プライシングとは?基本的な考え方から価格調査の方法まで完全網羅!

 2023.05.23  クラウドERP実践ポータル

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適切な価格設定を行うことは、企業にとって非常に重要かつ難解な課題です。市場の需要、競合の価格、消費者の心理など、多種多様な要素を複合的に考慮しないと、安定的に利益を出していくことはできません。そこで本記事では、プライシング(価格戦略)の基本的な考え方や目的、適正な価格設定をするための戦略について解説します。

プライシング(価格戦略)とは?目的や戦略などの基本知識を解説

プライシングとは

プライシング(価格戦略)とは、製品やサービスを販売する際の価格を設定することです。製品やサービスの価格は売上や利益率、競合への優位性、消費者の需要など、多くの事柄に影響を及ぼします。そのため、プライシングがマーケティングにおいて担う役割は非常に重要です。

そもそも価格は、マーケティング戦略を立案するとき、最初に決定すべき4要素「マーケティングミックス(4P)」のひとつに数えられます。価格(Price)以外の3要素は、製品(Product)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)です。効果的なマーケティング戦略を立てるためには、これらの要素をバランスよく調整することが必要とされています。

したがって、プライシングを行う際も、価格面だけを考えて検討するのではなく、マーケティングミックスの他の3要素との整合性を考えることが重要です。後述するようにプライシングの方法にはさまざまな種類がありますが、いずれにしても適切な価格設定をすることは製品やサービスの成功に大きく影響するため、慎重に検討しなければいけません。

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プライシングの目的

売り上げ・利益の最大化

売上ないし利益の最大化は、プライシングの大きな目的のひとつです。製品・サービスの価格が高すぎるという印象を与えてしまうと、顧客に購入してもらうことはできません。かといって、価格設定を安くしすぎると、十分な利益を得ることは困難です。

そのため、プライシングにおいては、顧客が納得を得つつ着実に利益も出せる価格を設定する必要があります。もちろんその際は、製品・サービスを生産・提供するためにかかる諸々のコストを考慮することが欠かせません。利益を最大化するために高すぎも安すぎもしない価格を設定することは、単純なようでいて非常に複雑な分析が必要とされる仕事です。

製品・サービス価格の安定化

製品やサービスの価格を一定に保ち、安定的な収益を得られるようにすることもプライシングの目的のひとつです。例えば、従来よりも価格を大幅に上げると顧客に割高感を与えてしまい、顧客離れにつながりかねません。他方で、価格を下げたら下げたで、「あまり人気がないのか」「品質が悪いのではないか」などの疑念を持たれてしまうリスクがあります。

また、価格が不安定に変動していると、「もう少し待てば安くなるのではないか」「いま買ったら損するのではないか」と顧客が購入タイミングを見極めづらくなり、やはり売上に悪影響が出がちです。自社にとっても、価格を安定的に設定できないと、財務的な見通しが困難になります。そのため、プライシングは市場動向なども見極めつつ、長期的な観点で行うことが必要です。適切なプライシングによって価格の安定化が可能になれば、消費者に安心感や信頼感を与え、継続的な取引をしやすくなります。

市場シェアの維持・拡大

市場シェアの維持や拡大を狙うのもプライシングにおける重要な目的のひとつです。利益を増大させるには、市場シェアを拡大することが重要です。製品の単価は大量生産したほうが下げやすく、シェアが増えると、利益率が上昇することも期待できます。そのため、プライシングでは、市場の将来性や需要の変化なども考慮しなければいけません。

競合への対応

プライシングは、競合他社に対する優位性を確保するためにも重要です。例えば、他社が競合製品の値下げを行った場合、市場シェアを奪われてしまう恐れがあります。これに対応するためには、自社のほうでも製品価格の変更を行うことを検討しなければいけません。あるいは、「競合他社が安さを売りにしているから自社は高級志向で勝負する」など、競合との差別化をするためにもプライシングは重要です。それゆえ、プライシングにおいては、競合他社の価格設定や価格変動を継続的にチェックすることが欠かせません。

目標利益率の達成

企業が製品開発などで巨額の投資を行った場合、その投資額を回収するために目標利益率の達成が最優先課題となる場合があります。このとき、目標利益率を達成するために必要な回収費用を決定するのもプライシングの目的のひとつです。ただし、目標利益率のみを視野に入れていると、市場の需要や競合との関係を無視することになりかねません。消費者心理や市場状況を考慮しながら、最適な価格を設定していく必要があります。

プライシングの考え方

プライシングを行う際には、「コスト志向型価格設定」「需要志向型価格設定」「競争志向型価格設定」「心理的価格設定」のいずれかをベースに適正価格を考えるのが一般的です。

  • コスト志向型価格設定
    商品やサービスを提供するためにかかる生産コストや販売コストなどを基に、適切な価格を決定する方法です。コストを回収するのに必要な最低限の価格を割り出し、そこに利幅を加算して価格設定を行います。

  • 需要志向型価格設定
    消費者のニーズに注目して価格を決定する方法です。例えばホテルが観光シーズンに宿泊料を上げるのも、季節ごとに変動する消費者の需要に注目してのことであると考えられます。

  • 競争志向型価格設定
    競合他社の価格設定を意識して価格を決める考え方です。例えば、内容や品質が同等のサービスなら競合の価格と同じか、それより低い価格に設定して消費者に選ばれやすくすることなどが挙げられます。

  • 心理的価格設定
    消費者心理を考慮して価格を決める方法です。消費者は、機能や性能に大差がなくても、有名ブランドの製品により高いお金を出しやすい傾向があります。また、実際には20円しか違わないのに、2,000円と1,980円とでは、心理的なイメージが随分異なるものです。心理的価格設定では、こうした消費者心理を計算に入れます。

プライシングを用いた戦略の種類

プライシングを用いたマーケティング戦略には、「スキミングプライシング戦略」「ペネトレーションプライシング戦略」「ダイナミックプライシング戦略」の3つがあります。

スキミングプライシング戦略

スキミングプライシング戦略とは、新製品や新サービスを導入する際に、高価格で市場に参入し、早期の資金回収を狙う方法です。スタートダッシュ後は市場の成長や時間の経過に伴って、価格を徐々に引き下げていきます。この方法は、製品・サービスの「新しさ」に価値を感じる消費者を狙った戦略として、高い効果が期待できます。ただし、価格を強気に設定しすぎて消費者に受け入れられないリスクや、より安価な競合製品が登場する可能性なども考慮に入れる必要があります。

ペネトレーションプライシング戦略

スキミングプライシング戦略とは対照的な戦略が、ペネトレーションプライシング戦略です。この戦略では、市場シェアの拡大を見込んで、あえて低価格帯で市場に参入します。低価格で製品・サービスを提供することで、消費者の需要を喚起し、一気に大量の顧客を獲得することが狙いです。多くの顧客を得られれば、大量生産による利益率の改善が可能になるので、低価格に設定しても資金を回収できます。もちろん、他分野からの技術転用などで開発コストを安くできる場合もこの方法は有効です。ただし、想定通りに顧客を獲得できなかった場合には大きな損失が出るリスクもあります。

ダイナミックプライシング戦略

製品・サービスの価格を状況にあわせて小まめに変える方法です。スーパーマーケットにおけるお惣菜の値引きや、観光業におけるオンシーズン・オフシーズンの価格差などが例として挙げられます。状況の変化に応じて柔軟に利益を最大化できるほか、注文数や来客数を調整するためにもこの方法は効果的です。ただし、価格が頻繁に変動することに対して顧客が不信感を抱くことや、通常の価格(あるいは高くなった価格)に対して顧客が割高感を感じるリスクもあるのでご注意ください。

プライシングの分析方法

プライシング戦略の策定で用いられる主な分析手法としては、「ポケットプライス分析」「PSM分析」「価格弾力性分析」「コンジョイント分析」が挙げられます。以下では、それぞれの手法の特徴を解説します。

ポケットプライス分析

企業が実際に得ることができる利益を考慮して、適正価格を分析する手法です。具体的には、企業が売上高から差し引くべきコストや費用、マージンなどを考慮し、実際に企業の「ポケット(口座)」に入ってくる利益の実態を計算します。この分析手法を活用することで、商品ごと、取引先ごとなどに詳細なコストを明らかにし、適切な価格の設定が可能です。

PSM分析

PSM分析は、消費者の感じる費用感に基づいて適正価格を算出する方法です。具体的には、対象商品について、「安いと思う価格」「安すぎて品質が不安な価格」「高いと思う価格」「高すぎて買わない価格」の4つを消費者に自由記述してもらいます。これによって、消費者が納得しやすい価格帯を調べることが可能です。ただしPSM分析は消費者が対象製品の一般的な相場感を把握しているのが前提になるので、専門性の高い製品、一般的な相場から著しく価格帯がずれる製品の価格を決める方法としては向いていません。

価格弾力性分析

 
価格弾力性分析とは、価格の変化に応じて消費者の需要がどの程度変化するかを経済的に分析する手法です。価格の引き上げ/引き下げに応じて需要量がどれくらい変化するのか数量的に把握することで、価格設定の効果を事前に予測し、最適な価格設定を行いやすくなります。この分析手法は利益の最大化を狙ったり、価格の見直しに伴うリスクを回避したりする上で非常に重要です。

コンジョイント分析

コンジョイント分析とは、製品の価格、機能、デザインなどの要素を変えることで顧客の購買活動にどのような変化が現れるか定量的に分析するための手法です。コンジョイント分析は、顧客がどのような要素を重視して購入する製品を選択するかの把握と、売上や販売数量の予測に役立てられます。

まとめ

適正な価格設定を行うためには、コストの回収、市場の需要、競合との比較、消費者の心理など、いくつもの要素を計算に入れることが重要です。そのため、プライシングにおいては、さまざまなデータに基づいて詳細な分析を行うことが欠かせません。

そのとき非常に役立つのが、ERPです。ERPを活用し、価格レベルや顧客/通貨ごとの価格、取引レベルでの粗利益分析を行うことで、価格戦略の有効性を確認できます。効果的なプライシングを実施するために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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