労働生産性とは?求め方や向上方法、おすすめツールをわかりやすく解説

 2023.06.13  クラウドERP編集部

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日々業務に取り組んでいるはずが、思ったように利益が出ていないといったような場合は、「労働生産性」が適切かどうか確認する必要があります。
本記事では、労働生産性の計算方法ならびに業種別の平均値や推移、また、労働生産性を向上させるのにおすすめの方法についても解説します。労働生産性を上げると、労働環境の改善やコスト削減などさまざまなメリットが生まれるため、ぜひ参考にしてみてください。

労働生産性とは?求め方や向上方法、おすすめツールをわかりやすく解説

労働生産性とは

労働生産性とは、従業員1人あたりの利益を生み出すための「効率」を可視化した数値のことです。労働生産性が低い場合は、従業員1人または1時間あたりの成果創出が少なく、効率が悪い働き方をしていると判断できます。

逆に労働生産性を向上させることで、従業員1人または1時間あたりの成果創出が多くなるため、少ない人員でも利益を出せるようになります。また、少ない時間で利益を出すことで、収益向上に繋がりやすいのも重要なポイントです。

労働生産性の向上は、経営者と従業員の双方にとってメリットがあります。例えば、経営効率の向上とワークライフバランスを実現できる点です。なお、労働生産性には「付加価値労働生産性」と「物的労働生産性」の2種類があり、それぞれ計算方法が異なります。

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2種類の労働生産性の求め方

労働生産性を向上させるためには、前提として「生産性」を計算し、定量的に計測しなければなりません。

先に述べたように、労働生産性は大きく

  • 付加価値労働生産性
  • 物的労働生産性

の2種類に分かれます。両者はそれぞれ独自の計算方法があるものの混同されやすいため、違いを押さえておきましょう。

付加価値労働生産性の計算式

付加価値÷労働量(従業員数または労働時間)

付加価値労働生産性は、労働時間や従業員1人につき、どれだけの付加価値を創出できたのかを表すものです。
上の図にあるように、付加価値を数値化したものから労働数で割ると、1時間あたりの付加価値労働生産性が導き出されます。

そもそも付加価値とは「生産活動によって新たに創出された価値」のことです。総生産額から原材料費や減価償却費、運搬費など諸経費を差し引いたもので、いわゆる「粗利」と考えれば分かりやすいかも知れません。
付加価値労働生産性が高ければ高いほど利益が生み出されており、企業と従業員双方にとって、良好な状態であると判断できます。

労働生産性とは?求め方や向上方法、おすすめツールをわかりやすく解説01

物的労働生産性の計算式

生産量÷労働量(従業員数または労働時間)

一方、物的労働生産性は、労働時間や従業員1人につきどれだけの生産量を創出できたのかを表す用語です。
上の図の通り、生産量を従業員数や労働時間などの労働量で割ったものが、1時間あたりの物的労働生産性です。

特徴として、生産した商品の数といった目に見える成果で判断できることなどが挙げられます。そのため、物的労働生産性の数値が高ければ高いほど「商品やサービスを効率よく生産している」と判断できます。品質管理を向上させたり、設備投資を検討したりする際の判断材料にされることも多いのが特徴です。

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業種別の労働生産性の平均値

労働生産性の平均値は、業種ごとに異なります。自社の労働生産性が高いか低いかを判断する際は、業種別の労働生産性の平均値を知っておくことが大切です。

財務省の財務総合政策研究所が公表している「法人企業統計調査からみる日本企業の特徴」によると、2018年度の労働生産性(全産業、全規模)の平均値は730万円でした。
業種別と資本金とを組み合わせて見てみると、製造業の場合、資本金1,000万円未満であれば485万円、10億円以上なら1,367万円といった平均値となっています。非製造業なら1,000万円未満が494万円、10億円以上なら1,394万円と、いずれも製造業より少し高い数値です。

業種別にもう少し詳しく解説した資料としては、「2021年版中小企業白書」があります。大企業では建設業の1,406万円を筆頭に、卸売業が1,215万円、情報通信業が1,209万円と高額です。一方、中小企業であれば同じく建設業が最も多く698万円で、卸売業が650万円、情報通信業が613万円と続きます。
逆に、労働生産性が低い業種は、宿泊業や飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業といった結果になっています。

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1人あたりの労働生産性の推移

中小企業庁が2020年4月に公表した2020年度の「中小企業白書」を見ると、従業員1人あたりが労働によって、どれだけの付加価値を生み出しているのかといった労働生産性の推移が、企業規模別に分かります。

例えば2018年、中小企業の製造業では554万円、非製造業では543万円で、直近15年間ほぼ横ばいです。一方、大企業では2007年頃に起きたリーマンショックの影響を色濃く受け、大幅に落ち込んでいるのが特徴的です。製造業ではそれまで約1,400万円あった生産性が1,000万円程度となっています。ただ、製造業、非製造業ともに2009年頃から徐々に持ち直し、2018年には非製造業が1,394万円、製造業が1,367万円となりました。

大企業と中小企業の推移を見てみると、大企業はゆるやかながら上昇傾向にあります。中小企業が横ばいから脱却できなければ、この差は今後開いていくことも考えられます。

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業種別の労働生産性の推移

先に紹介した「法人企業統計調査からみる日本企業の特徴」では、製造業と非製造業において、1960年から2018年の間、どのように労働生産性が推移しているかが分かります。
1996年頃までは製造業と非製造業の労働生産性はほぼ変わりません。しかしそれ以降は、製造業が非製造業の伸び率を大きく上回り、2018年では100万円以上の差を付けていることが分かります。

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労働生産性を向上させるメリット

労働で生み出される付加価値としての労働生産性を向上させられれば、さまざまなメリットが生まれます。
主に、

  • 人材不足の解消
  • ワークライフバランスの改善
  • コスト削減

といった3つです。それぞれの内容について解説します。

人材不足を解消できる

総務省が公表した「令和4年版情報通信白書」によると、国内の15歳から64歳、いわゆる生産年齢人口は、ピークの1995年から減少傾向にあります。労働力が減少すればあらゆる業種で必要な人手を確保できず、思ったような経済活動ができなくなるかも知れません。

また2023年4月に出された、中小企業庁による「2023年版中小企業白書・小規模企業白書概要」を見ても、2020年第1四半期を過ぎたあたりから、特に中小企業で人手不足が顕著です。
ただ、例えばこれまで1つの仕事を3人でこなしていたとして、2人しか確保できなくなったとしても、仕事の効率を上げることでクリアできる可能性が高まります。

今や労働生産性の向上は日本の人材不足をカバーするための重要な課題です。そのため、現在は多くの企業でさまざまな取り組みを行っています。
一般的な取り組みとしては、業務プロセスを見直すこと、従業員のスキルアップを支援すること、ITシステムなどを導入し、DXを進めることなどが挙げられます。

ワークライフバランスを改善できる

近年は「ワークライフバランス」といった言葉をよく耳にするようになりました。働き方への価値観に多様性が見られ、仕事と育児や介護との両立を求める声も増えてきています。
労働を効率化して生産性が上がれば、少ない時間で同じ仕事を終えられるため長時間労働が減り、浮いた時間を育児や介護、プライベートな時間に回せるかも知れません。
また、ワークライフバランスを改善することで、企業としては次のようにさまざまなメリットを享受できます。

  • 残業代などのコストを減らせる
  • 昨今注目を浴びている「健康経営」の実現にもつながる
  • 優秀な人材を集めやすくなる
  • 投資家からの資金を集めやすくなる、など

多様性が重んじられる現在の社会においては、こうしたワークライフバランスを実現できる企業に人が集まりやすくなる傾向にあり、先に述べた人手不足といった課題解決につながるのもメリットです。

コストを削減できる

労働生産性が向上すれば同じ仕事でも早く済ませられるようになるため、残業代などの人件費を抑えられます。また、オフィスに出社する際には、必要な電気代なども低減させられるのは、大きなメリットです。

さらに浮いたお金は会社の経営方針上注力すべきところへ使えます。つまり企業が事業を運営し、健全な経営を継続していくために重要となる、「ヒト・モノ・カネ」といったリソースを最適化できると考えられます。

労働生産性の高い企業の特徴

では、どういった企業が高い労働生産性を誇っているのでしょうか。主な特徴としては、

  • 組織の社会的感受性が高い
  • 組織全体の積極性が均等である

といった2つのポイントが挙げられます。

ただ、労働生産性は計算で出せるとはいえ、実体として目に見えるものではありません。多くの人にとってははっきりとしたイメージがわきにくいため、ここではそれぞれの特徴について分かりやすく解説します。

組織の社会的感受性が高い

社内の組織で働く従業員において、社会的感受性が豊かである企業は、生産性も高くなる傾向にあります。

ここでいう社会的感受性とは、相手と話していて表情や声などから、その相手の真の心情を読み取れる力、つまりコミュニケーション能力の高さと言い換えられます。
基本的に仕事はチームなど複数人で進めることが多く、コミュニケーションが不可欠です。そのため社会的感受性が高ければ、てきぱきと仕事を終えられ、生産性が高まっていくに違いありません。

組織全体の積極性が均等

メンバー全員が発言に前向きで積極的に行っている企業は、議論も活発化し、次々と新たなアイデアを創出しやすくなります。まさに労働生産性がうまくはまった例です。

一方、労働生産性が低いと発言機会が均等に与えられていないシーンや、一部の従業員のみだけが発言するシーンもよくありがちです。全員が議論に参加しなければ、一部の従業員のみの価値観や意見が大きくなってしまいかねません。

労働生産性を向上させる方法

生産性を向上させて収益アップを図るには、労働生産性を向上させる必要があります。ここでは実現に向けた具体的な方法を3つ紹介しますので、自社で実践できそうな方法を早めに検討し、生産性アップに繋げていきましょう。

業務の「標準化」と「見える化」

労働生産性を向上させるポイントは、業務を標準化させ、可視化することで、仕事から無駄を省くことです。
そのためにはまず業務の「標準化」、つまり業務手順が明確に定められ、必要なメンバーへ周知が行き届いていることが肝心です。これにより単純なミスを減らせるといったメリットがあります。
また業務を「見える化」し、各個人の業務の中から無駄な工程を洗い出し改善することも大切です。各社員・スタッフの業務を把握し、各自が何をしているのかを分かるようにします。
ただ、ひとつひとつの工程をいちいち見ていくのは非効率なため、業務を可視化できるツールの活用もおすすめです。ツールを使えば簡単かつ迅速に、無駄な工程を洗い出せます。これまで惰性で続けていたような会議や定例ミーティングなどが、実は不要だったといったように無駄を見付けられ、早期に改善できるかも知れません。

マニュアルやITツールの導入で業務を効率化する

先に述べたように、マニュアルやITツールの導入で業務を効率化することも労働生産性の向上に繋がります。業務が特定の人にしか分からない、いわゆる属人化してしまうと、生産性が低下しやすいのも問題です。そのため業務マニュアルを作成し、各業務を平準化することで属人化を防いでいきます。

ルーティーンワークや平易な事務作業を効率化するためには、ITツールの導入を検討しましょう。コンピュータでできるものを紙ベースで作業するのは、効率性に欠けます。クラウドサービスを利用してペーパーレス化を実現するのもおすすめです。

人材や働き方の多様性を認める

労働環境や人材配置を見直すことも、労働生産性を向上させるには大切なポイントです。テレワークの導入や人員配置を見直すことで、働き手がよりよい職場環境で働くことができ、モチベーションアップに繋がります。多角的にさまざまな方法を検討するのがポイントです。

適切な改善策を実施することで、人件費削減や社員のモチベーションアップを図れば、結果として生産性向上にも繋がります。まずは自社の実情に即した施策を講じることが大切です。問題点をあぶり出し、できることから始めていきましょう。

労働生産性の向上に役立つITツール

労働生産性を向上させるのに役立つのが、ITツールです。自社に合うビジネスチャットツールやクラウドサービス、ERPを導入することで生産性向上の可能性が高まります。ここでは中でもおすすめのITツールを3つ紹介します。

ビジネスチャットツール|やりとりを円滑にする

Chatwork(チャットワーク)やSlack(スラック)などのビジネスチャットツールを使用することで、仕事上のやりとりが円滑になります。社内や取引先とのコミュニケーション量もおのずと増えていくはずです。

コミュニケーション量が増えると情報共有が進み、業務効率化や生産性向上に繋がります。サイバーエージェントでは、Chatworkの導入によって月25,000時間以上の業務を削減できたとされています。一方で、対面と比較して意思疎通が図りにくい点や、内容の見落としが発生しやすい点などには注意が必要です。

クラウドサービス|どこからでもアクセスできる

インターネットに接続できる環境であれば、どこからでもアクセスできるクラウドサービスは、生産性の向上に貢献してくれるサービスのひとつです。特にテレワークをするときも、データや書類をクラウド上に保管できるため、オフィスに出社する必要はなくなります。

また、クラウドサービスは生産性向上だけでなく、労働環境改善や従業員のモチベーションを高めることにも貢献できるのが特徴です。一方で、クラウドサービスはインターネットを介したサービスのため、セキュリティ対策を万全に整えておかなければなりません。

ERP|自社のあらゆる情報を一元管理できる

ERP(Enterprise Resources Planning・統合基幹業務システム)は、財務や人事など社内のさまざまな業務に関する情報を一元管理できるツールです。ERPを導入すると、業務効率化が図れ、労働生産性の向上に直結します。
そもそもERPは無駄な時間を削減し、生産性を高めるためのツールです。ERPでできる業務を全てERPで処理することで、収益に直結する業務に専念できます。

ERPのプラットフォームは「クラウド型」と「オンプレミス型」があり、情報の統合度によっていくつかの種類が存在します。どこまでの情報を管理したいのかという視点で自社に合ったツールを選ぶことが大切です。

まとめ

労働生産性を向上させるには、まず現状の労働生産性を把握する必要があります。
今回紹介した計算式で、具体的に算出し、状況に応じて改善策を検討していきます。ポイントのひとつは、業務の標準化と可視化で無駄を削減することです。その際、より効率性を高めたいなら、ITツールを導入するのが近道になります。

特に昨今注目を集めているクラウドERPは、時間や場所を問わず、かつリアルタイムに情報を共有して分析できるためおすすめです。業務効率化を図り、生産性向上に繋げたいと考えるなら、クラウドERPの導入をぜひ検討してみてください。

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