管理会計の事例からも学ぶ成功のポイント

 2017.07.12  クラウドERP編集部

[E-Book]データ主導の意思決定に勇気を持ち続ける

皆さんの会社、あるいは取引先など周囲の企業ではそれくらい“管理会計”が行われているでしょうか?自社で管理会計を行っていない場合でも「〇〇社は管理会計を徹底しているらしい」といった話を、聞いたことがあるかと思います。

そもそも管理会計とは、経営のための会計です。株主や顧客など外部ステークホルダーに経営情報を提示するための、財務管理とは行う意味が違います。

管理会計にルールはありませんし、企業によって管理会計を行う目的も異なります。

しかし、管理会計は企業の“今”を知るために重要な情報を提供してくれる業務です。従って、規模を問わずすべての企業にとって管理会計は必要なものだと言えます。実際に管理会計の重要性を理解している経営者は多いでしょう。

それでも管理会計が行わない企業が多いのは、その効果を肌で感じたことがないからです。管理会計を行うことでどういった効果があるのか、どう利益をもたらしてくれるのか、この見通しが立たない限り新たなチャレンジに踏み出すことは不可能です。

そこで今回は、管理会計の実施をより具体的に検討いていただくためにも、管理会計の成功事例について紹介していきます。題材として取り上げるのは、1994年に「ハンバーガー100円」で爆発的な利益増収に成功したマクドナルド。

一つ210円という価格から半額以上の値下げを行ったにも関わらず、なぜ成功したのか?そこには、管理会計にもとづいた盲点とも言える経営戦略がありました。

ハンバーガーの変動費と固定費

マクドナルドがハンバーガーを100円で販売し出したのは1994年のことですが、それ以前にも期間限定で100円ハンバーガーを販売しています。それが1992年の、ハンバーガー50億人突破記念セールのときです。

このときマクドナルドは、ハンバーガーの価格を20年前(1971年)と同じ100円まで下げました。マクドナルドが恒久的に100円ハンバーガーを販売したのは、このときの成功あってのことでしょう。

100円ハンバーガー成功の秘訣を知るためにまず、原価の“変動費”と“固定費”について確認しましょう。

変動費と固定費とは

商品原価には変動費と固定費という2つの費用がかかっています。変動費とはパンや肉などの食材費といった、売上に応じて変動していくコストです。そして固定費とは、人件費や設備費など、売上に関係なく必ず発生し、かつ変動しないコストを指します。

そして、210円で販売していたハンバーガーの変動費と固定費は次のような構成になっています。

変動費:原材料費57.5円

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固定費:社員人件費40.7円、店舗賃借料21.0円、その他販売管理費66.6円

以上のコストを合計すると、210円のハンバーガーは原価197.1円であり、営業利益はわずか12.9円しかありませんでした。

12.9円というあまりに少なすぎる利益に対して、なぜ半額以上の値下げという価格破壊にマクドナルドは挑んだのでしょうか?

成功のポイントは変動費と固定費の特長を理解していたこと

ここで改めて変動費と固定費の特徴についておさらいしましょう。前述のように変動費とは売り上げに応じて変動するコスト、固定費とは売り上げに関係なく一定にかかるコストです。

そして、マクドナルドの210円ハンバーガーの変動費は57.5円、固定費は139.6円であり、変動費の方が圧倒的に低くなっています。100円ハンバーガーで成功した理由は、この“低い変動費”にあるのです。

もしも変動費と固定費のコストバランスが逆だったら、成功どころから値下げすらしなかったでしょう。

固定費は実は変動する!

先ほど「固定費は売り上げに関係なく一定にかかるコスト」と説明した矢先、「変動するとはどういうことだ」と思われる方も多いでしょう。

しかしこれは事実です。詳しく説明すると、商品1つあたりの固定費とは、固定費に対して総販売数を割った数が固定費となります。

例えば人件費や店舗賃借料など諸々の固定費が、1ヵ月で1,000万円かかるとします。このとき、商品の販売数1万と100万では固定費はどうなるでしょうか?

≪販売数1万円の場合≫

1,000万円÷1万個=1,000円

≪販売数100万の場合≫

1,000万÷100万個=10円

上記のように、固定費とは販売個数が増えるごとに、商品一つあたりにかかるの固定費が変動します。変動費の場合は売り上げ、すなわち販売個数によって変動するので、商品一つあたりにかかる固定費は変わりません(大量仕入れによる値引きを考慮しないとして)。

100円バーガーの販売個数は20倍以上

変動費が低い、そして半額以上の値下げで販売個数が爆発的に増えるという過去の経験から、マクドナルドは100円バーガーを販売するに至りました。

その販売個数は従来の実に20倍以上となり、商品一つあたりの固定費を下げる大きな要因になったのです。販売個数が以前と同じ、あるいは多少増加したくらいなら完全に赤字にだったところ、20倍以上という驚異の販売個数により、商品一つあたりの固定費はなんと人件費2.3円、販管費3.7円にまで圧縮しました。

これにより12.9円だった営業利益は、なんと34.7円にまで増加しました。これが、マクドナルドが100円バーガーで成功した理由です。そして、薄利多売ビジネスの正体でもあります。

それから段階的に価格低下が続き、ハンバーガーは最終的に一つ59円まで値下げされました。しかし、ここまでの値下げでは販売個数の増加があまりみられなかったため、再び値上げされました。

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価格破壊で成功するポイントは、変動費が低いこと

現在販売している商品を値下げして増収を狙うのであれば、絶対的に押さえておかなければならないポイントがあります。それが、“変動費の低さ”です。マクドナルドのハンバーガーは57.5円という低い変動費だったからこそ、価格を100円まで下げたときに販売個数を増やしたことで増収を実現することができました。

皆さんが販売している商品によって、変動費や固定費のバランスは異なるかと思います。固定費よりも変動費の方が高く、価格低下を行うことで、むしろ収益を下げてしまう可能性もあるでしょう、

マクドナルドの100円バーガー成功を受け、多くの食品メーカーや飲食店などが価格破壊にチャレンジしました。しかし、その多くが失敗した原因が、変動費と固定費のバランスを無視したことです。

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管理会計を実施して、増益のヒントを見つけましょう

マクドナルドが100円バーガーで成功したのも、管理会計を徹底して変動費と固定費のバランスを、常に把握していたからだと言えます。また、管理会計とは商品一つあたりの原価を把握するだけでなく、様々な会計情報を把握することが大切です。

管理会計を行えば経営判断に必要な様々な材料を手にすることができるので、価格低下だけでなく、経営状況に応じた戦略を打ち立てていくことができます。

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