経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」が差し迫っており、国内のさまざまな分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)実現が喫緊の経営課題となっています。DXとは「デジタル技術の活用による変革」を意味する概念であり、その実現に必要となるのが「データ活用」です。本記事では、DXを実現するうえでデータ活用が必要となる背景について解説します。イノベーティブな経営体制の構築を目指す企業様は、ぜひ参考にしてください。
DXでデータ活用が必要な理由
DXの推進においてデータ活用が求められる背景を理解するためには、まず企業の存在意義について再確認しなくてはなりません。企業は人的資源・物的資源・資金・情報・ファシリティなどの経営資源を活用し、事業活動を通じて製品やサービスといったプロダクトを創出します。そして、生み出した付加価値を市場に提供することで利益を獲得し、組織としての健全な成長と発展を通して社会に貢献することが、企業の存在意義です。
企業が持続的な発展を通して社会に貢献し続けるためには、競合他社にはない独自の付加価値を創出するとともに、収益性を最大化する仕組みを構築しなくてはなりません。そのためには、社会経済の動向や市場の需給状況をリサーチし、収集・蓄積されたデータから顧客の潜在需要や消費者インサイトを発掘する必要があります。顧客や消費者のニーズを的確に捉え、新たな市場価値を創出するためには、データ活用への取り組みが不可欠となるのです。
「2025年の崖」を回避するためにはデータの戦略的な活用が不可欠
国内企業の間でDXの推進が重要課題となっている背景には、経済産業省が指摘する「2025年の崖」が大きく関わっています。経済産業省は2018年に公表した「DXレポート(※)」のなかで、企業が老朽化したITシステムを抱えるリスクについて言及しており、2025年以降に最大で年間12兆円規模の経済的損失が生じ得ると推察しています。これを経済産業省は「2025年の崖」として警鐘を鳴らし、この問題を回避するためには、新たなデジタル技術の導入による経営改革が不可欠であると指摘しました。
DXとは、デジタル技術の導入によって組織体制そのものに変革をもたらすことであり、その本質は単なるIT化やデジタル活用にとどまりません。ITインフラの刷新やクラウドコンピューティングを導入するだけでなく、それらの技術を活用して市場の競争優位性を確立することが、DXの本質的な目的です。その目的を実現するためには、レガシーシステムの問題を解決しつつ、データドリブンな経営体制を構築する必要があるため、DXの推進に基づく戦略的なデータ活用が求められているのです。
(※)参照元:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~|経済産業省
データ活用を推進する方法
DXの実現を目的としてデータ活用を推進するためには、押さえるべきポイントがいくつか存在します。なかでも重要となるのが「データ分析の目的を明確化する」と「データ分析に基づいて戦略を策定する」、そして「データ連携の仕組みを整備する」の3つです。
データ分析の目的を明確化する
マネジメントやマーケティングの領域でデータを戦略的に活用するためには、データ分析の目的を明確化する必要があります。データ分析は基本的に「データの収集」に始まり、「蓄積」→「抽出」→「変換」→「可視化」→「分析」というプロセスを辿るのが一般的です。このプロセスを効率化するには、情報の取捨選択が重要となるため、まずはデータ分析を実行する目的を明確化しなくてはなりません。目的を言語や数値に落とし込むことで、必要なデータや適切な分析手法が明確になり、分析プロセスの効率化と合理化につながります。
データ分析に基づいて戦略を策定する
DXを推進するうえでデータ活用が必要とされる理由のひとつは、勘や経験といった曖昧な要素に依存する経営体制からの脱却です。現代はテクノロジーの発展に伴って顧客ニーズが多様化かつ高度化しており、それに比例して製品や技術のライフサイクルも短縮化していく傾向にあります。このような時代のなか、競合他社との差別化を図り、市場の競争優位性を確立するためには、勘や経験などの不確定要素を排除したロジカルな意思決定と戦略の立案・策定が求められます。
データ連携の仕組みを整備する
データの戦略的な活用によってDXを推進していくためには、全社横断的な連携が不可欠です。たとえば、財務会計・人事管理・購買管理・生産管理・在庫管理・販売管理などの基幹業務を一元的に管理するERPを導入することで、経営状況を俯瞰的な視点から分析できるとともに、部門を横断した情報共有や業務連携の強化に寄与します。データ連携の仕組みを整備し、組織全体がDXへのビジョンを共有しながらPDCAサイクルを回し続けることで、企業のさらなる成長と変革の実現につながります。
[RELATED_POSTS]データ活用の障害となるサイロ化とは
「サイロ化」とは、業務システムやデータが全体から孤立し、情報の共有や連携が図れない状態を指します。DXの実現に取り組みながら、いわゆるIT化の領域にとどまっている企業が多い理由のひとつが、システムのサイロ化による情報共有の阻害です。先述したように、DXを推進していくためには全社横断的な情報共有が不可欠であり、システムやデータがサイロ化した状態では部門間連携の鈍化を招き、意思決定と経営判断からスピーディさが失われます。
情報通信技術の進歩とともに変化が加速する現代市場において、多様化かつ高度化する顧客ニーズに対応していくためには、定量的なデータ分析に基づく迅速な意思決定と的確な経営判断が不可欠です。経営からスピード感が失われれば、市場への対応が後手になり、企業の競争力や顧客満足度の低下を招く要因となりかねません。迅速かつ的確な意思決定を下すためにはサイロ化の解消が必須であり、いかにして効率的なデータ分析と情報連携の仕組みを構築するかが重要な課題です。
DXにおけるデータ活用の注意点
データ活用において重要なポイントのひとつが、データの正確性と信頼性です。分析結果の信頼性を担保するためには、母数が大きく偏りの少ないデータセットを用いるとともに、クロス集計やロジスティック回帰分析などの確立された分析手法を導入する必要があります。
また、企業のデータベースには従業員の個人情報や顧客情報、製品開発情報などの決して流出してはならないデータが保管されているため、データガバナンスの整備や高度なセキュリティソリューションの導入も不可欠です。
もうひとつの重要なポイントとして、DX人材の発掘と育成が挙げられます。DXを推進していくためには、デジタル技術に関する深い知見を備えるとともに、マネジメントやマーケティングの領域に精通した人材が不可欠です。こうした人材を発掘・育成する仕組みを整備し、データ活用を推進するプロジェクトチームを結成する必要があります。
そのほか、国内企業は保守的で不確実性を好まない傾向にあるため、経営層がDXの実現に向けて意義あるビジョンを示し、組織全体を変革へ方向づける企業文化を醸成することも大切です。
まとめ
変化の加速する現代市場において、企業が競争優位性を確立するためには、デジタル技術の活用によって経営体制に変革をもたらし、競合他社にはない付加価値を創出する仕組みを構築しなくてはなりません。そのためには、優れたデジタルソリューションを導入するとともに、事業活動を通じて収集・蓄積されたデータの戦略的な活用が求められます。システムやデータのサイロ化を防ぐOracle提供のERPシステム「Oracle ERP Cloud」の導入をぜひご検討ください。
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