ニューノーマル時代を見据えた経理・財務部門におけるDXの進め方
〜第1回 コロナ対応をデジタル改革へ

 2021.03.01  株式会社クニエ

[E-Book]データ主導の意思決定に勇気を持ち続ける

この連載コラムでは、新型コロナウイルス感染症対応(以下コロナ対応)から企業の成長に向けた次の改革を推進したい方、次世代のERPや会計システムの導入を推進している方、経理財務組織の変革を推進したい方を対象に、コロナ対応のペーパーレスやハンコレスの取り組みを企業全体のデジタル改革に発展させていくための方策を論じていきます。

kunie

テレワーク対応の次に

求められることは

新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、店舗営業時間の短縮や、密の状態の回避が社会的な課題となり、企業はテレワークによる新たな働き方に変わってきています。各企業はテレワークに対応するため、ペーパーレス化・ハンコレス化などの業務ルールを変更したり、自宅などオフィス以外の場所においても業務が遂行できるよう、Web会議システムやビジネスチャットなどのコミュニケーション環境を整備したり、と奔走してきました。

コロナという突発的な外的要因に端を発したテレワーク化は業務オペレーションにどのような影響を及ぼしているでしょうか。業務の生産性向上に貢献しているか、ペーパーレスとペーパーの混在により、これまで以上に手間だけが増えてしまっていないか、新たなコミュニケーション環境で従業員に多様な働き方を提供できているか、対面でのコミュニケーション不足により業務停滞を引き起こしていないか、など。

本コラムでは企業の経理財務を起点に、コロナ対応に始まったテレワーク化という変化が企業全体に大きなプラスの変革をもたらし、デジタル改革に押し上げていくための取り組みに触れつつ、ニューノーマル時代に求められる経理財務の業務システムとは何か、を解説していきます。

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経理財務部門の課題・求められるスキル

改めて企業のCFO(最高財務責任者)、経理財務部門が抱えている課題を振り返りたいと思います。CFO、経理財務部門は従来から企業の財務報告、決算業務を担ってきました。これらの従前から行っていた領域においては、国際財務報告基準(IFRS)の会計基準に照らした経理処理やBEPS(税源浸食と利益移転、Base Erosion and Profit Shifting)対応に即した税務判断など高度専門性がますます要求されています。

また、企業の経営環境はテクノロジーの急激な進歩と共にESGやSDGsに代表される社会・自然との共存など激変しており、CFO、経理財務部門はこれらの変化への対応をビジネス部門とともに推進していくことが求められています。

企業経営を成功に導くためには、以下で述べる3つの経理財務スキルを身に付けていくことがCFO、経理財務部門の課題であり、ニューノーマル時代の業務システムは、これらの課題解決を支援するものが求められています。

1. テクノロジーの活用と継続的なプロセス改善

支払処理や売上計上、入金消込、財務諸表の作成など日々行っている業務の自動化や効率化を成し遂げるために、クラウドサービスやRPA、機械学習などの最新テクノロジーを活用するスキルです。

従前から行っている業務のルールや手順を的確に遂行することに加えて、問題点を発見し改善を行うスキルとマインドが必要となり、数年に一度のシステム更改にあわせてBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を実施するだけではなく、ITツールを見極め、自身の担当業務にフィットさせながら継続的な業務改善を成し遂げていくことが求められます。

デジタル時代におけるCFOと財務部門のあり方とは?
最重要ミッションは「経営への貢献」経理・財務部門が10年後も生き残る方法

2. 客観的なデータに基づく洞察とさらなるデータ活用

企業内から客観的なデータを入手・分析していくことで、そこから洞察を得て付加価値を見出すスキルです。日頃から企業内でアクセスできるデータを把握しつつ、そのデータの意味を理解し、適切に活用していくことを指します。データを理解した上でAIや予測エンジンなどの最新テクノロジーを活用して、これまで存在しなかった企業の意思決定の支援の仕組みを提案していくスキルとマインドが求められます。

過去実績や先行指標となるマーケット情報、パイプライン情報などから着手見込みを予測する、イレギュラーな経費処理を自動抽出して不正が疑わしい取引を検知するなどの活用例があります。

3. 事業推進のアドバイザー

事業部門に対して損益計算書(PL)に代表される財務情報を提供するだけでなく、受注売上や発注購買など上流の取引の発生源に近い情報と下流の会計情報を有機的につなげた上で、事業部門に対して財務的な分析情報を提供し、事業部門と双方向に持続的なコミュニケーションを取りつつ、事業の意思決定を支援していくスキルです。

なお、下図の通り、ガートナー社は、ポストコロナ時代の成功のためには5つの経理財務スキルが必須である、と提唱しています。

Gartner_5_Must_Have_Financ_725902_ndx(出典:Gartner, “5 “Must Have” Finance Skills Required for Post-COVID-19 Business Success”, Robert Anderson, John Van Decker, 29 July 2020)

テレワーク対応からニューノーマル時代を見据えた変革を

CFO、経理財務部門が先にあげたスキルを獲得するためには、ITツールおよびデータの活用が必須となります。日本の企業においてはハンコに代表される紙面文書が数多く残っており、これらが業務のデジタル化の妨げになっていました。しかし、コロナ対応のテレワーク化の中でペーパーレス・ハンコレスが進んできたことで、デジタル化の障壁が弱まり、企業内においてデジタル改革を後押しする環境が整い、機運が高まっているのではないでしょうか。

日本CFO協会が実施した調査結果によると、“紙“が理由で出社が余儀なくされた理由として、取引先から郵送される書類の受取りや紙の請求書・領収書をもととした支払依頼対応が上位を占めていました。これらの課題解消に向けた取り組みには、既に着手している企業が多いと認識しています。

図表2_日本CFO協会

(出典:日本CFO協会実施 財務マネジメント・サーベイ 「紙」に関連する出社理由)

紙面の書類や紙の請求書・領収書の廃止は取引先とData to Dataで業務を行うことが可能になります。紙の書類をデジタル文書に置き換えることでテレワークを実現するだけでなく、取引先を巻き込んだEnd to End、たとえば請求書を取引先から受領して支払いを行うまでの一連のプロセスを対象とした改革に押し上げることが可能になります。

一連のプロセスをData to Dataで処理することで業務効率を高めることができ、最新のデジタルテクノロジーにはこれらのEnd to Endの変革を支援するソリューションがあります。

QUNIE-01-03(出典:クニエ, ペーパーレス・ハンコレスからEnd to Endのデジタル改革へ)

また、End to Endの業務デジタル化が進むことで企業内に蓄積されるデジタルデータは膨大となっていき、これらの情報資源の活用が求められます。企業内に散在するデータを活用するためにはバラバラなプロセスやデータでは困難となるため、標準プロセスや統合されたマスタが必要となってきます。

筆者は、業務のデジタル化と情報資源の活用に取り組むことで、CFO、経理財務部門が企業内の変革を推進できる、と考えます。

本連載コラムでは、デジタルテクノロジーを活用して、業務の生産性向上や継続的なプロセス改善に向けて取り組んでいる事例やソリューションや、データを標準化・統合化していくための情報基盤に求められることと、その構築の手順などを紹介していく予定です。

第2回では、End to Endのデジタル改革の取り組み事例を紹介し、取引書類をデジタル化する上で守らなければならい法規制とそれを実現するシステムについて解説します。取引書類のデジタル化が進むことで企業はどのように変わることができるのか、何か可視化されていくのか、を掘り下げていきます。

<連載>ニューノーマル時代を見据えた経理・財務部門におけるDXの進め方

第1回 :コロナ対応をデジタル改革へ
第2回 :取引のデジタル化から始めるDX
第3回 :テレワークの推進とガバナンスの強化
第4回 :企業の回復と成長を支えるAgile Finance
第5回 :データドリブンによるレジリエンス(回復力)の獲得

著者紹介

株式会社クニエ
株式会社クニエはNTTデータグループのコンサルティング会社です。グローバルに活躍されるお客様へのコンサルティングはもとより様々な変革に挑戦されるお客様に経験豊富なコンサルタントが高品質なコンサルティングサービスを提供しています。
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