中小企業にERPは必要?導入のメリットや選び方のポイント

 2024.12.18  クラウドERP編集部

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ERPは、部署ごとに分散している情報を一元管理し、業務の効率化やセキュリティ強化を実現するシステムです。近年では、大手企業に加えて中堅・中小企業による導入事例も増加しています。ERPは製品ごとに異なる特徴を持つため、導入時には自社のニーズに合ったものを選ぶことが重要です。本記事では、中堅・中小企業にERPが必要な理由、導入のメリット、そして選び方のポイントを詳しく解説します。

ERPとは?

ERPは、「統合型基幹システム」とも呼ばれるソフトウェア製品です。経営活動に欠かせない基幹システム(財務/生産/販売/購買/在庫/人事)を中心に、さまざまな業務システムが統合されています。部署ごとに分断されている情報を一元的に管理することで、情報資源の活用促進や業務の効率化、システムセキュリティの強化につなげるのがERPの役割です。

ERPの中には、組織全体を巻き込む大規模な統合基幹システムを必要とする「大企業向け製品」から、一部の基幹システムだけを統合した「中堅・中小企業向け製品」まで、多様な種類があります。中堅・中小企業向けの製品は大企業向けに比べて初期投資を抑えやすいうえ、オーバースペックにならず、必要に応じて機能を拡張できる点がメリットです。

近年は、ベンダー側が用意するオンラインサーバーを通じて運用可能な「クラウド型ERP」を導入し、大企業並みの大規模な統合基幹システム環境を整備している中堅・中小企業も増えています。

ERPの概要や種類について、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。

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中堅中小企業向け クラウドERPのROI

中堅・中小企業にこそERPが必要

「ERP=大企業向け」というイメージを持たれがちです。商工中金が発表した「中小企業のIT・ソフトウェアの活用状況に関する調査(2023年1月)」によれば、中小企業のERP導入率は16.8%でした。しかし、中堅・中小企業にこそERPが必要です。導入を推奨する理由として、以下の3点が挙げられます。

  • 組織構造がシンプルな中堅・中小企業ほど業務の標準化と最適化がしやすい
  • コストが低いクラウド型ERPの普及
  • 内部統制強化の必要性が高まっている

中でも、クラウド型ERPの普及は特に大きな影響を与えています。従来主流だったオンプレミス型ERPでは、自社でサーバーを構築する必要があり、導入や運用に多額のコストがかかるという課題がありました。

一方、クラウド型ERPは自社でサーバーを構築する必要がなく、インターネット環境さえ整えれば運用できます。オンプレミス型ERPに比べてコストを抑えやすいため、予算の限られた中堅・中小企業でも検討しやすい点が特徴です。

また、コンプライアンスへの意識の高まりから、近年は企業規模にかかわらず内部統制の強化の必要性が高まっています。不正行為を未然に防ぐ対策としても、中堅・中小企業にこそERPが必要です。

参照元:中小企業のIT・ソフトウェアの活用状況に関する調査(2023年1月)
※P.10をご参照ください

中小企業が抱える課題とERPによる解決

中堅・中小企業にERPが必要なのは、「人材不足」「生産性の低さ」「システム不足・老朽化」「後継者の不在」などの課題を抱える企業が多いためです。ERPには、中小企業が抱えるこれらの課題の解決に役立つ機能が搭載されています。

人材不足

学生の大手志向や労働人口の減少などを背景に、人手不足が深刻化しており、対策が急務となっています。特に顕著な業種は「学術研究、専門・技術サービス業」「建設業」「情報通信業」です。厚生労働省が公表した「労働経済動向調査(令和6年2月)の概況」よれば、これらの業種は労働者の過不足を示す「労働者過不足判断D.I.」の数値が特に高いことが明らかになっています。

人手不足解消に向けた対策としては主に「採用面の強化」が挙げられますが、労働人口そのものが減少している中で、人員を増やす取り組みだけでは限界があります。採用以外にも課題解決の手段を考える必要性があり、そのための効果的な手段として注目を集めているのがERPです。

参照元:厚生労働省|労働経済動向調査(令和6年2月)の概況

生産性の低さ

2008年のリーマンショックにより大きなダメージを受け、企業の生産性は大きく低下しました。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行も大きな影響を及ぼしています。リーマンショック直後や感染症流行のピークに比べると水準は戻りつつあるものの、企業によっては引き続き厳しい状況に置かれているのが現状です。

中小企業庁によると、日本の就業者一人当たりの労働生産性は、主要なOECD加盟国(米国・イタリア・フランス・ドイツ・カナダ・英国・日本)の中で最低水準にあります。企業規模別でも大企業との格差が大きいため、ERPによる生産性の向上で、その差をいかに埋めるかが鍵です。

参照元:中小企業庁|2024年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要
※P13をご参照ください

システム不足・老朽化

顧客管理や生産管理のITツールを導入している中小企業では、更新や切り替えを先延ばしにしているケースが多く見られます。既存システムの更新や最新モデルへの切り替えには、多大なコストと手間がかかるためです。

しかし、社会環境の変化によって企業の内部統制の必要性が高まっている中で、既存システムでは対応しきれない可能性があります。一部の中小企業は、適切なITツールの導入や更新ができないため、業務効率が低下し、労働生産性を押し下げる「負のサイクル」に陥ることも少なくありません。クラウド型ERPは最新のバージョンが常に利用できるため、このような負のサイクルを防ぎます。

後継者の不在

中小企業の経営者は創業者自身が務めることが多いため、高齢化に伴い後継者が見つからず、事業承継ができないまま廃業するケースがあります。また、親族経営への依存、人材育成や事業承継対策の不足なども後継者問題を引き起こす原因です。

適切な後継者がいない場合、曖昧な基準で後継者を選ぶ、または相談なく事業承継を進めるといった行動は失敗につながるリスクがあります。事業承継を成功させるためには、ERPを活用して経営状況の「見える化」を図り、後継者に意思決定のための情報を提供するなど、長期的な視点で取り組むことが重要です。

中小企業がERPを導入するメリット

ERPは業務効率化にとどまらず、中小企業に以下のメリットをもたらします。

1. 機動力を強化して迅速に経営判断できる

現代は市場ニーズの移り変わりが非常に速く、消費者の興味もすぐに変化する時代です。こうした中で中小企業が生き残るには、柔軟かつ迅速な経営判断が欠かせません。

ERPは人・モノ・お金・情報など、企業のリソースを一元管理するシステムです。組織全体の情報を可視化し、必要なデータを迅速に取得できる環境を整えることで、中小企業特有の機動力を活かしながら的確な判断を下せます。

2. 営業力や販売力を強化できる

モノやサービスがあふれる現代では、ただ価格を下げるだけでは消費者から選ばれにくい状況にあります。ビジネスを成功させるには、消費者のニーズやトレンドを的確に把握し、それぞれの商品・サービスに適した売り方を考える営業力と販売力が重要です。ERPを導入すると、営業活動や日報のデータが蓄積され、全社で共有可能になります。

3. 経営資源を可視化しシステム運用を効率化できる

多くの中小企業では人材不足や生産性の低さが課題です。ERPを導入することで、財務会計、人事管理、在庫管理、購買管理といった経営資源を可視化し、情報管理や共有にかかる負担を軽減できます。これにより、システム運用を効率化し、業務全体の効率向上が可能です。

特にクラウド型のERPの場合、メンテナンスや更新をベンダーが担ってくれるため、企業のIT担当者はシステム環境の整備に労力をかける必要がなくなり、自社のデータ管理のみに集中できます。

4. 事業承継に向けた取り組みができる

事業承継に向けた取り組みを行っていない企業は、将来的に廃業に追い込まれる可能性があります。事業承継を成功させるために大切なのは「魅力的な企業づくり」です。後継者が引き継ぎたくなるような企業や、他社が買収したくなるような企業を創り上げることで、事業承継にかかわる問題を解消しやすくなります。

ERPの導入によって最新のシステム環境を構築したり、情報共有をスムーズにする体制を整えたりして、企業の魅力向上が可能です。

中小企業向けERPの主な機能

会計ソフトのような特定の業務に秀でた基幹システムとは異なり、幅広い業務をカバーしているのがERPの特徴です。以下では、中小企業向けERPに搭載されている主な機能を5つピックアップして紹介します。

生産管理

生産管理は、生産計画の作成や原材料の仕入れ、作業員の配置から、仕掛品や歩留まり率の管理まで、多岐にわたる業務を一元化します。

中小企業、とりわけ製造業にとって、生産の計画や管理は事業の存続に直結する重要な業務です。ERPを活用すれば、材料不足や過剰生産を防ぎ、効率的な製造体制を実現します。また、リアルタイムで製造工程の進捗状況を把握できるため、問題発生時の迅速な対応が可能です。

会計管理

会計管理は、売上・売掛・買掛・仕入などのデータを一括管理します。財務や債務を把握し、企業の正確な経営状況を明らかにするのが役割です。利害関係者(ステークホルダー)に対して、財務諸表の作成もできます。

中小企業では、限られた経理スタッフが多くの業務を兼任しているケースが多いため、会計業務の負担が重くなりがちです。ERPの会計管理機能により、データの分析や共有が効率化され、経営判断のスピードアップが図れます。これにより、経理部門の負担軽減と同時に、迅速で戦略的な意思決定を支援します。

販売管理

販売管理は、商品やサービスを仕入れて顧客に売り、現金化するまでの業務を管理する機能です。見積書や請求書の作成、売上データの分析、売掛金管理など、販売プロセスを包括的にサポートします。

中小企業が競争の激しい市場で生き残るには、販売業務の効率化と顧客ニーズへの迅速な対応が欠かせません。ERPを活用することで、支店ごとの売上や月次の販売状況を可視化し、次のマーケティング戦略をデータに基づいて構築することが可能です。

在庫管理

在庫管理は、商品や部品の在庫状況を把握・管理するための機能です。入庫・出庫の動きや在庫量をリアルタイムで把握し、品質管理を効率化します。

限られたスペースや資金で運営する中小企業にとって、在庫の適正管理は利益率を左右する重要なポイントです。在庫管理により、在庫の適正化や管理コスト削減が期待できます。また、棚卸し業務が簡略化されることで、従業員の負担も軽減され、生産性向上に寄与します。

人事管理

人事管理は、従業員の基本情報や雇用条件、勤怠データ、給与計算、社会保険手続きまでを一元化して管理します。

中小企業では、従業員数が少ない中で多様な業務をこなすため、適切な人材配置と勤怠管理が求められます。例えば、勤怠管理機能を活用すれば、従業員の残業の実態をリアルタイムで把握可能です。データを基に適切な対策を講じることで、長時間労働の是正や従業員の健康維持につながります。

中小企業向けERPの選び方でのポイント

ERPの特徴は製品によって大きく異なります。大企業向けや中小企業向け、オンプレミス型やクラウド型など多様な種類があるため、自社とニーズに合った製品を選ぶことが大切です。ERP選定の際に特に意識すべきポイントは以下の4つです。

提供の形態

ERPには「オンプレミス型」と「クラウド型」があります。オンプレミス型ERPは、社内にサーバーを構築して運用するタイプです。カスタマイズの自由度が高く、既存システムとの連携が容易というメリットがあります。ただし、導入のハードルが高く、メンテナンスやバージョンアップを自社で行う必要があるため、運用の負担が大きい点がデメリットです。

クラウド型ERPは、ベンダーが運用するサーバーを利用するタイプです。導入コストが低く、メンテナンスもベンダーが行うため、IT担当者の負担が軽減されるというメリットがあります。一方で、オンプレミス型ERPと比べるとカスタマイズ性に制約があり、不要な機能が含まれていたり、必要な機能が不足していたりする場合がある点がデメリットです。

どちらのタイプを選ぶべきか企業の規模や課題によって異なりますが、一般的に中小企業では、導入コストが低く運用負担も少ないクラウド型ERPを選択する傾向にあります。

ERPの提供の形態や導入のポイントについて、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。

導入・運用のしやすさ

導入・運用のしやすさは中小企業にとって重要なポイントです。リソースの限られた中小企業が、多額のコストをかけて導入したにもかかわらず、失敗してしまうと大きなダメージを受けます。そのため、特定の部署や業務から段階的に始められる「スモールスタート」が可能な製品を選ぶのが効果的です。

また、操作性も考慮すべきポイントです。ERPは、ITの専門知識が豊富な人だけでなく、全従業員が利用します。画面デザインの見やすさや操作の直感性を重視し、業務負担を軽減できる製品を選びましょう。

費用対効果

ERPを選ぶ際には、導入や運用にかかるコストと得られるメリットを比較し、コストに見合った成果を得られる製品を選ぶことが重要です。特に、中小企業はリソースが限られているため、無駄な投資を避けることが求められます。

例えば、運用コストがかかるけれど機能が豊富な製品を選んでも、実際には一部しか活用できない場合、無駄なコストが発生します。自社の業務に必要な機能を明確にし、それ以外は省くことでコストを最小限に抑えることが可能です。

業務との親和性

ERPを導入する際、既存の業務プロセスに適合しないシステムを選んでしまうと、業務効率の低下や、顧客との信頼関係に悪影響を与える可能性があります。そのため、システムが自社の業務とどれだけ親和性を持っているかを事前に十分確認することが大切です。

多機能なERPでも、自社の課題を解決できなければその価値は半減します。導入前に課題を洗い出し、自社のニーズに合った製品を選ぶことで、効果を最大化できます。

中小企業のERP導入を成功させるポイント

自社に合うERPは企業によって異なるため、選定の際は導入の目的や費用対効果、運用方法などを入念に検討することが大切です。導入を成功させるために、以下の4つのポイントを意識する必要があります。

費用対効果を検証する

導入にあたっては、費用対効果の検証が欠かせません。事前に細かなシミュレーションを行うことで、大きな誤算を防止し、導入失敗のリスクを軽減できます。シミュレーションを行わず、無計画のままERPを導入すると、思うような効果を得られない場合があります。そのため、「導入の目的」「どの部署・業務に適用するのか」「導入・運用コストと得られる効果のバランス」などを綿密に検討することがポイントです。

部署ごとに専任者を置く

ERP導入は、営業部門や生産部門、経理部門などの複数の部門による連携が不可欠な大規模プロジェクトです。部署間での情報共有の際に窓口となる人物がいなければ、行き違いやミスが発生するリスクが高まります。

専任者は必ずしもITの専門家である必要はありませんが、業務やシステムに理解がある人物が理想です。現場に理解のある人物が部署間の橋渡し役を担えば、連絡系統が明確になり、スムーズにERPの導入を進められます。

業務の洗い出しを行う

ERPは一般的な業務フローを想定して設計されていますが、自社の業務にそのまま適用できるとは限りません。そのため、業務の洗い出しを行うことで、「どの業務にERPを適用するか」「どのような変更が必要か」といった詳細を明確にすることが重要です。

業務の洗い出しの際、優先順位を見極めるのがポイントです。例えば、現場の改善でカバー可能な業務は後回しにするなど、優先順位を見極めながら段階的に導入を進めることで、成功につながりやすくなります。

セキュリティを整備する

ERPは企業全体の重要データを統合管理するシステムのため、情報漏えいなどが発生した場合、甚大な損害を被るおそれがあります。オンプレミス型ERPの場合、ウイルス対策やサイバー攻撃への対策が必要です。

クラウド型ERPの場合、データ消失への備えが重要です。どちらのタイプを選択するにせよ、セキュリティ体制を万全に整える必要があります。

また、マニュアルを作成して全従業員に周知するなど、セキュリティ意識の向上に向けた取り組みも重要です。

中堅・中小企業におすすめのクラウドERP「NetSuite」

「NetSuite」は世界で40,000社以上の顧客企業に導入されている、世界No.1のクラウド型ERPシステムです。顧客管理やeコマース、財務会計などの業務アプリケーションを単一のクラウドシステムで提供することが可能です。eコマースへの総合卸・小売・輸出入業の「プリアップ」や、特許・医薬・学術文献に関する専門情報のデータベース提供の「トムソン・ロイター」など、国内の中堅・中小企業でも数々の成功実績を収めています。

まとめ

クラウド型ERPの普及や内部統制強化の必要性の高まりを背景に、中堅・中小企業でERPの導入事例が増えています。会計・人事・生産・物流・販売などの各部署のデータを一元管理することで、人材不足や生産性の低さ、後継者の不在などの課題に対処できる点が、ERP導入の大きなメリットです。

ただし、ERPにはさまざまな製品があるため、選定の際はしっかりとポイントを押さえることが大切です。導入を成功させるには、自社が抱える課題をあらかじめ明確にし、業務との親和性や費用対効果が高い製品を選ぶ必要があります。「NetSuite」は中堅・中小企業に最適の製品ですので、導入を検討してみてください。

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