クラウドERPとは何か。バックオフィス省力化時代に遅れないためのERP効率化術

 2019.01.24  クラウドERP編集部

新入社員、新規配属の方必見!ERP入門特集

ERPとは

ERPとは日本語で「経営資源計画」を意味する「Enterprise Resource planning」の頭文字からとられた経営用語。ヒト・モノ・カネに代表される企業の経営資源を有効活用するための管理手法や概念を意味します。このERPをソフトウェア化したものが「ERPパッケージ」です。ERPシステムやERPソフトウェアなどと呼ばれることもあり、それらを略してシステムのことをERPという場合もあります。

ERPは基幹業務を一元管理するための仕組み

ERPパッケージには、財務会計、予算管理、生産管理、購買管理、在庫管理、販売管理など、企業の主だった基幹業務を一元管理するための機能が備えられており、ユーザーは基幹業務システムを一から開発する必要がありません。個社別の差異が少なく企業間の競争優位に結びつきにくいバックオフィス部門の業務効率化や経営の近代化の一環として、1970年代から80年代にかけて先進的な経営スタイルを模索する欧米企業を中心に導入が進みました。

しかし、昨今ではIoTやAI/機械学習、RPAなどを積極的にERPに取り入れ、戦略的なバックオフィス業務を実践しようという動きも加速しています。

ERPはいま、中小企業にも広がっている

当初日本では、欧米との商習慣の違いなどもあり、導入がなかなか進まない時期がありましたが、90年代の後半になると2000年問題や金融制度改革、市場のグローバル化といった経営環境の大幅な変化を受け大手企業を中心にユーザー数が拡大。現在では、中小企業向けERPパッケージのほか、業種や業界、または特定業務に特化したパッケージが登場するなど、ユーザー層は着実に広がっています。

ERP導入で得られるメリット

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ERPは経営資源を有効活用するための仕組みですので、経営の効率に大きなメリットがあります。

1. 経営判断の迅速化

ERP導入で企業データを一元管理できるようになり、経営の「見える化」が実現。ヒト・モノ・カネにまつわる情報が定量的にリアルタイムに把握できるようになれば、適切なタイミングで迅速な経営判断が下せる素地が整います。

不必要にカスタマイズされすぎた、定性的なレポートのみで経営判断を下している場合ではありません。経営層や作成者の意図が入り込む余地のない、定量的な数値で経営判断を行いましょう。

2. 部門間連携の推進

経営データの一元管理が実現すると、部門間、グループ間での情報共有が容易になるため、重複事業の解消や業務プロセスの合理化、さらにはデータの「サイロ化」問題の解決など、経営資源の有効活用が期待できます。

データのサイロ化とは

企業の情報システムが他のシステムと連携せず孤立してしまっている状況のこと。バックオフィス業務の効率化はどの企業も後手後手になりがち。営業やエンジニアと違い、工数管理されていない例も多く、どうすれば業務効率を上げられるのか、現場も経営層もわかっていない例が多いのです。

それもそのはず、会計・労務・人事をはじめとするバックオフィスのデータはそれぞれが個々に連携しにくいからです。その意味でもERPを導入し、個々のデータを繋いであげることでバックオフィス効率化が実現します。

 

もちろん、今のERPがすべての課題を解決してくれるわけではありませんし、まだまだデータの移行やCSVの取り込みなど、人力で行わなければならないソフトも多く残っています。それをなるべくAI・ツールにやらせようとする取り組みも、RPA(Robotic Process Automation)という形で急速に広まりつつあります。

3. 業務の省力化

たとえば受注データと購買、生産、在庫データがリアルタイムで連動するようになれば、転記ミスなどの間違いがなくなりデータの正確性が増します。各部門で行われていた入力業務や確認作業がなくなれば大幅な業務の省力化が実現できるでしょう。

会計には継続性の原則といって、原則、「会計処理の原則および手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない」とする考え方があります。

しかし言語化されていない会計手続きは多いもの。なかにはバックオフィス社員が引き継ぎ不十分で辞めてしまい継続性の原則が保たれなくなるケースもあり、とかく業務が属人化しがち。人に頼らずシステムに投資しシステムを信じる。これが将来を見据えた省力化のコツと言えます。

4. ベストプラクティスの活用

ERPパッケージはゼロから設計・構築する基幹システムとは異なり、ERPパッケージにはあらかじめ評価の高いベストプラクティス(最良の手法)をソフトウェア化したもの。成功企業の業務プロセスを自社の業務に適用することができます。

そのため、経営レポートもERPパッケージのものをそのまま使ったほうが良いケースが多々あります。ERPパッケージ導入をきっかけにいままでの経営判断の依り代を変えてみるのもひとつの手です。

5. 情報管理の厳格化

データの一元管理により、重複処理や処理漏れなどによる誤ったデータが減るほか、経営データへのアクセス権限の管理が容易になるため、コーポレートガバナンス(内部統制)やコンプライアンス(法令遵守)の面でも有益です。

クラウド型ERPの登場

70年代から約50年にわたり企業経営の効率化に貢献してきたERPパッケージですが、今日に至るまで大きな変化に2度さらされています。2度の大きな変化とはスタンドアローンからクライアントサーバーへの移行、そしてクラウド対応です。もう少し詳しく見ていきましょう。

時代遅れのレガシーERPが企業に与える8つの弊害
中堅中小企業向け クラウドERPのROI

1980年代のERPは数千万円から数億円の導入コストがかかっていた

ERPパッケージは1980年代まで、スタンドアローン、つまりネットワークに接続されていない汎用機やオフィスコンピュータで動かすことが前提でした。しかし90年代に入るとネットワーク技術の発達と安価で高性能なパソコンの登場により、ERPパッケージも1台のサーバーに複数台のパソコンが接続されたクライアントサーバーシステム上で運用されるようになりました。

これによりERPパッケージの利用範囲はさらに広がり、機能面でもより使いやすいものへと進化しました。この時はERPの利点を享受できるユーザーはまだ限られていたのも事実です。なぜならサーバーやネットワーク環境を自前で用意しなければならず、初期投資だけでも数千万円から数億円規模になることが少なくなかったからです。

2000年代、クラウドERPの登場

巨額のIT初期投資が伴う高嶺の花だったERPパッケージですが、そのイメージも2000年代の中盤を境に変わり始めます。高速でセキュアなインターネット環境が整備されるようになると、これらを活かした安価なクラウドERPが登場したからです。例えば世界で最も使われているクラウドERP製品であるNetSuiteは1998年にすでに創業されており、2016年にOracleに買収されました。

企業の経営管理手法を新たな段階に引き上げつつあるクラウドERP。従来のERPパッケージとはどのような違いがあるのでしょうか?

クラウドERPのメリット

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クラウドERPには、ERPパッケージよりも優れた点が6つあります。要約すると「スピード」「コスト」「柔軟性」の点で優れているのです。具体的にご紹介しましょう。

1. 低コストで迅速に導入できる

インフラ調達やシステム設計・開発がいりません。パソコンとインターネット環境さえあればパッケージをインストールする作業さえいらないので、低コストで迅速な導入が可能。すぐにでも使い始めることができます。

2. 月額定額で利用できる

クラウドERPの料金体系はサービスによってさまざまですが、基本的には「ユーザー数」×「月額料金」で利用料が決まります。毎月の支出が明確であるため想定外の請求に驚くといった心配もなく、費用対効果が測定しやすいという利点があります。

3. 常に最新版が使える

インストールを前提としたERPの場合、OSの大幅なアップデートや税制や関連法規の改正が生じるたびに、アップデート費用とアップデート作業が必要になりますが、クラウドERPの場合なら月額利用料を支払うだけで常に最新版を利用することができます。

4. メンテナンスが不要

常に最新版が使えるため、利用バージョンの違いなどによる互換性の問題もなく、メンテナンスや障害対応、セキュリティ対策もサービス事業者に一任できるため、何か問題が生じてもユーザーが追加コストを負担する必要がありません。

5. モバイル環境でも利用可

利用環境が限定されている従来型のERPパッケージとは異なり、利用条件さえ満たせばモバイル環境下でも利用することができます。在宅勤務や外出先からのリモートワークなど、多様で柔軟な働き方にも適応可能です。

たとえば移動中などふとしたときに経営数値が気になったことのある経営者は多いはず。パソコンを広げなくても手元の端末上でレポートを確認できるのは大変便利です。

6. 多拠点展開が容易

パソコンとインターネット環境さえあれば使えるクラウドERPであれば、一元管理されたデータを多拠点で利用することも容易です。代表的なクラウドERPであれば主要な言語と通貨に対応しているので事業を海外展開する際にも安心して使えます。

クラウドERPのデメリット

「スピード」「コスト」「柔軟性」の点で優れているクラウドERPですが、デメリットがないわけではありません。

インターネットが使えない環境では利用できませんし、大きな初期投資が不要とはいえ、ユーザー数が多い場合は、ユーザーごとに課金される場合には相応のランニングコストがかかります。またサービスによっては大幅なカスタマイズも望めないこともありますし、サービスの質はクラウドERP事業者に任せるほかありません。

しかし、これらのデメリットもインターネット回線の高速化や多重化、サービスごとの特徴を調べ、検証することによってすべて対応することができます。

まだまだERPパッケージに比べて普及率が低いクラウドERPですが、ここ数年でそのシェアを急速に拡大しています。クラウドERPは、システムの開発、保守、運用、更新にまつわる手間やコストの呪縛からユーザーを解放する新たな選択です。今後はより多くの企業がクラウドERPを選択する時代が訪れるでしょう。

次の項では、日本オラクルが提供する「NetSuite(ネットスイート)」を例に、クラウドERPで何ができるのか、具体的にご紹介します。

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NetSuiteとは?

NetSuiteは160カ国、1万6,000を超える企業や組織が採用する世界No.1のクラウドERPシステム。企業が求める主要なバックオフィス業務と財務会計プロセスをクラウドで提供しています。高度な財務管理からサプライチェーン管理、請求プロセスなどに至るまで、スピーディーな成長とイノベーション促進に必要なツールを提供しています。詳しくはこちら

グローバル経営管理(OneWorld)

複数通貨や言語、各国税制対応などに対応し、海外子会社や事業所など国や地域に分散された業務を統合し、リアルタイムなレポートを可能にするグローバル企業のための統合プラットフォームです。

顧客関係管理(CRM)

NetSuiteには、CRMが内包されておりマーケティング、商談管理から注文管理までの顧客ライフサイクル全般を管理。これにより顧客へのサービス向上、アップセル・クロスセル、契約更新を適切に実現します。

NetSuiteプロフェッショナル・サービス・オートメーション(PSA)

NetSuite SRPは、リソース管理やプロジェクト会計、タイムシート、経費管理を含むWebベースのPSA(プロフェッショナル・サービス・オートメーション)を提供。すべての機能はNetSuiteの財務会計やCRM(顧客関係管理)、Eコマースと緊密に統合されます。

オムニチャネルコマース(SuiteCommerce)

SuiteCommerceはオムニチャネルを実現するためのEコマース構築プラットフォーム。このプラットフォームによって、企業はあらゆるチャネルで魅力的でパーソナライズされたショッピング体験を顧客に提供できます。

ビジネスインテリジェンス(BI)

NetSuiteビジネスインテリジェンス(BI)は、NetSuiteに標準で搭載されたモジュールです。NetSuite内のすべてのプロセスやデータを可視化するだけでなく、役割別にカスタマイズ可能なリアルタイムダッシュボード、レポーティング、分析機能を提供します。

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おわりに

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企業のバックオフィス部門は長い間、「コストセンター」と呼ばれてきました。その分、古くからさまざまな合理化策が実行されてきたのです。コストパフォーマンスに優れたクラウドERPの登場によって、さらなる効率化がなされ、経営者の迅速な意思決定を支えるプラットホームへとその性格を変えつつあります。

企業が競争優位の源泉であるフロントオフィス機能を高め成功をその手に収めるためには、バックオフィスの革新が欠かせません。ぜひクラウドERPがもたらすメリットを体感してみてはいかがでしょうか。

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