決算の早期化(決算早期化)の需要は依然として高いままです。現在では「タイムリーな経営分析・意思決定」を促すことを目的として取り組む企業が多いでしょう。しかし、決算早期化を実現するにあたり、さまざまなボトルネックに悩んでいる企業は珍しくありません。ほとんどの企業では年度末にはかなりの労力を使っていることでしょう。本稿では、決算早期化を実現する上で欠かせないコツやポイントについてご紹介します。
決算早期化のメリットとは?
東京取引証券所が昨年6月に発表した「平成30年3月期決算発表状況の集計結果について」によると、平成30年3月期決算発表会社数は2,335社(前年2,350社)であり、決算発表までに所要した日数は39.1日(前年39.5日)となっています。一方で、平成24年3月期の決算発表状況では、決算発表会社数1,704社に対し所要日数が38.4日となっています。決算発表会社数が600社以上増えているため単純には比較できませんが、所要日数が0.7日延びており、決算早期化の難しさが伺えます。
そもそも、決算早期化にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
- 経営層・マネジメント層が昨年度の実績数値をより早く入手することによって、経営戦略に立案を迅速化すると主に意思決定の迅速化も促す
- 経営企画担当者が素早い予実際分析を行うことにより、これからの売上・利益着地予測をより正確に実施することが可能になる
- 決算業務の前倒しを行うことで経理担当者の繁忙期を短期間で終了させ、そこから生まれる余剰時間を他の経理業務にあてることができる
- 決算業務早期化を実施することで業務効率化に繋がり、経理担当者の残業時間削減に成功し、従業員の心身的ゆとりと会社のコスト削減を生む
- 投資家陣に対して投資判断に必要な情報を素早く提供することで、意思決定速度を高め、より効率的な資金調達が行えるようになる
いかがでしょうか?決算早期化を実施することのメリットはいずれも経営上重要なものであり、これらのメリットを最大限引き出すことができれば、経営最適化や資金繰り改善なども行えます。
平成24年3月期第3四半期決算短信発表状況の集計結果について
決算早期化を実施する際のチェックポイント
決算早期化を実現するための具体策としてまず思い浮かぶのが「決算業務の前倒し」でしょう。決算期末日前に決算業務を前倒しすることによって、決算早期化を図り、経理担当者の業務効率化に繋げることができます。そのためのチェックポイントとは何でしょうか?
1.総工数の削減ではなく、決算ピーク時の業務軽減を優先しているか?
決算日前に決算業務を前倒しする場合、注意したいポイントは前倒しによって決算期末日後の業務が減少するものもあれば、中には決算期末日後に再度更新しなければいけない業務もあります。たとえば期中取引の会計処理確認は前者、親会社と同じ決算日の子会社株式評価は後者にあたります。
決算早期化では全体の総工数削減を目指すケースが多いですが、それでは決算期末日後も同じように負担が発生する場合があります。そのため、決算ピーク時に業務負担が軽減されることを優先し、決算期末日後の業務が減少するような業務前倒しを実施することがとても重要になります。
2.担当者レベルではなく組織レベルで検討しているか?
決算業務の前倒しを担当者レベルではなく、組織レベルで検討するということも大切なポイントです。これまで決算早期化に取り組んでこなかった企業では、業務の前倒しを実施することにより、決算ピーク時における経理担当者の業務負担が大幅に減少されます。
しかしながら、経理担当者によって減少される業務負担に差が出やすいこともあり、担当者レベルではなく組織レベルで業務前倒しを検討し、経理担当者ごとに業務負担を平準化することが肝要です。従って、時には業務分担の抜本的見直しが必要になります。
3.決算業務は決算日前から開始しているという意識は持てているか?
決算日を過ぎてから「決算業務の開始だ!」と気持ちを切り替える企業は多いでしょう。しかし、決算早期化を実現したいのであれば「決算業務は決算日前から始まっている!」という意識改革を行う必要があります。こうした意識改革は経理責任者が中心になって経理部門全体に浸透させることが、決算早期化を実現する上でとても大切なポイントです。
決算業務の前倒しを実施する際は、以上3つのチェックポイントに意識しながら進めていくことで、ボトルネックを解消しつつ決算早期化に取り組むことができるでしょう。
決算資料作成におけるチェックポイント
決算早期化にあたり、必ず押さえておいていただきたいポイントが「決算資料作成」です。決算業務の中ではトップレベルの業務負担なので、如何に効率良く正確な決算資料を作成できるかが決算早期化のコツになります。決算資料作成にあたっては、以下のチェックポイントに注意してみましょう。
1.経理責任者のチェックを意識した決算資料作成はできているか?
決算資料作成における基本ポイントは「とにかく分かりやすい内容で作成する」です。決算資料のチェックを徹底することで、手戻りを少なくすることができますが、その分チェックに時間がかかってしまうというケースは少なくありません。その際に、経理責任者のチェックを意識して分かりやすい決算資料作成を心掛けることで、かなりの工数を削減できます。
たとえば勘定明細や開示書類の元資料において、支店や関係会社の記載順番がバラバラになっているケースは多いでしょう。これを五十音順に並べ替えるだけでもチェック時間は短縮できます。決算資料作成にあたって基本的なルールを作り、各経理担当者がそれを徹底することが大切です。
2.類似した情報、同時に検討すべき論点は1ヵ所に集約しているか?
似たような資料はまとめて作成し、相互関連し同時に検討すべき事項については併せて検討することが決算早期化のコツです。類似した情報や同時に検討すべき論点が分散していると、チェックが複雑になるばかりではなく、途中で修正が発生した場合の資料更新に遅れや漏れが発生してしまいます。決算早期化の実現だけではなく、正確な決算資料を作成するためにも欠かせないチェックポイントです。
3.見積項目に関する十分な説明はされているか?
繰延税金資産の回収可能性の検討のような見積項目については、経営者が想定した過程や判断にもとづく項目であるため、客観的合理性をもって説明できるかどうかがポイントになります。見積り項目に関しては監査人の関心も高いため、監査対応の工数削減を実施するためにも、第三者を十分に納得させられる説明を適切に文書化することがとても大切です。
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決算早期化を目指そう!
いかがでしょうか?以上のように、様々なチェックポイントを押さえることで決算早期化を実現することができます。また、クラウドERP であるNetSuiteなどを活用することでグローバルレベルのでの決算の早期化を実現することも可能になります。
決算早期化によって様々なメリットを引き出し、経営最適化を図っていきましょう。
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