事業承継の日本国内における現状と課題

 2019.07.08  クラウドERP編集部

新入社員、新規配属の方必見!ERP入門特集

日本では今、後継者不足や経営者高齢化などの問題から、中小企業の事業承継が難しい現状にあります。中小企業庁においても、事業承継5ヶ年計画を策定したり、事業承継税制が大幅改正されたりなど、積極的に事業承継問題を解消するような取り組みがされていますが、承継に積極的な経営者はまだまだ少ないと言ってよいでしょう。

本稿では、日本の中小企業の事業承継における、現状と課題についてまとめました。事業承継にさまざまな悩みをかかえているという中小企業経営者または後継者候補の皆さんは、ぜひ参考にしてみてください。

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事業承継とは?

事業承継とは会社の株式を後継者の贈与または相続し、会社の経営を後継者が引き継ぐことを意味します。中小企業では経営者自身の経験・知識・技術などが会社としての強みになっているケースが多く、経営基盤そのものとなっています。そのため、「誰を後継者として選ぶか?」というのが重要な課題であり、多くの中小企業経営者にとって悩ましい問題になっています。

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事業承継の現状を整理

それでは、中小企業の事業承継の現状を知るために、中小企業庁が発表しているデータを中心に整理していきます。

1.事業承継件数

事業引継ぎ支援センターで請け負っている事業承継の案件数は年々増加しており、加速的に事業承継が増加していると考えられています。実際に中小企業経営者の平均年齢は上がっているため、今後さらに多くの中小企業が事業承継の課題に直面するでしょう。

2.事業承継スキームの内訳

事業承継の相談案件のうち、M&A(合併・買収)に対する案件が約70%と非常に多くなっています。さらに、M&Aによる株式の譲渡が71%に上がっており、従業員承継も13%と高い数値をマークしています。

3.業界の内訳

事業承継した業界の内訳では、製造業が19%で最も多い件数となっており、次いで卸・小売業、建設工事業、飲食店・宿泊業、運送業という件数順になっています。また、会社の従業員数に目を向けると、従業員数が10人以下という会社の件数が約70%となっており、小規模事業者が事業承継のためのM&Aに多い傾向があります。

4.事業承継にかかる期間

事業承継にかかる期間は、後継者の育成機関や準備に5~10年程度かかるとされており、事業省益における後継者育成期間は短縮化が困難だと考えられています。そのため、M&Aによる事業承継を行うことで、準備期間の効率化を図っていると考えられます。

5.事業承継の問題

事業承継において経営者が直面する問題は以下の3点です。

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(ア)経営者の高齢化

1995年当時は47歳だった中小企業経営者の平均年齢も、現在では60代後半まで引きあがっています。経営者の高齢化は加速するばかりで、早急な事業承継計画が必要だと考えられています。中小企業経営者の平均引退年齢は70歳前後なので、今後5年以内に事業承継を行う必要性がある企業が多数存在します。

(イ)後継者の不在

中小企業のうち、事業承継をせずに廃業を決めている企業が半数存在します。その中には、適当な後継者が見つからない、子供がいない、子供に会社を継ぐ意思がないといった理由を挙げている経営者が多くなっています。ただし、廃業予定の中小企業の中には4割以上の企業が「事業継続は可能」だと考えています。

(ウ)事業承継の準備不足

中小企業経営者を対象にしたアンケート調査では、どの世代においても半数以上が事業承継計画を立てていない状態です。後継者育成など事業承継にかかる準備期間を考慮すれば、経営者が60代に達したところから事業承継の準備を始める必要があるでしょう。

参考資料

平成27年度中小企業の成長と投資行動に関する調査 報告書 - 経済産業省

中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)

中小企業の事業承継に関するインターネット調査 - 日本政策金融公庫

事業承継に関する現状と課題 - 平成28年4月26日 中小企業庁 財務課

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中小企業が事業承継において取り組むべき課題とは?

では、中小企業経営者は事業承継について考えた時、どういった課題を認識して、解決に取り組めばよいのでしょうか?そのポイントをご紹介します。

課題1.後継者問題を解消する

中小企業の事業承継において最も大きな課題が「後継者問題の解消」でしょう。近年の主流としては、親族内ではなく親族外での承継が非常に多くなっています。事業承継を成功させたい経営者としては、社内の従業員や取引先からの反発を防ぐために、会社に長年従事した従業員を後継者として選定・育成することが多く、また事業承継を目的としたM&A件数も増えています。親族内に事業承継が可能な人間がいたとしても、当人に後継者としての意思がなければ事業承継は失敗に終わる可能性が高いため、親族外承継を視野に入れた検討が大切です。

課題2.事業成長を視野に入れたM&Aを検討する

最近ではM&Aを単なる事業承継として考えるのではなく、事業成長を視野に入れて取り組むケースも増えています。特に、中小企業におけるM&A市場は活発的になっており、外資系企業とのM&Aによって海外展開を果たした中小企業も存在します。これからは、事業承継を経営者の区切りとして考えるのではなく、事業戦略の一環だと考えることが大切になるでしょう。

課題3.早期段階で事業承継計画を立てる

中小企業の事業承継では、後継者の選定・育成だけでも5~10年程度の期間を要するのが一般的です。中小企業経営者の平均引退年齢である70歳を考慮すると、経営者が60~65歳になった段階で事業承継計画を立て、実行していく必要があると言えます。ただし、事業承継計画を独自に立案することはなかなかに難しいため、支援機関等を積極的に利用するとスムーズに計画が立てられるでしょう。

課題4.事業承継税制などの制度を利用する

事業承継税制とは、平成30年の大幅改正によって事業承継にかかる株式の贈与税・相続税が全額猶予されるという制度です(ただし適用要件あり)。この制度を利用することで、事業承継において問題視されていた贈与税・相続税を節税できるため、後継者の承継意思を固めることができます。適用要件として、「後継者が役員就任から3年以上経過していること」など期間を要するものもあるので、早めの計画を実施しましょう。

日本経済を支えている多くの中小企業で起きている事業承継問題。皆さんは、この問題にどう向き合っていますか?日本経済の一翼を担う中小企業の経営者として、後継者として、事業承継についてぜひ深く考えていただきたいと思います。

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