経営分析と正しい意思決定のため、経営者が意識すべき「プロジェクト会計」とは

 2019.02.07  クラウドERP編集部

プロジェクト会計とは何でしょうか。

財務会計や税務会計、管理会計という言葉は聞いたことがあっても、プロジェクト会計には慣れない経営者も多いはず。

プロジェクト会計は正しく会計処理が行えるだけでなく、経営分析にも非常に有用な手法です。この特集ではこれからの経営戦略に欠かせないプロジェクト会計を紐解いていきます。

プロジェクト会計と管理会計

プロジェクト会計が何かを知る前に、まずは会社における「会計」を知りましょう。

会計は、制度会計と管理会計。この2種類に大きく分けられます。

制度会計はさらに、利害関係者への説明のための財務会計と税金を納めるために必要な税務会計とに分かれます。これらには法律で決められたルールがあり、経理部門が作成するのが一般的です。

一方、管理会計は会社独自の考えに従って会社の損益などを管理していきます。プロジェクト会計も、独自のルールでプロジェクトの進捗や収益を管理しやすくする手法のひとつであると言えます。

図1-1

企業における管理会計とは

「会社独自の考えで管理」というと複雑そうに見えますが、管理会計は実はシンプル。

たとえば複数の拠点を持つ企業では、各地域の責任者が売上や利益、コストを個別に計算して報告していきます。これらは法律で定められたルールにのっとった会計手法ではありません。こうした「会社ごとの会計の管理」も管理会計の一種なのです。

管理会計で見るもの ① 各部門でのコスト・損益など

管理会計では、各部門の売上や利益を正しく管理していくことが求められます。部門ごとの実績を可視化した管理会計に基づいて、経営者はその事業への投資あるいは撤退の判断を行うことができます。

事業部門ではなく地域別、事業別、商材別、チャネル別、また会社規模によっては個人別の業績評価を管理会計で明らかにする、ということもあるかもしれません。

管理会計で見るもの ② 独自のKPI管理

営業マン1人あたりの売上(生産性)や工場の生産性といった、会社の重要なKPIも管理会計で管理していきます。

自動車を販売する会社であれば、

  • 何台売れたか
  • いくらの単価で売れたのか
  • どの地域で売れたのか
  • その地域のシェアはどの程度なのか

など、主要なKPIの管理が必要不可欠であることは理解できるでしょう。

小売業ならば、

  • 店舗ごとの顧客人数
  • 顧客単価
  • 顧客の属性(どんな人がお客さんとして来店しているか)

というように、KPIを管理することは大変大切です。管理系は、会社ごとの重要な数値を目標化して管理するだけでなく、最大化するための事業推進に活用していきます。

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プロジェクト会計の意義

プロジェクト会計はプロジェクトごとの収益をルールに則って整理し、プロジェクト単位の収益やコストを明らかにできます。プロジェクトに焦点を定めて売上や費用などの数値を追うことで

  • 社内のどのプロジェクトが収益を上げているのか
  • どのエリアのプロジェクトが好調なのか

といった、より詳しい分析が可能になるのです。

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プロジェクト会計を導入することで経営者、プロジェクトマネージャー(以下PM)にとってどんな意義があるか、詳しく見ていきましょう。

経営者にとってのプロジェクト会計

プロジェクト会計によってもたらされるものとして、利益や顧客満足の可視化と経営戦略の貢献が挙げられます。

1.プロジェクトの利益や顧客満足の可視化

プロジェクト会計を活かすと、プロジェクト単体の利益、ひいては顧客に提供できている価値がなにかをプロジェクトに関わっている社員全員に意識させることが可能です。

顧客の求めている通りのサービスを提供し、顧客満足を得て、それに見合う報酬を得る、それによってプロジェクトの利益を確保する……というサイクルを回し、中長期に渡る健全な成長が見込めるようになります。

一方、売上や受注件数だけを注視していると、売上至上主義に陥り、社員に必要以上の営業努力を強いてしまう可能性があります。自社のサービス供給能力を超えてしまうと現場が疲弊してしまうばかりでなく、クオリティも下がり継続的な顧客との関係が期待できなくなるかもしれません。

2. 経営戦略への貢献〜プロジェクトから知見を得て生かす

適正なプロジェクト会計は、経営戦略へ大いに貢献します。

  • 自社のプロジェクトの提供先でより利益を出せているのは、どの業種であるのか?
  • 企業規模はどの程度であるのか
  • どのPMの関わっているプロジェクトがより利益を出せているのか?

プロジェクト会計で数値化することで、利益を出しているプロジェクトの特性などが見え、自社の営業や製品開発に活かせる情報が見えてくるでしょう。

プロジェクトマネージャーのためのプロジェクト会計

PMやプロジェクトオーナーは担当プロジェクトを契約した納期で納品するとともに、当初想定していた利益を出す責任を負います。プロジェクトで利益が出ているかどうかを判断するために、プロジェクト会計は必要不可欠です。

プロジェクト会計で利益やコストを管理していくと、以下のようなことが適切に判断できます。

  • 納期を守るために何人のメンバーをアサインできるのか?
  • 何人までなら想定している利益を確保することができるのか?
  • 納品後の追加対応が必要になった場合、かかる経費はいくらになるのか

万が一顧客と約束した納期を割ってしまう場合だけでなく、人員の増強など自社に支援を求めたいときにも説明責任が生じます。プロジェクト会計は、数値をもって客観的に判断を下すための材料になるのです。

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プロジェクト会計における注意点

プロジェクト会計を導入するにあたって、いくつか注意したいことがあります。

収益認識を統一する

複数のプロジェクトを俯瞰するためには、収益認識(原価計算)を統一する必要があります。認識が統一されてはじめて、プロジェクトごとの経費が正しく比較できます。

もちろん、会計期間をまたぐ際の収益認識などは制度会計上のルールに則って処理する必要があります。

売上計上のタイミングを計算する

経営者としても、重要プロジェクトの進捗や損益状況は把握しておきたいもの。

その際の売上と原価をどのように認識していくのかがプロジェクト会計の肝の部分です。特に会計期間をまたぐ場合は、会社の決算報告等にも影響が出るため注意が必要です。

業種業態によって、売上げが立つタイミングは異なります。小売店や飲食店などは品物やサービスが顧客の手に渡った時点ですぐ売上が発生しますが、ビルの建設や開発受託などの場合は注文を受ける・商品を製作して納品する・発注者が検収を終えるというステップを踏んではじめて売上とみなします。

後者の場合、契約を締結してから商品(サービス)が顧客に提供されるまでに時間がかかるため、サービス提供側は原価(工事の費用)などがかかっています。

そのため、契約から検収まで実態に即して収益を計上しなければなりません。たとえば、プロジェクトの進捗度を基に収益を割り出すという方法もあります。この方法を使えば、契約締結から検収までの期間が長くても、進捗度に応じて収益として計上できます。

通常そのプロジェクトの工程をプロジェクトマネージャーなど責任者がWBSを作成し、提供が完了できるまでの作業やそれにかかる原価を見積もります。この段階でできるだけ利益を確保しつつ納期遅延等が発生しないように人員等のリソースを確保するのが重要です。

プロジェクト会計にかかる経費配賦を定める

費用に算入する項目やその割合は業界やプロジェクトによって異なります。

プロジェクトでコストになるのは直接プロジェクトに関わるメンバーだけではありません。厳密には、フロントオフィスを支える経理や人事などバックオフィス担当者の人件費や社屋の賃貸費用といったもの(全社経費の配賦計算)も含まれます。

これらの隠れたコストもプロジェクトに応じて適切に割り振ることで、売上・粗利のみでなく営業利益まで考えた損益分岐を見ることができるのです。各プロジェクトへの振り分けはプロジェクトの売上高・原価・人員・時間等を基準に配賦されることが多いようです。

正確な収益認識は業界や業態等によって異なるため、経理及び税理士等専門家と協議をした上で定める必要があります。

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プロジェクト会計をはじめるために必要なシステム

プロジェクト会計には専用のシステムが欠かせません。未対応の基幹システムを流用するのも不可能ではないものの、不要な入力ルールが増えてしまったり既存システムにかなりの改修を加えねばならないなど、多くのデメリットが生じます。

基本的にはプロジェクトごとのお金の流れを正確に、かつ簡単に把握できるツールを備えていると良いでしょう。同一のシステム内に顧客との接点履歴を記録する、という企業もあります。

こうした従来の仕組みを最大限活かす仕組みを構築しても良いでしょうし、あるいは、営業支援スタッフの工数を削減するためによりフレキシブルなシステムの導入を検討しても良いと思います。その場合、営業支援スタッフのリソースをよりクリエイティブな部分に振り分けることも可能です。

ほか、必要となる機能は以下の2点です。

プロジェクトごとのフラグが設定できる

営業マン個人や支店ごとの損益を出したいときは、売上から原価と経費を引くだけで求めることができるでしょう。しかし、特に複数の部署や人員が関わるような大きなプロジェクトごとの損益となると少々複雑になってきます。

そこで、プロジェクトごとに専用の印(フラグ)を設定できるシステムを使うと、経費をプロジェクトに紐付けて計算できるため、プロジェクトの損益を可視化しやすくなります。

フレキシブルな試算システムを備える

プロジェクト進行時は、さまざまな事情で売上と経費が変動していきます。

クライアントから追加の仕様要望があれば契約時より多く売上を計上できますし、新たに人員を投入したり設備投資をすれば、その分経費も計上されていきます。プロジェクトの状況によっては返品もありえます。

逐次変わっていく受発注の計上をフレキシブルに登録できると、プロジェクトに関わるメンバーにとっても非常に有意なシステムであると言えます。

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プロジェクト会計とシステム導入にあたって

ここまで、プロジェクト会計には専用のシステム導入が望ましいと述べてきました。しかし、専用システムを導入するだけですべてが円滑に進むというわけでありません。

新しい仕組みを導入するなら現場への教育が必要ですし、PMもシステムの仕組みを正しく理解し、プロジェクトを円滑に進められるように運用せねばなりません。なにより、取得したデータを分析して組織運営に活かすのは経営者自身であることを忘れてはいけません。

そのために、導入時は自社のビジネスにマッチするシステムか、ベンダーは信用できるのかなどをよく検討することをおすすめします。特に会計領域では自社の情報システム部と経理担当者だけでは判断できない場合もありますので、詳しく相談できるベンダーだと安心でしょう。

システム導入後も、より良い運用方法を考え続ける必要があります。

総括

プロジェクト会計は正しく会計処理が行えるだけでなく、経営分析にも非常に有用な手法です。信頼できるプロフェッショナルに相談して自社のビジネスに合ったシステムを導入しましょう。

最も大切なことは、それプロジェクト会計を含む、管理会計を推進していく自社の人員が仕組みの意図を理解しプロジェクトを正しく管理していくこと、また経営層がそのための環境を整えていくことです。

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