ERPは、企業経営の基本となる資源要素を一元管理し、業務効率化や迅速な意思決定を可能にするシステムです。ERPの導入は、製造業が抱えるさまざまな課題の解決に役立ちます。本記事では、製造業にERPが必要な理由や、解決できる具体的な課題について解説します。ERPの導入を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
製造業における基幹システムの課題
基幹システムと呼ばれるシステムには、さまざまな種類があります。例えば、製造業では業務効率化を図るための生産管理システムが基幹システムとして使われていることが多いです。しかし、社内で導入している他のシステムやツールとの間で二重入力の手間が発生しているなど、課題を抱えている企業は少なくありません。また、システム間の連携がうまく取れずタイムラグが発生する、人的なミスが排除できない、属人的な運用がされているなどの課題もあります。
さらに国内外に複数拠点を持つ企業では、海外の工場との情報統合が課題となるケースも多く見られます。国内に複数拠点を展開している場合であっても、情報収集に時間がかかり、需要変動を反映したタイムリーな生産ができないなどの課題が見受けられます。
[RELATED_POSTS]製造業にERPが必要な理由
製造業における基幹システムの課題の解決策として注目されているのがERPです。ERPの導入は、業務の効率化やコスト削減、業務全体の見える化を通じて、製品投入までのプロセスを円滑に進めやすくする効果が期待できます。また、製造業にERPが必要な理由として、他の先進国に比べて日本のERP導入が大きく遅れていることも挙げられます。日本の製造現場はそれぞれが独立して管理されていることが多く、全社的な管理体制ができていません。システムが導入されている場合であっても、数十年前から使い続けているレガシーシステムや、カスタマイズされた表計算ソフトを繰り返し使い続けているため、新しい業務に対応しにくいという問題を抱えています。
一方、世界ではERPの導入が進められています。導入率が高まるきっかけのひとつとして、「インダストリー5.0(第5次産業革命)」が挙げられます。インダストリー5.0とは、製造業のオートメーション化などを重視したインダストリー4.0をさらに進化させた、新しい産業革命の概念です。インダストリー5.0では、AIやIoTなどの先進技術を活用しつつ、人間の創造性を最大限に引き出し、環境問題に配慮した持続可能な製造業の実現を目指します。このインダストリー5.0を実現するには、企業全体を一元管理するERPが効果的であることから、各国でERPの普及が加速しました。
したがって、国内の製造業がこのままの状態を維持し続けていると、国際競争に勝つことが難しくなる可能性が高く、自社内の生産性を上げるだけでなく、国際競争において優位に立つためにもERP導入は必須であるといえます。
ERPとMESの違い
ERPと似た用語にMESがあります。MESとは「Manufacturing Execution System」の略称で、日本語では「製造実行システム」と訳されます。ERPが幅広い業種で使用されるのに対し、MESは製造業に特化したシステムです。MESの目的は、QCD(品質・コスト・納期を意味するQuality・Cost・Deliveryの頭文字)の最適化であり、生産工程のさまざまな情報収集から分析までを担います。一方のERPは、経営資源の最適化が最大の目的です。
つまり、経営レベルでの広い視点から利益の最大化を目指すのがERP、生産工程や製造現場の管理などに特化してできたものがMESです。以下ではそれぞれの具体的な使用場面について解説します。
ERPが使用される場面
ERPは、企業全体の経営資源を統合的に管理し、業務の効率化と意思決定の迅速化を図るために使用されます。具体的な使用場面としては、受注から出荷までの販売管理、在庫管理、財務・会計管理、人事管理、生産計画の立案などが挙げられます。
MESが使用される場面
MESは、製造現場の作業をリアルタイムで管理・監視し、生産プロセスの最適化を図るために使用されます。具体的な使用場面としては、製造工程への製造指示、設備の稼働状況の監視、不良品の追跡、設備メンテナンス、作業者のスケジュール管理、生産実績の収集と分析などが挙げられます。
ERP導入で解決できる製造業の課題
ERPの導入は、「データの二重入力」「現場のリアルタイム管理」「高いトレーサビリティの確保」「部門間のスムーズな情報共有」といった、製造業が抱える課題の解決に役立ちます。
データの二重入力
製造業では、部門ごとに異なるシステムを構築しているケースが多く、情報が部門内に閉じる「サイロ化」が進行して、同じことを何度も入力する非効率な状況が生まれています。このような入力作業は、業務効率を低下させるだけでなく、手入力による作業が増加することで人的ミスが発生しやすくなります。しかし、ERPを導入すれば、データの一元管理ができ、手間が削減されるとともに人的ミスも減少します。
現場のリアルタイム管理
従来のシステムでは情報の更新と共有に時間がかかり、現場の状況をリアルタイムで把握するのが困難でした。このような情報の遅れは、タイムリーな意思決定を妨げ、機会損失につながりかねません。また、トラブルへの対処が遅くなり、被害が拡大してしまうこともあります。ですが、ERPを導入すれば在庫状況や生産進捗などの情報がリアルタイムで管理でき、 迅速な意思決定を可能にします。その結果、消費者や取引先のニーズに柔軟に対応でき、現場で問題が発生した際にもすばやく対応できるため、機会損失を最小限に抑えることができます。
高いトレーサビリティの確保
トレーサビリティとは、原料の調達から製品の出荷までの情報を追跡する仕組みのことです。製造業では、製品の品質管理や不良品の原因追及のために高いトレーサビリティの確保が求められます。ERPがあれば、すべての情報が一元管理されているため、必要な情報がすぐに取得可能です。追跡にかかる手間や時間を大幅に削減でき、問題の早期発見・改善ができることで、顧客満足度向上にもつながります。
部門間のスムーズな情報共有
製造業では、営業、購買、生産、在庫管理などの各部門が独立してシステムを使っているため、情報共有がスムーズに行われていないことが多いです。ERPでは、各部門の情報が統合、共有され、連携が強化できます。例えば、営業担当から経理に請求申請を行う場合、取引先に提示した見積もりデータを活用してスムーズに手続きを済ませることが可能です。また、ERPを導入することで、業務の無駄を減らし、コミュニケーションコストを削減しながら、全社的な業務効率化が実現します。
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まとめ
各部門が独立して管理されているケースが多い日本の製造現場では、いかに全社的な管理体制を構築するかが課題です。その解決策のひとつとして有効なのがERPの導入です。ERPによってすべての情報を一元管理することで、現場のリアルタイム管理や部門間のスムーズな情報共有を実現できます。
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ERPの導入を成功させるためには、自社の業務プロセスを見直し、目標を明確にしたうえで、適切な製品を選定することが重要です。導入後も継続的な運用体制の整備と改善を行うことで、業務効率化と経営力強化の実現が期待できます。
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