企業は経費を使いながら自らの企業成長を実践しています。この経費を適切かつ戦略的に管理することは多くの企業に求められていることと言えます。今回は、オラクル社主催のセミナー「【緊急開催】経費精算システムの導入だけで大丈夫? ~経費管理のニューノーマルに対応するオラクルの金融業向けソリュ―ション」のレポートをご紹介します。当セミナーでは、オラクルが提供する経費管理ソリューション「Oracle Expenses Cloud」もあわせてご紹介されました。
Oracle Expenses Cloudは、デジタル経費管理のための完全なエンド・ツー・エンドのソリューションで、従業員には簡単なデータ入力オプションを、財務管理者には詳細な支出情報とポリシーに基づいた管理を提供します。オンラインとモバイル、およびスプレッドシート入力オプションにより、出張の入力と承認が自動化され、管理上の悩みを軽減するとともに、効果的なコスト管理のための重要なデータを取得できます。
業務部門と経理部門のニーズのギャップを満たせるか
現在、多くの企業が「経費管理システム」に注目しています。その理由の1つは、デジタルトランスフォーメーションや働き方改革の一環としてペーパーレス化を進めていることにあります。経費情報を電子化して分析できれば、コストの最適化を図ることも可能になります。
2020年に電子帳簿保存法が改正されて規制が緩和され、領収書の電子的保存がしやすくなったという点も、ペーパーレス化を後押ししています。システム化することで管理作業の負担を軽減し、在宅勤務中や移動中でも経費精算を行えるというメリットもあります。
もちろん、具体的なコスト削減にもつながります。仮に毎週の経費精算作業に1時間かかっているとすれば、1,000人の組織で年間4万8,000時間ぶん、時給を1,000円と仮定すると4,800万円の出費です。同様に責任者の承認作業や支払担当者の照合作業も、莫大なコストになっていることがわかります。紙書類も、印刷・輸送・倉庫などの管理費用を含めれば年間で数十万円はかかるでしょう。
一方で、経費管理システムを導入したにもかかわらず、このようなメリットを享受できなかった組織も少なくありません。システムの使い勝手が悪く、従業員のモチベーションが低下したり、不適切な経費精算が増加してしまったりしているのです。会計システムと連携できないために、バックオフィスの工数が増加したり、経費分析が実現できなかったりする例もあります。
「従業員のニーズと経理部門のニーズは異なります。例えば入力項目に関して、従業員は少なくシンプルなほどよく、経理担当者は細かく具体的なほどよいと感じます。承認フローについても、業務部門は簡素なものがよく、管理部門は抜けもれのないものを望みます。自動化・効率化したい、イメージを添付したいなどと共通する点もありますが、双方のニーズをバランスよく実現することが肝要です」と、日本オラクル クラウドアプリケーション事業統括 ソリューションエンジニアリング本部 ビジネス・ソリューション・リードの高畑充弘氏は述べます。
金融機関の場合はさらに注意が必要です。部門別採算/経費配賦や区分経理に関する要件を満たせるシステムでなければなりません。基幹系システムと連携する例も多いため、その設計が重要です。請求書業務も多く、負荷軽減・全体最適化のための検討が必要になります。もちろんセキュリティ対策や不正検知についても、一般的な企業よりも重視されます。
リモートワークや働き方改革経費精算の変化にも着目
2020年の新型コロナウイルス感染症蔓延によって、リモートワーク/在宅勤務への移行が進んでいます。また新しい時代に合わせたデジタルトランスフォーメーションも推進しています。こうした変化に合わせて経費も大きく変化しつつあります。例えば、出張費・接待交際費・賃料などが下がり、通信費・通信補助費・在宅手当が上がるといった具合です。
電子的な決済、デジタル通貨についても注目すべきです。新興国では積極的に取り組んでいます。日本でも、日本銀行が実証実験を開始していますし、キャッシュレス決済が普及しつつあります。認証技術が進化すれば、経費精算の入力作業が不要になるかもしれません。
ペーパーレス化も重要です。以前から領収書の電子的保存について、さまざまに議論されています。2020年には「電子インボイス推進協議会」が発足し、請求書等の標準仕様の策定に向けて活動を開始しました。こうした電子化が進めば、申請内容と領収書・請求書の照合が自動化されることになります。
リモートワークが進めば、購買ソリューションの重要性も高まることでしょう。身近なものであれば、カタログ購買ソリューションを用いてECサイトなどとWebで連携することで、支払いまで一気通貫で処理できます。特別なサービスや物品についても、サプライヤーポータルによって見積もりから支払いまで電子的な取引でまかなえます。
こうしたニーズや環境変化を踏まえたうえで、経費管理システムを導入すべきだと高畑氏は主張します。「管理・経理部門の要件を満たしながら、使いやすい機能を提供すること。金融機関においては特殊な要件も具備して検討すること。将来的な変化へ柔軟にすばやく対応できるかどうかも重要です。また、リモートワークなどを意識して、クラウドサービスであることも重視したいですね」
[RELATED_POSTS]日本企業に適した経費管理システムを実現する
オラクルが提供している「Oracle Expenses Cloud」は、グローバル共通のニーズを満たす経費管理パッケージです。普遍的な機能を備えつつ、電子通貨や新しい端末などへすばやく対応しています。
一方で、日本固有のニーズ/変化については、APIで連携する“入力補助ツール”の採用を検討したいところです。
そうした連携ツールとして、オラクルはMTIと共同で「FEEDER+」を開発し、ソリューションとして提供しています。エムティーアイは、一般消費者向けのモバイルコンテンツ事業のほか金融機関向けのスマートフォンアプリ受託開発などでも知られています。そのノウハウを基に、使いやすいUIを実現しました。
エムティーアイは、2015年ごろに自社で導入した経費精算システムについて、UI/UXの改良や機能の充足化をめざして「FEEDER」を開発しました。日本語OCRや乗換案内、交通系IC連携、タイムスタンプなど日本企業の商慣習に合わせた機能を追加し、使いやすいUIを実現したものです。その後、Oracle Partner Networkにも加入し、機能強化版・Oracle版である『FEEDER+』を開発、2021年夏にリリースする予定です。
「FEEDER+はOralce Expenses CloudとAPI連携し、経費精算の入力と承認を強化するクラウドサービスです。ICカードや乗換案内のほか、宿泊や飛行機の予約、クレジットカード、AI+OCRなどとも連携し、従業員の精算作業を大幅に軽減できます。スマートフォンアプリで簡単に操作してレポートなどを提出し、承認者もすばやく可否を処理できます」と、エムティーアイ ソリューション事業部 ICTビジネスプロセスグループ グループマネージャーの佐々木隆行氏は述べています。
FEEDER+で採用されているAI-OCRは高精度で、識字率は99%に達し、経費項目はAIが自動判定してくれるため登録は非常に簡単です。書式が異なっていたり、レシートがかすれたり写真が暗かったりしても識別可能で、フリーフォーマットにも対応しています。佐々木氏によれば、「活字タイプであれば100%近い制度を実現できる」とのことです。
「クラウドサービスですから、改修は不要でメンテナンスフリー、リーズナブルな月額料金で利用でき、サポートも充実しています。私たちは金融機関向けのサービス運用の実績も豊富で、安全性にも自信があります。当社が要件定義や設定・テスト、AI機械学習や各種カスタマイズなどもサポートしますので、ぜひご相談ください」(佐々木氏)
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付加価値の高い経費管理ソリューション
エムティーアイの「FEEDER+」と「Oralce Expenses Cloud」の組み合わせは、従業員・承認者・経理担当者の業務を効率化しつつ、不正使用の防止や経費のコントロール、区分経理・管理会計のニーズの実現、周辺システムとの連携、経費配賦などの関心事を解決できるソリューションです。
Oralce Expenses Cloudは、Oracle Fusion Cloud ERPの「経費コア機能」として提供されます。細かくは、承認ワークフローエンジン/未払債務管理/支払い処理・FBファイル生成という3つの機能から成り立ちます。これらとFEEDER+とが連携して稼働し、適切な承認経路と権限制御で安全に経費支払いを実行することができます。さらに、経費監査やポリシー管理、リスク管理、購買、仕分け生成、管理会計分析などの付加価値機能が盛り込まれています。
いくつか特長的な付加価値機能について紹介しましょう。「Risk Management Cloud」は、AIによって不適切会計・不正な取引を監視する機能です。煩雑なユーザー・権限管理を監視し、不正アクセスの抑制と職務分掌分析を自動化します。
「監査においても、全件を最大の力で調査することは現実的ではありません。経費の種類や人物ごとに細かくポリシーを設定して監査対象を自動的に決定したり、ランダムサンプリングしたりすることが可能です。こうしたメリハリを付けた監査処理を実施できるのは、Oralce Expenses Cloudの特長の1つです」と、日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/HCMソリューション・エンジニアリング本部 FMSソリューション部 部長の津留崎厚徳氏は説明します。
一般的な経費精算や請求書払いは、あくまでも事後対応です。どうしても現場任せになり、経費・主計部門のコントロールが利きません。Oralce Expenses Cloudの「Procure to Pay」は、意志決定から実行、決済までの支払プロセス全体を管理する機能です。この購買機能には、サプライヤーとのやり取りも電子化する機能(Web-EDI)も盛り込まれています。そうしたさまざまな購買情報が蓄積されるため、分析して購買コンプライアンスの強化にも活用できます。
さらにOralce Expenses Cloudは、決算システムとしても利用できる「元帳(GL)」を持っているため、経費の精緻な配賦や分析を可能としています。具体的には、FEEDER+からの入力や購買依頼などで支払処理が発生すると同時に、仕訳を生成してGLに格納しています。このGLは、複数の元帳を保持したり細かに管理軸(AFF)を設定したりでき、細かな配賦・振替や対話型分析、定型レポート作成も容易です。Oracle Fusion Cloud ERP内で決算することはもちろん、外部の会計システムと連携することも可能です。
社外SaaSや外部システムとの連携も強力で、Excelなどファイルのインポート/エクスポート、APIによるリアルタイムな登録・参照など柔軟に対応できます。特にエクスポートは「データベース向けであればどのようなレイアウトでも出力可能」と津留崎氏は強調します。
「FEEDER+とOralce Expenses Cloudの組み合わせは、現場の経費業務の効率化・ペーパーレス化を実現するとともに、ガバナンス強化、経費支出の最適化、分析の強化、バックオフィスの業務効率化まで実現可能なソリューションなのです」(津留崎氏)
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