うっかり請求書を出し忘れの際に知っておきたい法律について

 2019.12.10 

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会社として「請求書の出し忘れ」は絶対にあってはならないことです。しかし、日々の仕事が忙しかったり、専任担当者を配置していないような企業である場合には請求書を出し忘れてしまう場合もあります。今回は、うっかり請求書を出し忘れてしまった際の、知っておきたい法律についてご紹介します。

請求書を出し忘れると何が起きるのか

請求書を出し忘れると、取引先は商品やサービスの提供に対して代金をいくら入金すればいいのか分かりませんし、請求書が受理されない限り代金が支払えないルールを設けている企業はほとんどです。つまり、入金されないわけです。

中には、「請求書が無くても取引時点で債権債務が発生しているのだから、取引先が代金を支払うだろう」と甘く考える方もいるでしょう。そうした方に注意していただきたいのは「売掛債権は消失する可能性がある」ということです。平たく言いますと入金されずに請求できる権利が消失する可能性があるということです。

もし請求書を出し忘れている場合には、先方の担当者に連絡をとり請求書を送付させていただく旨を伝えるようにしましょう。

売掛債権の有効期限とは?

売掛債権とは「商品やサービスを提供したことで得た売上代金を、取引先に請求するための権利」です。一方、取引先は支払債務(代金を支払う責務)が生じます。こうした法定上の権利は永続的に続くものと考えがちですが、実際は違います。

一般的に権利とは時効によって消失/所得される可能性があるものです。売掛債権も例外ではありません。

民法の第173条において、債権を2年間行使しないと以下の項目に該当する債権は消失すると説明しています。

  1. 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
  2. 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
  3. 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

引用:電子政府の総合窓口e-Gov『民法』

要約すると、取引先のために製造/販売した商品やサービスに関する代金は支払期日の翌日から2年間に債権が行使されなければ、請求書の有効期限が切れて売掛債権が消失することになります。つまり、代金は永遠に支払われないということです。

問題は、「請求書を送付するだけでは売掛債権の有効期限を引き延ばせない」ことです。売掛債権の有効期限を2年以上に引き延ばすには、請求ではなく「催告」という行為が必要です。催告というのは、裁判所に支払い督促申し立てなどを行ってもらい、権利を主張することを意味します。請求書の送付も広義では催告に該当しますが、「代金を支払ってください」という通知に過ぎないので、請求書を送り続けても売掛債権の有効期限は延びません。

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売掛債権の有効期限を延ばすためには?

一口に催告といっても、いくつかのやり方があります。取引内容や自社が置かれている現状、取引先の状況などを踏まえた上で選択することが大切です。

支払い督促の申し立て

裁判所より金銭などの支払い(債務の履行)を命じる督促状を取引先へ送付してもらいます。送付後、2週間内に意義が申し立てられると訴訟へと移行します。契約書や債務確認書などの証拠資料を持参し、簡易裁判所に申し立てると売掛債権の有効期限を引き延ばせます。

民事調停の申し立て

簡易裁判所において、当事者同士が話し合い解決を目指す方法です。合意に至れば調停書が作成され、互いに提示した条件に従って取引を完了させます。ただし、調停が成立せずに裁判に発展する可能性もあります。調停委員会が当事者の言い分を聞き、必要とあれば事実調査を行った上で条理にもとづいて当事者双方の歩み寄りを促し、合意によって解決を図ります。

強制執行の申し立て

取引先の意に反して強制的に実行する手続きです。多くの場合は弁護士への依頼が必要となります。地方裁判所で執行文を付与してもらい、強制執行を申し立てることはできますが、裁判所を介した強制執行は解決までに長い時間を要するため、代金回収までの手間とコストを天秤にかけることが大切です。訴状を提出した時点で売掛債権の有効期限が引き延ばされます。

少額訴訟

簡易裁判所において、60万円以下の金銭を要求する場合に起こせる訴訟です。1回の審理で判決を終えることを原則としているので、短時間で代金を回収できる可能性があります。訴訟を起こした時点で売掛債権の有効期限が引き延ばされます。

差し押さえ

訴訟や支払い督促により、裁判所が債権者に強制執行許可を出すと、債務者の財産を差し押さえることができ、売掛債権の有効期限が引きのばされます。ところが、すべての財産を差し押さえられるわけではなく、なおかつ判決が得られない状態で債務者の預金等を拘束するので、債務者への配慮が必要になります。

債務の承認

債務の承認とは、取引先が債務の存在を認めることです。債務者が1円でも返済しており、かつ支払い約束証などにサインしている場合、債務の承認にあたり売掛債権の有効期限が引き延ばされます。さらに、債務の承認は事項期間が満了した場合でも、売掛債権の有効期限を引き延ばす効果があります。

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段階的な催促/督促について

売掛債権の時効問題について考える以前に、請求書未送付があった場合はすぐに作成し、取引先へ送付することが大切です。単純な送付忘れなれば問題なく対応してくれる場合がほとんどですし、代金未払いになることもありません。ただし、請求書を送付したにもかかわらず、代金が支払われなかった場合はどうすればよいのでしょうか?ここでは段階的な催促/督促についてご紹介します。

Step1.自社側に問題はないかを確認する

代金未払いが発生した場合、真っ先に取っていただきたい行動は「自社側に、問題はないかを確認する」ことです。場合によっては、請求先間違いや請求内容の違いにより、取引先に受理されず未払いになっている可能性があります。

もちろん、請求書が受け取られなかったり内容が間違ったりしている場合でも、取引時点で取引先が代金を支払う義務があるのですが、取引先によっては請求書が受理されないと代金を支払えないルールを設けている場合もあります。

Step2.メールまたは電話で連絡を取る

請求書の送り先も内容も正しく、かつクレーム等もないのに代金が未払いになっていることが確認できたら、取引先に連絡を取ります。メールや電話、あるいはWeb会議などを使ってコンタクトして、「なぜ代金が未払いになっているのか?」の説明を求めましょう。

ただし、取引先からクレームが入っているが故に代金が支払われていない場合があります。そんな中で代金請求の連絡をしてしまうと、火に油を注ぐことになりますので、最初に問題の有無を確認することが大切です。

Step3.直接訪問する

メールまたは電話などで連絡を取り、新しい支払い期日を設定したにもかかわらず代金が支払われなかった場合、直接訪問するのも有効的です。ただし、過度な威圧感を与えてしまう可能性もあるので、直接訪問するかどうかは慎重に検討しましょう。

Step4.催促場を作成/送付する

直接コンタクトしても期日通りの代金支払いが確認できなかった場合は、催促状を作成します。催促状には「未払い金に関し、〇月〇日までに確実な代金支払いをお願い致します」といった文言を交えて、代金支払いの催促を行います。催促状は正式な書面として角印の押印をおすすめします。ただし、「未払い代金に対して催促した」という事実を作ることが大切なので、簡易的な連絡手段であっても問題はありません。

Step5.督促状を作成/送付する

催促状で設けて支払い期日にも応じなかった場合は、督促状を作成しましょう。「催促と「督促」のニュアンスは似ていますが、督促の方が強制力を持っています。そのためには、内容証明郵便で督促状を送付し、「〇月〇日までに代金支払いが確認できない場合、法的措置に移行いたします」といった文言で督促します。

いかがでしょうか?売掛債権は消失する可能性があるので、うっかり出し忘れた際はすぐに新しいものを発行し、提出するよう心がけましょう。

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