海外法人を設立するメリット、デメリットを理解する

 2020.05.14  クラウドERP編集部

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事業拡大を続ければ、いずれは海外展開を検討することになるでしょう。その際に悩むポイントが「海外法人(現地法人)を設立するか否か?」です。また、海外法人をゼロから設立する以外にも、M&A(合併&買収)によって海外企業と事業統合し、海外展開する方法もあります。本記事でご紹介するのは、海外法人を設立するメリットとデメリットです。両側面から法人設立の要否について検討してみましょう。

海外法人を設立するメリット、デメリットを理解する

海外法人を設立するメリット

メリット1. 現地でのビジネスチャンスを広げる

例えば製品を販売するのであれば日本企業が国内にいながらにして、越境ECを通じて海外にビジネスを拡大することも確かに可能です。しかしながら、現地に法人を構えている場合と比較すると、流入する情報の量・質・スピードが圧倒的に異なります。やはり現地で法人を設立し、その地域に根差したビジネスを展開する方が国や地域のトレンドをいち早くキャッチし、それに合わせたビジネスを展開できます。

また、人材や人脈ネットワークに関してもやはり現地に法人がある方が変わってくる点が多くなります。日本は四方を海に囲まれた島国なので、陸続きの国々と違ってグローバル視点でビジネスを展開する感性が磨かれにくいという問題があります。そのため、コストや労力をかけてでも海外法人を設立し、試行錯誤を重ねながら現地でのビジネスを展開した方がグローバル的感性を磨いたり、海外展開のノウハウを積み上げられたりするなどのメリットもあるのです。

メリット2. ブランドイメージの向上

ブランドイメージが事業に与える影響は絶大です。「初頭効果」という心理学的現象をご存じでしょうか?これは、ポーランドの心理学者であるソロモン・アッシュが1946年に行った印象形成実験によって提唱されたもので、「相手に与える印象がその後の思考や行動を左右する」ことを証明しています。

人は誰かと初めて対面した際に、第一印象で「良い人」と感じればその印象がある程度継続します。その逆もまた然り。しかも、「良い人」という印象を感じるとその人の良いところばかりに目が行くという心理的行動が明らかになっています。

この初頭効果に代表される人間の心理学は企業のブランドイメージでも同じことです。単純に「海外展開している企業」と聞くと、大企業ではないにせよ「事業が軌道に乗っている」や「何かすごいビジネスを展開している」といった印象を受けることがあります。こうしたブランドイメージの形成が事業そのものに強く作用し、新しいビジネスを引き込む要素となります。

メリット3. 資金繰りにおけるリスクヘッジ

海外展開せずとも、海外企業と取引をしている企業はたくさん存在します。つまり、多くの企業は日本円以外の通貨でビジネスを展開していることになり、実はそこに資金面を不利に働かせる要素が隠れています。

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海外法人を設立すれば、現地銀行とも取引を行えるため、海外企業との資金決済のスピードや手数料の面で優遇を受けることができます。日本の銀行を介して決済するよりも圧倒的にスピーディですし、余計な手数料もかかりません。その結果、国内本社のビジネスにも良い影響を与えます。

さらに、海外通貨による資産を持っておくことで、日本円に比べて非常に高い銀行金利で資産運用することも可能です。日本銀行がまとめたデータによると、日本の店頭表示金利の年間平均は定期預金で0.009~0.013%です。つまり、1,000万円預けても年間900~1,300円しか増えません。そもそも、現代の日本の銀行は資産運用には圧倒的に不向きです。

参考:日本銀行『預金種類別店頭表示金利の平均年利率等について

一方、海外展開先として近年人気を集めているベトナムは利用する銀行によって定期預金金利が年7%弱にも上ります。ベトナム国内最大手の五大銀行のひとつ、BIDV(ベトナム投資開発銀行)の2019年時点での年間定期預金の金利は6.9%でした。1,000万円預ければ、1年後には1,069万円に増えているということです。もちろんインフレリスクや為替リスクも考慮する必要がありますが、海外銀行に資金を預け入れていれば資産運用も可能ですし、為替変動によって円安・円高になってもリスクヘッジを取り、ビジネスを遂行できます。

メリット4. 海外拠点を持つことでの節税対策

日本の法人税(事業所得税)は約30%、法人順民税なども含めると所得の半分ほどは税金で引かれることになります。一方、法人税が低い国でビジネスを展開すれば、節税できるケースが少なくありません。

例えばシンガポールの法人税は17%であり、日本に比べると10%以上低い税率になっています。また、シンガポールには税制優遇政策が多く、それらを利用することで17%よりも低い税率でビジネスを展開することも可能です。

シンガポール以外にも、東南アジア諸国をはじめとした発展途上国では法人税が安い国がいくつかあります。そうした国で海外法人を設立し、現地にビジネスの根を張ることで税金対策になるケースが多いのです。

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海外法人を設立するデメリット

デメリット1. ビジネスが計画通りに進まないことも多い

日本国内のビジネスでも計画通りに進まないことは多々あります。しかし、海外法人ビジネスではその傾向が特に顕著に表れるでしょう。例えば、東南アジアは人件費が低いことから製造拠点を移動しようと考える企業は多いでしょう。しかし、ここ十数年で各国の賃金水準はうなぎ上り状態であり、中国の一部の都市では10年間で2倍以上に上昇したところもあります。

また、現地の法改正によって外資に対す要る規制が変わるケースも少なくありません。特に発展途上国では国内の政策が不安定なことから、劇的な法改正が行われるリスクが捨てきれないのです。このため、海外法人を設立する際はその国でビジネスを展開する場合のリスクを総ざらいした上で、大きなリターンがしっかりと得られるかを事前に調査することがとても大切です。

デメリット2. 節税が上手くいかないケースがある

海外法人設立のメリットとして節税を挙げましたが、それが上手くいかないケースも少なくありません。例えば日本にはタックスヘイブン対策税制と移転価格税制と呼ばれる制度があり、前者はタックスヘイブンと呼ばれる税率が20%未満の国での利益について、日本本社の利益に合算してそこから法人税を計算する制度です。

一方、移転価格税制は海外子会社に不当に安い価格で販売することで、国内の利益を圧迫して海外子会社に利益を与えることを防ぐ法律であり、無理な節税のための海外法人設立は結果としてデメリットになる可能性が高いのです。

このため、単純に海外法人を設立して節税を考えるのではなく、海外で付加価値の変わりにくい不動産に目を付けて、減価償却による損金計上などを検討する企業が多いのも頷けます。

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メリット・デメリットを踏まえて慎重な検討を!

いかがでしょうか?海外法人はメリットが多いようにも感じますが、大きなデメリットによりそれが阻害されるケースもあります。海外法人を設立する際は、メリットとデメリットをしっかりと考慮した上で、設立の要否を検討しましょう。

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