連結決算とは、親会社だけでなく国内外の子会社及び関連会社を含めた、グループ全体を連結した決算手段を意味します。新聞等でよく「連結ベースで○億円の黒字」といった文言を見かけますが、この連結ベースとは連結決算によって算出された数値を意味します。ちなみに1社の決算のみで算出される数値を「単独ベースの・・・」などと表現します。
日本で連結決算が義務付けられたのは1978年3月期からですが、当時は単独決算を重視する傾向が強く、連結決算による情報開示はほとんど行われていません。しかし、連結決算は投資銘柄を選択する上で重要な判断材料となるため、2000年3月期をもって証券取引法(現金融商取引ほう)のディクロージャー制度を大幅に見直したことで、現在では連結決算中心の情報開示となっています。

連結決算はなぜするの?
会社法や金融商取引法などは、企業としての基本的な情報開示についての記述や、投資家などの外部ステークホルダーを保護するための法令が盛り込まれています。企業は株主にとって不利益になるように情報を操作したりすることは法律違反であり、厳しく罰せられることになります。このため、連結決算によってより正確な経営情報を開示し、投資家が適切な判断を下せるような環境を整えることは至極当然でしょう。ではなぜ、グループ全体の単独決算からの数値を合算するのはなく、あえて連結決算という形で情報を取りまとめるのか。次に説明して行きましょう。
単独決算を単純に合算すると、誤って情報を伝えることが多い
親会社Aが100億円を投じて完成させたソフトウェアを、子会社Bに110億円で販売したと仮定します。契約成立や成果物の引き渡しなどいくつかの要件を満たすことで、親会社Aは110億円を売り上げとして計上します。一方、子会社Bはそのソフトウェアを外部企業へ販売することとして、このソフトウェアを資産計上したため、子会社Bでは売上も費用も発生せず、損益はプラスマイナスゼロとなりました。これらを会計にて単純に合算するとグループ全体で10億円の利益が計上されます。
親会社Aと子会社Bの単独決算を単純に合算した連結決算 |
|||
---|---|---|---|
売上高 |
売上原価 |
利益 |
|
親会社A |
110億円 |
100億円 |
10億円 |
子会社B |
0円 |
0円 |
0円 |
単純合算 |
110億円 |
100億円 |
10億円 |
しかしながら、子会社Bはグループ外の企業に対してソフトウェアを販売し利益を出したわけではないので、グループ全体として利益ではなくプラスマイナス0になることは明白です。このような問題を生まないためにも、連結ベースの数値では「グループ間の取引は無かったものとする」という調整を行わなければいけません。
具体的には売上高と売上原価を相殺し、商品に付した利益を消去します。上表で説明すると、単純合算では利益が10億円出たとしても、調整過程において商品に付した利益の消去を行うので、結果利益は0円になります。
親会社Aと子会社Bの単独決算を単純に合算した連結決算 |
|||
---|---|---|---|
売上高 |
売上原価 |
利益 |
|
親会社A |
110億円 |
100億円 |
10億円 |
子会社B |
0円 |
0円 |
0円 |
単純合算 |
110億円 |
100億円 |
10億円 |
調整 |
△110億円 |
△90億円 |
△10億円 |
連結ベースの合算 |
0億円 |
0億円 |
0億円 |
このように、単独決算を単純に合算するのではなく、連結決算によって調整を加えた上で情報を開示しなければ、グループ間の売買も利益に含まれてしまいます。また、単独ベースの決算数値も同様に子会社等に販売した利益が計上されてしまうため、国内外に子会社や関連会社を持つ企業は、連結決算にて決算報告を行う義務があるというわけです。
親会社と子会社・関連会社の判断基準
上場企業の多くは子会社や関連会社を持ち、連結決算によって経営状況の報告を行っています。では、親会社と子会社や関連会社はどのような判断基準によって決まっているのでしょうか?
親会社と子会社の定義
親会社とは、「他の企業の財務及び営業または事業の方針を決定する機関(株主総会とそれに準ずる機関、いわゆる意思決定機関)を支配している企業を指します。一方、子会社とは親会社の定義に記されている「他の企業」ということになります。
一般に、他の企業の株式を50%以上保有しているとその企業の支配権を握っていると判断し、親会社と子会社の関係が成立します。ただし、株式保有率が50%未満だからといって関係が成立しないわけではありません。上場企業の場合は、株式の保有率が20~30%程度だとしても、実質的に支配権を持っていると判断する場合が多いでしょう、さらに低い株式保有率でも親会社と子会社の関係が成立するケースがあり、主に次のような要件を設けています。
他の企業の株式の保有率 |
他の企業を支配していると判断される基準 |
---|---|
50%超(過半数) |
他の企業の株式を過半数、自己計算において保有している |
40~49% |
他の企業の株式40~49%を、自己計算において保有している |
0~39% |
他の企業の株式0~39%を、自己計算において保有している |
このように、他の企業の株式を過半数保有していない場合であっても、他の企業の親会社と判断されるケースはあります。上表内に記してある「一定の条件」を簡単にご紹介します。
- 条件1. 密着社、同意者の株式
親会社となる企業の役員が所持している当該企業(子会社と判断される企業)の株式数の過半数を占めている
- 条件2. 役員、使用人の関係
親会社となる企業の経営者や役員が当該企業の役員として在籍しており、経営意思決定機関の構成員の過半数を占めている
- 条件3. 契約関係
親会社となる企業が当該企業の財務や営業、あるいは事業方針の決定を支配するような契約が存在する
- 条件4. 資金関係
親会社となる企業が当該企業の資金調達額の総額に対し過半について融資している
- 条件5. その他の事実関係
その他、他の企業の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在する
連結決算がシステムに及ぼす影響
ここまで会計の基本知識として連結決算の概要をご紹介しました。では、こうした連結決算が企業のシステムに及ぼす影響とは何でしょうか?
グループ間の取引を無かったことにするためには、まずその取引金額が明瞭になっている必要があります。親会社・子会社間ではもちろんのこと、子会社同士の取引において相手先別明細で消去対象となる取引金額を把握できなければいけません。さらには、グループ全体で取引金額の全体像を正確のとらえる必要があり、全体を通じて売上高や売上原価、取引先との関係を表すためのシステムが欠かせないでしょう。
こうした連結決算を楽にしてくれるシステムがERP(Enterprise Resource Planning:エンタープライズ・リソース・プランニング)やEPMです。特にクラウドタイプのERPやEPMはインターネットベースでグループ全体が容易に接続できるため、親会社が子会社や関連会社の会計情報を俯瞰しながら、連結決算に向けた調整が行えるようになります。連結決算を必要とする際は、ぜひERP、EPM導入をご検討ください。
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- 経営/業績管理
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