SaaS ERPとは?
導入メリットやオンプレミスとの違いを徹底解説

 2025.12.18  クラウドERP編集部

失敗するERP導入プロジェクトの4大要因

DXの推進や柔軟な働き方が求められる現在、基幹システムのクラウド化、特に「SaaS ERP」への移行が企業の成長を左右する重要な鍵となっています。SaaS ERPは、自社でサーバーを持たずにインターネット経由で利用できるため、初期コストを抑えつつ、常に最新の機能で迅速な経営判断を可能にするソリューションです。本記事では、なぜ今SaaS型が選ばれるのかという背景から、オンプレミス型との違い、経営視点での具体的なメリット、導入時の注意点までを網羅的に解説します。

【この記事でわかること】

  • SaaS ERPの定義とIaaS・PaaS型との違い
  • 経営視点での導入メリットと業務効率化の効果
  • オンプレミス型と比較したコスト削減のポイント
  • マネジメント・トランスフォーメーション(MX)への活用
  • 失敗しないための導入検討プロセスと注意点

SaaS ERPの概要と普及する背景

近年、企業の基幹システム(ERP)の導入形態は、自社でサーバーを保有・運用する「オンプレミス型」から、インターネット経由で利用する「クラウド型」、特にSaaS型へと急速にシフトしています。なぜ今、SaaS ERPがこれほどまでに注目され、多くの企業で採用されているのか。その基本的な定義や仕組み、そして普及の背景にあるビジネス環境の変化について解説します。

SaaS ERPの定義と仕組み

SaaS(Software as a Service)ERPとは、ベンダーがクラウド上で稼働させているERPソフトウェアの機能を、インターネットを通じて利用するサービス形態のことです。従来のオンプレミス型のように自社内にサーバー機器を設置したり、個々のパソコンにソフトウェアをインストールしたりする必要がありません。

利用者はWebブラウザなどを介してIDとパスワードでログインするだけで、会計、販売管理、在庫管理などの基幹業務機能を利用できます。最大の特徴は、ハードウェアやソフトウェアの保守・運用、セキュリティ対策、バージョンアップ作業をすべてベンダー側が担当する点にあります。これにより、ユーザー企業は「システムのお守り」から解放され、本来の業務に集中できる環境が整います。

IaaS・PaaS型クラウドERPとの違い

一口に「クラウドERP」と言っても、提供されるレイヤーによって「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3つに分類されます。これらは、ベンダーとユーザー企業が管理する責任範囲(責任分界点)が異なります。SaaS型は最もベンダーの管理範囲が広く、導入の手間が少ないのが特徴です。

それぞれの違いを整理すると以下のようになります。

種類 概要 ベンダーの管理範囲 カスタマイズ性 導入スピード
SaaS型 ソフトウェアとして機能を利用 インフラ・OS・アプリすべて 低い(設定変更のみ) 非常に早い
PaaS型 アプリ開発の土台を利用 インフラ・OS・ミドルウェア 高い(アプリは自社開発) 普通
IaaS型 インフラ機能のみを利用 ネットワーク・サーバーのみ 非常に高い(自由設計) 遅い(構築が必要)

IaaSやPaaSは、自社独自の業務フローを作り込みたい大企業や特殊な業種で選ばれるケースがありますが、システム構築や運用の専門知識が必要です。対してSaaS ERPは、完成された業務プロセス(ベストプラクティス)を即座に利用できるため、スピードとコスト効率を重視する現代のビジネス環境に最も適しています。

なぜ今、中堅・中小企業でSaaS型が選ばれるのか

かつてERPは大企業が巨額の投資をして導入するものでしたが、SaaS型の登場により、中堅・中小企業でも導入のハードルが劇的に下がりました。その背景には、主に以下の3つの要因があります。

第一に、初期投資の抑制と導入期間の短縮です。サーバー購入費や構築費が不要で、月額課金のサブスクリプション方式で利用できるため、キャッシュフローへの影響を最小限に抑えられます。また、契約から稼働までの期間も数ヶ月程度で済むケースが多く、ビジネスの立ち上げや変化に素早く対応できます。

第二に、法改正や技術進化への自動対応です。インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正、あるいはAI機能の実装など、SaaS ERPならベンダー側のアップデートにより常に追加コストなしで最新の法規制や技術に対応できます。IT人材が不足しがちな中堅・中小企業にとって、自社でメンテナンスを行わずにシステムの陳腐化を防げる点は大きなメリットです。

第三に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題への対策として、老朽化したレガシーシステムからの脱却が急務となっています。データをクラウドで一元管理し、場所を選ばずにリアルタイムで経営情報を可視化できるSaaS ERPは、企業のDXを実現する基盤として選ばれています。

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経営視点で見るSaaS ERP導入のメリット

従来のオンプレミス型ERPは、自社でサーバーを保有しシステムを構築するため、多額の初期投資と長い導入期間が必要でした。しかし、SaaS ERPの登場により、経営環境は大きく変化しています。SaaS ERPは単なる「業務システムのクラウド化」にとどまらず、経営のスピードと質を根本から変える力を持っています。

ここでは、経営者やマネジメント層が押さえておくべき、SaaS ERP導入による具体的なメリットを5つの視点で解説します。

迅速な導入とビジネス変化への対応力

現代のビジネス環境において、スピードは最大の競争優位性です。SaaS ERPの最大の利点は、ハードウェアの調達や複雑なインストール作業が不要であるため、契約から利用開始までの期間を劇的に短縮できる点にあります。

オンプレミス型であれば数ヶ月から1年以上かかる導入プロジェクトも、SaaS型であれば最短数週間から数ヶ月で稼働させることが可能です。これにより、新規事業の立ち上げやM&A(合併・買収)による組織統合、海外拠点の開設といったビジネスの急激な変化に対しても、システムがボトルネックにならず、即座に対応できる体制を構築できます

また、スモールスタートが可能であるため、初期段階では必要最小限の機能とライセンス数で開始し、事業の成長に合わせて柔軟に拡張していくことができます。これは、不確実性の高い現代の経営において、投資リスクを最小限に抑える重要な要素となります。

リアルタイムな経営情報の可視化と意思決定

SaaS ERPはインターネットを介して一元管理されたデータベースにアクセスするため、場所や時間を選ばずに最新の経営情報を確認できます。会計、販売、在庫、人事などのデータがリアルタイムで統合されることで、経営者は「過去のレポート」ではなく「今の数字」に基づいた判断が可能になります。

多くのSaaS ERPには、経営指標(KPI)をグラフィカルに表示するダッシュボード機能が標準搭載されています。これにより、キャッシュフローの状況や部門別の採算性、予実管理の進捗などを直感的に把握できます。経営の透明性が高まることで、問題発生時の早期発見と迅速な対策が可能になり、データドリブンな経営判断を実現します

さらに、モバイルデバイスからのアクセスも容易なため、出張先や移動中であっても承認業務や業績確認が滞ることはありません。

運用負荷の軽減とIT人材不足の解消

日本国内においてIT人材の不足は深刻な課題となっており、経済産業省の報告でも「2025年の崖」として警鐘が鳴らされています。自社でサーバーを管理するオンプレミス型の場合、システムの保守・運用、セキュリティパッチの適用、バックアップ対応などに多大な人的リソースを割く必要があります。

SaaS ERPでは、インフラの管理やシステムの保守運用はすべてベンダー側が行います。これにより、社内のIT担当者は「システムの維持管理(守りのIT)」という業務から解放されます。その結果、貴重なIT人材のリソースを、業務プロセスの改善やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といった「企業価値を高めるための攻めのIT」へシフトさせることが可能になります

常に最新機能を利用できる進化するシステム

技術の進化や法改正のスピードが速い現代において、システムが陳腐化しないことは極めて重要です。オンプレミス型の場合、バージョンアップには追加のコストと工数が発生するため、古いバージョンのまま使い続けざるを得ない「塩漬け」状態に陥るリスクがありました。

対してSaaS ERPは、ベンダーによって定期的に機能アップデートが行われます。インボイス制度や電子帳簿保存法といった最新の法規制への対応はもちろん、AI(人工知能)による分析機能や自動化機能など、最新のテクノロジーが自動的に実装されます。ユーザーは追加の作業を行うことなく、常に最新の機能と法対応が適用された「進化し続けるシステム」を利用し、競争力を維持することができます

強固なセキュリティとBCP対策

「クラウドに重要なデータを預けるのは不安」という考え方は過去のものになりつつあります。現在、主要なSaaSベンダーは、一般的な一般企業が自社で構築できるレベルを遥かに超える巨額の投資を行い、世界最高水準のセキュリティ対策を講じています。

データセンターは堅牢なファシリティで守られ、24時間365日の監視体制、多重化されたバックアップ、高度な暗号化技術が適用されています。これにより、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクを極小化できます。

また、自然災害などの有事の際にも、SaaS ERPはBCP(事業継続計画)対策として有効です。データがクラウド上にあるため、たとえ本社オフィスが被災して物理的なサーバーが破損したとしても、インターネット環境さえあれば別の場所から業務を再開できます。SaaS ERPを採用することは、自社単独では実現困難なレベルのセキュリティと災害対策を手に入れることと同義です

以下の表は、経営視点でのオンプレミス型とSaaS型の主な違いを整理したものです。

比較項目 オンプレミス型ERP SaaS型ERP
導入スピード 要件定義から稼働まで半年〜数年かかる 標準機能を活用し、数週間〜数ヶ月で稼働可能
初期投資 サーバー購入やライセンス費で多額の投資が必要 初期費用は低額で、月額利用料モデルが基本
機能更新 更新作業が必要で、システムが陳腐化しやすい 自動アップデートにより常に最新機能を利用可能
IT人材リソース 保守・運用に多くの工数を割かれる ベンダーに任せることで、戦略業務に集中できる
BCP(事業継続) 設置拠点の被災リスクを直接受ける 場所を問わずアクセスでき、災害時も復旧が早い

SaaS ERPが支えるマネジメント・トランスフォーメーション(MX)

近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の文脈において、経営管理そのものを変革する「マネジメント・トランスフォーメーション(MX)」の重要性が高まっています。MXとは、デジタル技術を活用して経営の意思決定プロセスや組織のあり方を根本から見直し、競争力を強化する取り組みです。SaaS ERPは、単なる業務効率化のツールではなく、このMXを実現するための基盤として不可欠な役割を果たします。常に最新のテクノロジーとベストプラクティスが提供されるSaaS ERPを活用することで、企業は変化に強い経営体質へと進化できるのです。

部分最適から全社最適への転換

従来のオンプレミス型システムや部門ごとに導入されたクラウドサービスでは、データが分断される「サイロ化」が大きな課題でした。各部門が個別に最適化されたシステムを利用することで、データの二重入力や整合性の確認に多大な労力が割かれ、経営層が必要な情報を入手するまでにタイムラグが生じていました。これに対し、SaaS ERPは統合データベースを用いて全社のデータを一元管理します。部門の壁を越えてリアルタイムに情報が連携されることで、組織全体としての「全社最適」が実現し、経営の透明性とスピードが飛躍的に向上します。

比較項目 部分最適(従来の個別システム) 全社最適(SaaS ERP)
データ管理 部門ごとに分散し、整合性が取れない 統合データベースで一元管理
業務プロセス 部門ごとの独自ルールで属人化 全社標準プロセスで効率化
経営判断 データの収集・加工に時間がかかる リアルタイムなデータで即断即決
システム連携 複雑なインターフェース開発が必要 標準機能でシームレスに連携

経営管理の「型」を作るプラットフォーム

SaaS ERPの導入において鍵となるのが「Fit to Standard(標準機能への適合)」という考え方です。これは、自社の独自業務に合わせてシステムをカスタマイズするのではなく、システムが提供する標準機能に合わせて業務プロセスを見直す手法です。多くのSaaS ERPには、世界中の先進企業で培われた「ベストプラクティス(成功事例に基づく業務プロセス)」が実装されています。

この標準機能に合わせて業務を行うことは、長年の慣習で複雑化した非効率な業務を断捨離し、グローバル標準の効率的な経営管理の「型」を自社に取り入れることを意味します。これにより、特定の担当者に依存しない標準化された業務遂行が可能となり、人材の流動性が高い現代においても安定した組織運営が実現します。

会計・販売だけではない経営変革の基盤

ERPというと、会計処理や受発注管理といったバックオフィス業務を効率化するための「守りのシステム」と捉えられることが少なくありません。しかし、MXの視点におけるSaaS ERPは、蓄積された膨大なデータを分析し、未来の予測や戦略立案に役立てる「攻めのシステム」としての側面を強く持ちます。

財務データだけでなく、顧客の購買行動、プロジェクトの収支状況、人的資本といった非財務情報も含めて統合的に可視化することで、多角的な視点からの経営分析が可能になります。SaaS ERPは、勘や経験に頼る経営から、客観的なデータに基づくデータドリブン経営へと転換するための強力なエンジンとなるのです。

オンプレミス型ERPとの比較とコスト対効果

SaaS ERP導入を検討する際、最も重要な比較対象となるのが従来のオンプレミス型ERPです。サーバーを自社で保有・運用するオンプレミス型に対し、インターネット経由でサービスを利用するSaaS型では、コスト構造や運用体制が根本的に異なります。ここでは、コスト面と業務適合性の観点から、両者の違いを比較します。

初期投資とTCO(総所有コスト)の削減

オンプレミス型ERPとSaaS ERPの最大の違いは、費用の発生タイミングと資産の持ち方にあります。オンプレミス型は、サーバー機器の購入やソフトウェアライセンスの買い切り、設置設定費用など、導入時に多額の初期投資が必要です。これらは固定資産として計上され、減価償却を行うのが一般的です。

一方、SaaS ERPはサブスクリプション方式(月額または年額課金)が主流であり、初期費用を大幅に抑え、利用料を経費として処理できる点が大きなメリットです。また、システムにかかるコストを考える際は、初期費用だけでなく、運用開始後の保守費用や電気代、IT担当者の人件費などを含めた「TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)」で比較することが重要です。

比較項目 SaaS型ERP オンプレミス型ERP
初期費用 安価(導入支援費や初期設定費のみ) 高額(ハードウェア、ライセンス、構築費)
ランニングコスト ユーザー数や機能に応じた利用料 保守運用費、電気代、設置スペース代
バージョンアップ ベンダー側で自動実施(追加費用なし) 自社で計画・実施(都度費用が発生)
資産計上 不要(経費処理が可能) 必要(固定資産として管理)

このように、SaaS ERPはハードウェアの老朽化に伴うリプレイス費用や、法改正対応のためのバージョンアップ費用が月額料金に含まれているケースが多く、長期的な視点でのコスト予測が容易であり、突発的な支出を抑えられるという特徴があります。

カスタマイズ性と業務標準化の考え方

コストと並んで重要な比較ポイントが、システムの柔軟性と業務プロセスの考え方です。オンプレミス型ERPは、自社専用の環境を構築するため、独自業務に合わせた詳細なカスタマイズ(アドオン開発)が可能です。これを「Fit to Gap(業務にシステムを合わせる)」アプローチと呼びますが、開発コストの増大や、システム更新時の足かせとなる「技術的負債」を生むリスクがあります。

対してSaaS ERPは、ベンダーが提供する標準機能を利用することが前提となります。独自のカスタマイズには制限がありますが、これはデメリットだけではありません。SaaS ERPが提供する機能は、多くの企業のベストプラクティス(最良の業務手法)が反映されています。そのため、システムに合わせて業務プロセスを見直す「Fit to Standard」の考え方を取り入れることで、業務の標準化と効率化を同時に実現できるのです。

現代のビジネス環境において、変化への対応スピードは競争力の源泉です。過度なカスタマイズでシステムを固定化させるのではなく、SaaS ERPの標準機能を活用して常に最新の業務プロセスを取り入れ続けることが、DX(デジタルトランスフォーメーション)成功の鍵となります。

SaaS ERP導入時の注意点と検討プロセス

SaaS ERPは契約から利用開始までの期間が短いことが大きなメリットですが、事前の準備不足のまま導入を進めると、運用開始後に現場の混乱を招く恐れがあります。プロジェクトを成功させる鍵は、SaaSならではの特性を深く理解し、従来のシステム構築とは異なるアプローチで検討プロセスを進めることにあります。

業務プロセスの見直し(Fit to Standard)

SaaS ERP導入において最も重要な成功要因と言われるのが、「Fit to Standard(フィット・トゥ・スタンダード)」という考え方です。これは、ERPパッケージが提供する標準的な業務プロセス(ベストプラクティス)に合わせて、自社の業務フローを変更・統一することを指します。

従来のオンプレミス型ERPでは、自社の独自業務に合わせてシステムをカスタマイズする「Fit and Gap」の手法が一般的でした。しかし、SaaS型で過度なカスタマイズやアドオン開発を行うと、SaaSの最大の利点である「自動アップデートによる最新機能の享受」を阻害する要因となります。カスタマイズ部分がバージョンアップの妨げになったり、追加の保守コストが発生したりするためです。

導入検討時には、現場からの「今のやり方を変えたくない」という要望をそのまま受け入れるのではなく、経営視点で業務の標準化(BPR)を推進することが不可欠です。標準機能に業務を合わせることで、法改正への迅速な対応や、属人化の解消、将来的なAI活用の基盤作りといったメリットを最大限に得られるようになります。

データ移行とシステム連携の計画

既存システム(レガシーシステム)からSaaS ERPへの切り替えで、最も工数がかかりトラブルが発生しやすいのがデータ移行とシステム連携です。長年蓄積されたデータには、表記のゆれや重複、不整合なデータが含まれていることが多く、これらをそのまま新システムに移すとエラーの原因となります。

移行計画を立てる際は、単にデータを移すだけでなく、データのクレンジング(整理・統合)を行い、質の高いデータを整備することが重要です。また、SaaS ERPは単独で利用するだけでなく、APIを通じて他のクラウドサービス(SFA、CRM、経費精算システム、銀行システムなど)と連携してエコシステムを形成するケースが一般的です。どのシステムと、どのような頻度・方法でデータを連携させるか、詳細な要件定義を早期に行う必要があります。

以下に、導入検討時に整理しておくべき主な項目をまとめました。

検討フェーズ 主なチェック項目 対策のポイント
データ移行 マスタデータの整合性
トランザクションデータの移行範囲
名寄せや不要データの削除(クレンジング)を事前に行い、過去何年分のデータを移行するか明確にする。
システム連携 API連携の可否と仕様
データ連携の頻度(リアルタイム/バッチ)
連携する周辺システムの接続仕様を確認し、業務フロー上、どのタイミングでのデータ更新が必要かを定義する。
セキュリティ アクセス権限の設定
認証基盤(SSOなど)との連携
役職や部門ごとの詳細な閲覧・操作権限を設計し、情報漏洩リスクを最小限に抑えるための認証ルールを策定する。

これらのプロセスを軽視すると、稼働後に「必要なデータが見られない」「連携エラーで業務が止まる」といった事態に陥りかねません。ベンダーや導入パートナーと協力し、余裕を持ったスケジュールで十分な検証を行うことが推奨されます。

よくある質問(FAQ)

SaaS ERPと従来のオンプレミス型ERP、どちらを選ぶべきでしょうか?

企業の規模やITリソース、業務の独自性によって適した選択肢は異なります。一般的に、初期投資を抑えて迅速に導入したい場合や、システム運用管理の負担を軽減したい中堅・中小企業にはSaaS ERPが適しています。一方で、極めて特殊な業界固有の業務プロセスがあり、大規模なフルスクラッチ開発や深いカスタマイズが必須となる大企業の場合は、オンプレミス型やプライベートクラウド型が選ばれるケースもあります。

SaaS ERPの導入にはどのくらいの期間が必要ですか?

導入範囲や製品によって異なりますが、一般的には数ヶ月から半年程度で稼働を開始できるケースが多く、年単位の期間を要することもあるオンプレミス型と比較して短期間での導入が可能です。ただし、事前の業務整理やデータ移行の準備に時間がかかる場合もあるため、余裕を持ったスケジュール策定が重要です。

独自の業務フローに合わせてカスタマイズすることは可能ですか?

SaaS ERPは、ベンダーが提供する標準機能を利用する「マルチテナント方式」が一般的であるため、プログラム自体を書き換えるような大幅なカスタマイズ(アドオン開発)は原則として行いません。その代わり、設定変更(パラメータ設定)やノーコードツールでの画面調整、APIを通じた外部システムとの連携によって柔軟性を持たせています。基本的には、システムに合わせて業務を見直す「Fit to Standard」の考え方が推奨されます。

クラウド上にデータを置くことのセキュリティリスクは心配ありませんか?

主要なSaaS ERPベンダーは、国際的なセキュリティ基準(ISO/IEC 27001やSOC1/SOC2など)に準拠し、多層防御や24時間365日の監視体制、定期的なバックアップを行っています。自社でサーバールームや専任のセキュリティ担当者を確保することが難しい企業にとっては、信頼できるSaaSベンダーの基盤を利用する方が、結果としてセキュリティレベルが高まるケースが多く見られます。

既存の会計ソフトやシステムからのデータ移行は難しいですか?

多くのSaaS ERPでは、CSV形式やExcel形式でのデータインポート機能や、移行ツールが用意されています。しかし、旧システムと新システムではデータ構造や項目の定義が異なることが多いため、データのクレンジング(整理・修正)やマッピング作業には一定の工数が必要です。導入パートナーやベンダーのサポートを活用し、計画的に進めることが成功の鍵となります。

導入後にランニングコストが値上がりするリスクはありますか?

SaaS ERPはサブスクリプション契約(月額・年額課金)であるため、利用ユーザー数の増加やオプション機能の追加、あるいはベンダー側の価格改定によってランニングコストが変動する可能性はあります。契約時には、将来的なスケールアップに伴うコストシミュレーションを行い、価格改定時の通知ルールや契約期間についても確認しておくことをお勧めします。

SaaS ERPの導入で失敗する一番の要因は何ですか?

最も多い失敗要因は、現行の業務プロセスをそのまま新システムで再現しようとすることです。SaaS ERPのメリットは標準化された効率的なプロセスを利用できる点にありますが、過度な機能要求や「今まで通りのやり方」への固執は、導入プロジェクトの長期化や現場の混乱を招きます。経営層が主導し、業務の標準化と変革(BPR)を断行する姿勢が不可欠です。

まとめ

本記事では、SaaS ERPの基本的な仕組みから導入メリット、オンプレミス型との違い、そして導入時の注意点について解説してきました。

SaaS ERPは、単に基幹システムをクラウドへ移行するためのツールではありません。変化の激しい現代のビジネス環境において、企業が迅速な意思決定を行い、競争力を維持し続けるための「経営基盤」そのものです。初期投資を抑えつつ、常に最新の機能とセキュリティ環境を利用できる点は、IT人材が不足しがちな中堅・中小企業にとって、極めて合理的な選択肢と言えます。

導入を成功させるための最大のポイントは、システムに合わせて業務プロセスを見直す「Fit to Standard」の考え方を徹底できるかどうかにあります。部分的な業務効率化にとどまらず、全社最適の視点でデータを一元管理し、経営の透明性を高めることこそが、SaaS ERP導入の本質的な価値です。

これからERPの導入や刷新を検討される際は、機能の多寡だけでなく、「自社の経営変革(MX)を支えるパートナーとして信頼できるサービスか」という視点で選定を進めてみてはいかがでしょうか。本記事が、貴社のシステム選定とビジネスの成長の一助となれば幸いです。

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