財務最高責任者が考えるべき事業の見える化は、How (どうやって)から始まってはならない

 2021.10.14  ひので監査法人 羽入 敏祐 氏

[E-Book]データ主導の意思決定に勇気を持ち続ける

多くの財務最高責任者は、事業の見える化を推進する方向に舵を切り出しました。しかし、そのやり方はHow (どうやって)が中心になりがちな状況です。財務最高責任者が考えるべき事業の見える化は、How(どうやって)より、What(何が見たいのか?), Why(何のために見たいのか?) を理解することが最も重要です。本記事では、事業の見える化を推進するために財務最高責任者は何を考えるべきかをご紹介します。

効率化・分業化の悪影響

以前から頻繁に使われてきた「見える化」という言葉があります。一人より二人、5人より10人というように、多くのヒトがひとつの目標に向かって活動すれば、おのずとその結果はより大きくなることが期待されるのは、ビジネスだけではなくスポーツや学校行事など全ての組織グループで求められる結果かもしれません。

ビジネスにおいて、事業規模の拡大は、ますます多くのヒトの関与を伴うとともに、仕事をより正確に・効率的におこなうため、おのずと仕事の分業化が進んできました。

その結果、当初は、ひとつの目標に向かって活動してきたものの、いつのまにかお互いが全く別のことをおこなうことになり、その規模が大きくなればなるほど、他のメンバーが何をしているかすらわからなくなってしまう、いわゆる業務のブラックボックス化が進行してしまうものです。

程度の差はあれ、誰が何をしているのか見えなくなるような機会にであったこと、多くのビジネスマンの方は経験があるのではないでしょうか。まさにそのような境遇にある方も多いかもしれません。

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ブラックボッックス化が招く弊害

企業活動の効率化とともに業務の分業化が進み、お互いが何をしているかを気にし始めなくなる、そんなことから徐々に侵攻し始める仕事の「ブラックボックス化」は、いつしか当初の目的とは違う方向に業務の流れを変えるだけでなく、事業のゴールや目的に逆行することすらあるものです。

そのような自体を食い止めるために、業務の見える化が様々な活動において随所に取り組まれています。例えば、社内マニュアルの作成、営業管理ツールへの活動記録の入力などなど、見える化の目的は違えど、随所に社内の定期的モニタリングが行われてきました。こうした不断の取り組みが、サービスの向上、あるいは社内業務の効率化に寄与することは周知のとおりです。

しかし、わが社にはマニュアルがあるから大丈夫などと考える企業は、考え方そのものが甘いのではないでしょうか?

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マニュアル化しても統制を効かせることの難しさ

マニュアルはあっても、マニュアルを使わない、自分に都合よく解釈、あるいはマニュアルそのものを勝手に変えているなど自体は変化し組織の硬直化やブラックボックス化をもたらしているのです。その結果改訂作業が徐々に行われなくなり、マニュアルの存在自体を忘れられていくことも多くあるでしょう。事業活動は市場環境の変化や顧客のニーズの変化や多様化、取り巻く競合などの出現に伴い、徐々に形を変えるべきものです。そうしたなかで、マニュアルを実態に合わせて都度変えていくことは意外に煩雑さを伴います。IPOで社内外の方が必死につくったJSOXの3点セットも時の経過とともに形骸化し、既存のフローだけでなく、本来作成すべき3点セットもそんな憂き目にあっているケースもあるのではないでしょうか。

重要な業務だからこそつくったマニュアルがいつしかマニュアルを変えること自体が大仕事としていることすらあるかもしれません。

人的リソースをふんだんに準備できた時代はまだ経営にもたらすインパクトは少なかったかと思います。しかし、経済環境が悪い方向に進むとき、事業そのものが消失することすら想定する必要があり、そうした社内対応策として業務プロセスの抜本的見直しと業態のスリム化を行う、そんなとき、作業を伴うマニュアル改定にどれほど真剣に取り組めることでしょうか。

10年先どころか、3年先も見通せない、このご時勢、柔軟な対応力を求められるなか、ひたすらマニュアルを作り続けるのは土台無理なことだと割り切ってもよいのかもしれません。

日本においても、多くの企業が、社内外のリソースをふんだんに割きながら、あるべき形を模索するため、見える化の取り組みは行われてきたことでしょう。記録の事務負担を伴う見える化と、負担を伴わない見える化いずれもありえますが、かぎりあるヒトのリソースを有効活用するためにも、負担無き見える化を選択することが必要です。事業が大きくなればなるほど、見える化は困難を極め、結局、現状維持をせざるを得ない、過去に成功を重ねてきた企業であればあるほど、見える化の作業は困難を極めるかもしれません。

だからといって、現状維持を善し、3年先すら見えないままでは、リスクは増大する一方でしょう。例えば、米国ではUBERという全く新しいタクシー事業で数年で世界一のタクシー会社が出現しました。このように、現在の市場において、新たな仕掛けやテクノロジーを持って、全く想定外のところからコンペティターが突如現れることが今後も多く起こるでしょうし、新規市場参入企業はあえてそこに経営機会と捉まえるわけであり、進化しない会社は到底太刀打ちできなくなります。

システムによるリアルタイムな事業の見える化が重要

どのような業種であれ、新たなテクノロジーの幕開けとともに代わる活動のあり方を見える化を通じて、別目線で捉える機会と位置づけ、粒度の細やかな経営活動の情報収集をおこなうことで、いわゆる業務効率化を進めるだけでなく、願わくば、新たな付加価値の創造の糸口となることを期待したいです。

見える化は、経営者やリーダーが何を見るべきか、何のために見るべきかを理解した上で、どのように見える化を考えるべきかが最も大切です。特に経営においては、見るべき指標は非常にシンプルに標準化されようとしています。変化する市場環境で視界の悪い経営の操縦桿を握るには、コックピットのように目的地に向かうためのタコメータをしっかりセットして見える化を進める必要があるかと思います。

皆様の企業で見るべき指標は何でその目的は何か、今一度議論してみてはいかがでしょうか?

著者紹介

hanyu-sama

ひので監査法人 羽入 敏祐 氏

監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入所、上場企業等監査業務に従事。会計事務所にて会計・税務全般およびM&A関連各種業務事業会社では経営管理実務、IPO準備全般に従事。監査・経営実務経験を踏まえたITインフラ提案力に強み

ひので監査法人について

ひので監査法人は、2009年5月 設立、大手監査法人の監査経験者と事業会社のマネジメント経験者から構成され、上場準備、中堅国内上場企業向けの効率的監査サービス、バックオフィス支援サービスの提供をしております。信頼される会計プロフェッショナルとしていかに成長し続けていくかを日々模索し、監査ならびにバックオフィス構築サービスの品質維持・向上に取り組んで参ります。

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