REACH規則とは? 制限の対象物と企業の義務について

 2022.06.07  クラウドERP編集部

新入社員、新規配属の方必見!ERP入門特集

EU域内の国と貿易をする際には、REACH規則について事前に理解しておくことが大切です。規則を守らないと、EU域内の国に生産物を輸出できなくなる可能性があります。本記事では、REACH規則の概要を説明し、法制定の目的や企業義務となっている事項などについて解説します。

REACH規則とは?

REACH規則とはEU域内の国に対して、化学物質の登録や評価、認可、制限に関する決まりごとを定めたEU法のひとつです。EU域内の国と貿易をする際には、規則の内容を理解して遵守する必要があります。まずは、理解を深めるために、制定された背景ならびに規則の概要について解説します。

REACH規則の背景

REACH規則が制定された背景として、地球環境を保護しながら持続可能な開発を目指すという理念が挙げられます。この理念を実現させるために、国連では1992年に「アジェンダ21」が採択、2002年には「ヨハネスブルグ実施計画」が採択されました。

ヨハネスブルグ実施計画は、地球環境を破壊したり、人体の健康に悪影響を及ぼしたりする化学物質を2020年までに最小化するための指針です。これを具現化するために「SAICM」が2006年に採択されました。

この流れを受け、EUは「欧州化学物質庁(ECHA)」という機関を設立しました。REACH規則の運用が2007年からスタートしたのを機に、EU域内の国に拠点を構える企業は化学物質管理を厳格にすることが求められています。

同様の取り組みはEU域外の国でも実施されており、日本では「化学物質排出把握管理促進法(化菅法)」が1973年に制定されています。

REACH規則の概要

REACH規則は化学物質の総合的な登録や評価、認可、制限の制度で、EUの法体系では「規則」に該当します。EUの加盟国がそれぞれの国の国内法で制定する「指令」ではないため、EUの加盟国に対して無条件で適用されます。

運用の目的としては「人体に対する健康と地球環境の保全」「EU域内における化学物質の流通の自由化」「EU域内における化学産業の競争力アップと革新の強化」などが挙げられます。これらの目的を達成するために、EU域内で生産活動を行っている企業はREACH規則を遵守し、化学物質管理を適正に行うことが求められます。

なお、REACH規則はEU法です。EUに加盟していない日本の企業に法の効力が直接及ぶことはありません。しかし、EU域内の国に生産物を輸出する際には規則を遵守する必要があります。関係する企業は、規則の詳細を把握しておくことが大切です。

対象物

EU域内の国で生産される全ての生産物に含まれる物質が、規則の対象です。また、EU域内の国に輸入される全ての生産物に含まれる物質も対象になるため、EU域内の国に生産物を輸出している日本企業も間接的に規制を受けることになります。

生産物に含まれる物質とは、自然界に存在する化学物質や、生産物を製造する過程で発生する化学物質などを指します。生産物に含有する添加物や不純物も物質に該当する一方で、性質を変えずに分離できる溶剤は、物質に該当しません。

さらに、物質そのものだけでなく混合物や成形品に含有する物質も規制の対象です。混合物とは、塗料や合金のように2つ以上の物質が混合されているものを指します。対して成形品とは、衣類やプラスチック加工品、スマートフォンのように、複数の物質を何らかの物理的操作によって加工して成形されたもののことです。工場で生産される工業製品の多くが成形品に該当します。

ERP(統合基幹業務システム) グローバル展開のための9つの必須要件
グローバル/グループ企業の5サプライチェーンマネジメントチェックリスト

企業への要求義務

EU域内の国で生産活動を行っている企業や、EU域外の国から生産物の輸入を行っている企業には、REACH規則に基づく3つの義務が生じます。3つの義務とは「登録の義務」「届出・認可申請の義務」「情報伝達の義務」のことです。ここでは、REACH規則の適用を受けるEU域内の企業に対する要求義務について解説します。

登録の義務

EU域内の国で生産活動や輸入を行っている企業には、REACH規則による登録の義務が生じます。年間1トン以上、生産・輸入した化学物質そのものが登録の対象になります。また、前述したように、混合物や成形品に含有する物質も規制の対象です。

なお、物質の総量によって登録の様式が異なります。年間1トン以上になる場合は、技術一式文書の作成・提出が必要です。年間10トン以上になる場合は、技術一式文書に加えてCSRと呼ばれる化学物質安全性報告書の作成・提出も必要になります。

登録の義務が生じるのはEU域内の生産者や輸入者ですが、EU域内に拠点を有する「唯一の代理人」による登録も認められています。生産者や輸入者は「唯一の代理人」を活用することで、化学物質に関する専門知識が乏しくても合法的に登録することが可能になります。

届出・認可申請の義務

EU域内の国で成形品の生産を行っている企業や、成形品をEU域外の国から輸入している企業には、SVHCの届出・認可申請の義務が生じます。SVHCとは、発がん性物質や毒性物質、内分泌攪乱物質など、人体の健康や地球環境によくないと思われる物質のことです。成形品に含まれている場合にも、同様の義務が生じます。また、0.1%超える量を含有している成形品で、該当する物質の量が年間 1トンを超える場合はECHA(欧州化学機関)に届出が必要です。

なお、SVHCの中から審議して認可対象物質が決まると、認可対象物質の量が1トンに満たない場合でも認可の取得が必要になります。もし、認可を取得できなければ、認可対象物質を含んだ成形品に関して、生産や輸入に制限がかけられます。

情報伝達の義務

人体の健康や地球環境保全に悪影響を及ぼす恐れのある化学物質を安全に使用するには、サプライチェーンでの情報伝達が大切だといえます。REACH規則の規制を受ける企業は、確かな情報を第三者に正確に伝える義務が生じます。

情報伝達をする際は、成型品の安全使用条件などを記載した安全性データシート(SDS)が使用され、川上企業から川下企業に対して情報が伝えられます。なお、消費者からの問い合わせに対して、45日以内に情報を開示する義務が生じます。消費者に対する情報開示は無料で応じなければならず、問い合わせのあった成形品を安全に使用するための情報を提供しなければなりません。

[RELATED_POSTS]

まとめ

EU域内の国に対して生産物を輸出する際は、REACH規則による規制を間接的に受けます。EU域内の国で生産・輸入を行っている企業に関しては、3つの義務が生じるのが特長です。成型品の安全使用条件などを開示する必要があります。

海外の国とやり取りする企業には、NetSuiteの導入をおすすめします。190種類を超える通貨ならびに為替レートに対応している点が魅力です。導入することで業務効率化を実現でき、自社のさらなる発展につなげられるでしょう。

クラウドERPによる グローバルシステム構築の世界基準

RECENT POST「グローバル経営」の最新記事


グローバル経営

グローバル展開に対応したクラウドERPとは? ニーズに応える基幹システム

グローバル経営

グローバル経営とは? 日本が抱える課題や海外進出を成功させるポイント

グローバル経営

初めての海外進出の際に絶対に知っておくべきポイントとは?

グローバル経営

グローバル化(グローバリゼーション):メリット・デメリットを総合的に解説

REACH規則とは? 制限の対象物と企業の義務について
わかりやすいマンガ形式で解説!会計ソフトの選び方まるわかりガイド
ビジネスでの時間不足を解消する3つの方法

RECENT POST 最新記事

RANKING人気記事ランキング

New Call-to-action