旧来は大企業が導入するイメージが強かったERP(Enterprise Resource Planning)も、クラウドコンピューティングの台頭により、組織規模を問わず全ての企業にとって導入が現実的なシステムになりました。また、最近ではスタートアップや中小企業にも業務の合理化や成長の妨げにならないシステムが求められており、そのための業務基盤であるクラウドERPの導入が加速しています。
本稿ではそんなクラウドERP製品をご紹介し、その特徴と価格を解説していきます。
Oracle ERP Cloud
Oracleでは長年に渡ってオンプレミス環境でのERP提供を行い、グローバル展開する大規模な企業に多く利用されている製品を展開しています。この実績豊富なOracleのERP製品をクラウドサービスとして提供するのがOracle ERP Cloudです。
財務会計管理、購買管理、サプライチェーン管理、リスク・コンプライアンス管理、プロジェクトポートフォリオ管理、プロダクトライフサイクル管理(PLM)、予算管理、統合業績管理(EPM)といった各モジュールは経営を最適化するために高い網羅性を持っており、あらゆる業種にフィットする環境が整えられています。
さらに、これまで部門最適化が進められてきた業務アプリケーションを単に統合するのではなく、リスク・コンプライアンス管理やEPMなど現代ビジネスに欠かせない経営マネジメントのためのモジュールを搭載することで、経営と現場、相互に最適化された環境が整うERP製品です。
最大の特徴は、その優れたデータモデルにあります。共通のデータモデルを活用することで必要なモジュールのみを導入して、後から追加しても業務の整合性が保たれる仕様になっています。つまり、初期はサプライチェーンのみ、年月が経過してから財務会計や予算管理というような段階的な追加が可能になります。
≪価格情報≫
詳細はこちらをご確認ください。
https://www.clouderp.jp/oracle-erp-cloud
また、Oracle ERP Cloudの詳細を知りたい方は「公式カタログ:Oracle ERP Cloud」をご確認ください。
Oracle NetSuite
1997年にリリースされてから一貫してクラウドERPを提供しているのがNetSuiteであり、現在では世界16,000社以上がNetSuiteによる統合システム環境を構築しています。米調査会社のガートナーはNetSuiteに対して「上位10社の財務会計システムにおいて世界で最も速く成長している企業」と評価し、名実共に世界No.1のクラウドERPです。
NetSuiteの強みは財務会計であり、決算処理等に必要な情報を、正確かつリアルタイムに収集することで会計視点から経営最適化を図れる点です。さらに、グローバル共有ソリューションのNetSuite OneWorldによって世界規模でのシステム共有が可能になり、海外拠点を含めた連結決算も素早く行え、経営状況を常に可視化します。
現在はオラクル傘下になり、今もなお成長を続けています。
Oracle ERP CloudとOracle NetSuiteの使い分けですが詳細はこちらをご確認ください。
https://www.clouderp.jp/
≪価格情報≫
価格詳細に関しましては日本オラクル株式会社にお問い合わせください。
また、NetSuiteでは、導入費用込みの価格で提供するNetSuite SuiteSuccessを用意しています。価格についても言及していますのでご確認ください。
https://www.clouderp.jp/resources/netsuite-suitesuccess
Microsoft Dynamics 365
Dynamics 365はMicrosoftが提供するクラウドERPであり、Microsoft社製品との高い親和性が特徴です。たとえばExcelで様々な帳票を作成している環境では、バージョン管理の観点から様々な問題が発生します。しかし、Excelで帳票フォーマットを大量に管理していたり、Excelの使い勝手に慣れている組織では新しいシステムを構築するのに躊躇することがあります。
そうした環境にDynamics 365があると、帳票を作成するためのインターフェースはExcelを使用してデータだけをDynamics 365で管理するという手法が取れます。この他、Microsoft PowerPlatformであるMicrosoft FlowやPowerApps、Power BI、そして、Office 365といったMicrosoft社製品との相性も良いので、既存環境にMicrosoft社製品が多いとメリットの高いERP製品です。
≪価格情報≫
1ユーザー 月 12,510円~
https://dynamics.microsoft.com/ja-jp/
GLASIAOUS
世界各国に拠点を構える会計事務所の専門サービスと、クラウドERPを組み合わせ企業の海外展開を支援するクラウド型国際アウトソーシングサービスに分類される製品です。国際的会計処理のアウトソーシングを中心として、GLASIAOUSの会計データへつながる販売管理、在庫管理、購買管理機能をオプションとして付けることでクラウドERPとして機能します。
画面項目やマスターデータ名称の多言語切り替えはもちろん、それぞれの言語でレポートを出力することもできます。
≪価格情報≫
価格情報は東洋ビジネスエンジニアリング株式会社までお問い合わせください
https://www.glasiaous.com/about/
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GRANDITクラウド
「日本の商習慣に特化したERPを作る」というコンセプトのもと、コンソーシアム方式によって各社の技術とノウハウ、それと経験を集約させて設計されたERP製品です。基本はオンプレミスでの提供になりますがクラウドにも対応しています。
販売、調達、在庫、製造、経理、資産、経費、債権・債務、人事、給与といった10のモジュールは日本の商習慣に沿ったアーキテクチャを持っており、経営層向けレポート作成、管理者の承認管理などERPとしての基本機能も備えています。
ただし、グローバル展開の際に導入するクラウドERPとしては、海外商習慣にマッチしないことも多く、日本国内の使用に限定される傾向があります。
≪価格情報≫
価格情報はGRANDITコンソーシアム企業までお問い合わせください
Infor CloudSuite Industrial
マルチテナントとシングルテナントの2形態で提供されているクラウドERPであり、セキュアな専用インフラストラクチャ上で統合システム環境を構築できます。Infor CloudSuite Industrialは製造業に特化したクラウドERPであり企業のあらゆる側面(サプライヤ、顧客、製品ライフサイクル)の可視化を実現します。
生産現場のスケジューリングやリーン生産向けの包括的な管理ツールや機能を提供し、個別受注生産および受注設計生産の業務全体を効率化します。
≪価格情報≫
1ユーザー 月 15,000円~
http://www.infor.jp/cloud/cloudsuite-industrial/
SAP S/4HANA Cloud
SAPが開発したインメモリデータベースのSAP HANAを基盤に、従来のSAP ERPから新しいアーキテクチャを再構築し、クラウドERPとして提供されている製品です。インメモリデータベースは通常のデータベースと違い、ストレージ領域にメモリ技術を全面採用しているため、ハードディスクやソリッドステートを中心としたデータベースと比較して処理が高速なるという点が売りです。従来のSAP ERPは2025年でサポート期限が終了するため、SAP社はSAP S/4HANA Cloudへの移行を促しています。
リリース当初はインメモリデータベースの安定性の悪さが指摘されていましたが、いくつかのアップデートを繰り返し、安定性が向上したとして導入有効性が徐々に証明されています。
≪価格情報≫
価格情報はSAP社までお問い合わせください
https://www.sap.com/japan/products/s4hana-erp-cloud.html
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ERP freee
クラウド型の会計ソフトを展開するfreeeが提供するクラウドERPです。会計管理と人事管理を中心として機能を提供し、30~600名程度の組織規模を対象としています本格的なERPの基本である顧客管理や生産管理といった機能はありませんが、低コストで一部統合された環境を手にできるという特徴があります。ERP freeeを本格的なERPとして機能させるにはSalesforceとの連携が必要です。
参考記事:生産管理とは
≪価格情報≫
月 4,780円 1ユーザー追加 月 360円
https://www.freee.co.jp/cloud-erp/
正しいクラウドERP選び
クラウドERPはオンプレミス型のERP製品に比べて、初期投資額が低くスピーディに導入できるという利点があります。ただしその反面、オンプレミスに比べてカスタマイズの柔軟性が低いという製品も中にはあります。
組織にフィットする統合システム環境を構築するには正しいクラウドERP選びが必要です。そのポイントを以下にご紹介します。
- クラウドERPを導入する目的とコンセプトを明確にする
- 業務プロセスの洗い出しを行う
- 部門ユーザーからのニーズを吸い上げる
- 検討段階から部門責任者を巻き込む
- 「どんな機能を備えているか」だけでなく「何ができるか」まで着目する
- 多機能に惑わされずジャストフィットなクラウドERPを選ぶ
- 自社で運用する範囲を明確化する(どこまでやってくれるのか)
- トライアルを積極的に実施して使用感を確かめる
- BIツールの有無やサードパーティ製品との動作検証を行う
- スモールスタートを切り徐々に拡大できるクラウドERPを選ぶ
- モバイル対応しているかを確認する
- コストを明確化する
細かいポイントでいえば他にもたくさんありますが、ひとまずはこれらのポイントを押さえることで正しいクラウドERP選びができます。
事業の合理化と成長にERPが必要不可欠な時代、皆さんのクラウドERP選定の一助に慣れれば幸いです。
もっと読む:ビジネスで燃え尽きないためにあなたがすべきこと
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