企業におけるガバナンス強化の目的や方法とは? 役立つツールも紹介

 2023.02.09  クラウドERP実践ポータル

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企業がコンプライアンスを厳守し、ステークホルダーとの利益を守るためには、徹底したガバナンス強化が欠かせません。本記事では、ガバナンスを強化する具体的な方法に触れながら、役立つツールやおすすめのソリューションについてまとめました。企業の内部統制やリスク管理などについて調べている方は、ぜひ参考にしてください。

ガバナンスとは

「ガバナンス」とは、企業が法令に違反したり、不祥事を起こしたりしないように、組織を自主的に監視・統制することです。ガバナンス(governance)という言葉そのものは「統治」「支配」「管理」といった意味をもちますが、ビジネスにおいては組織の不正を防止するための監視や管理、統制、仕組みといった意味合いで使われることが多いでしょう。「コーポレート・ガバナンス」と呼ばれることもあり、長期的に企業価値を向上していくうえで欠かせない仕組みのひとつです。

ガバナンスが重要視されるようになった背景には、2000年代に相次いで発覚した企業の不祥事や、企業のグローバル化などが挙げられます。もともとは1960年代にアメリカで誕生した取り組みでしたが、組織の不正を防止し、国内外の投資家と信頼関係を築いていくために重要として、日本でも注目を集めるようになりました。

ガバナンス強化は企業成長の礎
グループ経営強化のため、意思決定の迅速化・高度化、ガバナンス強化を目指し「連結会計システム」構築

ガバナンス強化を推進する目的

企業がガバナンス強化を推進する目的としては、透明性の確保やステークホルダーとの関係維持、企業価値の向上などが挙げられます。以下、それぞれの目的について詳しく解説します。

経営の透明性を確保するため

コーポレート・ガバナンスの考え方は、企業が株主などのステークホルダーに適切な情報開示を行うことで、企業経営が公平に行われていることを証明するものです。企業の意思決定が経営層などの限られた人によって行われ、それらが社内だけで完結してしまうと、万が一不正が行われていたとしても発覚しづらいかもしれません。社会やステークホルダーに対して情報開示をすることで、経営の透明性が確保され、不祥事や不正が行われるリスクを軽減できます。

ステークホルダーを大切にするため

ステークホルダーとは、株主や経営者、従業員、顧客、取引先、金融機関、行政機関といった企業の活動に対する利害関係者のことです。企業はステークホルダーと関わり合いながら経営活動を行っているため、彼らに対して利益を還元する責任があります。たとえば、株主にとっては権利や平等性の確保、顧客にとっては安心に利用できるサービス、従業員にとっては雇用の確保などが、還元する利益として挙げられます。

万が一、インサイダー情報を流したり、不正会計を行ったりといった不祥事が起こると、ステークホルダーにも悪影響を及ぼしかねません。ステークホルダーからの信頼を損ねてしまうと、事業活動に大きな影響が生じます。そうならないよう、ガバナンス強化により組織を健全に保ち、ステークホルダーの期待に応えることで、信頼関係の維持に努める必要があります。

企業価値を向上させるため

ガバナンス強化を行っている企業は透明性が高く、不祥事が起こるリスクが低いとみなされます。そのため、金融機関からの信頼度も高く、新たな融資や出資が得やすくなるメリットがあります。企業が資金調達を行いやすくなることから、事業拡大や新たな人材確保といった企業価値の向上を目指しやすくなるでしょう。

また、企業価値の向上は、企業が持続的に成長していくために不可欠なものです。ガバナンスを強化することは、ただ組織の不祥事を防ぐだけでなく、事業展開の可能性を広げることにもつながります。

ガバナンス強化の方法

ガバナンス強化には、コンプライアンスの徹底やリスク管理、内部監査の実施など、いくつかの方法があります。ここでは、具体的な方法を5つピックアップしてご紹介します。

ガバナンス強化の方法

コンプライアンスの徹底

コンプライアンスとは、国が定める法令を遵守することです。ガバナンスと似た意味で使われやすい言葉ですが、ガバナンスは不正が起きないように企業を統制する取り組みを指すため、コンプライアンスの徹底はガバナンスを強化する手段のひとつといえます。

とはいえ、企業経営を行ううえで法令を守ることは大前提です。ただ法律に従うのではなく、自らを統治し、不正が起こらないように組織をコントロールしなければなりません。従業員全員がコンプライアンスを徹底できるように行動規範を定めたり、研修を行ったりするなどの対策を取り入れるとよいでしょう。

リスクの管理

行動規範をマニュアル化したり、コンプライアンス強化の研修を行ったりなど、ガバナンス強化のための取り組みを行ったとしても、不正や不祥事の発生を100%防げるわけではありません。また、大規模な自然災害や事故といった外的な要因で、経営が行き詰まってしまう可能性もあります。万が一、それらが発覚してしまったときのことを考慮して、リスクマネジメントを実施することが大切です。

リスクマネジメントとは、起こりうるリスクをあらかじめ予測し管理することです。あらかじめリスクの洗い出しや重要リスクの選定、有事における規定の策定などを行い、トラブルが発生したときの損害が最小限で済むように準備しておくとよいでしょう。

内部監査の実施

内部監査とは、社内の担当者が会計や情報システム、ISO規格などを監査するものです。普段経営に関わっている人材がそのまま担当するのではなく、多くの場合は内部監査のために独立した部門を設置します。経営陣やその関係者などが監査を行うと、公平性を欠いてしまい、客観的な判断ができない場合があるからです。

また、社外監査役を設置し、より徹底した監督・検査を実施している企業も少なくありません。第三者視点で企業の不透明性を指摘できるため、株主や投資家、世間からの信頼感を高められる効果が期待できます。

内部統制の整備

内部統制とは、業務の適正性を確保するために、組織内でルールや規定を定めることです。不正や不祥事を防ぐために、仕組みやマニュアルなどを定めている企業は多いでしょう。しかし、それらが機能していなかったり、内容に不備があったりしては意味がありません。「ルールの内容は適切か」「ルールに則った業務が行われているか」などを今一度見直すとよいでしょう。

また、内部統制の構築後は、それらを従業員や経営層に周知し、徹底することが大切です。適用後も、規定が有効な状態を保てているかを定期的に確認しましょう。

社内意識の醸成

ガバナンスは経営層だけでなく、企業に属するすべての人に影響を及ぼすものです。一人ひとりがコンプライアンスを守り社内のルールに従うためには、ガバナンスに対する社内意識を高めることが大切です。定期的に研修や教育を行い、ガバナンスを守ることの大切さや意義、そのために必要な取り組みなどを啓蒙しましょう。ただ規定を押しつけるのではなく、目的や理由を含めて説明することで、従業員が自主性をもってルールに従うようになります。

ガバナンス強化に役立つツール

GRCツールや経費精算システム、ワークフローシステム、ERPなどを活用することで、効率的にガバナンス強化を実現できます。ここでは、それぞれのツールの特徴や機能などをご紹介します。

GRCツール

GRCとは、「Governance(ガバナンス)」「Risk(リスク)」「Compliance(コンプライアンス)」の頭文字を取ったものです。GRCツールとは、それらを実現するシステムのことで、リスク管理やコンプライアンス管理、内部監査、内部統制などにまつわる機能を備えています。

GRCツールを活用することで、ガバナンスに関する情報を一元的に管理できます。また、発見されたリスクが経営に与える影響を予測したり、対処までのプロセスを迅速化したりする機能をもつものもあり、リスクマネジメントの精度を高める効果が期待できます。

経費精算システム

DXやペーパーレス化の促進などの目的も多いものの、近年は不正を防止する目的で経費精算システムを導入する企業も増えています。紙資料で経費を管理すると、情報の蓄積や検索などが難しく、不正の原因になることがあるからです。経費精算システムは、経費にまつわる情報をデータで管理するため、不正申請を防ぐ効果が期待できます。

経費精算システムの機能はメーカーによって異なりますが、なかにはデータの修正・削除の記録が残るものや、出張での宿や交通機関を一括で予約できるものなどもあります。予約の履歴や利用データをそのまま経費申請に反映できるものなら、より不正を防止しやすいでしょう。

ワークフローシステム

ワークフローシステムとは、業務の流れや必要な手続きなどを可視化できるものです。業務フローを明確にし、決められた手順に沿って業務が行われているかを確認できるため、不正を防げるだけでなく、ガバナンスに対する意識を高める効果も期待できます。

また、手間がかかりやすい承認業務をシステム化するため、未承認の契約書を送信してしまったり、誤った手順で契約が進行してしまったりするのを防ぐ役割もあります。

ERP

ERPとは「Enterprise Resource Planning」を略したもので、「統合基幹業務システム」や「基幹システム」と呼ばれることもあります。メーカーによって機能は異なるものの、会計管理システムや販売管理システム、生産管理システム、在庫購買管理システム、人事給与システムなどを統合したものが多く、それらの情報を一元的に管理できます。

ERPは、部門や組織をまたぐ情報をひと目で把握・管理できるため、情報を透明化し、監視しやすくなるメリットが期待できます。また、組織や部門間の情報共有を容易にし、業務効率を向上する効果も見込めます。

まとめ

ガバナンスとは、企業が法令に違反したり不正を働いたりしないように、組織を統治する働きのことです。とはいえ、企業経営を行ううえで法律を守ることは大前提です。企業は、ただ規則に従うだけではなく、株主や投資家、取引先、顧客、従業員などにより多くの利益を還元できるよう、信頼感を高めていく必要があります。

ガバナンスを強化するうえで大切なのは、適切なITツールを導入し、効率的に情報を管理することです。組織や部門をまたぐ情報を一括で管理できるERPの導入によって、効果的にガバナンス強化の仕組みを構築できます。企業価値を向上したい人や、企業の信頼性を高めたい人などは、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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