経理AIで請求書処理・仕訳を自動化!
残業ゼロを実現する導入ステップと成功事例

 2025.10.15  クラウドERP編集部

No.1 クラウドERP Oracle NetSuite公式カタログ

請求書処理や仕訳入力に追われ、月末の残業から解放されない…そんな悩みを解決するのが「経理AI」です。AIの導入は、単なる業務効率化に留まらず、人手不足や業務の属人化といった経営課題を根本から解消する鍵となります。本記事では、経理AIで実現できる業務自動化の具体例から、導入を成功させる4つのステップ、さらにはERPと連携するメリットまでを網羅的に解説します。成功事例を参考に、自社の残業ゼロと月次決算の早期化を実現しましょう。

この記事でわかること

  • 経理AIで自動化できる業務(請求書処理・仕訳など)
  • AI導入による具体的なメリットと成功のポイント
  • 単体ツールとERP統合型AIの違い
  • 失敗しないための具体的な導入4ステップ
  • 他社の導入成功事例から学ぶ実践的なノウハウ

経理AIで請求書処理・仕訳を自動化!残業ゼロを実現する導入ステップと成功事例

経理業務にAI導入が求められる背景

近年、多くの企業で経理業務へのAI導入が急速に進んでいます。その背景には、単なる業務効率化という目的だけではなく、日本企業が直面する構造的な課題や、ビジネス環境の大きな変化があります。ここでは、なぜ今、経理部門にAIの活用が強く求められているのか、その根本的な理由を深掘りしていきます。

人手不足と業務の属人化という課題

現代の日本企業、特に中小企業にとって、深刻な人手不足は事業継続を揺るがす喫緊の課題です。中でも経理部門は、専門的な知識や経験が求められるため、人材の採用・育成が難しく、慢性的なリソース不足に陥りやすい傾向にあります。

この人手不足は、古くからの課題である「業務の属人化」をさらに深刻化させます。特定のベテラン社員が長年の経験と勘に頼って業務を遂行している場合、その担当者が退職・休職すると業務が停滞するリスクを常に抱えることになります。マニュアルが整備されておらず、処理の判断基準がブラックボックス化しているケースも少なくありません。結果として、月末月初の繁忙期には特定の社員に業務が集中し、長時間労働が常態化。これがさらなる離職を招くという悪循環に陥るのです。

AIの導入は、こうした課題に対する強力な解決策となります。定型的なデータ入力やチェック作業をAIが代替することで、人手不足を補い、業務の標準化を促進します。これにより、担当者のスキルレベルに依存しない安定した業務品質を確保し、属人化からの脱却を実現できるのです。

DX推進で変わるバックオフィスの役割

政府が主導するデジタルトランスフォーメーション(DX)の波は、企業のあらゆる部門に変革を迫っています。これまでコストセンターと見なされがちだった経理をはじめとするバックオフィス部門も例外ではありません。

これからの経理部門に求められるのは、過去の取引を正確に記録する「守りの経理」の役割だけではありません。蓄積された財務データをリアルタイムに分析・活用し、経営層の意思決定を支援する「攻めの経理」へと進化することです。市場の変動が激しい現代において、迅速かつデータに基づいた経営判断は、企業の競争力を左右する重要な要素となります。

以下の表は、従来の経理部門と、AI導入によってDXが推進された次世代の経理部門の役割の違いをまとめたものです。

項目 従来の経理部門 DX推進後の経理部門
主な業務 記帳、請求書発行、入金確認、経費精算などの手作業が中心 定型業務の自動化、モニタリング、データ分析、経営予測
役割 過去の財務状況を正確に記録・報告する「記録係」 未来の経営戦略策定に貢献する「ビジネスパートナー」
データ活用 月次・年次決算後の報告が中心(過去データ) リアルタイムでの予実管理資金繰り予測(未来データ)
求められるスキル 簿記の知識、正確性、忍耐力 データ分析能力、ITリテラシー、経営的視点

また、2023年10月から開始されたインボイス制度や、改正が続く電子帳簿保存法への対応も、経理DXを加速させる大きな要因です。これらの法改正は、請求書や領収書といった証憑書類のデジタル化を前提としており、AIが最も得意とするデジタルデータの処理基盤を整備する好機と言えます。AIを導入することで、複雑化する法制度へ効率的かつ正確に対応し、同時に全社的な生産性向上を実現することが可能になるのです。

New call-to-action
新規CTA

経理AIで実現する業務自動化とは

経理AIは、これまで人の手で行われてきた反復的かつ時間のかかる業務を自動化し、経理部門の生産性を飛躍的に向上させるテクノロジーです。従来のRPA(Robotic Process Automation)があらかじめ設定されたルールに基づく定型業務の自動化を得意としていたのに対し、経理AIは機械学習や自然言語処理といった技術を活用し、データに基づいた自律的な判断を伴う非定型業務まで自動化の範囲を広げます。 これにより、経理担当者は単純作業から解放され、より高度な分析や経営判断に貢献する戦略的な業務に集中できるようになります。

具体的には、請求書の処理から仕訳、入金消込といった一連の経理フローをシームレスに自動化し、業務の高速化とヒューマンエラーの撲滅を実現します。

項目 RPA(従来型) 経理AI
得意な業務 定型業務(ルールベースの作業) 定型業務 + 非定型業務(データに基づく判断・予測)
判断能力 ルールに基づき実行 データを学習し、自律的に判断・推論
具体例 特定システムのデータ転記、決まったフォーマットの帳票作成 多様なフォーマットの請求書読取り、勘定科目の自動推論、不正検知

請求書処理の自動化

紙やPDF、電子インボイスなど、取引先ごとに異なるフォーマットで送られてくる請求書の処理は、経理業務の中でも特に煩雑で時間を要する作業です。経理AIは、この請求書処理を劇的に効率化します。

AI-OCRによるデータ読み取りと入力作業の削減

経理AIの中核技術の一つが「AI-OCR(光学的文字認識)」です。 従来のOCRと異なり、AI-OCRは深層学習(ディープラーニング)によって、手書き文字や多様なレイアウトの請求書であっても、記載された情報を高精度で認識し、テキストデータに変換します。

これにより、請求書を受け取るとAI-OCRが取引先名、請求日、支払期日、金額、そしてインボイス制度に対応した事業者登録番号といった情報を自動で抽出。 会計システムやERP(統合基幹業務システム)へ自動で入力されるため、手作業による入力業務からの解放と、入力ミスや確認作業の大幅な削減が実現します。

仕訳作業の自動化

取引内容を適切な勘定科目に分類する仕訳作業は、経理の専門知識が求められ、業務の属人化を招きやすい領域でした。経理AIは、この専門的な判断も自動化の対象とします。

勘定科目の自動推論と入力ミス防止

AIは、過去の膨大な仕訳データを機械学習することで、取引のパターンを記憶します。 新たな請求書データが入力されると、AIはその取引内容(取引先、品目、金額など)を分析し、過去のデータから最も確からしい勘定科目を自動で推論し、提案または入力します。 例えば、「株式会社〇〇からの請求書で品目が『複合機カウンター料金』であれば『賃借料』」といった判断をAIが自律的に行います。

この自動仕訳機能により、担当者のスキルレベルに依存することなく、仕訳の精度と一貫性が保たれ、月次決算の早期化にも大きく貢献します。また、異常なパターンの取引を検知し、不正利用の防止にも繋がります。

入金消込・債権管理の効率化

請求した金額と実際に銀行口座へ振り込まれた金額を照合する「入金消込」は、非常に手間のかかる作業です。特に、振込名義人と請求先名が異なる、複数の請求がまとめて入金される、振込手数料が差し引かれているといったケースは、目視での確認に多大な時間を要していました。

経理AIは、銀行の入金データと自社の請求データを自動で取得し、照合ロジックに基づいて瞬時に突合を行います。 AIは過去の消込パターンを学習しているため、名義の僅かな違い(例:「(株)」「カ)」など)や一部一致でも、同一の取引先であると高精度に特定し、自動で消込処理を実行します。これにより、消込作業の時間を劇的に短縮し、売掛金の残高をリアルタイムで正確に把握できるようになります。結果として、迅速な督促やキャッシュフローの改善にも繋がるのです。

経理AI導入のメリットを最大化するERPという選択肢

経理業務にAIを導入する際、その効果を最大限に引き出すためには、どのようなシステム形態を選ぶかが極めて重要になります。請求書処理や経費精算といった特定の業務を自動化する「単体ツール(特化型AI)」も有効ですが、経理部門の効率化に留まらず、経営全体の意思決定を高度化するためには、ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)と統合されたAIの活用が最適な選択肢となります。ERPは、会計、販売、購買、在庫、人事といった企業の基幹業務を統合管理するシステムであり、AIと融合することで、データの分断を防ぎ、全社的な視点での業務改革を可能にします。

単体ツールとERP統合型AIの違い

経理AIの導入形態は、大きく「単体ツール」と「ERP統合型AI」に分けられます。それぞれに特徴があり、自社の目的や状況に応じて適切な選択をすることが成功の鍵となります。両者の違いを理解するために、以下の比較表を確認しましょう。

比較項目 単体ツール(特化型AI) ERP統合型AI
対象領域 請求書処理、経費精算、債権管理など、特定の経理業務に特化 会計、販売、購買、生産、人事など、企業全体の基幹業務を網羅
データ連携 他システムとの連携には、API連携などの個別開発が必要な場合が多く、データのサイロ化を招く可能性がある 最初からデータが一元管理されており、部門間のシームレスな情報連携が標準で可能
導入コスト・期間 比較的低コストで、短期間での導入が可能 高機能なため比較的高コストで、導入・定着に時間がかかる傾向がある
機能拡張性 提供される機能範囲が限定的 企業の成長や業務内容の変化に合わせて、柔軟に機能を追加・拡張できる
導入目的 特定の業務の効率化、担当者の負荷軽減が主目的 業務全体の最適化、データに基づいた迅速な経営判断、内部統制の強化などが目的

単体ツールは「点の効率化」に優れていますが、ERP統合型AIは経理部門の業務効率化はもちろんのこと、そこから得られるデータを経営に活かす「全体の最適化」を目指す場合に強力な効果を発揮します。

リアルタイムな経営データ可視化の実現

ERP統合型AIを導入する最大のメリットの一つが、経営状況のリアルタイムな可視化です。 従来のシステムでは、各部門のデータがExcelや個別のシステムで管理されており、月次決算のタイミングで初めて全社の正確な数値が把握できるというケースが少なくありませんでした。これでは、変化の激しいビジネス環境において迅速な意思決定は困難です。

しかし、ERP統合型AIでは、例えば営業部門が受注データを入力した瞬間に、その情報が会計システムに自動で連携され、AIが売上計上や債権発生の仕訳を即座に行います。これにより、経営者は経営ダッシュボードなどを通じて、売上、利益、キャッシュフローといった重要な経営指標(KPI)を日次、あるいは時間単位で正確に把握できるようになります。このリアルタイム性は、精度の高い需要予測や予実管理、的確な資金繰り計画の策定を可能にし、データドリブンな経営体制への移行を強力に後押しします。

全社最適化によるマネジメント変革

ERP統合型AIの導入は、経理部門だけの変革に留まりません。部門間の壁を取り払い、全社最適の視点でのマネジメント変革を促進します。すべてのデータが一つのプラットフォーム上で管理・共有されることで、これまで見えにくかった部門間の連携状況や業務プロセスのボトルネックが明らかになります。

例えば、購買データと会計データが連携することで、発注から支払いまでのプロセスが透明化され、不正の防止やコスト削減に繋がります。また、人事データと会計データが連携すれば、プロジェクトごとの人員コストを正確に把握し、リソース配分の最適化を図ることが可能です。

このように、ERP統合型AIは、経理部門を単なるコストセンターから、収集されたデータを分析・活用して経営戦略に貢献する「プロフィットセンター」へと昇華させるポテンシャルを秘めています。AIによって定型業務から解放された経理担当者は、より付加価値の高い財務分析や経営戦略の立案支援といった役割を担うことが期待されるのです。この変革は、バックオフィス全体の役割を再定義し、企業全体の競争力強化に直結する重要なステップと言えるでしょう。

経理AI導入を成功させる4つのステップ

経理AIの導入は、単にツールを導入すれば成功するわけではありません。自社の課題を正しく理解し、明確な目的を持って計画的に進めることが不可欠です。ここでは、経理AIの導入を成功に導き、その効果を最大化するための具体的な4つのステップを解説します。

ステップ1 現状業務の可視化と課題整理

最初のステップは、現在の経理業務を正確に把握し、どこにボトルネックが存在するのかを可視化することです。この工程を丁寧に行うことで、導入すべきAIの機能や範囲が明確になり、導入後のミスマッチを防ぐことができます。

業務フローの洗い出しと棚卸し

まず、請求書の受領から支払い、仕訳、計上、保管に至るまでの一連の業務フローをすべて洗い出します。誰が、いつ、何を、どのように処理しているのかを、「業務フロー図」や「業務一覧表」といった形で文書化します。この際、各業務にかかる作業時間や発生頻度も記録することで、どの業務に最も工数がかかっているのかを定量的に把握できます。

課題の特定と優先順位付け

次に、洗い出した業務フローの中から課題を特定します。担当者へのヒアリングを通じて、「時間がかかりすぎる」「ミスが発生しやすい」「特定のスキルを持つ担当者しか対応できない(属人化)」といった現場の生の声を集めることが重要です。集まった課題は、以下の表のように整理し、インパクトの大きさと実現の容易さから優先順位を決定します。

業務内容 現状の課題 課題による影響(コスト・時間・リスク) AI導入による改善期待効果 優先度
請求書のデータ入力 手入力のため時間がかかり、入力ミスも頻発。月末に作業が集中し残業の原因に。 人件費(月間XX時間)、修正作業コスト、支払い遅延リスク AI-OCRによる入力自動化で作業時間を80%削減、ミスをゼロに
仕訳作業 勘定科目の判断に迷うケースがあり、担当者によって仕訳が異なる。確認・修正に手間がかかる。 月次決算の遅延、監査対応の工数増大 AIによる勘定科目の自動推論で標準化と迅速化を実現
入金消込 振込名義と請求先名が異なる場合のマッチングに時間がかかる。 売掛金の回収遅延、キャッシュフローの悪化リスク AIによるマッチング精度の向上で消込作業を70%効率化

ステップ2 導入目的の明確化と要件定義

現状分析で課題が明確になったら、次に「何のために経理AIを導入するのか」という目的を具体的に設定します。目的が曖昧なままでは、最適なシステム選定ができず、導入効果を正しく評価することもできません。

定量的(SMART)な目標設定

目的は、「業務を効率化したい」といった漠然としたものではなく、誰が見ても達成度を判断できる具体的な数値目標(KPI)を設定することが成功の鍵です。目標設定のフレームワークである「SMART」を意識すると良いでしょう。

  • Specific(具体的): どの業務をどう改善するのか
  • Measurable(測定可能): 効果を数値で測れるか
  • Achievable(達成可能): 現実的に達成できる目標か
  • Relevant(関連性): 経営課題の解決に繋がるか
  • Time-bound(期限): いつまでに達成するのか

例えば、「2026年3月末までに、AI-OCRと自動仕訳機能を導入し、請求書処理にかかる時間を月間50時間削減し、手入力による仕訳ミスを95%削減する」といった具体的な目標を設定します。

機能要件と非機能要件の定義

設定した目標を達成するために、導入する経理AIシステムに必要な機能(機能要件)と、性能やセキュリティなどの機能以外の要件(非機能要件)を定義します。この要件定義が、次のステップであるシステム選定の際の評価基準となります。

要件種別 要件定義の例
機能要件 AI-OCR 請求書の多様なフォーマットに対応できる(手書き文字の読み取り精度が高い)
自動仕訳 過去の仕訳データを学習し、勘定科目を90%以上の精度で自動推論できる
システム連携 現在利用している会計ソフト(例:弥生会計、freee会計)とAPIでシームレスに連携できる
非機能要件 セキュリティ データの暗号化、IPアドレス制限など、自社のセキュリティポリシーを満たしている
サポート体制 導入時の設定支援や、導入後の問い合わせに迅速に対応できる日本語サポートがある
可用性・性能 月末の繁忙期でも遅延なく、請求書をXX枚/時間 以上処理できる

ステップ3 システム選定と導入計画策定

要件定義が完了したら、市場に存在する複数の経理AIツールを比較検討し、自社に最適なシステムを選定します。同時に、導入を円滑に進めるための具体的な計画を策定します。

自社に最適なAIツールの選定ポイント

複数のベンダーから提案やデモンストレーションを受け、定義した要件をどれだけ満たしているかを客観的に評価します。特に以下の点は重要な選定ポイントとなります。

  • 課題解決への適合性: 自社が最も解決したい課題(例:請求書処理、仕訳自動化)に強みを持っているか。
  • 操作性(UI/UX): 経理担当者が直感的で使いやすい画面設計になっているか。無料トライアルで実際に操作してみることが推奨されます。
  • 既存システムとの連携性: 会計システムや販売管理システムなど、既存の社内システムとスムーズに連携できるか。
  • サポート体制と実績: 導入支援や運用サポートは手厚いか。自社と同じ業種や規模の企業への導入実績は豊富か。
  • 費用対効果: 初期費用や月額利用料と、導入によって得られるコスト削減や生産性向上の効果が見合っているか。

実現可能な導入計画の策定

導入するシステムが決定したら、具体的な導入計画を策定します。誰が、いつまでに、何を実施するのかを明確にしたプロジェクト計画書を作成することが重要です。計画には、プロジェクト推進のための体制(責任者、担当者)、詳細なタスクとスケジュール(WBS)、予算、想定されるリスクと対策などを盛り込みます。

ステップ4 段階的な導入と効果測定

最後のステップは、策定した計画に沿ってシステムを導入し、その効果を測定して改善していくフェーズです。全社一斉に導入するのではなく、特定の部門や業務範囲に限定して始める「スモールスタート」がリスクを抑える上で有効です。

PoC(概念実証)による効果の事前検証

本格導入の前に、PoC(Proof of Concept:概念実証)を実施することをお勧めします。PoCでは、一部の業務に限定してシステムを試用し、「本当に業務効率が上がるのか」「現場の運用に耐えられるか」といった点を事前に検証します。ここで得られた結果や現場からのフィードバックを基に、本格導入に向けた課題の洗い出しや計画の修正を行います。

導入効果の測定と改善活動(PDCA)

システム導入後は、その効果を定期的に測定し、評価することが不可欠です。ステップ2で設定したKPI(例:請求書処理時間、仕訳ミス率)が、導入後にどれだけ改善したかを定量的に評価します。目標が達成できていない場合は、その原因を分析し、システムの利用方法を見直したり、ベンダーに追加のサポートを依頼したりといった改善策を講じます。このように、「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」のPDCAサイクルを回し続けることで、経理AIの導入効果を最大化し、継続的な業務改善へと繋げていくことができるのです。

経理AIの導入成功事例

経理部門にAIを導入することで、具体的にどのような成果が得られるのでしょうか。ここでは、業種や課題が異なる3つの企業の成功事例を紹介します。自社の状況と照らし合わせながら、AI導入がもたらす変革のイメージを掴んでください。

事例1 請求書処理時間を80%削減した製造業のケース

従業員数約300名のある製造業では、毎月数百枚に及ぶ紙の請求書処理が経理部門の大きな負担となっていました。取引先ごとにフォーマットが異なる請求書の内容を目視で確認し、会計システムへ手入力する作業に多くの時間が割かれ、入力ミスや支払い漏れのリスクも常に付きまとっていました。特に、月末月初には作業が集中し、担当者の残業が常態化していたのです。

そこで同社は、AI-OCR(光学的文字認識)技術を活用した請求書処理システムを導入しました。このシステムは、スキャンされた請求書の画像からAIが取引先名、日付、金額、品目などの情報を高精度で読み取り、自動でデータ化します。 さらに、RPA(Robotic Process Automation)と連携させることで、データ化された情報を会計システムへ自動で入力する仕組みを構築しました。

導入の結果、これまで1枚あたり平均5分かかっていた処理時間が1分に短縮され、請求書処理業務全体では月間で約80%の時間削減を達成しました。経理担当者は、AIが読み取った内容の最終確認と承認作業に集中できるようになり、ヒューマンエラーも大幅に減少。ペーパーレス化も進み、リモートワークにも対応しやすい業務体制が実現しました。

請求書処理業務の改善効果
項目 導入前 導入後
処理時間/月 約100時間 約20時間(80%削減
担当者の役割 データ入力、目視確認、ファイリング AIの読み取り結果の確認、承認
課題 長時間労働、入力ミス、属人化 コア業務への集中、業務標準化

事例2 月次決算を5営業日短縮した小売業のケース

全国に多店舗展開する従業員数約1,000名の小売業では、月次決算の早期化が長年の経営課題でした。各店舗から送られてくる売上報告や経費精算のデータ形式が統一されておらず、本部経理が集計・突合作業に膨大な時間を費やしていました。その結果、経営層が正確な業績を把握できるのは翌月の中旬以降となり、迅速な経営判断の妨げとなっていました。

この課題を解決するため、同社はAIを搭載したクラウドERP(統合基幹業務システム)への刷新を決定。店舗のPOSシステムや勤怠管理システムなど、あらゆるデータをERPに自動連携させ、一元管理する体制を整えました。導入したERPには、過去の取引データを機械学習し、勘定科目を自動で推論するAI仕訳機能が備わっています。

この改革により、手作業で行っていたデータ集計や仕訳入力の大部分が自動化されました。結果として、これまで10営業日以上かかっていた月次決算を5営業日で完了できるようになり、決算業務の負荷が大幅に軽減されました。経営層は、リアルタイムに近い形で全社の業績をダッシュボードで確認できるようになり、データに基づいたスピーディーな意思決定が可能になったのです。

月次決算プロセスの変化
プロセス 導入前(10営業日) 導入後(5営業日)
データ収集 各店舗からExcel等でデータを収集 各システムからERPへ自動連携
仕訳入力 経理担当者が手入力で対応 AIが勘定科目を推論し、ほぼ自動で仕訳
レポート作成 手作業で集計し、レポートを作成 ERPがリアルタイムでレポートを自動生成
経営報告 翌月中旬以降 翌月6営業日目には報告可能

事例3 リアルタイム予実管理を実現したIT企業のケース

プロジェクト単位で事業を進める従業員数約500名のIT企業では、Excelによる予実管理の煩雑さと精度の低さに悩まされていました。各プロジェクトマネージャーが個別に管理するExcelファイルを経理が集計するため、全社的な状況把握に時間がかかり、予算超過のリスクを早期に検知することが困難でした。

そこで同社は、AIによる予測分析機能を備えた経営管理システムを導入。会計システムや販売管理システムと連携し、プロジェクトごとの実績データを自動で取り込み、予算とリアルタイムで比較できる仕組みを構築しました。

このシステムの導入により、以下のような効果がもたらされました。

  • 精度の高い着地見込み予測: AIが過去のデータや現在の進捗状況を分析し、プロジェクトの最終的なコストや売上の着地見込みを高い精度で予測。これにより、問題の早期発見と対策が可能になりました。
  • 脱・Excelによる工数削減: プロジェクトマネージャーは実績入力の手間から解放され、経理部門も各所からExcelを回収・集計する作業が不要になりました。
  • 全社的なデータ可視化: 経営層から現場の担当者まで、誰もが同じデータをリアルタイムで確認できるようになり、部門間の連携がスムーズになりました。全社の収益状況が一目でわかるダッシュボードは、経営戦略の策定にも大きく貢献しています。

このIT企業の事例は、経理AIが単なる業務効率化ツールにとどまらず、「守りの経理」から「攻めの経理」へと変革させ、企業全体の生産性向上に貢献する可能性を示しています。

よくある質問(FAQ)

Q. 経理AIツールを導入する費用はどのくらいですか?

A. 費用はツールの種類や機能、利用規模によって大きく異なります。月額数万円から利用できるクラウド型サービスもあれば、数百万円以上の初期費用がかかるERPシステムもあります。自社の課題と予算に合わせて選定することが重要です。

Q. 中小企業でも経理AIは導入できますか?

A. はい、可能です。近年は、中小企業向けに低コストで導入できるクラウド型の経理AIサービスが多数登場しています。まずは一部の業務からスモールスタートで始めることをお勧めします。

Q. 経理AIはどのような業務を自動化できますか?

A. 主に、請求書のデータ化、仕訳の自動入力、入金消込、経費精算などの定型業務を自動化できます。これにより、手入力作業や目視での確認作業といった時間を要する作業を大幅に削減できます。

Q. AIに経理の仕事を任せても大丈夫ですか?

A. AIは定型業務の正確性と速度に優れていますが、最終的な判断やイレギュラーな取引への対応は依然として人間の役割です。AIをアシスタントとして活用し、人はより高度な分析や経営判断に集中する、という協業が理想的です。

Q. AI-OCRとは何ですか?

A. AI-OCRは、AI技術を活用した光学文字認識機能です。従来のOCRよりも高い精度で、請求書や領収書などの紙書類やPDFから文字情報を読み取り、データ化することができます。フォーマットが異なる書類にも柔軟に対応できる点が特長です。

まとめ

人手不足が深刻化する中、経理AIの導入は単なる業務効率化ツールではありません。請求書処理や仕訳といった定型業務を自動化し、経理担当者をより付加価値の高い分析業務へとシフトさせます。本記事で解説した4つのステップに沿って導入を進め、ERPと連携させることで、リアルタイムな経営状況の可視化も実現可能です。経理AIは、バックオフィスの変革を通じて企業全体の生産性を向上させ、持続的な成長を支える重要な経営戦略と言えるでしょう。

CFO向けAIサバイバル・ガイド

無料メルマガ登録

RECENT POST「経営/業績管理」の最新記事


経営/業績管理

FP&Aと管理会計の違いとは?役割・目的・業務内容を徹底比較解説

経営/業績管理

【完全ガイド】FP&Aのキャリアパスを徹底解説!CFOを目指す5つの道筋

経営/業績管理

経理からのキャリアプラン|財務・経営企画・CFOを目指すためのロードマップ

経営/業績管理

「経理はAIでなくなる」は嘘?5年後に価値が上がる経理と淘汰される仕事

経理AIで請求書処理・仕訳を自動化!残業ゼロを実現する導入ステップと成功事例
ERP導入を検討している企業必見!失敗から学ぶERPの比較と選定のポイント

おすすめ資料