」といったシステムの整備運用が主たる検討課題となります。

「制度設計とシステム選定」、これまでは、前者は総務部・法務部が、後者はシステム部門と、それぞれ別部門が所管してきたことと思いますが、スムーズな運用を目指すには、制度設計を十分理解したメンバーのシステム選定ならびにシステム構築への参画が不可欠です。

社内制度のシステムへの落とし込みの過程で、注意いただきたいのは、社内承認プロセスの棚卸と制度設計そのものの見直しを必ず行うことです。システム導入前の社内ルールには首尾一貫性の無いケースが往々にしてあるものですが、制度そのものの不備を見直すことなくシステム構築を強いることは、投資コストの増加を招くだけでなく、導入効果も半減させてしまいます。不必要な業務フローを放置することは社内業務の新たなストレスを生み出す原因にもなりますので、システム投資するしないにかかわらず、業務フローの統合・見直しを定期的に実施し、常にシンプルな制度設計を目指したいところです。

IT技術の普及がますます進む今、会社組織の意思決定プロセスを定義づける制度設計とシステム構築とのかかわりは、まずます密接になることが予想され、これからの法務・総務担当者には、経営陣が目指す事業運営モデルに合わせた制度設計に加え、当該設計のシステムへの落とし込みも、重要な役割として求められることになるのかもしれません。

既存システム構成の棚卸しと描く未来像

これまでメーラー・スケジューラーなど簡素な情報共有がクラウドサービスの主流ではありましたが、クラウドサービスに対する信頼性の向上とともに、社内業務インフラとしての活用範囲は、拡大傾向があり、今後もますます広がることが予想されています。

社内業務クラウド(グループウェア)

フロント業務クラウド(営業・販売・購買)

バックオフィス業務クラウド(会計・人事・その他)

営業支援ツールはもちろん、基幹情報の会計情報に加え、最近では高度な情報の秘匿性を求められてきた人事情報管理の分野ですらクラウド化の波は押し寄せています。

もはや一般的な事業会社の社内業務をクラウドサービスでカバーできていない範囲はかなり限定的になったとすらいえるでしょう。

多くのクラウドサービスが次々とリリースされる中、いい意味で法人ユーザーの選択肢は広がっています。その一方で、各々の管理ツールが一見、使い勝手良く見えても、各サービスの機能を部分最適で選択、バラバラに導入してしまうと、情報の導線が却って複雑にし、むしろスタッフの手間を煩わせる恐れもあるため、サービスの組み合わせを決定するに際しては、ユーザーの利便性を十分考慮したうえで慎重に検討する必要があります。

やはり、システムデザインにおける基本方針としては、できる限り守備範囲の広いサービスあるいは、将来的なサービスの拡張性が期待されるサービスを選定するのが、王道といえるでしょう。

誰がクラウドサービスの勝ち組となるかの見極めが重要

クラウドサービスにおいては、各社がサービスのカバーエリアをどんどん拡大させ、場合によってはお互いの守備範囲をどんどん侵食し始めており、各社が今後どのようにサービス拡充をしていくのか全く目が離せないフェーズを迎えています。クラウドサービスはある程度の資金により、コストと収支のバランスが会社の運営を圧迫します。中途半端にクラウドサービスを提供している企業のなかには、限界利益と損益分岐点を考えず、最終的にデータセンターを移行したタイミングで収支が成り立たないベンダーが数多くいます。利用者側は、継続的にサービスが提供しうる企業であるのか、しっかりと見極めないといけません。

クラウドサービスの拡張は日進月歩で、現時点においてどのサービスが勝ち組となるのか、その見極めは難しい状況ですが、サービス改善に対する経営トップの断固とした意思表示とその意思表示を裏付ける明確なマイルストーンを持つ企業であるかどうかを見極めることが、バックオフィスサービス選定のポイントとなるのではないでしょうか。

将来の人材不足を所与としたバックオフィスづくりを目指す

さまざまなサービスが誕生するなか、そうした新サービスの積極的な利用を通じて、業務改善が行われているかと言えば、必ずしもそうではないようです。

健全な事業運営における事業開発あるいは顧客開拓といったフロント部門においては、社長自ら先頭に立ち、その目標達成に向けて、必要な人材を積極投入し、各々のPDCA活動を短期的かつ持続的サイクルで実行し、その成功確率アップに努めていることでしょう。

一方で、工数削減を目的とした業務プロセスの見直しは、バックオフィスの業務効率化に向けて行うべき持続的取組みではありますが、企業のあらゆる経営情報を統合的に日夜管理する管理部門のプロセス変更は、一時的とはいえ多大な負荷を伴うため、管理現場任せではなかなか見直しが進まないことも多いのではないでしょうか。

というのも、新たな思考・人材の積極的登用は、職能にかかわらず業務改善・改革実現のうえで不可欠ですが、人材投入が僅かで若返りが難しい管理部門における業務プロセスはおのずと硬直化しやすくなるものです。加えて、業務プロセスのノウハウも特定人員だけに蓄積・集約され、知らず、知らずのうちにブラックボックス化が進行し、業務プロセスが変わらない、あるいは、変えようがない事態に陥るケースはよくよく耳にする話です。

フロント部門のダイナミックな活動の最中、経営者がふと管理部門に目を転じた時、管理部門だけが他部門とは別次元の緩慢なスピードでしか業務効率化が行われていなかったことに対して経営者が強いストレスを感じてしまうのは、思考の固定化・ブラックボックス化を防止する手立てを講じてこなかったことが、その一因ではないかと思うのです。

抜本的かつ長期的な手立てを講じることが肝要であり、経営陣と管理者とが相互にバランスよく硬直化していくため、それ自体気づかない状態に持ち込まない見えやすい環境作りを目指していくべきでしょう。

より良いサービス・価値提供を目指す経営者にとって、事業成長スピードに合わせた管理体制構築のためには、定期的な若手社員の採用あるいは外部コンサルタントによる定期見直しを通じて、業務のブラックボックス化の回避と激変するIT環境を上手に生かせる発展的業務プロセスの改善とを図り、社内プロセスを自然と業務改善へと導く体制作りを考えるべきでしょう。

つながる経営管理インフラ構築における総括

・人材不足を前提とした管理体制作りにITの積極導入は不可欠、

・社内情報の集約は、クラウドサービスの選定次第で効率的に実現可能、

・中小企業がリソースの限られた中でもなお成功を収めるには、時と場所を選ばず最速の社内コミュニケーションを実現する業務環境を提供するクラウドサービスを選択し、活用し続けることが、限られた人的リソースの浪費防止と経営判断のスピードアップのうえで重要です。

経営管理ツールは一つに集約していく方針が最も合理的ながらも、選択するサービスの将来的な拡張性に対する見極めが必要です。ツール集約を管理部門のトップはもちろん経営陣の重要な経営課題の一つとして、経営情報の集約に心を砕くべきであるし、昨今のシステム開発の行く末をみる限り、その理想実現に向けたサービスは生まれつつあるから、その動向を注視しながら現行のシステム環境の見直しを実施していっていただきたいものです。

著者紹介

hanyu-samaひので監査法人 羽入 敏祐 氏

監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入所、上場企業等監査業務に従事。会計事務所にて会計・税務全般およびM&A関連各種業務事業会社では経営管理実務、IPO準備全般に従事。
監査・経営実務経験を踏まえたITインフラ提案力に強み

ひので監査法人について

ひので監査法人は、2009年5月 設立、大手監査法人の監査経験者と事業会社のマネジメント経験者から構成され、上場準備、中堅国内上場企業向けの効率的監査サービス、バックオフィス支援サービスの提供をしております。信頼される会計プロフェッショナルとしていかに成長し続けていくかを日々模索し、監査ならびにバックオフィス構築サービスの品質維持・向上に取り組んで参ります。

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