財務最高責任者(CFO)が考えるべきコーポレートガバナンスとは

 2016.02.03  ひので監査法人 羽入 敏祐 氏

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現状認識

上場会社はもちろんIPO上場準備会社で活躍する”CFO(財務最高責任者)”、名前のとおり、企業運営の礎であるお金を適切に調達・管理し、事業運営を管理面から支えるのがその役割といえるでしょう。お金あっての事業運営ですので、その意味でCFOの第一の役割は資金調達と考えられるところですが、上場準備会社におけるCFOといわれるかたがたを見ているとどうも、それだけではないようです。

ひたすら自分たちのビジネスモデルを信じて、その事業化からのスタートアップ企業においては資金調達が最重要課題でしょう。既に事業経験は5ー10年を越え、一定規模以上の基盤を有するケース、あるいはMBOを通じてIPOを目指すケースなどでは、資金調達面というよりも、むしろ持続的会社運営に求められる組織・ルール作り、すなわちコーポレートガバナンス構築に向けた取り組みが、業務の多くを占めていることもかなり現実的なことのようにも思えます。

健全な事業成長を目指すうえで、企業活動をとりまく様々なリスクをどうマネジメントするかを、伸び盛りのころにきっちり整理し、火種の小さなうちに問題点を解消しておくことが重要といえます。その意味では、CFOの役割は、ファイナンスはもちろんのこと、企業・グループ全体のリスクマネジメント能力が求められているというのが実感です。

加えて、昨今のIT技術の進展、例えばSRA、CRMERPなど社内意思プロセスあるいは情報共有にIT技術が大きく寄与することが明らかになった反面、選択をためらえばためらうほど、テクノロジーの進化にキャッチアップできず、経営効率に大きな差が生まれてしまうため、CFOは従前の管理能力に加え、IT技術に対する一定レベルの見識も求められます。
それでは、IT技術が経営構造に変革をもたらすことが社運を左右する時代になった今日、企業運営ではどのようなステップでコーポレートガバナンス構築をめざすべきなのでしょうか。

背景

コーポレートガバナンス構築といえば、社内ルール作り、そしてその運用、特定の人材だけに頼らない内部けん制効果の高い組織づくりがもとめられるのが一般的でした。

社内規程整備から職能の特定、職務権限表と現行組織運営の差異分析と調整、取締役会・監査役会などの意思決定機関の本格的運用の開始、内部監査の整備とその運用、経理・財務・人事労務・法務・情報セキュリティという経営管理の基礎機能の充実を図るための取り組みです。

特定の管理者だけに、銀行借入、契約書捺印、記帳、銀行振込みにいたるまで、管理業務の全てをなんでも任せることで実現してきた管理体制から、ひとつの手続きに

① 相互牽制が働く管理体制

複数メンバーによるチェック、いわゆる「相互牽制」が働く管理体制への脱皮が求められます。「相互牽制」を効果的に機能させるためには、複数の担当配置に加え、②各担当者の役割が明確であること、そして③各担当者の行った履歴が「後で確認できる」こと、が有効です。

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② 各担当者の明確化

社内規程整備とりわけ職務権限表など社内の意思決定プロセスの基本ルールを定めることが必要です。成長とともに参加者の数は増え続けるので、ともすれば複雑になりがちですが、役割と責任の付与ルールに一貫性を保つことがポイントとなるでしょう。

③ 各担当者の活動履歴を記録し、後に確認できること

これは、活動記録、例えば、「いつ」、「誰が」、「誰の承認を受けて」、「何を行なった」といった記録かが、時系列で第三者にも把握できる状態を意味します。
事業規模の拡大に対応するには、本部の意思決定を待たず、即決できる仕組みが必要であり、結果、現場への権限委譲が必須です。しかし、現場に任せきりでは、問題が起きた時の原因把握とその対応が困難になります。その意味でも、この要件は重要です。

昔から「ホウ・レン・ソウ」といった情報共有が重視されていますが、単に報告するだけでは、ヒトの記憶に依拠するため正確性に問題があり、共有情報が垂れ流されるだけでナレッジ蓄積の点からも非効率。現場に少なくない事務作業を強いるだけの価値があるのか疑問を感じるところです。

今のご時勢、情報共有を円滑に実現するツール、CRM、SFA、グループウェア、監視ツールなど様々存在します。まずは、企業によって本当に必要な経営情報が何なのかを見定めるとともに、テクノロジーを生かした、履歴追跡可能(監査証跡)な経営体制づくりが、これからのガバナンスの機能する組織形成のありかたといえます。

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見解

とはいえ、実際の経営環境を拝見するに、思いのほか経営情報の効率的蓄積を実現できている企業はまだまだ少数派のように感じます。事業の急激な拡大が見えない企業では、一見何の価値も生まないと見える社内情報管理体制の見直しにメリットを感じない、あるいは、それだけの投資に耐えうる収益基盤が見通せない、理由は様々ありましょう。

外部環境に変化が無ければ、そうした意思決定は「あり」かもしれません。

しかし、今はインターネット通信、クラウドサービスの充実とともに、様々な情報活用ツールが出現し、情報共有スキームの効率化には目を見張るものがあります。無論、このような外部環境の変化やテクノロジーがもたらす経営環境へのインパクトを無視することはむしろ現実的ではありません。

電子データ化は漏洩の問題の指摘もありますが、少なからず、どんな情報が、どこにあるか、そしてその中身を見つけ出すことは、紙媒体よりはるかに効率的であることは異論の余地は無いでしょう。紙媒体による情報管理では、保有情報の所在、内容確認も一仕事であるばかりか、下手をすると情報持出し、あるいは消失の事実すら把握できていないことも十分ありえます。最近では、紙媒体の電子化をすすめながら、電子化された情報から優れた知見の掘り起こし、あるいはロボットに自動チェックさせるといったテクノロジーを生かした新たな管理体制の取り組みも始まっているようです。

インターネットを通じた情報拡散力は目を見張るものがありますし、企業のリスク対応において、ひとつ打つ手を誤れば、企業運営に大きなダメージを受けるリスクがある中で、企業の活動実態を昔ながらのフレームワークで部分的に掌握するだけでは、十分な説明責任を果たすこと、そして具体的な対策をこうじることも困難でしょう。

外部環境の変化を考えれば、経営活動の動きを掌握する範囲を順次広げていく取り組みは、不可欠ではないかと思うのです。

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まとめ

成長企業における営業戦略の立案と実施は重要ですが、営業戦略のスピードに耐えうる管理体制作りを根性で築き上げる時代はもう終わりを迎えつつあります。社内システム担当者は、単なるサーバ管理者ではなく、経営全体を安全でルールに則った効率的な情報共有を実現するだけでなく、経営情報という最も重要な資産管理を託されており、コーポレートガバナンスの重要な柱の一つになったと考えるべきでしょう。

これからの時代、情報資産を企業成長に合わせてどのように蓄積し、活用し、共有していくのか、そうしたグラウンドデザインを描ける管理責任者が、管理体制そのものを営業戦略構築時点からセットで考えていくことがこれからのガバナンス構築ではないかと思うのです。コーポレートガバナンスの構築となると、とかく財務経理担当役員に全てを覆い被せられてきたものですが、情報戦略とガバナンスが一体化しつつある今、情報管理体制の枠組み作りを企業運営の中期的重要課題と位置づけ、会社として行うべきことを明確に定め、実行していくことが求められることになるでしょう。

今後の市場環境の変化と経営環境の変化と企業に与えるインパクト、そして各企業の取り組みに引き続き注視していきたいです。

著者紹介

hanyu-samaひので監査法人 羽入 敏祐 氏

監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入所、上場企業等監査業務に従事。会計事務所にて会計・税務全般およびM&A関連各種業務事業会社では経営管理実務、IPO準備全般に従事。
監査・経営実務経験を踏まえたITインフラ提案力に強み

ひので監査法人について

ひので監査法人は、2009年5月 設立、大手監査法人の監査経験者と事業会社のマネジメント経験者から構成され、上場準備、中堅国内上場企業向けの効率的監査サービス、バックオフィス支援サービスの提供をしております。信頼される会計プロフェッショナルとしていかに成長し続けていくかを日々模索し、監査ならびにバックオフィス構築サービスの品質維持・向上に取り組んで参ります。

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