環境適合設計とは?導入するメリットはあるのか

 2022.06.14  クラウドERP編集部

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2015年に国連サミットで採択された、「持続可能な開発目標(SDGs)」にも掲げられているように、よりよい社会の実現に向けて、地球環境への配慮が要求されています。本記事では、今注目を浴びている「環境適合設計(DfE)」の概要や背景などを概説します。また、企業が環境適合設計を導入するメリットに加え、環境適合設計の動向と今後についても理解しておきましょう。

環境適合設計とは

「環境適合設計」の定義は、製品やサービスが生まれてから、最終的になくなるまでのライフサイクルのすべてを考慮して、環境への悪影響をできるだけ及ばさないように、製品やサービスを設計することです。環境適合設計は、「Design for Environment」を和訳したものであり、頭文字をとって「DfE」とも呼ばれ、他にも「環境配慮設計」や「エコ・デザイン」などの別名も存在します。

なお、2001年(平成13年)4月に施行された「資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」には、設計段階で3Rに配慮しなければならない10業種・69品目が定められています。ここでいう「3R」が意味しているのは、廃棄物を減らす「リデュース(Reduce)」と、使えなくなるまで再使用する「リユース(Reuse)」、そして廃棄物を再利用する「リサイクル(Recycle)」の3点です。

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環境適合設計の背景

環境適合設計が注目されるようになったのは、次の背景によるものと考えられています。

戦後、水俣病やイタイイタイ病などの公害が、大きな社会問題として取り上げられたことにより、工場などの排出口から放出される排水や排出ガスに対し、有害物質の排出基準が設けられました。この基準を満たすために、工場側が取った対策は、製造プロセスの最後に、排水や排気ガスの処理プロセスを加えることで、有害物質の濃度を基準以下にして排出するものです。

それから時は流れ、世界全体で廃棄物の発生量が増大し、環境破壊が問題視され、1992年(平成4年)のリオデジャネイロにおける地球サミットで、「アジェンダ21」が採択されました。

その中には、「クリーナープロダクション」の推進が含まれています。クリーナープロダクションは、製品やサービスに予防的な環境戦略を適用し続けるものを意味しており、その目標として掲げられるのは、可能な限り環境に負荷をかけない生産システムの構築です。この生産システムでは、製造プロセスの末端だけでなく、上流側にも目を向けて、ライフサイクル全体で環境負荷を下げることを目指します。

そして、1996年(平成8年)には国際標準化機構(ISO)が、アジェンダ21を遂行するために、「環境マネジメントシステム規格ISO14000シリーズ」を制定し、環境マネジメントの継続的なレベル改善を目的とした、「ISO14001」に仕様書を示しました。

環境適合設計もまた、アジェンダ21の遂行に貢献するものであり、製造段階だけではなく、資源の採取や消費、リユース、リサイクル、最終処分の段階までを網羅して、環境に配慮した設計に取り組むことが要求されます。

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環境適合設計を導入するメリット

環境適合設計には、それなりのコストがかかりますが、設計にあたってコストをかけただけのメリットが見込めます。企業が環境適合設計を導入した場合に、期待できるメリットを3つ紹介します。

環境配慮によるリスクの低減

まず、メリットのひとつとして挙げられるのが、環境配慮によるビジネスリスクの低減です。

企業活動にはさまざまなリスクが伴うので、リスク管理を適切に行わないと、巨額の経済的損失が発生したり、企業価値を損なったりするおそれがあります。これらのリスクの中に環境リスクも含まれますが、環境適合設計を遂行することから、そのリスクを確実に減らせるでしょう。

例えば、自社で製造した有害物質を含有する製品が、環境汚染を引き起こして大きな被害を出してしまうと、企業イメージは悪くなり、多額の損害賠償を請求されかねません。しかし、商品の企画や設計の段階から最終処分のことまで考えて環境への配慮をしっかり行えば、将来にわたって環境汚染による損失を回避できると考えられます。

グリーンコンシューマーを取り込める

環境に配慮した商品を設計して販売することで、環境にやさしい商品を積極的に選んで購入する、「グリーンコンシューマー」を新たな顧客として取り込めます。

2000年(平成12年)5月に制定された、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」など法の整備が進んだことにより、環境負荷の低減に尽力する企業から、環境負荷を抑えられる製品を購入するグリーン購入が、社会に浸透しつつある状況です。

今後さらに、人々の地球環境問題への関心が高まっていけば、資源ごみをリサイクルして作った商品など、環境に十分配慮して製造された、グリーン製品市場の拡大が見込まれるでしょう。

また、省エネや省資源は、製品の製造に使われる原材料費や燃料費を節約できるので、コストの削減につながります。

環境に関連した情報の効率的な収集ができる

環境適合設計を遂行することで、社内の情報管理体制が体系化されるとともに、環境関連情報の共有化が進み、それらを効率的に収集できるようになるメリットもあります。

製品の製造に必要な原材料や部品に関わる企業から、製品の輸送や販売に関わる企業まで、製品に含まれる有害物質の管理については、製品に関わる各企業が責任を持たなければなりません。そのため、環境適合設計の遂行は、製品に含まれる化学物質の情報が、企業間で共有されるのに必要不可欠です。

環境適合設計の動向

環境適合設計の動向としては、主に以下の3点が挙げられます。

まず、2004年(平成16年)に改訂されたISO14001では、企業が管理できる直接的な環境側面に加えて、新たに間接的な環境側面への対応の徹底も要求されるようになりました。これは、企業に製品のライフサイクルやサプライチェーンの管理を要求したものであり、環境適合設計そのものの重要性が増大したことを意味しているのです。

また、2005年(平成17年)に欧州議会で採択された「EuP指令」では、EU域内のエネルギー使用製品に対して、環境適合設計が義務化されました。このことから、エネルギー使用といわれる環境側面の重要性が増大していると考えられます。

そして、2003年(平成15年)に制定された「RoHS指令」では、EU域内の電気・電子機器製品に、規制対象の有害化学物質に含まれないことが必須要件となっています。さらに、2007年(平成19年)に発効された「REACH規則」によって、EU域内で化学物質の登録やリスク評価なども義務付けられています。このことから、環境適合設計の中でも、有害化学物質による影響といわれる環境側面がより一層、重要視されるようになったと見受けられるでしょう。

環境適合設計の今後

2006年(平成18年)に国立環境研究所が行った「家電リサイクル法の実態効力の評価」では、環境適合設計の事例数を調査しています。この研究によれば、事例数は省エネや安全性に関するものが多く、次いで、減量化や再資源・再生部品の使用など、リサイクルに関するものも一定数見られました。したがって、これらの環境側面で、環境適合設計を通した配慮が進んでいることがわかります。

また、製造業者について、リサイクル現場を踏まえた環境適合設計が遂行されるようになるなど、企業における環境適合設計を通した行動変容も認められている状況です。

しかし、製品が壊れて廃棄物として処分されるまでには、相応の時間がかかり、まだ必要なデータがそろわないため、環境適合設計の遂行による環境配慮の成果は、現時点で十分に検証されているとは断言できません。

よって今後も、環境適合設計の成果を評価した上で検証を続け、その結果を次の環境配慮設計に活かしていくことが重要となるでしょう。

まとめ

環境適合設計では、製品やサービスについて、そのライフサイクルのすべてを考慮して、環境に悪い影響を与えないように設計を行います。環境適合設計を導入するメリットは、ビジネスリスクを減らせることや、原材料費や燃料費を節約して、グリーンコンシューマーを顧客に取り込めること、そして環境関連情報を効率的に収集できることです。環境に配慮しつつ、リスクやコストを軽減させるためには、環境適合設計の導入がおすすめです。

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