企業のDXに対する課題とは?

 2020.03.09  クラウドERP実践ポータル

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DX(デジタル・トランスフォーメーション)を実現するにあたり、そのための情報や基盤はすでに外部から調達可能になっています。にもかかわらず企業のDXがなかなか推進しないのには理由があります。本記事では、企業のDXに対する課題を明らかにしていきます。既にDX推進を検討している企業もそうでない企業も、日本企業にとって何がDXを阻む課題になるのか?を確認していきましょう。

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DX推進を阻む日本のIT構造

皆さんの会社で稼働している業務システムやデータベース等は、何年前に立ち上がったものでしょうか?経済産業省の報告書(DXレポート)によると、2018年時点で同じ基幹システムを21年以上運用している企業は全体の2割だとされています。これが2025年には6割に達すると予測され、ITの老朽化が進んでいます。

問題は単に老朽化していることではなく、これに加えて複雑化・ブラックボックス化していることです。ITがメインフレームの時代からサーバー・クライアントへ遷移するにあたって、部署ごとにITが最適化されていく現象が起きました。当時はそれがベストと考えられていたのですが、ビッグデータ時代とも言われる現代ビジネスでは、データの統合性などを考慮すると全体最適化されたITを必要としています。

しかし、老朽化・複雑化・ブラックボックス化したITに新しいデジタル技術を採り入れても、既存のIT構造を崩すことが難しくデータ活用は限定的になるため、DXが大きく推進されないのではないかと懸念されています。

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企業とベンダーの関係にも問題が

上記のような古く複雑で、ブラックボックス化したITを生む原因にもなったのが日本のIT業界特有の、企業とベンダーの関係です。日本企業の多くは企業よりもベンダーにITエンジニアが集中しており、欧米諸国ではそもそもSIerという業態すら珍しいものとなっています。確かに、「シリコンバレー初の世界的なSIer」なんて耳にしたことがありませんし、皆独自のソフトウェアやサービスを展開して、メーカーとしてのビジネスモデルを確立しています。

ではなぜ日本では企業とベンダー(SIer)という関係が成り立っているかはさておき、長年そうしたビジネスが回り続けたことで、企業は自分たちが日常的に使っているITについての知識・技術・ノウハウがまったくと言ってよいほど積み上がっていません。

企業が使うITでありながら企業自身は手が出せず、システム更改時などはベンダーが要件定義を行って企業はまったく手が出せないという現状がまかり通っています。こうした状態ではクラウドのように柔軟性・拡張性・低価格性・迅速性に優れたプラットフォームが存在していても、それを活用してDXを推進することが非常に困難になってしまうのです。

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経営層の現状に対する危機意識の足りなさ

DX推進の課題はまだまだあります。DXは最新のデジタル技術やクラウドプラットフォームなどを採用することで、今までにない新しい製品・サービスに限らず、新しいビジネスモデルを創出し、企業がこれまで構築してきた業務プロセスや風習まで変革し、グローバル時代のビジネスと日々変化するビジネス要件に柔軟に対応するための基盤が整います。この最大の価値を手にするための変革を可能にするシステム刷新を決断する企業は、非常に少ないのが現状です。

その背景にあるのが経営層の現状に対する危機意識の低さです。企業が長年時間をかけて構築・改修してきたITは確かに業務との依存性が高く、それが最適のように思えます。いえ、思いたくなるのでしょう。また、ITだけでなく組織構造を横断的に見直し、最適なIT・組織を再構築するDXはユーザーサイドからの抵抗も少なくありません。

となると経営層のDXに対する意欲は余計に低下し、結果的に現行ITの改修いった判断に落ち着くのです。しかしDXの必要は日を追うごとに増しています。多くの市場では最新デジタル技術を搭載したビジネスモデルを展開するベンチャー企業等が、デジタルディスラプション(デジタル技術を用いた新しい製品・サービス・ビジネスモデルによって市場に破壊的イノベーションをもたらす)を起こし、ビジネス環境を強制的に変化させています。

2012年に操業開始した「1 Doller Shave Club」というサービスは、月1ドル~で新品カミソリを自宅にお届けするというサブスクリプションサービスの先駆け的存在です。同サービスは完全な寡占状態だった髭剃り業界に大きなデジタルディスラプションを引き起こし、最終的には操業からわずか4年で1,000億円のEXITを獲得する企業に成長しました。

「DXネイティブ」なベンチャー企業に対応するためのDX推進

生まれた時からインターネットが生活の中に組み込まれている世代を「デジタルネイティブ」と呼びます。彼らは40代50代のビジネスパーソンに比べるとさまざまなデジタル技術を扱うことに長けていますし、デジタル技術を取り入れることに何ら抵抗がありません。これと同じように、これからのビジネスでは「DXネイティブ」なベンチャー企業がどんどん誕生していくでしょう。つまり、創業時点から最新のデジタル技術を搭載し、革新的な製品・サービス・ビジネスモデルをどんどん生み出していく企業です。※「DXネイティブ」は本記事における造語です

彼らはDXという課題を乗り越えることなく多種多様なデジタル技術で武装しながらビジネスを推進していくことから、まだDXに対応できていない既存の中小企業、時には大企業までを巻き込んで大きなデジタルディスラプションを起こす可能性があります。そうした際に生き残れる企業というのは、同じようにDXを推進してデジタル技術武装を施した企業です。

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DXに成功している企業はスモールスタート&フェイルファーストで推進している

上記のような課題を抱えている日本企業はどのようにしてDX推進を成功に導けばよいのでしょうか?海外の先進事例から学ぶと、「スモールスタート」と「フェイルファースト」というのが重要なキーワードになります。

スモールスタートとはつまり「小さく始める」ことです。まずはDXの対象となる取り組みを絞り、小さい規模で初めて小さい成功を積み上げていきます。その中で試行錯誤を繰り返すと、DXに対する知識・技術・ノウハウが徐々に社内に積み上がっていき、かつどんなに小さなものでも成功を目の当たりにすると経営層の意識も変化していきます。

そしてフェイルファーストとは、「素早く失敗して、失敗から学ぶ」という推進スタイルです。最初から上手くいくDXはありませんし、失敗は必ずあります。ならば100%計画を練り上げて実行するのではなく、50~60%の完成度でもどんどん施策を実行して、フェイルファーストの精神で失敗を歓迎します。その方が結果的に早く100%に近づけますし、学ぶことも多いでしょう。

DX推進に対する課題や危機意識を高めるためにも、まずは経済産業省が発表したDXレポートをつぶさに読み込んでみてください。その上で自社に何ができるのか?何が必要なのか?を独自に考えてみましょう。DXに成功できない企業は存在しません。大切なのは、課題とベストプラクティスを知り、それを自社独自の取り組みへと変換するアイディアです。

参考資料:経済産業省:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~

 

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