激変する経営環境~先読みのできない時代の経営管理
〜第2回 KPIとEPM -KPI(Key Performance Indicator)とは何か〜

 2020.07.01  一般社団法人日本CFO協会主任研究委員 櫻田 修一 氏

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激変する環境に直面している企業の経営管理のあり方について「業績のマネジメント」に焦点を当て論じるコラムの第2回です。今回はKPIとEPMの概念について解説します。CFO組織である経営企画部門や経理財務部門で予算実績管理や管理会計などの業務に初めて就かれた方、経営管理や予算を含む管理会計システムの導入推進をご検討されようとお考えの方々のお役にたてればと思います。

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企業の業績について目標値を設定し、その達成度合いをモニタリングし、業績向上のためのアクションの意思決定を行い実行するという、マネジメントサイクルの目標値をKPI(Key Performance Indicators)と呼びます。一般に「業績評価指標」と訳しますが人事評価のようなものではなく、企業の業績をマネジメントする、という視点からは「業績管理指標」と呼ぶのが適切でしょう。業績管理指標は大きく2つの分類方法があります。

指標の性質による分類

財務指標

財務会計データの指標-企業の業績は最終的には財務会計データで測定される
売上高、営業利益、当期純利益など財務諸表上の数値と、ROE、ROIC、FCFやEBITDAなど財務諸表の数値を用い計算した指標があります

非財務指標

財務会計データ以外の指標-財務会計データ以外の測定できるデータ
マーケットシェア、営業担当者の顧客訪問回数、受注見込金額、製造工場の操業度などの市場や業務プロセス上の測定できる各種データを指標として使います

事業活動の視点による分類

成果指標

ビジネスの成果=業績を表す指標

財務指標の多くは成果指標ですが、事業活動の結果として測定できる数値であれば、例えばマーケットシェアなどの非財務数値も成果指標となります

先行指標

業務の実行状況や企業を取り巻く外部環境の状況を測定する指標

この指標をモニタリングすることにより、事業活動の成果が向上するように業務を改善できる指標です。プロセス指標と呼ぶ場合もあります。

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なおマーケティングや営業の領域では成果指標をKGI(Key Goal Indicators)、先行指標をKPI(Key Process Indicators)と呼ぶ場合もありますので注意が必要です。

ではなぜこのKPIが業績をマネジメントする上で重要なのでしょうか。

成果指標

-財務諸表だけでは表し切れない目標を設定

 財務諸表は単年度の損益と決算期末のバランスシート、キャッシュフローの情報しかありません。ROE、ROICなどの投資対効果やFCF、そしてマーケットシェアや顧客満足度など、事業の成果を多面的に把握するためにはこれらの指標をKPIとして継続的に測定する必要があります。

先行指標

-事業目標を各部門・各社員まで落とし込み、整合して効率的に仕事をするために設定

経営者は事業の目標を定め計画を策定し、各部門・各社員の責任範囲に応じて予算を配分(経営資源の配分)します。しかし予算だけでは各部門・担当者がどのように仕事をしていけば良いのかは判りません。成果指標はビジネスの結果を表すだけで、せいぜい不採算部門・製品の廃止程度の意思決定しかできません。このため業績の遂行状況が把握でき、業績の向上に連動する指標を設定してモニタリングし、全体として整合と取りつつ、個々の業務をより適切に実行していく必要があります。

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将来予測および経営意思決定のベースとしての側面

 第1回のコラムで説明したとおり、現在は将来予測に基づく経営意思決定が重要となります。前月末の財務数値に対しての意思決定はせいぜい不採算製品の製造中止や各種コスト削減程度しか裁量の余地はありません。将来に対しての意思決定であれば顧客の獲得、営業プロセス、購買品の原価低減や新規マーケティングなど、広い業務領域でアクションが打て、それが将来の成果としての業績=財務数値につながります。

先行指標は業務の遂行状況のモニタリングと同時に将来予測と意思決定のベースとなります。

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EPM:Enterprise Performance Management の概念

ここ数年、IT系のメディアではERPと並びEPMというワードも良く目にするするようになりました。EPMとは「業績のマネジメントプロセス」全体を包含する概念であり、大きく以下の3つの機能・プロセスを含みます。

企業グループとして統合されたビジネス計画・予算策定のプロセス

戦略計画策定から各事業領域およびグループ企業の事業計画と予算を策定

財務・非財務の各種実績データの収集・統合・蓄積の機能

ERPや生販物・会計・人事などの基幹システム、CRM顧客関係管理)・SFA(営業⽀援システム)などの顧客・営業ベースのシステム、スマホからのビックデータ等を収集・統合し蓄積グローバル企業のために連結会計機能や付随する外貨換算機能のモジュールを提供しているツールもあります

経営資源配分に関する意思決定を支援するFP&A(Financial Planning &Analysis)のプロセス

各種KPIの算定、予算実績対比、予算予測対比などのデータの対⽐や時系列分析、投資対効果分析や将来予測・シミュレーションを行い、事業推進部門やトップマネジメントにデータを提供し、意思決定を支援

 

この機能・プロセスをツールとしてシステム化したものがEPMツールです。ERPは事業活動を行い、その結果としてのモノとカネの取引を記録するシステムですが、それに対してEPMはその記録された取引、情報を収集・統合・分析して経営意思決定のために「データを使う」システムといえるでしょう。

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 実はこのEPMという概念は決して新しいものではありません。1990年台後半から開始された会計ビックバン*により連結決算が導入され、単体決算中心から脱却し、グループ経営管理のあり方が議論された頃から注目されました。CPM(Corporate Performance Management)も同様の概念です。

しかしながら当時、EPMの概念を完全にシステム化するには経営情報データベースや計画策定、予算実績管理などの機能をスクラッチ開発や複数の機能別のアプリケーションで構築する必要があり、実際に概念通りの仕組みを実現できた企業は多くはありませんでした。その頃からおよそ20年が経過しましたが、いまだに多くの企業でこの領域のシステム化が遅れています。この状況は決して日本だけの問題ではなく世界全体の企業の共通課題となっています。

今、このEPMが再び注目されています。それには2つの理由があります。1つは社会・経済環境、マーケットの変化スピードが早くなりマネジメントの意思決定の重要性が相対的に増したこと、2つ目はテクノロジーの進歩によりEPM領域を⽀援する優良なツールを複数のベンダーがリリースしており、実際に導⼊効果を上げている企業がグローバルで増えつつあるという点です。また最新のEPMツールはクラウドでサービス提供(SaaS)しており、初期導入のハードルが低いということも影響していると思います。

テレワークやニューノーマルというワードで新しい時代の働き方の議論が始まっています。自助努力で離しえなかった変革が一気に進むかもしれません。次回は「業績のマネジメント」を業務としている経営企画、経理財務部門の働き方改革からEPMを考えてみたいと思います。これらCFO組織の新しいあり方を提言しているAgile Financeのコンセプトも紹介します。

*日本経済の国際競争力を高めるための金融ビックバンの中の方策として、日本の会計基準を国際的なレベルに引き上げるために多くの新しい会計基準が導入された。現在のIFRS導入の原点はここにある。

<連載> 激変する経営環境~先読みのできない時代の経営管理

第1回 :先読みのできない時代に必要な経営管理とは?
第2回 :KPIとEPM -KPI(Key Performance Indicator)とは何か

著者紹介

櫻田修一氏株式会社アカウンティング アドバイザリー
マネージングディレクター/公認会計士
櫻田 修一氏
(一般社団法人日本CFO協会主任研究委員)

1985年にアーサーアンダーセン入所、元アーサーアンダーセン ナショナルパートナー。監査部門での8年間の会計監査業務および株式公開支援業務を経て、同ビジネスコンサルティング部門に転籍。経営・連結管理、会計分野を中心とした、経営・業務改革コンサルティングおよびERPシステム導入コンサルティング、プロジェクトマネジメントを手がける 。2010年に創業メンバーとしてアカウンティング・アドバイザリーを設立。現在はIFRS財務諸表作成・導入コンサルティング、過年度遡及修正支援、さらに連結会計システム導入など会計関連プロジェクト実行支援サービスを提供している。デジタル・テクノロジーの進歩により財務・経理人材は何処を目指すべきか、という視点からAI・ロボテックスに取り組んでいる。日本CFO協会主任研究委員
オラクル管理会計・予算管理クラウドサービス

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