2022年1月から、新たに改正電子帳簿保存法(電帳法)が施行されました。新型コロナウイルスの影響で、社会におけるデジタル化の重要性が官民を問わず高まる中、今回の改正では、帳簿類を電子化するための要件がさまざまな点で緩和されています。そこで本記事では、電帳法の基本的な概要をはじめ、今回の改正の背景やポイント、注意点などについて解説します。改正の内容をしっかりと押さえ、速やかな対応を心がけましょう。
電帳法(電子帳簿保存法)とは
「電帳法(電子帳簿保存法)」とは、帳簿や決算書、請求書など国税庁に提出する税関係の帳簿・書類について、一定の条件を満たすことで電子データ形式での保存を認める法律です。電帳法が最初に制定されたのは、1998年のことです。IT技術が急激に発展・普及していく中、国税関係の手続きもこれに対応し、納税関係の手続きにおける負担緩和などを図ることを目的として制定されました。
2022年に電帳法が改正される背景
電帳法は1998年の制定から今日に至るまで、電子化の要件を緩和する方向にたびたび改正されてきました。というのも、電帳法の定めにしたがって帳簿類を電子化するには、多くの厳格な要件を満たす必要があり、それが事業者にとって電子化を進めるうえでの妨げとなっていたからです。
2022年の改正も、基本的にはこの流れを踏襲したものですが、これまで以上の規模で要件が緩和されています。その背景には、今なお猛威を振るっている新型コロナウイルスのパンデミックが大きな要因として働いています。コロナ禍においては感染拡大を防ぐために、テレワークによる在宅勤務をはじめ、人との物理的な接触をなるべく避けるような措置を取ることが推奨されています。
そこで重要になるのが、遠隔でのスムーズな情報のやり取りを可能にする、ICT技術の活用です。従来、日本では官民を問わずデジタル化の遅れが問題視されており、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が訴えられていました。そうした中、新型コロナウイルス感染拡大に直面したことで、デジタル化の遅れが各所で浮き彫りとなっているのです。
今回の電帳法の大掛かりな改正は、こうした諸状況を懸念し、官民双方におけるDXの取り組みを推進するための一環であると考えられます。
2022年の電帳法改正のポイント
先述したように、今回の改正は電子化における要件を大幅に緩和するものです。では、その具体的な変更点はどこにあるのでしょうか。続いては、2022年の電帳法改正における主な変更点についてご説明します。
事前承認制度の廃止
従来法では帳簿類の電子化を行う際、管轄の税務署長に事前申請して許可を得る必要がありました。この申請にあたっては、電子保存の方法などに関する煩雑な申請書類の作成が義務付けられており、これが電子化を普及する阻害要因の1つとなっていたのです。2022年の改正では、この税務署長への事前承認制度が廃止されたため、書類申請などの煩雑な手続きなしで電子保存を行えるようになりました。
タイムスタンプ要件の緩和
タイムスタンプの付与期間が延長されたのも、大きな改正ポイントです。電帳法では、紙の請求書などをスキャンして電子化する際、原本に担当者が自筆署名したうえで、タイムスタンプの付与を電子データに行うことが義務付けられています。従来の規定では、この付与を3営業日以内という非常に短い期間内に行わなければいけませんでした。
しかし、今回の法改正によって、この付与期限がおよそ2ヶ月以内に延長されています。また、電帳法の要件を満たした経費精算システムなどを活用すれば付与自体が不要となるなど、大幅な緩和がなされました。
電子取引データの電子保存義務化
2022年の改正では、メールやECサイトなどを介した電子取引における請求書・領収書は、紙での保存が認められず、電子データのまま保存することが義務化されました。ただし、この保存方法にも所定の要件に沿った措置が必要で、「タイムスタンプの付与」「変更・削除履歴の残るシステムの利用」「事務処理規定の備付け」のうち、いずれかの対応措置を講じなければなりません。
当初、この電子保存義務は2022年から発生するものとされていましたが、中小企業などから「対応が間に合わない」という意見が寄せられたことを受け、2年間(2023年12月31日が期限)の猶予期間が設けられました。この間は、やむを得ない場合に限り、これまでと同様に書面への出力および保存が認められます。とはいえ、あくまで時限的な措置であるため、2024年までには電子保存義務への対応が求められます。
検索要件の緩和
従来法では、税務署から監査などが入った際に必要な帳簿データを迅速に引き出せるよう、さまざまな項目で検索できるようにして保存することが義務付けられており、それが電子化作業を煩雑にしていました。今回の改正ではこの点も見直され、検索項目の設定は「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つでよいとされています。
[RELATED_POSTS]2022年の電帳法改正における注意点
上記のように、今回の改正ではさまざまな要件が緩和され、電子化促進が図られています。しかしここで注意したいのは、要件緩和だけでなく義務の強化も一部でなされていることです。続いては、2022年の電帳法改正における注意点について解説します。
重加算税の加重措置
帳簿類の電子化における厳格な要件は、電子データの改ざんや隠蔽といった不正を抑止するために課されていたものです。今回の改正では、これらの厳格な要件が緩和される代わりに、電子データの改ざんや隠蔽などの不正行為が見つかった場合、従来の重加算税にさらに10%の加重措置が適用されることとなりました。それゆえ企業は、要件が緩和されたからといって気を緩めることなく、法令やコンプライアンスを遵守して電子帳簿類の管理運用に努めなければいけません。
電子取引データの書面保存の廃止
先述した通り、2022年の電帳法改正では、電子取引データの書面保存が廃止されました。今後は所定の要件に基づいた電子保存が義務付けられるので、あらゆる企業がこれに対応しなければなりません。2年間の猶予期間が追加されたとはいえ、早期に対策を検討したほうがよいでしょう。
2電帳法改正への具体的対応策とは?
改正電帳法はすでに施行されているため、企業には速やかな対応が求められます。以下では、改正に対応するために企業が取り組むべきことを解説します。
実務への影響
改正電帳法に対応するうえで、まず考慮すべきことが実務面への影響です。すでに触れたように、デジタル化ないしDXの推進は現在さまざまな領域で求められており、それゆえペーパーレス化の動きは今後も加速すると考えられます。各企業は、今回の電帳法改正を機にクラウドサービスを取り入れるなど、デジタル化対策を講じることが求められます。
クラウドERPとは
デジタル化対策の一環としておすすめなのが、「クラウドERP」を導入することです。クラウドERPとは、基幹業務プロセスの合理化を実現するために開発されたクラウドサービスです。
例えば「Oracle NetSuite」は、28,000社もの企業に採用されている実績のあるクラウドシステムです。財務会計管理や受注管理、生産管理などさまざまな業務の電子化をサポートでき、企業の情報資源の一元管理を可能にします。改正電帳法への対応がお済みでない場合は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
今回の電帳法改正により、帳簿類の電子化に際して必須であった多くの煩雑な作業が不要となりました。また、2年間の猶予が設けられたとはいえ、電子取引データの電子保存が義務化された点も大きなポイントです。こうしたデジタル化の波に乗り遅れないよう、すべての企業は改正電帳法への速やかな対応に努めなければなりません。
デジタル化への対策としては、クラウドERPの導入がおすすめです。今後もさらにDXを進めていくための第一歩として、ぜひ導入をご検討ください。
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