事業承継時に必要なスキームの重要性に関して解説

 2019.07.22  クラウドERP編集部

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“スキーム”という言葉は、「枠組みを伴った計画」という意味があります。つまり、事業承継スキームとは、事業承継を行う上で欠かせない計画のことを指します。かつて、日本の事業承継といえば経営者の子息に株式を相続・生前贈与し、後継者に経営権を譲るというのが通常の考え方でした。

しかし、昨今の中小企業の事業承継は大きな問題を抱えています。経営者の高齢化による承継ニーズが増しているにもかかわらず、子供が事業を承継する気がない、子供がいない、後継者が見つからないといった理由から、事業承継が困難な中小企業が多く存在します。その中でも多くの中小企業は廃業を決定していますが、企業全体の99.7%が中小企業である日本においては、廃業は大きな経済的損失になります。

こうした時代背景もあり、昨今の事業承継は単に子息へと承継するものではなく、M&Aによる承継や事業承継ファンド・信託を活用する承継、持株会社を設立する方法等があり、選択肢が広がっています。それに伴い事業承継スキームも多様化し、承継そのものを事業戦略の一環と考える経営者も少なくありません。

本稿では、いくつかある事業承継スキームの種類と、それぞれのメリット等について紹介していきます。

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持株会社・資産管理会社を活用した事業承継スキームについて

最初に、持株会社・資産管理会社を利用した高度な事業承継スキームについて紹介します。親族または親族外の誰かを後継者として事業承継を進める場合、会社の株式を後継者に集約させ(2/3以上)、経営権を承継する必要があります。ただし、相続及び生前贈与ということで、相続税・贈与税が課せられるのが大きなボトルネックです。

そこで、持株会社・資産管理会社を設立した上で株式の集約を行うと、相続及び生前贈与した場合よりも大きな節税効果が期待できます。ちなみに、持株会社とは子会社やグループ会社の株式の管理を目的とする会社を指します。資産管理会社は、資産管理を目的とした会社のことです。

2つの設立方法

持株会社・資産管理会社を設立するには①株式交換、②株式移転のいずれかの方法で設立することになります。

①株式交換

後継者が持株会社・資産管理会社を設立し、その持株会社・資産管理会社が経営を渡したいか会社の株式を買い取る方法

②株式移転

経営者が経営を渡したい会社の株式を、株式移転によって新設の持株会社・資産管理会社に移転し、同時に持株会社の株式を経営者に割り当てる方法

それぞれのメリット

持株会社・資産管理会社を活用した事業承継スキームの主なメリットは、節税と見た目の利益です。

①後継者が持株会社・資産管理会社を設立した場合

後継者が出資して持株会社・資産管理会社を設立した場合は、株式を集約させた段階で承継が完了します。後継者の資金で事業を引き取ることになるため、相続税・贈与税のことを考慮する必要はありません(譲渡所得税は課せられます)。

事例記事:中外製薬
事例記事:リコー

②経営者が持株会社・資産管理会社を設立した場合

経営者が持株会社・資産管理会社を設立した場合は、経営を渡したい会社の業績が伸び続けて株価が上昇した場合に、その上昇分は持株会社・資産管理会社の含み益になります。株価の算定が純資産価額方式の場合は含み益を38%控除でき、株価の上昇を抑えられます。さらに、持株会社・資産管理会社が経営者の会社の株式を購入するための資金を金融機関から借り入れた場合、株式(資産)と借入(負債)が相殺され、株価を抑えられます。株価を抑えて後継者へ承継できるため、相続税・贈与税の節税効果があるのです。

さまざまな事業承継スキーム

上記では持株会社・資産管理会社を活用した事業承継スキームについて解説しました。他にも、さまざまな事業承継スキームが存在します。

① 親族内の事業承継

株式譲渡(相続、生前贈与、売買)、持株会社・資産管理会社の設立

② 従業員への事業承継

株式譲渡(生前贈与、売買)MBO、EBO

③ M&Aによる事業承継

株式譲渡(売買)、事業譲渡

④ 外部からの経営者の招聘

株式譲渡(売買)。MBO、事業譲渡

※MBO(Management Buy Out)オーナー経営者や会社経営人が、従業員が参加する自社企業の株式を売買すること

※EBO(Employee Buy Out)会社の従業員がその会社の事業を買収する、または経営権を取得すること

各事業承継スキームのメリットとデメリット

① 親族内の事業承継

最も単純かつやりやすい事業承継スキームではあるが、想定外に税金が課せられる可能性がある

② 従業員への事業承継

長年会社に勤めている従業員であればスムーズに事業承継を行えるが、後継者の資金や保証・担保が課題になる

③ M&Aによる事業承継

事業承継候補となる企業を幅広く探すことができ、資金面などの課題が一気に解決できるが、自社が希望する条件を満たす売却先を探すことが難しい

④ 外部からの経営者の招聘

資金面の課題はなく、良い後継者が見つからなくても外部から優秀な人材を入れられるが、会社の運営を握るのは外部の人間なので従来の経営理念等が引き継がれない可能性がある

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各事業承継スキームの課題について

上記のように、事業承継スキームにはさまざまな方法があります。ただし、各事業承継スキームには特有の課題があるため、それらの課題をしっかり向き合った上で、解決に向けた対策を練ることが大切です。

①親族内の事業承継

親族内へ事業承継する場合は、相続税・贈与税がかかるケースがほとんどである。生前贈与を行う際は課税負担を軽減するために暦年課税贈与、相続時精算課税制度の利用を検討して節税を行う。加えて後継者育成を早期段階から行い、準備に相当な時間がかかることを理解しておく。

②従業員への事業承継

多くの中小企業では会社の借入金を経営者が連帯保証しており、後継者となる従業員がこの引継ぎに難色を占める可能性が高い。銀行側からも個人資産が乏しい従業員の連帯保証では不十分と考える可能性がある。経営者が第一線を退いた後も、個人保証や個人財産の担保提供を継続するなどを検討する。

③M&Aによる事業承継

一般的な成約率は5%と言われており、従業員の雇用や企業イメージ、ブランドイメージを維持できるかなどの課題が多い。自社が売却時に臨む条件を満たしてくれる候補先が見つかるかどうかが大きなハードルになる。

④外部からの経営者の招聘

M&A同様に外部の人間が後継者として経営権を握ることになるので、従業員の雇用や企業イメージ、ブランドイメージを維持できるかなどの課題が多い。

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事業承継スキームについて正しい理解と、適切な選択を!

いかがでしょうか?中小企業が事業承継について検討する際は、さまざまなスキームが存在し、それぞれにメリットとデメリット、そして課題があります。事業承継を確実に、そしてスムーズに実行するためには各事業承継スキームについて正しく理解し、自社にとって適切な選択をすることが大切です。本稿では簡単に事業承継スキームについて解説しましたが、これを参考に自社の事業承継について検討していただきたいと思います。

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