【羽入敏祐の未来会計】第1回:事業運営において会計システムに期待される機能

 2014.08.20  ひので監査法人 羽入 敏祐 氏

グローバル標準のクラウドERP

会計システム・ソフトウェアは、ほほ全ての事業体が活用しているにもかかわらず、売上、仕入、人件費、その他経費等膨大な入力作業というバイアスを通じて タイムリーな経営情報の提供ができていない事業体がその多くを未だ占める中、昨今目覚ましいスムーズなネット環境およびそのプラットフォームで起動するクラウド会計システムの事業運営において期待される機能について考察してみたいと思います。

日本の管理部門の日常

中小企業における管理部門の人員構成は、設立直後は、社長自らが行い、事業拡大が進むにつれて、アルバイト採用、正社員の登用といった流れで、必要最小限 の人員を採用することからスタートするのが業種を問わず一般的でしょう。すこし気の利いた管理担当であれば、社内手続きの合理化をすすめるものの、基本的 に管理部門は利益を生まない部門という理由で、担当の人員から余程の要望が出ない限り、追加人員はおろかシステム導入など一切考えず、ひたすら事業拡大の ための人的・物的投資の拡大を図ることでしょう。

各営業担当者は売上請求書を作成し、管理部門に持ち込み、捺印をもらい、クライアントに提出する。会社の業績がのびればのびるほど、処理はますます増加す るのですが、その処理方法の一切を管理担当者に任せるのみで経営者も営業サイドもノータッチ。それが、よくある事業会社の日常ではないかと思いますがいか がでしょうか?

営業管理と会計システムとは別物という固定観念のある日本

「営業は営業、管理は管理」そうした考えのもと、社内でさしたる関心をもたれることもなく管理業務はただ黙々と行われてきました。それゆえ、クラウド サービスの変革著しい今尚、管理担当自らが記帳することこそ、正確な会計情報管理の基本であり、入力には時間がかかる、だから会計システムを踏まえたタイ ムリーな経営報告は困難という考えが、管理側では一般的だし、従前のシステム環境に慣れ親しんだ管理担当にとってみれば当然の結論と言えます。

一方で、多くの経営者は、決算情報の結果自体に注文はあっても、その情報生成プロセスについてはノータッチの姿勢を貫いていますから、管理担当の意見に基 づく管理体制を所与として、これを受け入れてきたことでしょう。それゆえ、経営者は、会計システム以外を情報源とする情報管理を別途行い、営業目標達成に 向けた進ちょく管理を行ってきているはずです。

このように、経営者も管理担当も相互に、お互いの仕事は根本的に異なるのだから、機能・用途は違って当たり前をいう考え方を基礎に企業経営に必要とされるシステムインフラはそれぞれ別のニーズにそって発展を遂げてきたのではないでしょうか。

クラウドサービスの利用動向

総務省の平成24年通信利用動向調査によれば、クラウドサービスを利用していると回答した企業の割合は28.2%で、前年21.6%から6.6ポイント 上昇、規模別では資本金50億円以上の大手企業において52.8%と大規模事業体ほど積極的にクラウドサービスを利用している流れがみてとれます。

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また、日米両国のシステム導入の意思決定に関与する役員等へのアンケート調査結果(平成24年)によれば、日本で42.4%がクラウドネットワーク技術を利用しているのに対し、米国70.6%と、日米間で約 1.7倍の開きがあるようです。

とりわけ利用状況の乖離が大きいのが中小企業で、米国中小企業の7割近くが何らかの形でクラウドサービスを利用しているのに対し、日本企業では3割未満で、認知度こそ上がっているものの、その利用をためらっている状況が伺えます。

IT技術の高度化がもたらすシステムインフラのダイナミズム

以上のような流れ故、管理系システムインフラは、企業情報全体をコントロール可能なERPシステムの導入可能な一部の大企業を除き、つい最近まで大きな変 化を遂げないまま何十年と経過してきました。しかしながら、日進月歩のクラウドサービスの進展とともに、その環境に変化の兆しがみてとれます。

限られた人員を対象とする情報の「通信・情報共有」を皮切りに、モノを広く一般に認知させる「広告宣伝」から、モノを売買する「マーケット」、財・サービ ス売買取引に伴う「決済」、さらには企業情報の「管理・保管」に至るまでインターネット経由の商業サービスは瞬く間に広がりをみせ、その対象範囲の拡大も 目覚ましいものとなっていますが、最も保守的で新たな動きの見えなかった日本の管理系サービス分野においても、例えばFreee、Money  Forwardをはじめ、入力工数の大幅な削減が期待できるクラウド会計サービスが次々にリリースされるなど新たな潮流が垣間見えます。

このように従来は会社単位で構築されてきた業務システム・会計システムにおいても、クラウドサービスが大きな進歩を遂げるであろうことは必然的な流れと言えるでしょう。

日本におけるSFAを端緒とする管理システムに期待される役割の変貌

クラウドサービスの進展とともに、多くの経営者がよりスピーディな管理体制の構築・運営を目指すのは自然な流れです。他方で目に見えない情報投資が企業の 効率的運営にどれほどの成果をもたらすかというイメージが湧かないこともあり、投資を躊躇してきた経営者も少なくないことでしょう。

そうしたなか、この数年で経営者による積極的な投資姿勢が伺えたのが、Sales Forceをはじめとする営業支援ツール(SFA)です。デイリーの業務進捗管理が営業成果に直結する事実を肌で感じている経営者が、たとえ高額であって もこと営業支援ツール導入に積極的であったのは、経営者のシステムに対する考え方を端的に示しているのではないでしょうか?
その一方で、会計システムと営業支援ツールとは別物という考え故、

  • 管理担当者は、営業支援ツール導入時には必ずしも積極的に参加してこなかった、あるいは参加したものの、社内発言力の弱さ故に意見を反映できない
  • 営業現場の利便性を優先するあまり、会計システム連携に必要なシステム仕様の要請をしない
  • 営業支援ツールにお金をかける反面、営業情報の最終的な受け入れ先となる会計システムへの投資意欲はないため、営業ツールの投資効果を十分に生かせないシステム環境が放置される
  • システム連携されないが故に、どちらの情報が正しいのかと言った不毛な議論が社内で繰り返される
  • という悪循環が生まれやすい構造となっています。

これは、日本の会計システムの多くが、現在のところ(入力・決算処理画面など実務担当にとって見慣れた)担当者目線のユーザーインターフェースで構成された自己完結型の決算事務システムの域を出ていない以上、やむを得ない結果なのかもしれません。

しかしながら、従前では物理的隔離でしか情報の秘匿性と正確性を担保できないと思われてきた決算事務作業においても、クラウドサービスの充実により手の届 く投資規模で適正な情報管理と承認プロセスの体制構築が実現可能となりつつある今、中小企業にとってもシステム選定の幅は広がりつつあります。会計システ ムに期待する機能は、企業の成長過程に応じて大きく変貌を遂げることになりますが、とりわけ人的リソースの限られた中小企業では情報管理の効率の善し悪し が、今後の成長スピードはもちろん、投資・運用コストを大きな差をもたらす鍵となることを十分考慮した上で、システム選定・導入をしていただきたいところ です。

適切なシステム選択を基礎に、入力・転記処理に伴う記帳ミスを極限までそぎ落としながら、スムーズなチェック体制確立に工夫を重ね、正確な経営情報を手間暇かけずにアウトプットできる体制づくりこそが、これからの管理部門に課せられた重要な課題の一つとなることでしょう。

つながるシステムが経営のスピードを加速する

経営者目線で一気に浸透したクラウドベースの営業支援ツールと近年顕著なクラウド会計サービスの普及とが相まって、相互のデータ連携の期待感はグンと高まりました。
クラウドベースのデータ連携がもたらす効果には、例えば、

  • タイムリーな経営情報の共有
  • フレッシュな経営情報をもとに勘に頼らないスピーディかつ正確な経営判断
  • 場所を選ばない情報共有(多店舗・多法人・海外展開の事業体)
  • 新規事業の管理体制立上げもスムーズ

など、ブツ切りだった管理データがつながることで、経営陣はもちろん営業担当、管理担当の視野は大きく広がり、判断のタイミングも格段にスピードアップすることになります。

精度の高いデータをスピーディに入手するためのバックオフィス効率化に向けて各社様々な対策を講じていることと思いますが、入力・チェックの各工程数お よびその作業時間の大幅削減のためには、営業支援ツールをはじめとする業務システムと会計システムとのタイムリーなデータ連携を見据えるとともに、データ 連携後に見えてくる管理体制において管理担当が果たすべき役割も抜本的に変わると理解しておくことが重要です。

効率的な管理体制の構築は、入力業務をただひたすら正確に大量に打ち続ける人材からは生まれない。持続的成長を遂げる企業は、顧客から見えるところも見え ないところも手間ひまかけて作り込む。業務プロセス・会計システムの見直しを社内人材だけに頼ることなく構築できる今だからこそ、外からは見えない管理シ ステムの効率化にいち早く手をつけ、スムーズな事業成長を支える体制づくりに真剣に取り組むべき時代が到来したといえるでしょう。

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著者紹介

hanyu-samaひので監査法人 羽入 敏祐 氏

監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入所、上場企業等監査業務に従事。会計事務所にて会計・税務全般およびM&A関連各種業務事業会社では経営管理実務、IPO準備全般に従事。
監査・経営実務経験を踏まえたITインフラ提案力に強み

ひので監査法人について

ひので監査法人は、2009年5月 設立、大手監査法人の監査経験者と事業会社のマネジメント経験者から構成され、上場準備、中堅国内上場企業向けの効率的監査サービス、バックオフィス支援サービスの提供をしております。信頼される会計プロフェッショナルとしていかに成長し続けていくかを日々模索し、監査ならびにバックオフィス構築サービスの品質維持・向上に取り組んで参ります。

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