中小企業の課題ランキングTOP10|
人材不足・後継者問題からDX化まで徹底解説

 2025.08.05  クラウドERP編集部

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多くの中小企業が「人材不足」や「資金繰り」といった共通の課題に直面しています。この記事では、中小企業が抱える課題をランキング形式で紹介し、後継者問題からDX化の遅れまで、その原因と具体的な解決策を解説します。単なる対症療法ではなく、経営計画の見直しや公的支援の活用といった、課題解決に不可欠な視点もご紹介しておりますので、貴社の未来を切り拓くための羅針盤としてご活用ください。

日本経済の根幹を支える中小企業が直面する共通の課題とは

日本の全企業数のうち99.7%、そして全従業員数の約7割を占める中小企業。その存在は、地域経済の活性化や雇用の創出、独自の技術やサービスの提供を通じて、まさに日本経済の根幹を支えています。しかし、その一方で多くの中小企業は、大企業とは異なる特有の、そして深刻な課題に直面しています。

大企業と比較して、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」に限りがある中小企業は、近年の急速な社会経済環境の変化に柔軟に対応することが難しい状況に置かれています。少子高齢化による労働人口の減少、グローバル化の進展、そして急速なデジタル化の波は、中小企業の経営に大きな影響を及ぼしているのです。

以下の表は、中小企業が日本経済においてどれほど大きな役割を担っているかを示しています。

項目 中小企業 大企業
企業数(割合) 336.5万社(99.7%) 1.0万社(0.3%)
従業者数(割合) 3,310万人(約70%) 1,438万人(約30%)
付加価値額(割合) 140.1兆円(約56%) 110.1兆円(約44%)

※中小企業庁「2025年版 中小企業白書」のデータを基に作成

これらの課題は、単独で存在するわけではありません。例えば、「人材不足」は「従業員の育成」を困難にし、それが「生産性の低下」や「DXの遅れ」を招きます。さらに、業績の悪化が「資金繰り」を圧迫し、新たな投資や賃上げができないことで、さらに人材確保が難しくなるという負のスパイラルに陥るケースも少なくありません。

本記事では、こうした中小企業が抱える共通の課題をランキング形式で詳しく解説し、その背景にある原因と解決に向けた具体的なアプローチを深掘りしていきます。自社の現状を客観的に把握し、持続的な成長に向けた次の一手を見つけるための羅針盤として、ぜひご活用ください。

中小企業の課題ランキングTOP10

中小企業庁が公表する「中小企業白書」や、日本商工会議所、帝国データバンクなどの各種調査結果を総合的に分析すると、多くの中小企業が共通の課題に直面していることが浮き彫りになります。ここでは、特に深刻度が高いと考えられる10の課題をランキング形式で詳しく解説します。

第1位 人材不足と採用難

少子高齢化による生産年齢人口の減少を背景に、中小企業における人材不足は最も深刻な経営課題となっています。特に、大企業との採用競争において、待遇や知名度で不利な立場に置かれやすく、必要な人材を確保できないケースが後を絶ちません。単なる人手不足だけでなく、企業の成長を牽引する専門スキルを持った人材や、次世代のリーダー候補の獲得が困難になっているのが実情です。

優秀な人材の確保と定着に向けた採用戦略

厳しい採用市場を勝ち抜くためには、従来の採用手法を見直す必要があります。求人サイトへの掲載だけでなく、SNSを活用した採用広報(ソーシャルリクルーティング)や、社員紹介制度(リファラル採用)など、採用チャネルの多様化が求められます。また、自社のビジョンや働きがい、独自の強みといった「企業の魅力」を積極的に発信し、共感を呼ぶ採用ブランディングが、優秀な人材を引きつける鍵となります。選考プロセスの迅速化やオンライン面接の導入も、応募者の離脱を防ぐ上で重要です。

働きがいを高める人事評価制度と福利厚生

人材の定着率を高めるには、従業員が「この会社で働き続けたい」と思える環境づくりが不可欠です。成果や貢献度が正当に評価され、給与や処遇に反映される透明性の高い人事評価制度の構築は、従業員のモチベーションを大きく左右します。また、個人の成長を支援するキャリアパスの明示や、資格取得支援制度も有効です。法定福利厚生に加えて、住宅手当やリフレッシュ休暇、学習支援といった独自の福利厚生(法定外福利厚生)を充実させることで、従業員満足度を高め、離職率の低下につなげることができます。

第2位 後継者不足と事業承継

経営者の高齢化が進む一方で、後継者が見つからない「後継者不在問題」は、企業の存続そのものを脅かす重大な課題です。親族内に適任者がいない、あるいは事業を継ぐ意思がないケースが増加しており、黒字経営でありながら廃業を選択せざるを得ない企業も少なくありません。この問題は、地域経済やサプライチェーンにも大きな影響を及ぼします。

親族内承継と親族外承継のメリットデメリット

事業承継には、主に経営者の子供などに引き継ぐ「親族内承継」と、役員・従業員に引き継ぐ「親族外承継(従業員承継)」があります。それぞれにメリット・デメリットが存在するため、自社の状況に合わせて慎重に検討する必要があります。

承継方法 メリット デメリット
親族内承継
  • 内外の関係者から受け入れられやすい
  • 経営理念や企業文化を継承しやすい
  • 後継者の早期決定と長期的な育成が可能
  • 親族内に適任者や承継の意思がある者がいるとは限らない
  • 相続問題が発生する可能性がある
  • 経営能力や資質が不足している場合がある
親族外承継
  • 社内にいる優秀な人材を後継者にできる
  • 事業内容への理解が深く、スムーズな引継ぎが期待できる
  • 経営者としての能力や実績で選抜できる
  • 後継者候補に株式取得の資金力がない場合がある
  • 個人保証の引継ぎが困難なケースがある
  • 他の従業員の理解や協力が得られない可能性がある

M&Aを活用した第三者への事業承継という選択肢

親族や社内に後継者が見つからない場合、M&A(合併・買収)によって第三者に事業を引き継ぐ方法が有力な選択肢となります。M&Aは単なる「会社の売却」ではなく、創業者や経営者が築き上げてきた事業、技術、そして大切な従業員の雇用を守り、さらなる発展へとつなげるための戦略的な経営判断です。近年では、事業承継を専門とするM&A仲介会社や、国が設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」などのサポートも充実しており、中小企業でもM&Aを活用しやすくなっています。

第3位 売上減少と利益率の低下

国内市場の縮小、グローバルな競争の激化、消費者の価値観の多様化など、中小企業を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。その結果、売上が伸び悩み、原材料費や人件費の上昇が利益を圧迫し、利益率が低下するという課題に直面する企業が多くなっています。既存のビジネスモデルだけでは、持続的な成長が困難な時代に突入しています。

新規顧客開拓と既存顧客維持のマーケティング戦略

売上を確保するためには、「新規顧客の開拓」と「既存顧客の維持」の両輪を回す必要があります。新規開拓においては、WebサイトやSNSを活用したデジタルマーケティングが不可欠です。一方で、利益の源泉である優良な既存顧客との関係を深め、LTV(顧客生涯価値)を最大化することも極めて重要です。CRM(顧客関係管理)ツールを導入して顧客情報を一元管理し、個々のニーズに合わせたアプローチやアップセル・クロスセルを提案することで、顧客ロイヤルティを高めることができます。

コスト削減と付加価値向上の両立

利益率を改善するためには、コスト削減と付加価値向上の両面からのアプローチが求められます。業務プロセスの見直しやITツールの導入による業務効率化は、人件費などのコスト削減に直結します。しかし、単なるコストカットはサービスの質の低下を招く恐れがあるため、商品・サービスのブランド価値を高めたり、独自の技術やノウハウを活かした高付加価値の新サービスを開発したりすることで、「価格競争」から脱却し、収益性を高める努力が不可欠です。

第4位 従業員の育成とスキルアップ

第1位の「人材不足」と密接に関連する課題が、従業員の育成です。特に中小企業では、一人の従業員が多様な業務を担うことが多く、体系的な教育・研修制度が整っていないケースが少なくありません。その結果、従業員のスキルが属人化したり、次世代のリーダーが育たなかったりと、組織全体の成長が停滞する原因となっています。

OJTとOff-JTを組み合わせた効果的な人材育成

効果的な人材育成には、実務を通して学ぶ「OJT(On-the-Job Training)」と、職場を離れて学ぶ「Off-JT(Off-the-Job Training)」を計画的に組み合わせることが重要です。OJTでは、上司や先輩が具体的な業務を指導し、実践的なスキルを身につけさせます。一方、Off-JTでは、外部研修やセミナーを通じて、専門知識や体系的なマネジメントスキルなどを習得させます。両者を連動させ、Off-JTで学んだ知識をOJTで実践するサイクルを確立することで、学習効果を最大化できます。

リスキリングを促進する研修制度と助成金活用

デジタル化の進展や事業環境の急速な変化に対応するため、従業員が新しい知識やスキルを学ぶ「リスキリング(学び直し)」の重要性が高まっています。企業は、従業員の自律的な学習を支援する研修制度やeラーニングの機会を提供することが求められます。その際、厚生労働省の「人材開発支援助成金」など、従業員のスキルアップを支援する公的な助成金制度を積極的に活用することで、コストを抑えながら効果的な人材育成プログラムを実施することが可能です。

第5位 DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れ

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革し、競争上の優位性を確立することです。多くの中小企業経営者がその重要性を認識しているものの、「IT人材がいない」「何から手をつければ良いかわからない」「投資資金がない」といった理由から、DXへの取り組みが遅れているのが現状です。

中小企業がDXを推進するべき理由と具体例

中小企業がDXを推進すべき理由は、単なる業務効率化に留まりません。生産性の向上、新たな顧客体験の創出、データに基づいた迅速な経営判断、そして新しいビジネスモデルの構築といった、企業の持続的成長に不可欠な要素をもたらします。具体的な取り組みとしては、会計ソフトや勤怠管理システムの導入によるバックオフィス業務の効率化、RPAによる定型業務の自動化、SFA/CRM導入による営業活動の可視化などが挙げられます。

IT導入補助金を活用したスモールスタート

DXはいきなり大規模なシステムを導入する必要はありません。まずは特定の部署や業務に絞って小さく始める「スモールスタート」が成功の鍵です。その際、経済産業省が管轄する「IT導入補助金」は非常に有効な手段となります。この補助金は、中小企業がITツール(ソフトウェア、アプリ、サービス等)を導入する際の経費の一部を補助する制度であり、会計ソフトや受発注システム、決済ソフトなど幅広いツールが対象となります。これを活用することで、初期投資を抑えながらDXの第一歩を踏み出すことができます。

第6位 資金繰りと財務基盤の強化

中小企業は、大企業に比べて自己資本比率が低く、財務基盤が脆弱な傾向にあります。そのため、売上の急な減少や予期せぬ大きな支出が発生した際に、資金繰りが悪化しやすいという構造的な課題を抱えています。安定した経営を続けるためには、日々の資金繰り管理と、中長期的な視点での財務基盤強化が欠かせません。

政府系金融機関の融資制度と補助金の活用法

資金調達の手段として、民間の金融機関だけでなく、政府系金融機関の活用も重要です。日本政策金融公庫や商工組合中央金庫(商工中金)は、中小企業向けの多様な融資制度を用意しており、民間に比べて低利で長期の借入が可能な場合があります。また、設備投資や研究開発を行う際には、国や自治体が提供する補助金・助成金を申請し、自己資金の負担を軽減することも賢明な選択です。融資と補助金を組み合わせることで、財務への負担を抑えながら積極的な事業展開が可能になります。

キャッシュフロー改善のための具体的な手法

キャッシュフロー(現金の流れ)を改善することは、企業の血液の流れを良くすることに等しく、黒字倒産を防ぐ上で極めて重要です。具体的な手法としては、売掛金の回収サイトを短縮する、支払いサイトの延長を交渉する、不要な在庫を圧縮して現金化する、といった方法があります。また、リースやレンタルを活用して高額な設備投資を平準化したり、ファクタリングサービスを利用して売掛債権を早期に現金化したりすることも、手元資金を厚くするための有効な手段です。

第7位 営業力・販売力の強化

多くの優れた技術や製品を持ちながらも、それを市場に届け、販売につなげる「営業力」に課題を抱える中小企業は少なくありません。特に、経営者や一部のベテラン社員の個人的な人脈や経験に依存した属人的な営業スタイルは、組織としての持続的な成長を阻害する要因となります。

デジタルマーケティングによる新たな販路開拓

インターネットが普及した現代において、営業活動は対面だけではありません。自社のWebサイトを検索エンジンに最適化する「SEO対策」や、顧客にとって価値ある情報を提供する「コンテンツマーケティング」、ターゲット層に直接アプローチできる「Web広告」など、デジタルマーケティングの手法は多岐にわたります。これらの手法を組み合わせることで、これまで接点のなかった潜在顧客にアプローチし、新たな販路を開拓することが可能です。

インサイドセールスの導入と営業プロセスの効率化

インサイドセールスとは、電話やメール、Web会議システムなどを活用して、社内にいながら営業活動を行う手法です。顧客先への移動時間が不要になるため、営業担当者はより多くの顧客とコミュニケーションを取ることができ、営業活動全体の生産性が飛躍的に向上します。SFA(営業支援システム)を導入して顧客情報や商談の進捗を可視化・共有し、営業プロセスを標準化することで、属人化を防ぎ、組織全体の営業力を底上げすることができます。

第8位 働き方改革への対応

「働き方改革関連法」の施行により、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化など、すべての企業に労働環境の改善が求められています。特に、限られた人員で業務を回している中小企業にとって、これらの法規制への対応は、生産性の向上とセットで取り組まなければならない喫緊の課題です。

長時間労働の是正と生産性向上の両立

長時間労働を是正するためには、「残業を禁止する」といった精神論だけでは不十分です。勤怠管理システムで従業員の労働時間を正確に把握し、業務プロセスの中に潜む無駄な作業や非効率な手順を洗い出して改善することが不可欠です。ITツールやRPAを導入して定型業務を自動化・効率化し、従業員がより付加価値の高い創造的な業務に集中できる環境を整えることが、生産性向上と長時間労働是正を両立させる鍵となります。

多様な働き方を実現するテレワーク導入のポイント

テレワーク(在宅勤務)の導入は、通勤時間の削減による生産性向上や、育児・介護との両立支援、遠隔地の人材採用など、多くのメリットをもたらします。導入を成功させるためには、VPN接続やクラウドサービスの活用によるセキュリティ対策、円滑なコミュニケーションを促すチャットツールやWeb会議システムの導入、そしてオフィス勤務者とテレワーカーの間で不公平感が生じないような人事評価制度の見直しといったポイントを総合的に検討することが重要です。

第9位 原材料価格の高騰とサプライチェーン問題

近年の世界的なインフレや円安、国際情勢の不安定化は、原材料やエネルギー価格の高騰を招き、多くの中小企業の収益を圧迫しています。また、特定の国や地域からの部品供給が滞るなど、サプライチェーンの脆弱性も大きなリスクとして顕在化しています。

仕入れ先の多様化と価格交渉のポイント

特定の仕入れ先に依存する体制は、価格高騰や供給停止のリスクを直接的に受けることになります。このリスクを分散させるため、国内外を問わず複数の仕入れ先を確保する「サプライヤーの多様化(マルチサプライヤー化)」を進めることが重要です。また、安易な値上げを受け入れるのではなく、市況データや品質、発注ロットなどを基に、粘り強く価格交渉を行う姿勢も求められます。長期的な取引を前提に、価格の安定化を図ることも有効な戦略です。

省エネ設備導入による光熱費などのコスト削減策

電気代やガス代といったエネルギーコストの上昇は、製造業だけでなく、あらゆる業種の利益を圧迫します。これに対抗するため、LED照明や高効率な空調設備、断熱材の導入といった省エネルギー対策は、即効性のあるコスト削減策となります。初期投資が必要となりますが、国や自治体の「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」などを活用すれば、負担を軽減できます。中長期的には、太陽光発電システムの導入による自家発電も有効な選択肢です。

第10位 サイバーセキュリティ対策

「うちは中小企業だから狙われない」という考えは、もはや通用しません。サイバー攻撃者は、セキュリティが手薄な中小企業を踏み台にして、取引先である大企業へ侵入する「サプライチェーン攻撃」を仕掛けるケースが増えています。顧客情報や技術情報といった重要な情報資産が漏洩・破壊されれば、事業継続が困難になるほどの甚大な被害となる可能性があります。

中小企業を狙うサイバー攻撃の手口と実態

中小企業が特に警戒すべきサイバー攻撃には、データを暗号化して身代金を要求する「ランサムウェア」、取引先になりすまして偽の請求書を送付し、金銭をだまし取る「ビジネスメール詐欺(BEC)」、ウイルスを添付したメールで感染を狙う「標的型攻撃メール」などがあります。たった一人の従業員の不注意が、会社全体の危機につながる可能性があることを、経営者と従業員が共に認識する必要があります。

情報資産を守るための基本的なセキュリティ対策

高度なセキュリティ機器を導入する前に、まずは基本的な対策を徹底することが重要です。具体的には、①OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ、②ウイルス対策ソフトを導入し、定義ファイルを最新にする、③パスワードを複雑にし、使い回しをしない、④重要なデータは定期的にバックアップを取る、⑤従業員へのセキュリティ教育を実施する、といった対策が挙げられます。IPA(情報処理推進機構)が推進する「SECURITY ACTION」のように、中小企業が取り組むべき対策を宣言する制度を活用することも、自社のセキュリティ意識を高める第一歩となります。

中堅中小企業向け クラウドERPのROI
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中小企業の課題解決に不可欠な3つの視点

ここまで中小企業が抱える個別の課題を見てきましたが、これらの課題は互いに複雑に絡み合っています。例えば、人材不足は働き方改革の遅れや育成制度の不備が原因である一方、売上減少は営業力不足やDX化の遅れに起因します。こうした根深い問題を解決するためには、対症療法的なアプローチだけでは不十分です。ここでは、すべての課題解決の土台となる、より大局的で本質的な3つの視点について解説します。

経営計画の見直しとビジョンの明確化

多くの課題の根源には、企業の進むべき方向性が曖昧であることが挙げられます。市場環境が目まぐるしく変化する現代において、羅針盤なき航海は遭難のリスクを高めるだけです。まずは自社の現在地を正確に把握し、未来への明確なビジョンを描くことが、あらゆる課題解決の第一歩となります。

そのために不可欠なのが、客観的なデータに基づいた経営計画の見直しです。フレームワークを活用して自社の状況を分析し、具体的な目標を設定しましょう。

現状分析とSWOT分析の活用

まずは自社の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を洗い出す「SWOT分析」を行いましょう。これにより、自社の経営資源をどの分野に集中させるべきか、またどのようなリスクに備えるべきかが明確になります。

  • 強み (Strengths):技術力、顧客基盤、ブランド力など
  • 弱み (Weaknesses):人材不足、資金力、旧式の設備など
  • 機会 (Opportunities):市場の拡大、新技術の登場、法改正など
  • 脅威 (Threats):競合の台頭、原材料価格の高騰、消費者ニーズの変化など

この分析結果をもとに、強みを活かして機会を掴む「積極化戦略」や、弱みを克服して脅威に備える「防衛戦略」など、具体的な戦略を立てることができます。

中期経営計画とビジョンの策定

現状分析ができたら、3〜5年後を見据えた「中期経営計画」を策定します。ここでは、売上高や利益率といったKGI(重要目標達成指標)だけでなく、その達成に向けた具体的なプロセスを示すKPI(重要業績評価指標)まで落とし込むことが重要です。例えば、「3年後に売上30%増」というKGIに対し、「新規顧客獲得数」「顧客単価」「Webサイトからの問い合わせ件数」などをKPIとして設定し、進捗を定期的に確認します。

さらに、従業員のエンゲージメントを高め、一丸となって目標に向かうためには、企業の存在意義(パーパス)やビジョンを言語化し、社内全体で共有することが欠かせません。明確なビジョンは、採用活動においても自社にマッチした人材を引きつける強力な武器となります。

外部専門家や支援機関の積極的な活用

中小企業は、人材やノウハウといった経営資源に限りがあります。すべての課題を自社だけで解決しようとすると、時間やコストがかかりすぎるだけでなく、最適な解決策を見出せない可能性もあります。そこで重要になるのが、外部の専門家や公的な支援機関を積極的に活用するという視点です。

自社にない知見やネットワークを外部から取り入れることで、課題解決のスピードと質を飛躍的に高めることができます。専門家は客観的な視点で的確なアドバイスを提供してくれるだけでなく、補助金の申請支援や取引先の紹介など、実務的なサポートも期待できます。

以下に、中小企業が活用できる代表的な相談先をまとめました。

支援機関・専門家 主な相談内容・特徴
よろず支援拠点 国が各都道府県に設置している無料の経営相談所。経営全般に関するあらゆる相談に対応。他の専門機関への橋渡しも行ってくれる。
中小企業基盤整備機構(中小機構) 国の中小企業政策の中核を担う独立行政法人。創業から事業承継まで、企業の成長ステージに応じた多様な支援メニュー(専門家派遣、共済制度、オンライン経営相談など)を提供。
商工会議所・商工会 地域に根差した経済団体。経営指導員による経営相談のほか、金融斡旋、各種セミナーの開催、地域のネットワーク構築支援などを行う。
中小企業診断士 経営コンサルティングに関する唯一の国家資格者。経営戦略、財務、マーケティング、人事など、幅広い分野で専門的な診断・助言を行う。
税理士・公認会計士 税務・会計の専門家。資金繰り改善、節税対策、融資申請支援、財務分析など、企業の財務基盤強化をサポート。
社会保険労務士 人事・労務管理の専門家。就業規則の作成、人事評価制度の構築、助成金申請代行、働き方改革への対応などを支援。

これらの支援機関や専門家は、それぞれに得意分野があります。自社の課題に合わせて、最適な相談先を選ぶことが重要です。まずは「よろず支援拠点」のような総合相談窓口に足を運んでみるのも良いでしょう。

国や自治体の補助金・助成金制度をフル活用する

DX化、設備投資、人材育成、販路開拓など、多くの課題解決には資金が必要です。しかし、財務基盤が盤石でない中小企業にとって、新たな投資は大きな経営リスクを伴います。この資金的な制約を乗り越えるために、絶対に活用したいのが国や自治体が実施している補助金・助成金制度です。

補助金・助成金は、原則として返済不要の資金であり、企業の自己負担を軽減し、積極的な経営改革や投資を後押ししてくれる極めて有効な手段です。自社の取り組みに合致する制度がないか、常にアンテナを張っておくことが重要です。補助金は公募期間が限られているものが多いため、情報収集の速さが鍵を握ります。

中小企業の代表的な課題に対応する補助金・助成金には、以下のようなものがあります。

補助金・助成金の種類 対応する課題 概要・対象経費の例
IT導入補助金 DXの遅れ 会計ソフト、受発注システム、決済ソフト等のITツール導入費用を補助。インボイス制度対応なども対象。
ものづくり補助金 生産性向上、設備投資 革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善のための設備投資(機械装置、システム構築費など)を支援。
小規模事業者持続化補助金 売上減少、販路開拓 小規模事業者の販路開拓や生産性向上の取り組みを支援。Webサイト制作、チラシ作成、店舗改装費用などが対象。
事業承継・引継ぎ補助金 後継者不足、事業承継 事業承継を契機とした新たな取り組みや、M&Aにかかる専門家活用費用(仲介手数料、デューデリジェンス費用など)を補助。
キャリアアップ助成金 人材育成、人材定着 有期雇用労働者などを正規雇用労働者へ転換したり、人材育成を行ったりした事業主に対して助成。

これらの情報は、中小企業庁の「ミラサポplus」や中小機構の「J-Net21」といったポータルサイトで網羅的に検索できます。申請には事業計画書の作成などが必要となるため、前述の中小企業診断士や商工会議所といった専門家・支援機関に相談しながら進めるのが成功の秘訣です。

まとめ

本記事では、中小企業が直面する課題をランキング形式で解説しました。人材不足や後継者問題、DX化の遅れなど、多くの課題は複雑に絡み合っています。これらの課題を乗り越えるには、自社の現状を正確に把握し、明確な経営ビジョンを掲げることが不可欠です。また、必要に応じて外部専門家や、日本政策金融公庫などの公的支援、各種補助金を積極的に活用し、戦略的に取り組むことが持続的な成長の鍵となります。

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