クラウド ERP freee とは?システムの意義、導入の際の注意点について解説

 2023.10.06  クラウドERP実践ポータル

新入社員、新規配属の方必見!ERP入門特集

ERPシステムはビジネスに付加価値を生み出していく上で重要でとされ、多くの企業が導入しています。非常に需要が高いことから、さまざまな種類のERPシステムが開発されています。例えば、特定の業界や業務向け、スタートアップ企業向け、海外進出を見据えた企業向けなど、あらゆるニーズに対応された製品がリリースされています。
本記事では、ERP製品の中でも評価の高い「クラウドERP freee」の概要、導入のメリット、実装されている具体的な機能などについて説明します。また、事例や期待される導入効果についても取り上げ、クラウドERP freeeの導入を検討する場合の参考になるように解説します。

クラウドERP freeeとは

クラウドERP freeeはSaaS型で提供されるERPシステムです。
主に経理業務をサポートするERP製品で、低コストかつ短期間で導入できます。
また、クラウドERP freeeは単なる会計ソフトとしてではなく、ERPシステムとして活用されています。
ERPシステムとは「Enterprise Resource Planning」の略で、企業資源を管理するためのシステムです。企業のヒト、モノ、カネなどのデータを一元管理し、情報を可視化します。
ERPシステムを導入することで、経営層や管理職はビジネスのあらゆる局面でデータに基づいた合理的な決定ができるようになります。
また、社内業務を効率化していくためのソリューションとしても頻繁に採用されます。各部門やチームの情報を1ヶ所に集めることで会社全体の業務を連動させることが可能となり、一般的な会計ソフトでは難しい要件にも対応できます。

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クラウドERP freeeの特徴

クラウドERP freeeのシステム面での特徴として、特に会計や人事労務などのバックオフィス業務をサポートする仕組みが充実している点が挙げられます。
どの会社でも経理関連は煩雑な作業ですが、その一方でルールが決まっており、自動化できる部分が多い領域でもあります。
そのため、クラウドERP freeeを導入することで担当者の作業工数を圧倒的に削減することができるのです。

中には数百時間分の作業削減や、決算処理を1ヶ月ほど早められたといった効果も報告されています。他のERP製品と比較した場合、クラウドERP freeeは小規模な企業にも導入可能で、この点も製品の大きな長所となっています。

比較的近年まで、ERPシステムはオンプレミスでの構築が主流でした。数多くの業務領域をカバーできるため非常に高い需要がありましたが、費用は高額で資金の乏しい企業には導入しにくいという欠点がありました。また、導入の難易度が非常に高いため、大手ファームのコンサルティングサービスを活用する必要があることもコストがかかる理由の一つでした。

クラウドERP freeeは、このような従来のERPシステムによく見られる費用や難易度に関する課題を解決しています。クラウドサービスであるため低額で、またサーバーやセキュリティなどのインフラの構築およびメンテナンスをfreee株式会社に任せられる点も利用しやすいポイントです。

クラウドERP freeeの主な機能

クラウドERP freeeには、多種多様な機能が実装されています。導入する場合は自社要件に合わせて、機能を取捨選択しましょう。

① 業務の効率化

クラウドERP freeeには、AIを活用した自動仕訳機能が搭載されています。あらかじめ仕訳ルールを設定しておけば、必要な書類を作成していくことが可能となります。その他にも、例えば以下のような業務効率化が可能です。

  • 仕訳に対してコメントを残し、経理担当者間のコミュニケーションを最適化
  • 領収書などをスマホのカメラで撮影し、システムへアップロード
  • ワンクリックでの決算書類作成
  • ワークフローを設定し、システム上で稟議(りんぎ)の承認プロセスを構築

仕訳、請求書類の確認や支払い、経費精算、債権・債務の消込など、主に経理領域を中心にさまざまな業務に対応しています。
また、経理は細かいタスクが多く作業漏れが頻繁に発生しますが、クラウドERP freeeを利用すれば、このような問題を解決することも可能です。

他にも経費精算が申請されると承認者に通知されるなど、見落とし防止につながる機能も実装されています。申請および承認作業は共にスマホで対応できるため、隙間時間を有効に活用できることも魅力です。

② 情報の可視化

クラウドERP freeeを用いて、企業内部のさまざまな情報を管理することもできます。
経営層や管理職向けの各種レポートを自動で作成することなども可能です。例えば、取引先ごとの収入や勘定科目別の支出を、棒グラフ、円グラフ、表などの指定の方法で表示することができます。

期間など任意のデータで絞り込んだ上で情報を可視化することもできるため、リアルタイムの情報を確認しやすい形で表示でき、会社の方針を決定する上で大きなメリットとなります。
また、各部署のマネージャーなどもさまざまな場面で活用可能です。表示内容を自分の部下のみのデータに絞り込むなどの工夫をすれば、余計な情報が省かれ現状を把握しやすくなります。
PCだけでなくスマホでも最新の数値を確認できるため、効率的に情報の確認と意思決定ができることも利点の一つです。

③ API

API機能を活用することで、他システムとの連携が可能になります。
例えば、銀行口座をAPI連携方式で同期すれば、経理作業を効率化できます。これは一部非対応の金融機関もあるため、公式サイトで対応可否を確認しましょう。
非対応だった場合でも、手動でCSVファイルをアップロードすれば代替は可能です。
また、Salesforce、kintone、Slackなどとデータを共有することで、非常に細かい要件まで対応していくことができるでしょう。

現代では社会的にDXが推進されており、他システムと連携して付加価値を生み出していくことを前提としたクラウドサービスが数多く開発されています。他システムのデータ活用も視野に開発することによって、クラウドERP freeeで実装する機能を無限に広げていくことが可能です。

④ 内部統制、監査

IPOを目指す企業では、適切な内部統制や監査体制が必要となります。クラウドERP freeeの導入は、このような要件に対しても有効な手段となります。
搭載されている機能を活用して経理業務を自動化し人手での作業を少なくすることで、業務効率化だけでなく、適切な内部統制を敷く効果も期待できます。

また、担当者ごとの細かい権限設定も可能です。案件、見積、受注、売上、請求、発注、仕入れなどの業務ごとに、閲覧、作成、編集、取消などの個別操作の可否を設定したロールを登録し、アカウントごとに割り当てていくことができます。これにより、適切な職務分掌が実現可能となります。

⑤ システムサポート

クラウドERP freeeはシステムのサポート体制も充実しています。
公式サイトの事例を確認すると、問い合わせに対してすぐに回答が得られるため安心した、というクライアントの声が見られます。サポートの際は、チャット、電話、メールなど、希望する手段でサポートを受けることができます。
また、ヘルプページには詳細な情報が掲載されており、自分で情報を確認していくことも可能です。

さらに、エンタープライズプランを契約することで専任の担当者からサポートを受けられるサービスも提供されています。ただし、受けられるサポートの種類は契約プランによって異なるため注意が必要です。プランの内容を確認し、自社の要件に合わせて選択しましょう。

クラウドERP freee導入で改善できる業務

ERPシステムは企業のリソース管理だけでなく、業務改善の効果もあります。ただし、製品によって改善できる領域には違いがあります。
では、クラウドERP freeeにはどのような効果が期待できるのでしょうか?

① 主に会計や経理業務を改善できる

クラウドERP freeeは特に会計や経理業務を改善します。
具体的には、売掛金や買掛金の管理、請求書の作成、給与管理などの業務を最適化することができます。会計は、経営層や管理職が会社全体または部門別に数字を把握し、適切な意思決定を行うための管理会計、そしてステークホルダーなどの外部に情報を開示するための財務会計があります。クラウドERP freeeは、管理会計と財務会計のどちらも効率化が可能です。
まず、管理会計については、主に以下の機能があります。

  • プロジェクト、部門ごとに営業成績を算出する
  • 月別に予算と実績を可視化する
  • 現時点のデータをもとに、税額をシミュレーションする

また、財務会計に関しては、主に以下の機能があります。

  • 入力された仕訳データをもとに、損益計算書や貸借対照表などの決算書を作成する
  • 作成された帳票を紙、PDF、CSVなどの任意の形で出力する
  • 会計事務所へデータを連携し、税務申告業務を委託する

カスタムレポートという機能を使うことで、システムに保存されているデータを要件に合わせた形で集計可能です。
マネージャーは管理するチーム、プロジェクト、期間、取引先、部門などの基準を設定することで、目的や業務に合わせて確認しやすいレポートを出力できます。

② システム運用を改善する

クラウドERP freeeはSaaS型のサービスとして提供されています。そのため、システム運用の面で数多くの利点があります。例えば、以下のような利点が挙げられます。

  • 社内におけるインフラ管理が不要
  • 情報の操作や共有が容易になる
  • ペーパーレス化を実現しやすい

インフラ管理を提供元のfreee株式会社に任せられるため、自社のシステム管理部門への負担を大幅に削減可能です。専門知識が必要なセキュリティ関連の対応を任せることができます。
また、インボイス制度などの新たな法令にもその都度対応されます。このように、新規機能追加や機能改善などのアップデートがシステムへ自動的に反映されることが大きな利点です。

また、データは全てクラウド上で一元管理されることになるため、情報共有も容易になります。マルチデバイスにも対応しているため、用途に合わせてデバイスを使い分けることも可能です。
例えば、営業部が外出先からスマホで経費精算を行い、その内容を経理部が社内のPCで確認するといった使い方が想定されます。

そして、ペーパーレス化の実現も現実的となります。紙での対応と比べ、ワークフローなど多くの社内手続きを圧倒的に迅速化できます。従業員はスマホから質問に答えていく形で各種申請をすることができ、必要書類もスマホで撮影して送付可能なため、会社全体の作業負担軽減につながります。

③ 経理以外の業務領域にも対応していくことが可能

クラウドERP freeeは外部システムとの連携も可能であるため、事実上会計や経理だけでなく、他の業務領域の要件も満たしていくことができます。
特に優先順位を付けて各業務領域をシステム化していける点が、クラウドERP freeeの最大の強みだといえるでしょう。

企業がビジネスを展開していく上で必要になる業務は数多くあります。そして、企業によって業務内容は当然異なります。そのため、それぞれの企業のビジネスに合わせて、導入するソリューションを検討する必要があるのです。

ERPシステムの中には、一つの製品で販売、生産、調達、在庫、品質などのあらゆる業務をサポートできるものもありますが、導入の際に時間がかかってしまうといった欠点もあります。
それに対してクラウドERP freeeは、ERPシステムとしてはややサポート領域は狭いものの、徐々に対応する業務領域を増やしていけることが特徴です。

まずはクラウドERP freee本体を導入し、その後、他のクラウドサービスや自社開発した業務システムなどと連携させる形で、システムのサポート領域を広げていくことが可能です。
具体的には、Salesforceと連携する仕組みが実装されています。Salesforceは世界で最も需要が高いCRMシステムです。例えば、Salesforce側の受注管理情報と連携させ、販売業務を最適化していくことなどが可能になります。

クラウドERP freeeの導入事例

クラウドERP freeeは業界を問わず多くの企業に導入されています。
特に経営課題の可視化、経理業務の効率化、コスト削減などの目的で活用されています。

① 不要な業務を見直し効率化を実現

インターネットサービスを展開するGMOペパボ株式会社では、クラウドERP freeeで経理部門を立て直しています。経理部門では、日報、定例会議、ダブルチェックなどの定型業務が年々増加傾向にあったため、その見直しを行っているのです。

なぜ不要な業務が発生したのか調査したところ、業務プロセスの中で利用するツールを変えていたことに原因がありました。例えば売り上げに関するプロセスとしては、稟議(りんぎ)申請、請求書発行、売上計上、債権管理台帳作成、入金消込といった工程があります。このプロセスの過程で複数のツールを使用していたことにより、プロセスごとに情報の形が変わってしまい、無駄な作業が発生していたのです。

そこで、クラウドERP freeeを活用し、全ての工程を一括管理することで効率化に成功しています。結果的には、月間で約70時間の業務時間削減に成功しました。

② 月次決算の負荷を軽減

転職や就職情報のプラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク株式会社では、freeeカード Unlimitedをシステムと連携させる形で活用しています。これにより、主に以下の点で経理部の業務が改善しました。

  • 証憑資料となるクレジットカードの利用明細を一つにまとめられる
  • クレジットカードを一本化したため、一つの管理画面で確認できる
  • カード決済をリアルタイムで仕訳できる

それまではシステムの制約上、クレジットカードの決済後に少なくとも5営業日待たなければ仕訳が起こせませんでした。しかし、freeeのシステムとクレジットカードを導入したことで経理業務が大幅に簡略化され、タスクが増えがちな月次決算の負荷を軽減することができました。

③ 外注費削減を実現

不動産業のTOKYO BIG HOUSE株式会社では、外注費の削減に成功しています。
当初は給与計算や労務手続きを外注していましたが、販管費の削減を目指していたため、労務管理を内製化することになりました。システムの要件には、特に勤怠管理、給与計算、年末調整などの労務手続きを一気通貫で管理できることを重視していました。さまざまなシステムを比較検討した結果、freeeを選択。導入後は外注費の削減だけでなく、従業員の申請作業および源泉徴収票配布までがシステム内で完結できるようになりました。また、給与計算に伴う一連の作業の時間短縮も実現しています。

④ 導入事例から見るポイント

クラウドERP freeeの導入事例を確認すると、多くの企業は特に業務の最適化を目指して本製品を選定しています。経理業務は細かい作業であり、書類や入力データを何度もチェックする必要があることも多く、非常に煩雑な作業です。どんな企業も社員が創造的な仕事に注力できないほどに煩雑な作業が多い環境となってしまわないよう注意すべきでしょう。

そして、本課題はクラウドERP freeeを導入することで改善可能です。事例を確認する限り、経理に関する作業を大幅に効率化できています。経理はどんな企業でも必要な業務であることと、クラウドERP freeeは企業規模を問わず活用できることから、あらゆる企業で導入を検討する価値のある製品になっています。

クラウドERP freeeの価格・料金プラン

クラウドERP freeeは会社の規模に合わせたプランが用意されています。目的や企業規模に合わせて、最適なものを選択しましょう。
クラウドERP freeeでは、2つのプランが用意されています。中堅企業向けのプロフェッショナルプランと、中堅~大企業向けのエンタープライズプランです。

プロフェッショナルプランは月額47,760円(年払いの場合は月額39,800円)で、エンタープライズプランの費用は公式サイトから問い合わせる必要があります。2つとも機能面に大きな違いはありませんが、エンタープライズプランは専任担当者からサポートサービスを受けられる点が特徴となっています。

クラウドERP freee導入における注意点

クラウドERP freeeを導入することで、前述のとおり多くのメリットが期待できます。ただし、想定どおりのメリットを享受するには当然適切に導入を進めていく必要があります。

① 要件を整理し自社に適した形で導入する

導入の際は具体的な要件を定義した上で、クラウドERP freeeを使う理由を明確にすることが重要です。
クラウドERP freeeは特定の業界や企業に合わせて開発されたものではありません。そのため、必要な仕組みが無いことや、使いにくい機能があることも考えられます。場合によっては以下の手段を検討する必要があるでしょう。

  • 足りない機能をサポートするためのシステムを新規開発する
  • 自社に適さない機能は使用せずに人手でカバーする
  • 外部のクラウドサービスと連携させる形で不足部分を補う

代替手段を検討する場合、要件が明確でないと検討ができなかったり、話が不適切な方向に進んでしまったりといったことが懸念されるため、注意が必要です。
場合によっては、クラウドERP freeeではなく、他のERPシステムを選定することが正しい判断となるでしょう。そのような判断がシステムの導入中や事後になってしまい、予算や時間が無駄になってしまうことを避けるためにも、まずは要件を具体的に整理しましょう。

② 運用できるリソースを確保する

クラウドERP freeeを使う場合でも、自社でシステムを運用していくためのヒューマンリソースが確保できるか、しっかり確認しておく必要があります。
クラウドERP freeeはクラウドサービスで、かつ多くの業務を自動化・効率化できますが、人手が全く必要なくなるわけではありません。提供元に委託できる部分とできない部分を明確にした上で、運用にどの程度の工数が必要になるかを把握する必要があります。

例えば、システムのセキュリティに関する運用などには注意が必要です。クラウドERP freeeのインフラ面に関するセキュリティ対策はfreee株式会社に委託可能ですが、社員へのセキュリティ教育は自社での対応が必要です。運用リソースを確保できない場合、クラウドERP freeeを導入しても期待通りの効果を得られない可能性があります。

システムへの要件が多くリソースの確保が難しくなってしまった場合は、スコープを狭めることも一つの手段になります。

③ 連携する外部システムをチェックする

外部システムと連動させることでより多くの領域を改善していける点はクラウドERP freeeを活用する大きなメリットの一つですが、連携先システムのチェックも当然必要になります。
要件を満たせる機能が実装されているか、予算の範囲内で導入できるか、などの観点を確認しましょう。
クラウドERP freeeでは企業の重要なデータを取り扱うことが多いため、外部システムへデータを渡す場合などは特に注意が必要です。外部システムの脆弱性による情報漏えいの可能性も考慮し、セキュリティ要件のチェックも必須になります。

まとめ

クラウドERP freeeはERP導入を検討している企業の選択肢の一つとしておすすめの製品です。他のERPシステムと比較すると、低コストでの導入が可能であり、特に会計・経理領域の業務改善が期待できる製品です。小規模な事業者から上場を目指すような大企業まで多くの導入事例があります。他システムと連携させる形で機能追加も可能なので、将来的に事業を拡大していく可能性が高い企業にも適しています。

ERPは自社の要件にあわせて慎重に選びましょう。
主なERP製品の比較資料をご用意しましたので、ぜひ参考にして下さい。

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