事業ポートフォリオはなぜ重要!?作り方とマネジメントの問題点

 2022.05.30  クラウドERP編集部

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事業ポートフォリオとは、企業が経営している事業すべてをまとめて可視化した、経営状況を把握するための資料です。本記事では、事業ポートフォリオがなぜ重要視されているのか、その理由やポートフォリオの適切な作り方、マネジメントの問題点などを解説していきます。

事業ポートフォリオとは

事業ポートフォリオとは、企業の事業すべてを組み合わせて可視化したものです。これにより各事業の収益性、安全性、成長性などを一覧で確認することが可能になります。事業ポートフォリオは、事業ごとの決定事項を判断する際や経営資源をどの事業に集中させるべきかなどの判断を行う際に利用できるため、現在では事業ポートフォリオマネジメントとして注目されています。そして、経営資源を事業全体にバランスよく配分することを「事業ポートフォリオの最適化」と呼びます。

新型コロナウイルスの感染拡大や働き方改革などにより、近年では市場のニーズも大きく変化しています。事業ポートフォリオで各事業の状況を把握できていると、市場の変化に合わせた迅速な経営判断を行うことが可能です。各事業のパフォーマンスを高めるには、限られた経営資源を効率よく活用する必要があり、事業ポートフォリオの作成・利用が重要になります。

M&Aとの関連

M&Aとは、事業の拡大や存続などを目的に行う合併や買収のことです。グループ内の人員削減を行うよりも、M&Aによって適した事業を切り離す方がそれぞれの事業が成長する機会を作れるといったメリットがあります。事業の合併や買収など、企業が大きく変化するM&Aには多くの準備が必要で、市場調査や事業ごとの生産など、さまざまな分析結果をもとに行わなければなりません。

M&Aを成功させるためには、まず自社の事業をよく把握し、M&Aを行う目的を明確化することが大切です。自社の強みや弱み、市場機会などを調査し、目的の実現に効果的な戦略を立て、最適な相手と交渉を進めていく必要があります。

事業ポートフォリオを作成している場合、M&Aに必要な自社の現状把握がしやすくなります。自社の各事業について生産性の高さなどを簡単に確認できるため、M&Aを行う際の判断材料や分析の指標として活用できます。

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事業ポートフォリオの作成方法

事業ポートフォリオは、事業ドメイン、PPM、コアコンピタンスという三つの視点から作成します。これらをうまく組み合わせることで、各事業のポテンシャルを適切に判断できます。

事業ドメインで分析する

事業ドメインとは、企業が主力としている事業領域です。主力事業を明確化してから、その事業に必要な経営リソースを選ぶことで、無駄なく適切な配分を行えます。適切なリソースの配分を可能にする事業ドメインの分析は、近年多様化が進む消費者ニーズの対応にも活用できるため、将来的な事業の立ち上げや多角的な戦略を進める場合にも役立ちます。

事業ドメインを選ぶ際には、CTMフレームワーク分析を活用します。CTMフレームワーク分析は、経営学者デレック・エイベル氏が提唱した方法で、「顧客」「技術」「機能」の三つを軸にして行う分析です。「顧客」では、年齢、性別、興味、地域、ライフスタイルなどの項目によって属性を分け、自社のターゲットユーザーを絞ります。

「技術」は、競合との差別化を可能にする独自の技術のことです。自社の商品やサービスにおいて独自の技術を持つ場合、将来的に新規事業の開拓にも活用できます。「機能」の軸では、顧客にどれだけの価値ある機能を商品・サービスで提供できるのかを決定します。顧客がお金を出す価値があると考える、商品・サービスにすることが重要です。

この三つの軸から自社が提供する商品・サービスを分析して事業ドメインを設定すれば、自社の強みが明確になると同時にライバル企業もはっきりします。自社とライバル企業を客観的に把握し、その特徴を考慮できるため、市場での競争を優位に保てるメリットもあります。

PPMで判断する

PPM分析は、「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」の略で、事業を4つの要素に分けて分析を行うフレームワークです。PPM分析は、「市場成長率」の縦軸と「相対的市場シェア」の横軸でできた表内を、「花形」「問題児」「金のなる木」「負け犬」という4つのエリアに分けます。

「市場成長率」の縦軸は市場の成長度を表す軸で、「相対的市場シェア」の横軸は業界トップ企業のシェア率に対して自社がどれだけのシェアを持っているかを表す軸です。縦軸と横軸の数値から、現在自社の事業がどのエリアに分類されるかを調べ、分析を行います。

「花形」は、市場成長率・市場シェア率ともに高いエリアです。成長率が高い市場でシェア率も高いため優良な位置にいますが、競争率が激しい市場で利益を維持するためには十分な投資も必要になります。「問題児」は、市場成長率が高い一方で、市場シェアが低い状態です。現在の利益は少ないが、シェア率のアップで花形に変わる可能性があります。まだ利益回収につながらない状態なので、多くの投資が必要です。

「金のなる木」は市場成長率が低いなかで市場シェアが高い状態です。市場の成長が見込めない状態で、新規参入企業が少なく競争率が低いため、少ない投資額でも問題ありません。シェア率の高さから売り上げが入りやすく、高い利益が期待できるエリアです。「負け犬」は市場成長率・市場シェア率ともに低い状態のエリアです。成長が見込めない市場でシェア率も低いため、売り上げも利益も期待できません。「問題児」の市場が落ち込んだ場合に「負け犬」になる傾向があるため、市場の変化に注意する必要があります。

コアコンピタンスで評価する

企業の中心・中核となる特徴や強みがコアコンピタンスです。事業活動では、コアコンピタンスを把握してその強みを活かした経営展開を行う必要があります。コアコンピタンスの事例には、ホンダのエンジン技術やシャープの液晶技術などが挙げられます。世界的に有名で性能の高い技術が強みとなります。

自社の強みがコアコンピタンスかどうかを見極める際には、「模倣可能性(Imitability)」「移動可能性(Transferability)」「代替可能性(Substitutability)」「希少性(Scarcity)」「耐久性(Durability)」という五つの項目をクリアしているかどうか確認します。

「模倣可能性」は、その強みが他社から真似される可能性があるかどうかです。簡単に模倣されるものはコアコンピタンスにはなりません。「移動可能性」は、他の商品でも活用できるなどの汎用性を表します。移動可能性が高いと、新たな商品・サービスに展開できるため自社の強みとなります。他社の商品では代用できないといった特徴が「代替可能性」です。また、「希少性」は他では見られない価値の高さであり、「耐久性」はユーザーから長期間にわたり必要とされるという強みです。これら5つのコアコンピタンスを持っている企業は、市場で強い競争力を発揮します。

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日本企業におけるポートフォリオマネジメントの問題点

日本企業では、未だにポートフォリオマネジメントが進んでいない、撤退や売却に消極的などの問題があります。あらかじめ問題点を理解しておくことで、ポートフォリオマネジメントを正しく取り入れることが可能です。

ポートフォリオマネジメントが進んでいない

社会情勢や市場の変化などに伴い、事業にも新しい戦略が必要になります。ポートフォリオマネジメントとは、企業全体の経営を活かすために事業の再編成を戦略的に行うことです。

日本企業の場合は、その体質から未だにポートフォリオマネジメントが進んでいません。日本企業では、各事業部門の権限が強く、責任や権限の所在が一元化されていない、また経営者に会社全体をまとめて見る視点がないなどの課題がみられます。そのため、一部の事業を切り出すことを望まない企業が多く、ポートフォリオマネジメントの妨げになっています。

撤退や売却に消極的

日本企業の経営者は、事業の撤退や売却に消極的なケースが多くみられます。経済産業省の「日本企業のコーポレートガバナンスに関する実態調査報告書」によると、日本企業が事業の撤退や売却を行う際には、「判断基準が不明瞭で、撤退や売却の判断が難しい」「売却により売り上げ・企業規模が縮小することに抵抗感がある」などの課題があるとの結果が出ています。

売却を検討する際の基準については、「特定の形式的な基準は定められていない」という回答が最も多くなっていました。また、あらかじめ定性的な基準を定めていた企業では、「市場における自社の強み・弱み」「市場における競合状況」などを基準に置いているケースが多くみられます。戦略的なポートフォリオマネジメントを実現するためには、売却を検討する際の基準を定めておくと、適切に判断を下せます。

https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000416.pdf

まとめ

事業ポートフォリオとは、企業が展開している事業をまとめて一覧にした資料のことです。各事業の収益性、安全性、成長性といった情報を簡単に確認できるため、事業間で経営リソースの移動などを行う際や、M&Aの際などに利用されます。事業ポートフォリオで各事業の経営状況や経営資源の過不足などが把握できると、限られたリソースを無駄なく利用でき、市場の変化に素早く対応できるなどのメリットがあります。

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