M&Aの進め方、成功までの考え方

 2016.03.01  ひので監査法人 羽入 敏祐 氏

グローバル標準のクラウドERP

日本国内で加速するM&Aの現状

M&A案件数は年々増加、もはや上場会社だけのことではなくなりました。
レコフの調査結果に基づく近年のM&A件数は下記のとおりとされています。

M&A件数
2012年 12.4兆/ 1,848件
2014年 9.2兆/ 2,285件
2015年 9.2兆/ 2,285件
Source:「2015年1-12月の日本企業のM&A動向」byレコフ

対前年比で、件数ベースで143件増加、比率にして6.3%増加という状況です。

企業成長スキームでM&Aは自然な流れ

M&Aが企業成長スキームの現実的かつ有効な手段として活用され始めている今、M&Aの実施がごく一部の会社だけに起こりうるレアなことではなくなりつつあるようです。国内人口の自然増とともに訪れた好景気の時代はとうに過ぎ去り、中国という巨大マーケットを横目に見ながら、着実に進む高齢化と人口減のなかで徐々に縮小しつつある日本市場において、新市場あるいは新サービスを目指さない限り、生き残りはなかなか難しくなるなか、M&Aに活路を見出そうとするのはごくごく自然かつ合理的な経済活動といえます。

戦後を支えた経営陣の世代交代のタイミングとも相まって、経営陣の交代を含めたM&Aは今後も持続的に生じることが予想され、国内市場が飽和状態となっている業界においては海外に成長の糸口を見出そうとする企業もあるでしょう。国内M&Aでは、従前のグループ内で考え方の異なる管理者との意思統一という壁があり、海外M&Aあるいは海外M&Aでなく100%子会社であったとしても、ローカル人材とのルールの共有はおろか、情報の精度、あるいは業務実施のスケジュール感ですら意識合わせに相当苦労するであろうことが予想され、決して簡単なことではないものです。

ところが、M&Aはその秘匿性の高さが求められるゆえ、時に管理部門の人員が何ら関与することの無いまま、M&Aが決定されるときがあります。
そこから始まる管理部門の苦労を一通り整理してみましょう。

M&Aの方向性は、買収、営業譲渡、合弁

M&Aのスタートは、仲介会社を通じて、あるいは逆に仲介会社からのアプローチで、「興味を持っている」であろう対象企業の情報が提供されます。
買収に興味を持った企業では、社長およびその側近の方々により買収会社の情報が提供されるとともに、M&Aについての意向の有無が示されます。
M&Aは企業間の相対の取引ですので、仲介会社を交えながら、相互の意思確認と条件交渉、必要情報のやり取りが順次行なわれていきます。
うまくM&Aの方向性が固まれば、会社を買収するのか、営業譲渡でするのか、合併するのかといったM&Aスキームの骨子についての協議も行なわれます。

デューデリジェンスからM&A完了までの流れ

M&Aの方向性がおおよそ整い、限られた情報の中でおおよその買収価額などもスコープが定まり、このあたりで、M&Aに向けた企業調査、いわゆるデューデリジェンス(以下「DD」という)が行なわれます。

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DDには、ビジネス面のチェックを行なう社内担当者に加え、法律面のチェックを行なう弁護士、会計税務面のチェックを行なう会計士・税理士などのチーム編成で社内情報のチェックを行ない、従前の開示情報との齟齬が無いか、あるいはその他留意すべき事項がないか確認する手続きが踏まれます。但し、規模によっては、DDを社内担当者のできる範囲で手早く済ませるケースもあるようです。

調査結果に大きな問題が無ければ、M&A完了に向けた付随手続きが進むとともに、買収等条件(買収価格・評価基準日・経営陣・従業員の処遇、表明保証など)、実施日、資金決済日などを付した契約書面取り交し他各種手続きが仲介会社主導の下遂行されていきます。
当該手続きを進めながら、売り手買い手相互におけるプレスリリース、社内説明などの準備をもろもろ済ませば、とりあえずはM&A完了までのおおよその手続きは完了です。
相互に手続きが完了したので一安心というところでしょう。

M&Aにおける管理部門の視点

ところが、管理サイドでは、すこし視点が異なります。
新たに企業をグループ内に取り込むにあたり、そもそもどのような会社なのか、そしてそれは、グループのどのセグメントに入るのか、グループ全体への影響度はどの程度で、買収企業は連結対象企業になるのかならないのか、買収した企業のPLは何時から連結に取り込もうか、BSに「のれん」はどのくらい発生するのか、買収時および買収後の運転資金の資金手当ての要否は、開示情報をいつ・どのようにリリースしようか、そんな視点でM&Aを見ています。
とりわけ管理部門が契約交渉に関与していないケースは最悪です。

M&Aで生まれる「のれん」、「買収時のM&A手数料」の会計処理、買収後の期待収益の見通しの妥当性など、大きなディールであるがゆえに、検討項目は以外に多いものです。
ときに、買収価額と被買収企業の純資産差額から生まれる「のれん」が想定以上に拡大し、結局、あっという間に減損などということも発生します。これも、M&Aが一般化したものの、いまだに買収企業のPLだけをみて意思決定されるケースが少なくないせいなのかもしれません。買収時の瞬間的には、損益インパクトはありませんが、買収時の期待価格を下回れば、あっという間に資産計上された「のれん」は減損処理の憂き目に会ってしまいます。このとき如何に管理部門を叱ったところで「とき既に遅し」です。

2015年もM&Aに係る会計処理のルール変更がありましたが、そうした点も踏まえたM&Aの検討・意思決定が行なわれていることを切に願いたいところです。
スピード重視のM&A、即断即決を求められやすいところですが、もし連結グループへの影響の大きなディールであるのであれば、瞬間的にことが終わるのはM&A仲介会社だけであり、企業を受け入れた会社には、大きな「のれん」を背負い、その会社の決算情報を正確、かつスピーディに取り込む社内手続きが延々とのこること頭にとどめておく必要があります。

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M&Aにおける財務経理担当者の苦悩

ビジネスサイクルの短縮化に伴い、じっくり自社開発というよりむしろ時間を買う事案は今後も益々増えることでしょう。海外展開を目指すのであれば、なお一層そうかもしれません。こうした経済環境の変化に伴い、経営管理責任者には、異なる事業体を連結グループでスピーディかつ的確に捉える管理体制の構築が求められているように思います。

しかしながら、親会社には、事業会社数の増加に併せて十分な管理の時間と要員が配備されているかといえば必ずしもそうはいきません。
とはいえ、上場企業の決算は3カ月おきに到来するものです。そのため、ひとたび連結グループに入るとなれば、グループ会社から上場企業の会計ルールに準拠した決算情報をタイムリーに入手しなければなりません。買収時の企業価値はあれど上場企業向けの会計処理を行っていない会社を買収した際には、とりわけ苦労することでしょう。
企業価値の高さ=決算処理のクオリティの高さとはいかないだけに、財務経理担当の苦労をお察ししてしまいます。

財務経理がM&Aの時に実施しておきたいこと

可能であれば、DD実施時に(ざっくりベースであれ)金融商品会計基準ベースの決算情報をまずは作成するとともに、不足情報のリストアップとその後の会計処理担当者の確認、会計処理の実施スケジューリングなど詳細な手続の準備を早い段階から整理しておくことが、スムーズなM&A受入には効果的といえます。

さらに希望をいえば、M&A手続完了後もグループ会社の会計情報を常日頃からモニタリングできる環境づくりが望まれます。M&Aは異なる社風の他の企業群への取り込みのプロセスです。営業面ではビジネスを通じた情報共有、意識あわせがしやすいものですが、管理部門は必ずしもそうは行きません。異なる文化をつなぎ合わせるには、同じプラットフォームで仕事をすることが管理業務においては有効とは分かりながらも、ヒトに依拠しがちな管理業務は現状維持となりがちです。その点、欧米企業ではことによってはあっという間にヒトのリプレースをかけ、その際に買収後の利益率アップを狙うといったドライさとはずいぶん異なります。

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M&Aの際に管理部門が行うべき役割

欧米企業モデルとまではいかないまでも、M&Aを積極的に展開することがこれからの成長戦略と位置づける企業であるならば、買収以後の管理体制の共通化およびこれを実現するようなシステム環境づくりは重要なマネジメント戦略の一つに位置づけるべきものといえるでしょう。

新たな事業創造はけっして簡単なものではなく、そのため、M&Aが有効な企業成長手段であることは疑いの余地はありません。
その一方で、M&A後の受け入れ体制についての具体的なプランの無いまま、新たな企業文化をたなざらしにしておいたからといって企業文化の融合が進むものではないでしょう。
管理部門においても、現状維持を一番の安全策とすることが確かに無難ではありますが、だからといって、買収時の経営管理体制を何ら変えぬまま、グループ傘下におさめるだけでは、せっかくのM&Aという組織見直しの大きなチャンスを無策でやり過ごすことにほかなりません。

優秀な人材は限られているという今日の経営環境を踏まえてみても、管理業務が重複するからリストラするという単純なリソースマネジメントではなく、グループ化を通じて、より効率的なクラウドERPといったような経営管理システムによる経営情報の一括管理を推し進めることで、広がり続けるリスクマネジメントへの人材配置を実現する、そんな組織作りを目指していくことが、M&Aにおける管理責任者の目指すべき役割ではないかと思います。

著者紹介

hanyu-samaひので監査法人 羽入 敏祐 氏

監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入所、上場企業等監査業務に従事。会計事務所にて会計・税務全般およびM&A関連各種業務事業会社では経営管理実務、IPO準備全般に従事。
監査・経営実務経験を踏まえたITインフラ提案力に強み

ひので監査法人について

ひので監査法人は、2009年5月 設立、大手監査法人の監査経験者と事業会社のマネジメント経験者から構成され、上場準備、中堅国内上場企業向けの効率的監査サービス、バックオフィス支援サービスの提供をしております。信頼される会計プロフェッショナルとしていかに成長し続けていくかを日々模索し、監査ならびにバックオフィス構築サービスの品質維持・向上に取り組んで参ります。

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