属人化とは? 原因やメリット・デメリット、解消方法を解説

 2023.06.08  クラウドERP実践ポータル

新入社員、新規配属の方必見!ERP入門特集

「この仕事はあの人にしか任せられない」「その案件に関してはあの人に聞かないと全然わからない」といった状況を経験したことはないでしょうか。もし身に覚えがあるのなら、それは職場で「属人化」が生じている兆候です。

この記事では、属人化の定義や起こる原因、そしてそのリスクやデメリットについて詳しく解説します。併せて、属人化を解消する具体的な方法も紹介するので、ぜひご参考にしてください。 

属人化とは? 原因やメリット・デメリット、解消方法を解説

属人化とは?

属人化とは、業務プロセスやそれに関する情報が、特定の社員にしかわからないことを指します。要するに、「この仕事はあの人にしかできない/わからない」というように、業務の成否が個人へ極端に依存した状態のことです。逆に、特定の個人に依存せず、組織的に業務遂行ができる状態に改善することを「業務の標準化」といいます。

属人化が生じていると、その社員が急に休んだり退職したりした際、業務が滞りがちです。また、そのような状況では組織的な管理やサポートが行き届かないので、何かトラブルが生じた際も、発見や対処に遅れが生じやすくなります。内部不正などの温床になることも無視できません。

上記の通り、属人化は企業にとって非常に不健全な状態であり、さまざまなリスクをもたらします。

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属人化が起きる原因

属人化を防ぐためには、なぜこうした現象が起きてしまうのか、そもそもの原因を知ることが不可欠です。根本的な原因を特定し、それを排除しなければ、その場しのぎの対処しかできません。そこで以下では、属人化が起きる代表的な要因を紹介します。

業務過多による共有不足

まず挙げられるのが、業務過多によって情報共有する余力が社員にないことです。膨大な量の仕事に追われていると、社員は情報の共有・管理をするよりも目の前の問題への対処を優先せざるを得ません。たとえ部下や後輩社員の教育・指導を任されたとしても、「見て覚えろ」と言うだけの不十分な対応になりがちです。

こうした結果、情報共有や業務の引き継ぎなどがおろそかになり、属人的な状況が形成されます。この問題に対応するには、業務の効率化やスリム化、人員の増員や配置の見直しなどの組織的な施策を通して、社員の業務負担を減らすことが必要です。特にスタートアップ企業や中小企業などでは、人手不足により各社員の業務負担が過大になりがちなので注意するようにしましょう。

業務の専門性の高さ

業務の専門性の高さも原因となります。高度なスキルや専門知識が求められる業務は、その知識や経験を持つ担当者が1人で抱えこんでしまいがちです。また、デザインなどの独創性が求められるクリエイティブな職種では、属人化はむしろ肯定的に捉えられがちかもしれません。しかし、個人のスキルや才能に依存した構造では、例えばそのデザイナーが独立したときに大打撃になりかねないと認識することは重要です。

たとえ「スペシャリストにしかできない仕事」や「創意工夫が求められる仕事」であっても、業務の手法や工程の共有などがチーム内でされているなら、特に問題ではありません。個人の知識やノウハウを組織として共有・体系化していく必要性を、経営層から現場まで全員が強く意識することが重要です。

情報共有の仕組みが整っていない

情報共有の仕組みが未整備な状態は、属人的な職場環境によく見られる特徴です。たとえ当人が情報共有したいと考えても、共有する仕組みが組織的に構築されていないと、実践することは難しくなります。何を・どこまで・どのように伝えるかの判断基準が個人に依存してしまうと、情報の抜け漏れなども発生しやすくなりますし、情報共有の範囲も自然と狭くなりがちです。

また、業務で必要なスキルやノウハウの中には、言葉にしにくい「暗黙知」もあります。いわゆるコツやカンを要する業務です。こうした知識を他者に伝えるのには一定の難しさがあるため、本人に共有や教育の意欲があってもスムーズにいかない事態が生じやすくなります。

この問題に対処するには、情報共有を意識したコミュニケーションの活性化や、情報発信の仕組みづくりが必要です。具体的には、マニュアルの作成や、指導者側へのサポートも含めた研修・教育体制の整備などが重要になります。

属人化のリスク・デメリット

ここまでにも触れてきたように、属人化は企業へ多くの問題を生じさせます。これらの問題をなくすには、以下のような難点が属人化に付随することを認識し、全社的に問題意識を高めることが大切です。

業務効率が低下する

属人化している状況では、業務の手順も方法もその担当者次第ということになります。たとえそこに何か無駄な要素やトラブルの火種が潜んでいたとしても、他の人にはわかりませんし、十分なフォローもできません。この問題が特に顕在化するのは、その担当者が不在のときです。

例えば、その担当者が急に休職や退職をすることになった場合、その人の穴埋めをすることは非常に困難になります。客先から問い合わせがあっても何も答えられず、自社への信頼性を損ねることもあるかもしれません。また、他の社員による業務の代替やサポートができないことは、「その担当者は忙しいのに他の社員は手が空いている」というような、全体の人的リソースの非効率性にもつながります。

品質管理ができない

業務の手順や方法の共有・統一が組織化されていなければ、均一な品質管理を行うことも不可能です。業務の仕方や顧客対応などが各担当者の個人的なスタイルや判断基準に依存すれば、製品やサービスの品質にバラツキが生じ、顧客満足度の低下や不具合の発生リスク増大につながりかねません。

また、ミスやトラブルの予防措置も取りにくくなるため、不具合や不正などの発見が遅れ、重大な事故や不祥事に繋がってしまうリスクもあります。属人化対策に取り組むことは、適正な品質管理を実現する上でも重要です。

退職により業務が不安定になる

先述のように、属人化によるリスクは担当者の退職時に顕著に現れます。属人化によって業務に関する知識や情報が個人に集中していると、担当者の退職と共にそれらの資産も自社から失われてしまいます。

担当者が変わるたびに業務プロセスをゼロから再構築しなければいけないとしたら、これは非常に無駄の多いことです。再構築しようとしても、それが不可能なこともあるかもしれません。そうなれば、業務やその成果の再現性を確保するのは困難になり、事業の継続そのものの脆弱性につながります。

長時間労働につながる

長時間労働につながることも見逃せない危険性です。属人化によって周囲からのフォローを得られなくなると、特定の個人に対して業務負担が集中してしまいます。ここからさらに生じてくるのが、過度の長時間労働や、生産性の悪化、モチベーションの低下などです。劣悪な労働環境は職場の雰囲気を悪くし、最終的には高い離職率の原因にもなります。

先述の通り、属人化の要因の中には業務過多があるので、常態的な長時間労働は属人化の結果であると同時に原因として捉えることも可能です。したがって、両問題へ対処する場合には一体的に取り組む必要があります。

属人化を防ぐべき業務

属人化の防止・解消は、優先順位をつけて取り組んでいくことが重要です。

バックオフィス業務

バックオフィス業務は、経理・人事・法務・総務など、企業の円滑な組織運営を支える重要な業務です。取引先との契約の管理や、売上や支払いの出入金処理にも深く関与しているため、担当者によって業務の仕方やルールが異なると、社内のみならず取引先との関係にも多くの問題が生じる可能性があります。

このようなバックオフィス業務は一定の手順や規則に従ってシステマティックに対応すべき仕事の代表例です。業務の標準化を実現するためには、マニュアルの作成や規則及びシステムの整備、情報共有の徹底などを図ることが重要です。

トラブルシューティング・インシデント対応

顧客対応のトラブルシューティングは、迅速かつ正確な対応が求められる重要な業務です。初動対応が遅れたり、対応が一貫していなかったりすると、被害はますます拡大し、顧客満足度の低下や企業イメージの悪化につながる可能性があります。

また、ICTへの依存度が高まっている現代のビジネス環境において、システム関連のトラブルは、業務やサービスそのものの停止を招きかねない大きな問題です。トラブルシューティングやインシデント対応にあたっては、組織全体で情報共有し、徹底した統制をすることが重要です。

自社製品・サービスの説明

自社製品やサービスの説明やサポートは、ブランドイメージ形成や顧客満足度に直結します。自社の製品・サービスに対する認識や説明の仕方が企業として統一されていないと、情報の受け手である顧客の混乱や不信を招きかねません。

顧客に対して一貫した情報を提供するためには、営業・マーケティング・カスタマーサポートなど部門の違いを超えて、どの社員が対応しても同じ回答ができるようにする必要があります。それに向けて、社内の関係部門間のコミュニケーションや情報共有を強化することが重要です。

業務・プロジェクトのフロー

業務やプロジェクトのフローには、スムーズな進行と統一性が求められます。これらができていないと、管理職の進捗管理も困難になり、問い合わせ対応やプロジェクト進行などで社員ごとに進め方や手順が異なるような場面もさらに増えてしまうかもしれません。

業務やプロジェクトのフローを属人化から解放するためには、共通の進め方や手順を確立することが重要です。コミュニケーションの強化やプロジェクト管理ツールの活用などを通じて、業務フローの可視化や共有化を進め、業務フローの統一性と透明性を確保するようにしましょう。

属人化解消のメリット

属人化は職場における従業員のスペシャリティ(特別性)にも結びついているため、当事者がその解消に後ろ向きの姿勢を示すことも考えられます。そのようなとき、先述のリスクやデメリットと共に、「属人化がなくなると職場がこのように良くなる」というビジョンを明確に示すことで、関係者の協力を得やすくすることが可能です。そこで以下では、属人化を解消するメリットを解説します。

業務効率が改善される

属人化が解消されると、業務の適切な手順や方法について組織的な検討を行えるようになり、業務効率の改善もしやすくなります。担当者1人では気づけなかった課題や改善点も異なった視点から発見し、業務プロセスを最適化できます。周囲によるサポート体制なども整備することで、業務負荷の分散や業務の代行ができるようになるため、担当者の多忙・不在時にも業務を停滞しにくくすることが可能です。

品質の維持や向上につながる

属人化が解消されると、業務の品質管理や進捗管理が実施しやすくなるため、品質の維持・向上につながります。業務が標準化され、チェックすべきポイントや品質基準が明確になれば、担当者ごとに業務品質に大きなバラつきが出るような事態を最小限に抑えることが可能です。たとえ担当者が不在でもマニュアルに沿って代行できれば、業務の質が大きく落ちることはありません。

ノウハウを蓄積できる

属人化を解消する際には、個人が経験した知識や技術などを社内で共有する仕組みづくりがなされます。それが実現されれば、経験豊富な社員のノウハウがチーム全体に浸透し、新入社員や異動してきた社員にも素早く業務を引き継ぐことが可能です。これにより、組織全体の生産性向上やチームワークの強化などを期待できます。

従業員の休職・退職にも対応できる

属人化の解消は、業務の知識や情報の共有をもたらすため、社員の休職や退職にも柔軟に対応可能です。情報がマニュアル化されていれば、引き継ぎ作業を円滑に行い、業務の滞りやリスクを軽減できます。退職や休職による人員の変動に際しての混乱を抑制することは、安定した組織運営を実現するために非常に重要な要素です。

属人化を解消する方法

現状の把握と分析

最初に必要なのは、現状の把握と分析です。自社の業務を洗い出し、どこに属人化や業務負担の偏りが生じているのか、詳細に分析しましょう。既存のマニュアルやルールに不足している部分がないか、実態から乖離していないか点検することも重要です。

業務の棚卸に関しては、管理者など上の視点からだけでは見落としが起こりやすい部分もあります。そのため、情報を集める際には現場の担当者へのヒアリングも積極的に行い、属人化の具体的な要因や影響範囲を明らかにしましょう。

手順書・マニュアルの作成

現状把握ができたら、手順書やマニュアルの作成に取り組みます。その業務に疎い社員でも理解できるように、具体的かつわかりやすい言葉で説明することが重要です。紙のマニュアルは持ち運びの負担が大きく、情報検索の手間もかかるので、マニュアル作成ツールなどを使ってデジタル化するのも一考の価値があります。デジタルならば、動画などテキスト以外の手段で説明することが可能です。

また、マニュアル作成の労力を最小限に抑えることもポイントになります。他の業務もある中、マニュアル作成に多くの負担が生じるようでは、情報共有は結局滞り、いつのまにか属人化した状況が戻ってしまうかもしれません。マニュアルは業務プロセスの変化に伴って修正する必要があるので、継続的に更新していくことを前提に、読み手にも書き手にも簡易な作成方法を検討しましょう。

継続的にPDCAサイクルを回す

講じた施策が常に期待通りの成果を上げるとは限りません。たとえ一度は属人化を解消できたとしても、いつのまにか状況が元通りになってしまう可能性もあります。対策を講じたらそれで終わりではなく、継続的にPDCAサイクルを回す中で問題点を探し、改善していく意識が重要です。

定期的な業務の見直しやフィードバックを行うことで、業務プロセスや組織体制に変化が生じたとしても、属人化問題が再燃するリスクを減らせます。スムーズにPDCAサイクルを回せるように、施策実施後の状況をしっかりとモニタリングできる環境の整備も必要です。

ITツールを導入する

ITツールの導入も、属人化解消のために有効な手段です。ITツールは業務の効率化や情報共有をサポートし、組織全体で業務の仕組みを統一化するための基盤を提供します。属人化対策には、先述のプロジェクト管理ツールやマニュアル作成ツールのほか、ERPツールなども有効です。

ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略称で、企業の業務全体を統合的に管理するためのツールです。ERPツールは業務の各領域を統一し、情報の一元管理や業務プロセスの標準化を実現します。例えば、財務、人事、生産管理などの業務をひとつのシステムで統合し、担当者間の情報共有やタスクの進捗管理を容易にすることが可能です。ERPの導入により、属人化の解消と業務の効率化が期待できます。

まとめ

特定の社員に依存した属人的な状況は、業務の非効率性や品質低下、業務負担の偏りなど、組織に多種多様なリスクをもたらします。属人化の解消にはITツールなどを活用しながら情報共有の仕組みを整備することが有効です。本記事を参考に、属人化のリスクをしっかり認識し、その解消に向けて取り組んでみてください。

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