管理会計の分析手法「収益性分析」とは?

 2019.11.21  クラウドERP編集部

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管理会計を実施するにあたり、代表的な指標が「収益性分析」です。この分析では、会社の総合的な利益創出力を評価することができます。収益性が高いほど、安全で効率世の良い経営を行えていることになり、利益体質かどうかを把握できます。本稿では、収益性分析について解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

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収益性とは?

収益性とはいわゆる「会社の稼ぐ力」です。経営活動では、金融機関や投資家、株主から集めた資本を投じて、最終的に売上を創出します。その売上から費用を差し引いた金額が利益であり、少ない資本でより大きな利益を稼ぐことが、収益性ということになります。さらにかみ砕くと「少ない資本で最大の売上をあげる力」と「売上から大きな利益を残す力」が、収益性ということになります。

収益性分析は、会社の収益性を把握するためにさまざまな指標を用いることを指します。ちなみに「少ない資本で最大の売上をあげる力」は、資本回転率を算出して把握します。これは「売上高÷総資本」で計算できます。

一方、「売上から大きな利益を残す力」は利益率で算出できます。計算方法は「利益÷売上高×100」です。これらの観点を総合した収益性が、「資本収益率」です。代表的な指標としてROA(Return On Assets:総資本利益率)とROE(Return On Equity:自己資本利益率)があります。ROAは「利益÷総資本×100」で計算し、ROEは「利益÷自己資本×100」で計算します。

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収益性を分析する方法

収益性分析は会社の利益を計算し、どれくらい稼ぐことができるかを把握します。ところが単純に「総売上-総費用」で総利益を算出しても、管理会計には使えません。なぜなら、総売上と総費用から総利益を算出しても、「どこに費用がかかりすぎたのか?」「どこで費用が節約できたか?」を正確に把握できません。

そこで、総利益をいくつかの項目に分類して計算します。会社の利益と損失を取りまとめた損益計算書では、費用の性質ごとに段階的に利益を記載するようになっています。たとえば、次のようなものです。

勘定科目

金額(百万円)

売上構成比

売上高

100

100.0%

売上原価

55

55.0%

売上総利益

45

45.0%

販売費及び一般管理費

30

30.0%

営業利益

15

15.0%

営業外収益

-4

-4.0%

経常利益

11

11.0%

特別損益

3

3.0%

税引前当期純利益

14

14.0%

法人税等

5

5.0%

当期純利益

9

9.0%

この損益計算書から、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」という5つの利益項目が確認できます。このように、利益を細分化することで「どこに費用がかかりすぎたのか?」「どこで費用が節約できたか?」が把握できるようになるのです。

売上高総利益率

「粗利率」とも呼ばれ、会社が販売している商品やサービスの競争力を示す指標です。売上高総利益率は高いほどよいですが、業種の特性によっても異なるので注意しましょう。

<計算式>

売上総利益÷売上高×100

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売上高営業利益率

会社の本業における力を表す指標です。営業利益とは、事業から得た利益のことを指します。売上高営業利益率が高い場合、会社が販売する商品やサービスの競争力が高く、無駄な資金を投じずに効率よく経営ができていることを指します。

<計算式>

営業利益÷売上高×100

売上高経常利益

資金調達コストを含めた、企業の総合的な収益性を示します。経常利益とは、会社の本業以外で得た利益のことです(不動産売買や有価証券など)。金融資産を多数保有している会社においては、売上高経常利益率の値が売上高営業利益率よりも高くなります。逆に金融資産が少なく、借り入れが多い会社では売上高経常利益率が低くなる傾向にあります。

<計算式>

経常利益÷売上高×100

売上高当期純利益率

会社の最終的な収益性を示します。

<計算式>

当期純利益÷売上高×100

収益性分析の活用方法

ここまでご紹介した収益性分析の指標を用いれば、会社の収益性を把握することができます。しかしながら、その数値が高いものか低いものかの判断に困ることでしょう。その際に実施していただきたいのが、「収益性を時系列で見ていく」という方法です。

事業年度ごとに推移する業績を確認し、同じ事業年度の第1四半期、第2四半期、第3四半期、第4四半期の推移を確認していくと、会社の業績が上がっているのか、または下がっているのかを確認できます。

たとえば、第1四半期よりも第2四半期の売上が伸びている場合、売上を拡大するために過剰に費用を投入していると収益性は下がります。なので、単純に売上が大きければよい、というわけではないのです。

収益性を判断するもう1つの方法が、同業他社や業界の平均と比較することです。複数の同業他社と比べてみると、会社の経営状況についてより明確に把握することができます。ちなみに、同業他社の事業規模が自社よりも大きくても小さくても、収益性指標は比率で表すため比較可能になります。大企業だからといって収益性が高いというわけではなく、大企業よりも収益性が高い中小企業も存在します。

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収益性分析の一例

それでは、実際に例を挙げて収益性分析を行ってみましょう。ここでは、2019年7月30日に発表した、ソニーグループの「2019年度第1四半期」の決算短信を参考にします。

まず、2019年第1四半期の売上高は1,925,724百万円です。一方、営業利益は1,342百万円になるので、売上高営業利益率は0.069%となります。一方、四半期純利益は166,006百万円なので、売上高当期純利益率は8.62%となります。

これを自社の収益性と比べるとどうなるでしょうか?「ソニーよりもうちの方が収益性が高いな」となるケースが多いでしょう。ただし、これだけでソニーの成長性などを把握することは難しいので、次に時系列で収益性を見ていきます。

ソニーの前年同期の売上高は1,953,624百万円であり、営業利益は-4,539百万円です。そのため、売上高営業利益率は-0.23%です。一方、四半期純利益は236,864百万円なので、売上高当期純利益率は12.1%となります。

こうして時系列で見ると、売上高営業利益率は拡大しているものの、売上高当期純利益率が低下していることが分かります。全体的な業績でいえば低下しているものの、営業利益が向上していることから、今後の成長する可能性が考えられます。

これらの収益性分析から読み取れる情報はたくさんあります。自社の経営状況から他社の経営状況、比較した上でどちらの方が収益性が高いかなど、さまざまな観点で分析することで、これからの事業計画を考える上で欠かせない情報が手に入るでしょう。ぜひ、皆さんも収益性分析に取り組んでみてください。

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