時間外労働の上限規制とは? 月の上限は45時間に改正!

 2022.04.28  クラウドERP編集部

新入社員、新規配属の方必見!ERP入門特集

法改正によって月の時間外労働上限が設けられ、罰則も適用されるようになりました。ペナルティの対象にならないよう、改正後の上限規制や時間外労働をさせたいときの手続きなどを把握しておきましょう。本記事では、時間外労働の上限規制や、規制から除外・猶予される業種などについて解説します。

時間外労働の上限規制とは? 月の上限は45時間に改正!

時間外労働の定義を把握しよう

法定労働時間・所定労働時間の意味

法定労働時間とは、労働基準法により定められている労働時間の上限です。1日8時間、週40時間と決められています。

一方、所定労働時間とは、企業の就業規則などで定められた労働時間です。自由に決められるわけではなく、法定労働時間の範囲内で設定しなくてはなりません。

時間外労働とは?

時間外労働とは、労働基準法で定められた労働時間の上限をオーバーして働くことを指します。たとえば、「1日に10時間労働させた」といったケースが該当します。なお、従業員に時間外労働をさせるには、36協定を締結したうえで労働基準監督署長への届け出が求められます。

時間外労働と所定時間外労働の違い

企業の就業規則などで定められた労働時間の上限を超えて働いたケースが、所定時間外労働に該当します。たとえば、「就業規則で労働時間が9時から15時までと決まっているのに、17時まで働いてもらった」といったケースです。

法律で定められた時間外労働は、1日8時間、週に40時間を超えて働いた場合が該当します。そのため、企業が定めた所定労働時間をオーバーしていても、法定労働時間を超えていなければ時間外労働にはならないので、注意が必要です。

月の時間外労働の上限規制とは

法改正によって、月の時間外労働の上限が規制されました。法改正により従来とはさまざまな部分が変更になったため、企業は正しく覚えておかねばなりません。

時間外労働の上限規制が規定

もともと、労働基準法では法定労働時間が定められており、それを超えて働くには36協定の締結が不可欠でした。しかし法改正前は罰則による強制力がなかったため、特別条項の適用により、実質労働時間の上限はないも同然でした。それが法改正により特別の事業がない限り月45時間、年360時間を超えることはできなくなりました。

特別な事情があり、労使が合意する場合特別条項を適用することは可能ですが、特別条項にも上限のルールが定められています。36協定と特別条項については後ほど詳しく解説します。

また、法改正後は罰則が科されるおそれがあるため要注意です。上限違反の罰則は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。罰則の適用により、コンプライアンス意識が低い企業、ブラック体質な組織といった印象を与え、社会的な信用を失うおそれもあります。  

2020年4月より中小企業に適用

時間外労働の上限規制は、2019年4月に施行されましたが、当初は大企業のみが規制の対象となっていました。中小企業に適用されたのは、2020年の4月からです。

なお、自社が中小企業かどうかは、資本金額や出資総額、労働者数などで判断できます。たとえば、小売業であれば資本金額または出資総額が5,000万円以下、常時使用の労働者数が50人以下なら中小企業に当たります。

時間外労働には「36協定」が必須

36協定とは?

36協定とは、従業員に法定労働時間を超えて働いてもらうときに締結する協定です。労働基準法第36条で定められているため、36協定と呼ばれています。法定労働時間を超えて働いてもらうときは、従業員とのあいだで協定を結び、なおかつ労働基準局監督署長へ届出もしなくてはなりません。

特別条項付き36協定における時間外労働の上限とは?

36協定で決められた労働時間の上限をさらに超えて働いてもらいたいときは、特別条項付き36協定の締結により可能です。ただ、この協定は常時締結できるわけではなく、イレギュラーな事態の発生や特別な理由があるとき臨時的に締結できます。たとえば以下のような事態です。

  • 大規模なクレームへの対応が必要なとき 
  • 納期が差し迫っているとき
  • 工場で機械トラブルが発生したとき
  • 繁忙期

なお、特別条項付き36協定にも、以下のように上限があるため注意が必要です。

  • 時間外労働は年720時間まで
  • 時間外労働と休日労働の合計は月に100時間未満
  • 2~6カ月の時間外労働と休日労働の合計が、1月あたり80時間以内
  • 月45時間の時間外労働を超えられるのは年6カ月まで  

上限規制から猶予・除外される業種

月の時間外労働の上限が定められている一方で、猶予または除外されている業種も存在します。

建設事業の一部

 
建設事業の一部は、2024年の3月31日まで上限規制の対象外です。同年4月1日以降は上限規制が適用されるものの、災害の復旧や復興に関わる事業については適用されません。これは、災害からの復旧や復興は急務であり、長時間労働もやむを得ない側面があるためです。

自動車運転業務

自動車運転業務に携わる人も、2024年3月31日まで上限規制が適用されません。なお、適用が猶予されるのは、あくまで自動車運転業務に携わる人のみです。自動車運送事業を営む企業が猶予されるわけではありません。たとえば、運送会社の運行管理者や事務員などは猶予の対象外です。

医師

医師も同様に、2024年3月31日まで規制の適用外です。2024年4月1日以降は適用が始まるものの、時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間未満、2~6カ月の平均が1月あたり80時間以内の規制はかかりません。医師は人命にかかわる職業であり、業務の特殊性を鑑みた対応となっています。

鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業

鹿児島県および沖縄県の砂糖製造業については、月100時間未満、2~6カ月の平均80時間以内の規制は2024年3月末日まで適用外です。同年4月以降からはすべての規制が適用されます。当該事業は限定された季節に行われる事業であり、人材確保が困難であることから猶予期間が設けられました。

新技術・新商品などの研究開発業務

新技術や新商品などの研究開発業務に携わる人に対する労働時間の上限規制はありません。これらの業務は誰でもできるわけでなく、高度に専門的な知識や技術、スキルが求められます。こうした理由から、当該業務には一定の特殊性があると判断され、適用が除外されました。

ただ、労働時間が規定時間を超えたときは、従業員の健康に配慮し、医師の面接指導を受けさせなくてはなりません。会社がこれを怠ると罰則の対象となるため注意が必要です。

2023年4月から時間外労働の割増賃金率が引き上げに

月60時間を超える時間外労働者に対し、大企業は50%の割増賃金を支払わなくてはなりません。この割増賃金率が適用されていたのは大企業のみでしたが、2023年4月からは中小企業も50%の利率が適用されます。

時間外労働の賃金計算は、「1時間あたりの基礎賃金×割増率×時間外労働時間」で計算できます。たとえば、1時間あたりの基礎賃金が1,500円、時間外労働の時間が80時間であれば、その分の賃金は次のように算出されます。

【法改正前】
1,500×1.25×80時間=150,000円

【法改正後】
1,500×1.25×60時間+1,500×1.5×20時間=112,500+45,000=157,500円

月時間外労働  上限を超えないよう管理するために押さえておきたい用語を解説

経営者が適切な労務管理をするためには、改正後の労働基準法などの法律や、「働き方改革」の内容などをしっかり押さえておくことが大切です。ここでは、時間外労働の上限を超えないようにするために、押さえておきたい用語について解説します。

「時間外労働」の定義とは?

時間外労働の時間を集計する際には、「法定労働時間」を上回る時間についてのみ行います。法定労働時間は1日8時間、週40時間以内なので、これを上回る場合は時間外労働に該当するということです。

先述したように、時間外労働は「所定労働時間」を上回る時間ではない点に注意が必要です。たとえば、所定労働時間が1日7時間の場合、法定労働時間である1日8時間、週40時間以内を上回った分のみが時間外労働として集計されます。

「休日労働」に該当する休日とは?

休日労働の日数や時間を集計する際には、労働者が「所定」の休日に働いた時間ではなく、「法定」休日に働いた時間を集計します。労働基準法第35条で、休日は毎週少なくとも1回与えることが必要と明記されています。会社が定めた「所定」の休日に関係なく、週1回または4週4回の「法定」休日に労働した時間を、休日労働として集計するということです。

時間外労働管理対策にERPを活用しよう

時間外労働管理を適切に行っていないと、特定の部署や従業員の長時間労働を見逃してしまい、罰則の対象になるおそれがあります。このようなリスクを回避し、適切な時間外労働管理を行うために、ERPを活用しましょう。

ERPとは?

ERPとは「Enterprise Resources Planning」の略であり、日本語では「企業資源計画」や「企業資産計画」などと訳されます。一般的に言われるERPは、基幹業務やデータを集約したシステムを指し、導入によって自社が保有している多様なリソースの有効活用が可能です。

製品によって違いはあるものの、ツールとしてのERPには財務や会計管理、予算管理、販売管理、顧客情報管理、プロジェクト管理、人事管理といった機能が実装されています。そのため、企業活動で用いるあらゆるデータを一元的に管理できるほか、リアルタイムでさまざまな情報の把握が可能です。

ERPを導入していないケースでは、受発注や会計、在庫などの情報が社内に散在してしまいます。そのため、求める情報を取得するにも時間がかかり、スピーディーな対応もできません。在庫の確認にも余計な時間を要してしまった結果、顧客が他社に流れるなど機会損失の発生リスクもあります。

ERPを導入していれば、あらゆるデータを連携でき、なおかつ一箇所に集約して管理可能です。取得したデータをほかのシステムへ人力で転記する、といった作業も不要になるため、ヒューマンエラーの回避にも有効です。ミスや非効率な業務の排除に役立つほか、業務の属人化も防げます。

ERPで時間外労働管理を行うメリット

ERPには、人事や労務管理領域に対応できる機能も実装されています。そのため、ERPを導入すれば、従業員の労働時間や時間外労働の時間などの管理も可能です。

ERPで時間外労働管理を行うメリットのひとつは、不正の回避につながる点です。タイムカードに打刻された内容に基づき、担当者がデータ入力や計算などを行うケースでは、不正が発生するおそれがあります。たとえば、違法な長時間労働をしている従業員のデータを担当者が改ざんする、といった具合です。ERPを導入すれば、システム上で打刻できるうえにデータがそのまま記録されるため、このような不正の回避につながります。

ヒューマンエラーを防止できるのもメリットです。人力でのデータ入力や計算には、どうしてもミスの発生がつきものです。システム上で勤怠情報や時間外労働時間の管理を行えるようになれば、人力によるデータ入力や計算をなくすことができ、ヒューマンエラーを低減できます。

長時間労働が慢性化している部署や従業員を特定できるのも、ERP導入で得られるメリットです。違法な長時間労働を早期に発見でき、原因の特定と改善への取り組みも進められます。

また、ERPの導入は業務効率化にもつながります。従来のように担当者が手作業で業務を遂行する必要がなくなるうえに、さまざまなデータをスピーディーに取得できるため業務を効率化でき、生産性向上にも有効です。

ERP活用時の3つの注意点

ERPの導入で得られるメリットは多々あるものの、覚えておくべき注意点もいくつかあるため、ここで押さえておきましょう。導入の際には目的と課題を明確にし、そのうえで費用対効果が高く、従業員が使いやすいシステムを選定しなくてはなりません。

1.目的と課題を明確にする

近年、業務効率化や生産性向上を目的に、ERPの導入を進める企業が増えました。このような状況を鑑み、「自社もERPの導入を進めなくては」と焦りを覚える企業経営者や担当者の方もいるかもしれません。

ただ、「他社も導入しているから」「何となく効果が期待できそうだから」といった理由で安直にERPを導入しようとすると、失敗する可能性があります。漠然とした理由で導入を検討するのではなく、ERPを導入して何を達成したいのか、どのような課題を解決したいのかを明らかにしましょう。

目的や課題が明確になれば、どのような機能が必要かも見えてきます。目的の達成や課題の解決に要する機能を実装した、自社に最適なシステムを導入できるため、まずは目的や課題を明確にすることから始めましょう。

あらかじめ業務課題を抽出しておくとスムーズです。すべての課題を解決できないケースも考えられるため、その場合は優先順位を付けつつ取捨選択をしましょう。

2.費用対効果の高いシステムを選ぶ

導入したにもかかわらず、費用に見合った効果を得られないといったことがないよう、システムの選定は慎重に行いましょう。安価な製品なら導入コストを大幅に抑えられる可能性がありますが、使える機能が少ないとなれば大きな成果は期待できません。

では、高額なERPを導入すればよいのかと言えば、これも注意が必要です。高額なERPには豊富な機能が実装されているケースが多く、高度な活用が可能です。しかし、多くの機能が実装されていても、使いこなせなければ宝の持ち腐れです。このケースでも費用対効果が高いとは言えません。

特に、オンプレミス型のERPを導入する場合には、費用対効果を意識した慎重な選定が求められます。オンプレミス型は導入に多額の初期費用を要することが多いため、導入したあとで「思ったほどの効果を得られなかった」となるとリカバリーしにくい状況となります。

おすすめなのは、クラウドERPです。クラウドERPはオンラインで手軽に導入でき、オンプレミス型のような多額の初期費用も不要です。しかも、ERPに求められる一般的な機能を網羅していることが多いうえに、常に最新バージョンを利用できます。

また、クラウドERPならメンテナンスも不要です。自社で点検やメンテナンスをしなくてよいため、管理や運用が楽であり、余計なコストもかかりません。

3.操作性も考慮する

ERP選定時には、操作性も考慮しなくてはなりません。いかに優れた機能を有していたところで、操作が複雑で扱いにくいようでは、利用できる従業員が限定されてしまい、業務の属人化につながります。場合によっては、導入したもののほとんど使用されない、といった状況にも陥りかねません。

このような事態を回避するため、導入前にシステムの操作性はチェックしておきましょう。シンプルで誰もが容易に扱えるシステムが理想的です。気になるERPを見つけたのなら、インターネット上で操作性に関する口コミをリサーチするのもおすすめです。

すべての従業員が使いこなせるシステムを導入できるよう、事前に従業員のITリテラシーを確認しておきましょう。また、トライアル利用が可能なERPであれば、実際に実務で試用したうえで導入するかどうかを検討できるためおすすめです。

まとめ:時間外労働の上限規制を守るためにクラウドERPの導入がおすすめ

働き方改革の一環として、これまでは対象外であった中小企業にも規制が及ぶようになりました。法律を守らないと懲役刑または罰金刑に処せられてしまいます。経営者にとって、上限規制を守り、適切な労務管理を行うことは重要です。

労務管理を適切に行いたい際には、クラウドERPの導入がおすすめです。クラウドERPを導入して活用することで、さまざまな労務リスクを早い段階で回避できます。適切な労務管理をするために、クラウドERPの導入をぜひ検討してみてください。

ニューノーマル時代の経営基盤構築クラウドERP&EPMの導入指南

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