予算統制とは? 管理の流れや成功のポイント・導入時の注意点

 2022.11.22  クラウドERP実践ポータル

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予算統制について知ることは、これから上場を目指す企業経営者にとって特に重要です。本記事では予実管理や予算編成との違い、予算統制を行う目的、予算統制・予算管理の流れについて解説します。予算統制を成功させるコツ、予算管理システム導入の注意点、おすすめのシステムも紹介しますので、企業経営者の方はぜひ参考にしてください。

予算統制とは

予算統制とは、予算計画を実現するために行われる企業の統制活動を指します。具体的には予算と実績の数値を比較し、その差異を減らしていく取り組みです。
予算統制には正確性と迅速性が求められ、1カ月などの比較的短い期間ごとに差異を測定します。差異があった場合はその原因分析を行い、差異が発生した要因を特定して解決策を講じ、適切な経営改善活動の提案につなげます。

予算統制は企業の上場に必要な概念です。予算統制のプロセスにより、策定した予算と実績の差を分析して差異を減らせているかは、上場予定企業の重要な審査項目です。

予算統制は予算管理を構成するひとつの要素です。経営改善活動のPDCAサイクルのうち、DCA(実行、評価、改善)のプロセスに相当します。

予算管理について詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
アンカーテキスト:予算管理とは?目的や予実管理との違い、業務の流れをわかりやすく解説

予実管理との違い

予実管理は企業で策定した予算と、予算を実行した実績を比較・分析し、予算の達成度合いやこれからの課題を見える化する経営手法です。そのため予実管理は、予算統制と基本的にほぼ同じ意味の言葉として使用されています。

予算統制または予実管理を行えば、売上と売上達成のために必要な費用を管理し、予算が計画に従って実施されているかを具体的に把握することが可能です。つまり企業の現状が明らかになります。予算統制または予実管理を適正に実行することで、予算計画が実績につながっているかを確認し、計画を検証して問題点を改善します。

予算編成との違い

予算編成は予算統制の前段階で行う作業で、予算管理を構成する一要素です。予算編成の段階では、予算会議や予算調整を経て各部門の予算を編成し、総合予算を決定します。

その後予算統制の段階では、一定期間(例えば1カ月)ごとに現場の各部門で予算と実績の差異を測定して分析します。予算統制を順調に進めるためには、予算編成の段階で現場の声を汲み上げ、実態に即した実効性のある予算を策定することが求められます。

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予算統制を行う目的

予算統制は策定した予算と実績との差異を常時測定し、その都度対策を行って最終的に計画した予算を達成することに意義があります。予算実行の進捗が滞っていることが明らかになれば、どの部分をどのように改善すれば問題を解決できるか、対策を立てられるからです。
その都度、適切に問題を処理することで、利益計画を確実に達成することが可能です。予算統制は企業の予算達成や業績に関するPDCAの要となります。

また、上場を予定している企業であれば、情報開示の基盤を整備しなければなりません。予算統制は上場審査の重要項目であり、株主や投資家に適切な情報を開示するためにも必要です。

予算統制・予算管理の流れ

予算統制・予算管理には、予算編成、実態把握、差額要因分析(差異分析)、改善策の検討という流れがあります。それぞれの段階について解説します。

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1. 予算編成

予算編成では経営トップ、予算担当部署、現場の各部門がそれぞれ役割を果たします。予算編成には大きく分けて、トップダウン方式とボトムアップ方式という2つの方式があります。共通するのは最終的な判断を経営陣が下す点ですが、それまでに至るプロセスが異なります。以下、それぞれの特徴について解説します。

予算管理に関してさらに詳しい情報を得たい方は、以下の記事をご覧ください。
アンカーテキスト:予算管理の業務と必要なスキルとは?

トップダウン方式

トップダウン方式とは、経営陣の意思決定からスタートし、決まったことを本部、支社、営業所へと組織の上位から下位に伝える経営手法です。予算編成のトップダウン方式では、経営陣が決定した経営計画・利益計画に沿って、全体の予算方針を策定し、その方針に従って現場の各部門が予算を編成します。

トップダウン方式は、意思決定から実行までのプロセスが迅速に進むのが特徴です。社会情勢や経済状況の大きな変化が生じた際に、素早く対応できるのがメリットです。

ただしデメリットとして、現場の意見が反映されにくく、社員のモチベーション低下を招きがちな点が挙げられます。また、上層部に判断を任せるため社員の判断力低下につながり、情報の隠ぺいが起きることもあります。経営者一人に権力が集中している場合は、判断ミスなども起こりやすいでしょう。

ボトムアップ方式

ボトムアップ方式とは、現場からの要望や提案を上層部に集約し、その内容に基づいて経営陣の意思決定につなげる経営手法です。予算編成のボトムアップ方式では、現場の各部門で必要な予算を編成して集計し、経営陣が企業全体の予算を最終決定します。

ボトムアップ方式は、現場の意見や提案が反映された予算編成が可能です。社員は自分の意見や提案を活かしてもらえるので、自ら考え行動する主体性が育まれ、モチベーションアップにつながるというメリットがあります。一方で、予算全体をまとめるのに時間がかかるのがデメリットです。

トップダウン方式とボトムアップ方式にはそれぞれメリットとデメリットがあります。そのため、2つの要素を組み合わせて予算編成をすることで、デメリットを最小限に抑えるのが理想的です。実際、両者を併用している企業が少なくありません。

2. 実績把握

予算統制は、現実の企業経営が予算レベルを超えないように調整していきます。そのためには日々の売上げや経費の支払いを管理し、実績値を把握しなければいけません。

しかも、現場の部門ごとにタイムリーな実績値を把握する必要があります。具体的には毎月、月次予算管理を行い、翌月初めから第一週または10営業日ぐらいまでに把握しておけるようにします。

人手による実績把握は時間がかかり、毎月継続的に行っていくには多大の労力を要します。また、実績把握だけでなく、次項に述べる差異分析をするためには、一般的な会計ソフトでの対応は困難です。したがって予算管理システムを導入するとよいでしょう。

3. 差額要因分析

予算編成の段階で算出した各種数値と実績の数値を比較し、差額が出た要因を分析します。ロジックツリー状に要因を分解して分析するのがおすすめです。差が大きいなら、そもそも予算編成に問題があるかもしれません。

差額要因分析にはいくつか方法がありますが、2つの方法がよく知られています。
第一に、利益差異を分析する方法です。予算編成時に見込んだ利益額と実際の利益額の差額を分析します。比較的単純な分析です。
第二に、利益差異をさらに「収益差異」と「原価差異」に分けて分析する方法です。より詳しい要因を知ることが可能です。
それほか、自社が独自に設けた項目で差異を算出し分析することもできます。

差額要因分析は企業全体として行うほか、各部署でも行うと、差額が生じた詳しい要因を知る助けになります。また、毎月など比較的短いスパンで分析するなら、決算を待たずに企業経営の課題や改善策を早く見つけ、調整を図れるようになります。

4. 改善策の検討

差額要因の分析結果に基づいて、該当する現場部門で対策を検討、立案します。予算統制・予算管理の目的は差額要因の分析そのものではなく、企業経営で予算の達成をコントロールし、マネジメントに活かすことです。分析の精度が上がったとしても、有効な対策を実施して改善につなげなければ、目的をクリアしたとはいえません。

注意すべき点として、会議を単なる差額やその要因の報告だけで終わらせないようにしましょう。売上や利益が目標に達しなければその対策を立て、予算編成に問題があれば調整を図り、来期の予算編成に活かす必要があります。改善策を講じても利益が目標に到達しないのであれば、当該事業からの撤退も選択肢となります。

予算統制を成功させるポイント

予算統制の目的を達成し、成果を上げるためには3つのポイントがあります。それぞれについて解説します。

リアルタイムでの進捗確認

売上げや市況は常に流動的で変化しています。実績値をタイムリーに収集し、測定する作業は予算統制で欠かせない要素です。実績値の検証はなるべくその都度行うようにし、リアルタイムで売上げや利益の進捗・動向を把握できるようにしましょう。

詳細な検証はしないとしても、週ごとに大まかな傾向を把握するのがおすすめです。そうすることで、現在発生している問題にタイムリーに対応し、迅速に軌道修正して目標達成につなげられます。差が小さいうちなら修正も容易ですが、課題が発生した後にタイムラグがあると軌道修正が難しくなり、予算管理の意味は薄れるからです。

多くの課題の中で、目標達成のためにどれを優先すべきか見極める助けにもなります。すべてに取り組んでリソースを投入するより、特に注力すべきことを選択するなら、限りあるリソースを有効活用できます。

実績の集計体制を整備

予算統制の精度を上げるためには、さまざまな情報を収集、抽出しなければなりません。後から分析しやすいように、効率的に実績値を集計しやすい体制を整えておく必要があります。

管理者が進捗管理を担当しながら、実績値を収集・測定していくのは困難です。予算管理システムを導入するなら、業務を担当した社員が各自で実績値を入力するだけで、必要な数値が自動的に集計されるようになります。人手による集計に比べて、時間と労力を節約できて人為的ミスも減らせるため、迅速かつ正確に予算統制を進められます。予算統制は継続して行うことが重要なので、続けやすい仕組みを作ることは大切です。

なお、実績を集計するにあたって、数値だけでなく、社員個別の営業活動や顧客の個人情報など付加的な情報を集めるのが理想的です。より詳細に分析でき、問題解決に最も適した対策を講じやすくなるでしょう。

月次での予実差異分析

案件にもよりますが、基本的には月次で現状把握、差異分析すると効果的です。
前述の通り予算統制は、実績値を入力・集計し、予算との差異を確認することそのものが目的ではありません。予算と実績との差異の要因を分析し、要因に応じた対策を実行して予算に近づけることが目的です。現状把握と課題の分析・対策を短いスパンで繰り返すことで、適切な予算統制が可能になります。

予算管理システムは集計を自動的に行えるだけではなく、結果をグラフや表に可視化することもできるため、月ごとに差額要因分析するのも容易になります。データ集計やグラフ作成などの作業に労力を奪われるのではなく、要因の深掘りやより実効性のある対策作りに注力するようにしましょう。

予算管理システム導入の注意点

予算管理システムは単に導入すればよいというものではありません。数多くのシステムがあり、搭載されている機能もさまざまです。以下の注意点を踏まえて、適切なシステムを選択しましょう。

会計基準や経営指標への対応

まず、自社が採用している会計基準に対応しているかを必ずチェックすべきです。上場企業や上場を目指す企業であれば、2021年4月から適用が開始された「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」に対応したシステムでなければなりません。なお、中小企業は現時点では必ずしも対応する必要はなく、今までの会計基準を引き続き用いることも可能です。

また、自社の経営指標を設定できるかもチェックします。KPI分析をする上で必要になるためです。必要に応じて自由にカスタマイズできるものを選びましょう。

費用対効果の確認

サービス・機能による業務削減効果を比較し、費用対効果を検証することが重要です。企業規模にあったシステムであるのか、自社にとって必要な機能が搭載されているかを確認します。

機能が多いほどよいわけではなく、現場の社員が操作しやすい設計・仕様になっているかという視点で選ばなければなりません。そうでないと、導入したものの多くの機能を使いこなせずに終わってしまいます。導入前に確認するだけでなく、試用期間中にUIをチェックするとよいでしょう。

クラウド型かオンプレミス型かの提供形態から、いずれかを選択する必要もあります。
初期費用のほか、運用やカスタマイズにかかる費用について、複数社から見積もりをとって比較検討するのがおすすめです。

外部システムとの連携

エクセル管理や他のシステムから予算管理システムに移行するなら、取り込んだエクセルデータをそのまま活用できるかどうかを確認しましょう。前期までのデータを取り込めるかどうかは重要です。以前のデータを参考にすると現実的な目標を設定しやすくなり、過去の実績との比較や分析、現在の課題の発見も容易になります。

また、自社で使用している既存システムと連携できると便利です。原価管理や会計、人事などのシステムと連携できれば、その都度データ入力する手間が省け、利便性が高まります。また、差額要因分析の精度を上げることも可能です。

なお、エクセル管理から移行したり、外部システムと連携させたりする際は、導入コンサルタントの支援を得るとスムーズでしょう。

利用範囲の確立

予算管理システムによって対応できる業務の幅が異なるため、自社が必要とする業務範囲に対応しているのかが重要です。全社的な予算管理だけに用いるのか、プロジェクトごとなど細部の予算管理にも使いたいのか、人事評価の分析など予算管理以外でも使用するのか、あらかじめ利用範囲を決めておきましょう。

同じレポートでも上場審査向けなのか、投資家向けか、社内資料用かなどで様式・内容が異なります。用途が社内での予算管理のみであれば、比較的シンプルなシステムで十分かもしれません。一方、利用範囲が広いなら、汎用性の高いシステムを選びましょう。将来的なニーズも見据えて選ぶことも必要です。

予算管理システムの紹介

Oracle EPM Cloud-Planningは、予算管理や管理会計における分析・レポートを一元的に行えるクラウドサービスです。以下、導入メリットについて紹介します。

低価格・短期間での導入

クラウドサービスのため、サーバーなどハードウェアの装備やアプリケーションのインストール作業などは要りません。時間と労力をかけず、短期間で導入できます。設備費用や人的コストが抑えられるため、初期費用を大幅に下げられます。自社の規模に合わせ、必要な機能のみのシステム導入後、企業規模の拡大や業務案件の拡充、利用者の増加に対応し、システムを拡張することも可能です。

業務の効率化

データ収集・集計が自動で行われるため、従来のエクセルでの管理に比べて工数が大幅に削減され、業務効率化につながります。リアルタイムでデータ集計結果を確認できるので、分析に多くの時間を割いて、より精度の高い予算統制を行えるようになるでしょう。
Oracle EPM Cloudにアプリケーション保守・運用業務のサービスを組み入れて、利便性を高めることもできます。

高度な分析

様式が固定化した定型レポートから、臨機応変に対応できる自由分析や経営陣向けダッシュボード、モバイル仕様まで装備されています。自社における予算管理の役割や目的に合わせたレポート・分析が可能です。

予算管理のシステム化を検討する際は、以下の記事も参照にしてください。
アンカーテキスト:予算管理をクラウドで実現するソフトウェアサービス15選
アンカーテキスト:予算管理システム一覧

まとめ

予算統制とは、予算と実績の数値を比較し、その差異を減らしていく取り組みです。差異があった場合はその原因を分析し、それに応じた解決策を講じて経営改善に活かします。どの企業にとっても必要ですが、上場を目指す企業にとっては重要な審査項目となります。
予算統制を成功させるには、日々の実績値を把握し、1カ月など一定期間ごとに差額要因分析を行い、改善策を講じるというPDCAのサイクルを繰り返すことが必要です。

リアルタイムで進捗を確認し、実績値の集計体制を整備するには予算管理システムの導入が有効です。導入の際は自社の利用範囲を決め、費用対効果を確認し、既存システムとの連携が可能かチェックしてください。
予算管理の分析・レポートを一元化できるOracle EPM Cloud-Planningなら、低コストでの導入が可能です。

今後の予算管理制度についてさらに情報を得たい方は、以下の記事をご覧ください。
アンカーテキスト:激変する経営環境 ― 先読みのできない時代の経営管理〜第4回 ビジネス計画の統合と予算管理制度の変革〜

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