事業承継とは?実態と必要性と事業承継税制について

 2019.08.23  クラウドERP編集部

新入社員、新規配属の方必見!ERP入門特集

中小企業庁が2016年6月時点で集計した日本の企業数は、中小企業(小規模事業者を含む)が380万900万社、大企業が1万1,110社で合わせて382万社の企業が経営活動をおこなっています。さらに、中小企業のうち今後10年間の間に70歳(平均引退年齢)を超える中小企業経営者は約245万人であり、うち約半数の127万社は後継者が決まっていません。

要するに、日本の企業全体の33.4%が今後10年以内に“廃業”の危機に直面することになります。日本は今、深刻な事業承継問題にさらされているのです。

本稿では、この事業承継についてその基礎知識と現状の実態、それと承継の必要性について解説しています。中小企業経営者として今後何に目を向けていけばよいのか?それを知るためのきっかけにしていただければ幸いです。

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引用:中小企業庁『中小企業・小規模事業者の数(2016年6月時点)の集計結果を公表します』、『事業承継・創業政策について

事業承継とは?

事業承継は文字通り、会社の事業を後継者へと承継することを意味します。具体的に説明しますと、会社の経営権たる株式を、事業を承継する意思を示している後継者に贈与または相続し、会社の経営権を後継者が握り継続して事業運営を行っていくことです。

事業承継の方法は大きく分けて3つあります。①親族への承継、②親族以外への承継、そして③M&Aによる承継です。中小企業の事業承継といえば①を想像する方も多いかもしれませんが、近年ではその動向が変化しています。

中小企業庁の調査では、20年以上前は親族への承継が事業承継案件全体の85.4%を占めていましたが、近年ではその割合が34.3%まで低下し、反対に親族外への事業承継案件数が増えています。現在では社外の第三者に事業を承継する中小企業が全体の39.3%、親族以外の従業員に事業を承継している企業が26.4%という割合になっています。

国内クラウドERP利用実態調査レポート:矢野経済研究所
小規模企業における成長戦略

参考資料:中小企業庁委託「中小企業の資金調達に関する調査」(2015年12月、みずほ総合研究所株式会社)

中小企業の事業承継はなぜ進まない?

今後10年以内に引退を迎える可能性がある経営者が経営する中小企業のうち、約半数が後継者未定なのですから、中小企業の事業承継はお世辞にも上手くいっている、とは言えません。なぜ日本の中小企業の事業承継はそこまで難しいものなのでしょうか。

理由1.適当な後継者が見つからない

多くの中小企業では適当な後継者がまだ見つかっていません。子供がいない、子供がいても事業を承継する意思がない、従業員の中に後継者として適当な人材がいないなどの理由から、後継者が見つからないまま経営者が引退を迎えようとしています。

理由2.経営者に事業を承継する意思がない

中には経営者自身がそもそも事業承継をする意思がないケースも。事業承継によって事業を引き継ぐということは、個人保証を負担するという意味でもあるため、親族や従業員にそうした負担は強いたくないと考えています。あるいは、事業に将来性が感じられないという経営者もいるでしょう。

理由3.M&Aに対し悪いイメージを持っている

近年では事業承継の一選択肢としてM&A(合併&吸収)が注目されていますが、ニュースで敵対的M&Aなどの情報を知ってから、M&Aに対して悪いイメージを持っている中小企業経営者が多く、事業承継が停滞する原因になっています。

理由4.事業承継の重要性を認識していない

中小企業の事業承継問題がなおざりになり、中小企業の廃業数が急増すると2025年頃までに約650万人の雇用と、約22兆円のGDP(国内総生産)が失われます。地域活性化の一員として、社会貢献の責務がある一員として、事業承継の重要性を認識していない経営者も少なくありません。

理由5.贈与税・相続税が高い

事業承継では株式の贈与または相続による承継が一般的なので、そこには贈与税または相続税がかかります。いずれの税金も決して安くはないため、後継者にその負担がのしかかることから事業承継が進んでいません。

中小企業経営者へのアンケート調査では、どの世代でも半数以上の中小企業がまだ事業承継計画を立てていないとう状態です。後継者育成など、事業承継にかかる準備期間を考慮すると経営者が60代に入ったところから事業承継の準備を進める必要があるのです。中小企業経の事業承継問題は、深刻だと言わざるを得ません。

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事業承継税制を活用しよう!

中小企業の事業承継問題を解決するために、国では様々な政策が取り進められています。その中で注目すべきなのが事業承継税制です。この制度は事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予するというものです。

詳しく説明しますと、円滑化法(中小企業における経営の継承の円滑化に関する法律)による都道府県認知を受けている非上場企業の株式等を、後継者が贈与または相続により所得した場合、その非上場株式等にかかわる贈与税・相続税について、一定の要件のもとその納税を猶予し、後継者の死亡等により納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除されます。

本制度は2018年に大幅な改正が施行され、それまでは贈与税の場合発行済み株式総数の2/3までを全額猶予するか、相続税の場合は発行済み株式総数の2/3までの80%を猶予するという制度でした。それに対し改正後は、贈与税・相続税ともに取得したすべての株式の全額を猶予するという要件に改訂しています。

事業承継税制

 

改正前

改正後

対象となる株式

猶予される税額

対象となる株式数

猶予される税額

贈与税

発行済み株式総数の2/3まで

全額

取得したすべての株式

全額

相続性

発行済み株式総数の2/3まで

80%

取得したすべての株式

全額

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今後の政策にも注目!

事業承継税制の改正以外にも、中小企業の事業承継を促進するための政策が予定されています。その1つが個人版事業承継税制の創設です。この制度では、個人事業者の集中的な事業承継を促すために、10年間の時限措置として土地・建物・機械・器具備品などの承継にかかわる贈与税・相続税の100%猶予を創設する制度です。

小規模事業者においても、事業を相続する場合は事業運用資産全体の約半分が贈与税として徴収されるため、小規模事業者の事業承継が促進されない傾向にあります。これが100%猶予されれば、小規模事業者の事業承継も促進でき、中小企業全体の事業承継問題解決にもつながります。

この他にもいくつかの政策があるため、今後は中小企業の事業承継問題が緩和していくのではないかという予測もあります。皆さんもこの機会に、自社の事業承継問題について、改めて知ってみてはいかがでしょうか?

未来のための事業承継戦略

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