小売業のサービス化「RaaS」とは?先進事例や今後について

 2020.12.23  クラウドERP実践ポータル

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IT技術の進歩に伴い、ビジネスを取り巻く環境は驚くべき速さで変化・発展しています。それは小売業も例外ではありません。そんな中、「RasS」という小売のサービス化が注目を集めています。そこで今回は、小売業の未来を大きく変える可能性を秘めた「RaaS」について解説するとともに、先進事例や今後の展望について見ていきます。

小売業のサービス化「RaaS」とは?先進事例や今後について

RaaSとは?

「RaaS(ラース)」とは「Retail as a Service(リテール・アズ・ア・サービス)」の頭文字をとった略称です。「Retail」は小売りを意味し、「Service」はサービスなので、直訳すると「小売のサービス化」となります。企業がこれまで蓄積してきた顧客情報やノウハウを活用し、テクノロジー企業の持つ技術と掛け合わせてサービス化することを指します。

RaaSをはじめ、SaaSやPaaS、IaaSといった「〜aaS」というビジネス用語を耳にする機会が増えました。「~aaS」すなわち「as a Service」とは、製品そのものを販売するのではなく、製品が持つ特定の機能をサービスとして提供することを意味します。例えばSaaSは「Software as a Service」の略で、サーバーやストレージをサブスクリプション型のクラウドサービスとして提供するビジネスモデルを指す言葉です。ゆえにRaaSは、小売業のサブスクリプションモデルと言い換えることができます。

そのほかのRaaS

RaaSには「Robotics as a Service(ロボティクス・アズ・サービス)」という、同音のビジネス用語があります。こちらは「ロボティクスのサービス化」を意味する言葉であり、小売のサービス化を意味する「Retail as a Service」とは異なります。

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新しい小売モデルが生み出すメリット

RaaSによって、小売業のビジネスモデルは大きく変わろうとしています。例えば、いま注目を集めているのが「体験型ストア」です。

体験型ストアとは、月額費用を支払うことで商品の展示やスタッフの配置、在庫・物流管理、顧客データの分析・管理といったサービスを受けられるサブスクリプションモデルのことです。販売を第一目的とするのではなく、製品を発見・体験してもらうことを目的とした、新しい小売りモデルです。この店舗運営サービスを利用することで、小売企業は商品の設計や企画といった、企業価値を高めるマーケティング業務に注力できるでしょう。

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こうした次世代型の小売モデルは、設備投資や人件費の削減にもつながるため、経営効率を上げる意味でも注目されています。RaaSの導入によって、資金力に不安のあるスタートアップ企業でも、自社ブランドの世界観を多くの人々に認知してもらえるチャンスが広がると期待されます。

RaaSの事例紹介

RaaSは「次世代型小売業」と呼ばれ、小売業に大きな革命をもたらすと言われています。事実、世界的大企業がRaaSを取り入れることで、これまでになかった全く新しいビジネスモデルを創出しています。ここでは、RaaSを活用して新たな顧客体験を生み出した企業の成功事例を見ていきましょう。

Kroger

2019年に世界最大手の食品スーパー「Kroger(クローガー)」と「Microsoft(Microsoft)」がパートナーシップを結び、RaaSを用いたデジタル小売戦略を展開すると発表したのは、まだ記憶に新しいでしょう。Krogerが持つ顧客データと、Microsoft Azureのアルゴリズムを活用したスマートシェルフ「EDGE Shelf」の開発に成功し、大きな話題となりました。

EDGE Shelfの開発により、電子タグによる商品管理システムを用いた無人レジが実現。ユーザーは、スマートフォンアプリでバーコードを読み込むだけで購入・決済が可能となりました。Krogerが積み上げてきた情報とMicrosoftのAIアルゴリズムによって、顧客特性に応じた情報を表示するなど、これまでにない顧客体験を提供しています。さらに、このシステムを自社利用するだけでなく、RaaS製品としてほかの小売業者に提供するという新しいビジネスモデルの構築にも成功しています。

b8ta

「b8ta(ベータ)」は、サンフランシスコでRaaSソリューションを提案・提供している企業です。企業名のb8taを冠した体験型ストアを全米で展開し、大きな話題を呼びました。

b8taは、これまでの小売のビジネスモデルとは一線を画しています。小売企業はサブスクリプションサービスとして、b8taに月額費用を払うことで製品を展示してもらいます。

そしてb8taは、製品の展示や販促、物流サポート、顧客データの分析・管理を行うという、RaaSの理想形と言えるビジネスモデルまでも実現しています。2020年8月から日本でもサービス展開をスタートしました。

Amazon

世界最大のEC企業「Amazon」が展開している「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」も、RaaSのひとつです。Amazon Goは、レジなしで購入・決済が可能な無人コンビニとして話題になりました。スマートフォンを持って入店し、購入したい商品を選んで店を出れば、自動的に決済が完了するという、小売業の常識を覆す顧客体験を実現しました。

またAmazonは、RaaSを自社利用するだけでなく、小売業向けソリューションとして活用した、レジなし決済システム「Just Walk Out」の販売も予定しています。Amazonの事業展開こそ、まさに小売のサービス化を体現しているビジネスモデルと言えるでしょう。

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RaaSの今後

これまでの小売業は、モノを安く仕入れて高く売ることが至上命題でした。しかし、これからユーザーや顧客に選ばれるためには、優れた顧客体験の提供が必要不可欠です。今後はKrogerとMicrosoftのように、小売とベンダーが手を取り合い、ともに課題を解決していく形がスタンダートになっていくでしょう。商品を売るのではなく、体験を売る小売業という新たなリアル店舗のあり方が、今後は活発になっていくと予想されます。

まとめ

小売業の未来は、IT技術との融合によって大きく変わろうとしています。顧客情報や購買行動をもとに、まったく新しい顧客体験を提供する「RaaS」は、その最たる例と言えるでしょう。

小売業が持つさまざまなデータと、ITベンダーが持つ技術をかけ合わせることで、これまでにない新たなビジネスモデルが創出されています。従来のように商品を仕入れて販売するだけのビジネスモデルでは、十分な価値提供が困難になってきました。これからは、優れた顧客体験をベースとした価値提供が求められるでしょう。

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