生産性向上のメリットや取り組み例のほか押さえたいポイントやツールも紹介

 2023.02.09  クラウドERP実践ポータル

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企業にとって生産性の向上は、非常に重要な経営課題のひとつです。生産性を高めるためには、その重要性や具体的な取り組み方などを理解しなくてはなりません。本記事では、現代の企業経営で生産性向上が求められる背景について解説するとともに、生産性を高めるメリットや押さえるべきポイントなどをご紹介します。

生産性向上の重要性

生産性とは、人的資源や物的資源、あるいは資金といった経営資源の投入量に対する産出量を定量化した指標です。簡単にいえば、インプットに対するアウトプットの比率であり、「生産性=産出量÷投入量」という数式で算出されます。そして、産出量と投入量にほかの要素を代入することで、さまざまな観点から生産性の測定が可能です。たとえば、投入量の値に労働者数や労働時間を代入することで労働生産性が算出され、従業員1人あたりが生み出した生産量や付加価値額などを定量化できます。

  • 生産性=産出量÷投入量
  • 労働生産性=産出量÷労働投入量(労働者数×労働時間)

近年、生産性向上の重要性が叫ばれている背景にあるのは、国内全体における労働力の減少です。国内では総人口の減少と高齢化率の上昇が加速しており、生産年齢人口は1995年を頂点として下降に転じています(※1)。このような社会的背景から、さまざまな分野で人材不足が深刻化しているのが国内の現状です。さらに、現代はデジタル技術の進歩に伴ってグローバル化が加速しており、国際競争力の強化が求められているため、国内企業では生産性の向上が重要な経営課題となっています。

(※1)参照元:令和4年版情報通信白書|総務省

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生産性向上に取り組むメリット

企業が生産性向上に取り組む主なメリットは、以下に挙げる4点です。

人手不足対策になる

少子高齢化が加速する現代市場のなかで、優れた人材を獲得することは容易ではありません。就業者の高齢化と若手就業者の減少が進むなか、従来と同等以上の成果を創出するためには、生産性の向上が不可欠です。そして、それには既存の業務を見直して無駄をなくす、デジタル技術の活用によって省人化を推進する取り組みが求められます。

こうした施策を通じて生産性を向上できれば、限られた人的資源を活用しつつ、従来と同等以上の成果を創出できる可能性が高まります。

競争力を高められる

先述したように、現代はテクノロジーの発展とともにグローバル化が加速しており、国内だけでなく国際市場における競争優位性の確立が重要な経営課題となっています。そこで必要となるのが、デジタル技術の活用による経営改革「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進です。AIやIoT、クラウドコンピューティングなどのデジタル技術を戦略的に駆使し、組織全体における生産性を向上できれば、国際競争力の総合的な強化につながります。

コストを削減できる

企業にとって重要な経営課題のひとつは、利益の最大化です。そして、利益を最大化するためには、売上高を向上するとともに、人件費や固定費、消耗品費、福利厚生費といったコストの削減が求められます。

作業工程の見直しやデジタル技術の戦略的活用によって、既存の業務を省人化できれば、生産性の向上だけでなく人件費や福利厚生費の削減につながります。また、コスト削減によって浮いた資金を成長分野や生産設備などに再投資できる点も大きなメリットです。

ワークライフバランス改善につながる

企業が持続的に発展していくためには、いかにして従業員のエンゲージメントやロイヤルティを最大化するかが重要です。そのために欠かせない要素のひとつが、ワークライフバランスの充実です。

生産性向上への取り組みは、既存の労働環境を見直す一助となり、業務負荷の軽減や時間外労働の削減などに貢献します。その結果、ワークライフバランスの充実につながり、従業のモチベーションが向上することで、離職率や定着率の改善が期待できます。

生産性向上の取り組み方

生産性を向上するためには、業務プロセスの改善やマニュアルの整備、コア業務へのリソース集中、業務の自動化など、さまざまな施策を実施しなくてはなりません。生産性を向上する代表的な取り組みとして挙げられるのは、以下の7つです。

生産性向上の取り組み方

業務を可視化して改善する

生産性を向上するためには、既存の生産体制を可視化し、業務プロセスにおける無駄な作業や余計な工程などを改善しなくてはなりません。非効率的な業務プロセスを可視化し改善できれば、従来と同等のリソース投入量で、今まで以上の生産性を創出する一助となります。

ただし、経営層や管理職の意向だけで業務プロセスの改善に取り組んでも、机上の空論に終始する可能性があり、さらに現場で働く従業員の不満を募らせる要因となりかねません。したがって、トップダウン形式で変革を進めるのではなく、現場の声に耳を傾けながら、業務プロセスの改善を推進する必要があります。

業務をマニュアル化する

組織全体の生産性を高めるためには、属人的な業務プロセスを可能な限り排除しなくてはなりません。特定の技術や知識を有する従業員しか対応できない業務がある場合、その人材の休業や退職によって、生産性の大幅な低下が懸念されます。このような事態を防止するためには、特定の従業員がもつ暗黙知を形式知へと落とし込み、マニュアル化して組織全体で共有しなくてはなりません。

ベテランが備える高度な技術や知識といった暗黙知をマニュアル化できれば、属人化していた業務プロセスの標準化に寄与し、従業員一人ひとりの労働生産性の向上が期待できます。

ノンコア業務を外注化する

企業が持続的に発展していくためには、人的資源・物的資源・資金・情報などの経営資源を効率的に運用しなくてはなりません。そこで重要となるのが、利益の創出に直結しないノンコア業務の外注化です。

たとえば、資料の作成や書類の整理、請求書への対応などは、非常に重要な業務ではあるものの、それ自体が企業の利益につながるわけではありません。こうしたノンコア業務の負荷が高まるほど、コア業務に投入できる経営資源の減少を招きます。生産性を向上するためには、これらノンコア業務の外注化を推進するとともに、企業価値の向上に直結するコア業務にリソースを集中することが大切です。

人材の適性を考慮し配置する

生産性の向上に関わる重要な要素のひとつは、人材配置の最適化です。人間には誰しも得手不得手があり、一人ひとりにそれぞれ異なる特性が備わっています。人材のもつポテンシャルを最大限に発揮するためには、個々が有する能力や業務への適性などを見極めて、適材適所に配置しなくてはなりません。

従業員一人ひとりの適性を考慮し、最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整備することで、労働生産性の向上が期待できます。そのためには、従業員の性格や得意分野などを俯瞰的かつ客観的な視点から分析し、中長期的な視点に基づく戦略的な人材マネジメントが必要です。

情報共有の仕組みを構築する

組織全体の生産性を向上するうえで必須となるのが、全社横断的な情報共有の仕組み化です。デジタル化が加速する現代社会では、多くの企業が各部門に基幹システムを構築して、業務データを管理しています。しかし、こうした情報管理体制は、各部門の業務プロセスに最適化されてはいるものの、部門を横断した情報共有には適していません。

各部門の基幹システムが分断されていることで、情報のサイロ化が生じ、部門間連携や意思決定の遅滞を招く要因となります。したがって、生産性を高めるためには、ナレッジや顧客情報などを組織全体で共有する仕組みを整備しなくてはなりません。

業務を自動化する

事業活動における生産性を高めるためには、業務プロセスの自動化が欠かせません。身近な事例でいえば、Excelによるデータの集計や分類といった一連の処理を自動化するマクロを活用することで、バックオフィス系業務のヒューマンエラーを削減しつつ、作業スピードを大幅に向上できます。このような事例と同様に、定型業務やルーティンワーク、あるいは社内稟議などの比較的単純な業務領域は、ITシステムの活用によって自動化が可能です。

製造業や建設業、医療現場などでもIoTやAI、ロボティクスといった技術が普及しつつあり、業務プロセスの自動化と省人化が推進されています。

労働環境を整備する

企業の生産性を向上するためには、従業員のパフォーマンスを最大化する必要があり、それには労働環境の見直しと改善が不可欠です。日本では、古くから滅私奉公の精神を尊び、苛酷な労働環境や長時間労働に耐える姿勢を美徳とする企業が多い傾向にあります。しかし、過度な業務負荷や時間外労働の強要は、従業員の身心を疲弊させ、結果として労働生産性の大幅な低下を招く要因となりかねません。

このような事態を回避するためには、長時間労働や違法な残業を是正する企業文化の醸成に取り組むとともに、従業員の能力を適切に評価する公平かつ公正な人事評価制度の確立が求められます。

生産性向上において押さえたいポイント

生産性の向上に取り組む際は、いくつか押さえるべきポイントが存在します。なかでも重要度の高いポイントとして挙げられるのが、以下の5点です。

長時間労働に気を付ける

2018年6月に「働き方改革関連法」が参院本会議で成立し、一部の例外を除いて2019年4月より時間外労働の罰則付き上限規制がスタートしました。それにより、国内ではさまざまな分野で労働環境の抜本的な変革が求められています。

生産性向上を目指すあまり過度な時間外労働を強いては、罰則の対象となることはもちろん、従業員のエンゲージメントやロイヤルティの低下をも招きかねません。そうなれば労働生産性の低下につながるだけでなく、離職率や定着率の悪化を招く要因となり、人材不足の深刻化によって組織の存続自体が危ぶまれます。したがって、企業が中長期的に発展していくためには、働き方改革に基づく新しい時代に即した労働環境の構築が求められます。

マルチタスクになり過ぎないようにする

最小限の人的資源で最大限の成果を創出しようとする場合に陥りがちなのが、過度なマルチタスクです。冒頭で述べたように、生産性は経営資源の投入量に対する産出量の比率となるため、いかにして最小のリソースで最大の成果を生み出すかが重要です。そのため、より少ない人的資源の投入量でより大きな成果を創出すべく、1人の従業員が複数の業務を担当するケースが少なくありません。

しかし、過度なマルチタスクは集中力や判断力の低下につながり、かえって労働生産性を下げる要因となります。生産性を向上するためには、従業員の労働量を増やすという方向性ではなく、既存の業務プロセスを効率化して省人化を推進することが大切です。

広い視野をもって考える

事業領域における生産性向上を推進する際は、個人や部門といった部分最適で考えるのではなく、組織としての全体最適を考慮した戦略を策定する必要があります。

たとえば、DXの推進を目的としてAIやIoTなどの最先端テクノロジーを導入しても、それだけでは単なるIT化に過ぎません。大切なのは、最先端のテクノロジーを導入することそれ自体ではなく、そうしたデジタル技術を活用して経営体制に変革をもたらし、競合他社との差別化を図るとともに、市場における競争優位性を確立することです。

インプットのみにフォーカスするだけでなく、アウトプットにも目を向け、広い視野をもって生産性向上に向けた戦略を立案・策定する必要があります。

目標を設定して取り組む

生産性向上への取り組みを推進する際は、明確な目標を設定しなくてはなりません。たとえば、目的地を定めることなく航海に出れば遭難が必至であるように、事業活動においてもゴールへ安全かつ確実に到達するためには目標を設定し、逆算的な思考に基づいて事業計画を策定する必要があります。

そのため、最終的な目標を意味するKGI(Key Goal Indicator)と、その中間目標となるKPI(Key Performance Indicators)を設定し、ゴールへ至るプロセスを可視化することが大切です。その際は、「Specific(具体的)」「Measurable(測定可能)」「Assignable(達成可能)」「Related(関連性)」「Time‐bound(期限)」という5つの要素を意識することで、目標の達成確率を高められます。

ツールを活用する

あらゆるシーンでデジタルが加速する現代市場において、企業が持続的に発展していくためには、大局的な視点に基づくIT投資が不可欠です。近年、デジタル技術の加速度的な進歩・発展に伴い、企業が事業領域で取り扱うデータの総量は増大傾向にあります。また、情報爆発時代と呼ばれる現代では、事業活動を通じて収集・蓄積された多様なデータを、いかにしてマネジメントやマーケティングに活用するかが重要な課題です。

このような社会的背景のなか、競合他社との差別化を図るためには、後述するコミュニケーションツールやRPA、ERPといったツールを導入するとともに、デジタル技術の戦略的な活用を推進する組織体制を構築する必要があります。

生産性向上を支援するツール

事業領域における生産性を向上するためには、デジタル技術の戦略的活用が欠かせません。生産性の向上を支援する代表的なツールとして挙げられるのが、以下の3つです。

コミュニケーションツール

コミュニケーションツールとは、情報共有の円滑化や部門間連携の強化に寄与するツールです。いわゆるグループウェアやコラボレーションツールの総称であり、代表的な製品としてEメールやビジネスチャット、オンラインストレージ、Web会議システム、タスク管理システム、社内SNSなどが挙げられます。

こうしたツールを活用することで、全社横断的な情報共有や部門を横断した業務連携が可能となり、コミュニケーションの円滑化によって生産性の向上が期待できます。

RPA

RPAとは「Robotic Process Automation」の頭文字をとった略称で、定型業務やルーティンワークといった業務領域の自動化に特化したツールです。たとえば、伝票の記帳や請求書の作成、データの入力、定型メールの返信など、バックオフィス系の定型的な業務を自動化します。いわゆるExcelにおけるマクロのような自動化機能を、OSやアプリケーション、ブラウザなどを横断しながら利用できるのが、RPAの大きな特徴です。

ERP

ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略称で、「企業資源計画」と訳される経営管理手法を指します。近年では、財務会計・人事管理・購買管理・生産管理・在庫管理・販売管理などの基幹業務を一元管理する「統合基幹業務システム」を指して、ERPと呼称するのが一般的です。従来は各部門で独立して管理されていた基幹システムを統合することで、経営状況の可視化や意思決定の迅速化、部門間での情報共有や業務連携の強化などに寄与し、組織全体の生産性向上に貢献します。

まとめ

生産性とは、人的資源・物的資源・資金といったリソースの投入量に対し、創出した成果を定量化した指標です。国内では総人口の減少や高齢化率の上昇、生産年齢人口の低下といった社会問題が深刻化しており、多くの企業で人材不足を補うべく生産性の向上が重要課題となっています。

生産性向上への取り組みは、人材不足の解消や国際競争力の向上、コストの削減、ワークライフバランスの実現などに寄与し、経営基盤の総合的な強化につながります。新しい時代に即した経営体制の構築を目指す企業様は、ERPの戦略的活用による生産性の向上に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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