財務諸表だけではもの足りない!企業の情報開示に求められる4つの視点

 2016.05.02  クラウドERP編集部

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株式上場企業やM&Aによる資本強化を視野に置く成長企業には、企業の財政状態と業績を可視化した財務諸表(決算書)を会計期間ごとに開示することが求められています。

しかし、企業の価値は定量的な財務報告だけでは充分に示せず、経営のリーダーやプレゼンテーターには成長性のある事業戦略や収益性の見込めるビジネスモデルなどの定性的な情報を明確に提示する努力が求められてきます。

今回は、投資家や金融機関の適正な評価を促すために、財務諸表の開示から一歩踏み込んで企業の成長ポテンシャルを的確に示す情報開示のあり方について考えていきましょう。

投資家への財務情報開示に求められる2つの姿勢

貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CS)、株主資本等計算書などで構成される財務諸表は、株式上場企業が株主資本をどのように運用し、どれだけの利益を稼いだのかを報告するための資料とされています。

株式上場企業では健全な株主資本運用を機関投資家および個人投資家に伝えるために、2つの開示原則を重視してIR(Investor Relations/投資家向け広報)活動を展開しています。

その1つが「法定開示」。会社法では「株式会社は各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すもの)及び事業報告並びにこれらの附属明細書」の作成を義務づけ、金融商品取引法では有価証券報告書を決算日から3カ月以内に所轄の財務局に提出することを義務づけています。「法定開示」である以上、開示の遅れや虚偽の記載には罰則を伴うところとなります。

もう1つが「適時開示」。これは証券取引所の規則に基づいて行われるもので、一定会計期間毎の決算概況を記した決算短信は、決算日から45日以内の開示が定められています。また、増資やM&A、被災や減損などの業績および資本構成に大きな影響を与える事案か発生した場合にも、速やかに発表することが求められています。

これは事案の発生から発表までの時間が長引くほど、情報を知る人間だけが株式取引上有利となりインサイダー取引などの不公正な取引が行われるリスクが高くなるためです。

何れにしても業績の推移や新製品開発状況、今後の業績に影響を与えるリスクの発生などの経営の実態を示す情報は企業の内部でしか掌握し得ず、透明性のある速やかな情報開示は投資家を含めたステークホルダー(利害関係者)に対する最低限のルールとされています。

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一方、投資家の関心が高い開示情報を探るために行われた「持続的な企業価値創造のためのIR/コミュニケーション戦略実態調査」(2013年8月/株式会社宣伝会議『広報会議』誌)では、報告義務のある会計年度累計期間の定量的なレポートである「連結財務諸表などの財務情報」に高い関心を示す投資家の割合が72%に対し、次期会計年度の見込みに過ぎない「業績予想」が89%、「経営者の業績見通し」が76%と、投資家の関心は現在の業績よりも将来の成長へと向けられていることがわかります。

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また、定性的な開示情報となる「中期経営計画」が67%、「経営目標」が64%、「ビジネスモデルや戦略の情報」が63%の順に続き、投資家は企業評価において現時点の業績や財政状態よりも将来の成長ポテンシャルを重視する傾向があることが顕著です。投資家や金融機関に対する情報開示には、定量的に可視化できない企業の価値こそ能動的に示す姿勢が求められていると推測されます。

成長企業の情報開示に求められる4つの視点

それでは、投資家や金融機関に企業の価値を正確に伝えていくために、情報開示時に重視すべき4つの視点を検証してみましょう。

①透明性;法定開示・適時開示からKPIのリアルタイム開示へ

今日の企業会計報告では期間損益を明示する損益計算書(PL)を重視する傾向にありますが、企業の健全性や将来性を評価をする上ではこれまでの事業活動の成果が全て反映される貸借対照表(BS)がより有効性が高く、企業の適正な資本運用や企業経営の実態を正確に把握したい投資家や金融機関にとっては、透明性の高い財務情報の開示は至極当然な要求事項となります。

投資家や金融機関への説得力を増すためには、「法定開示」や「適時開示」を超えて、主要製品の市場占有率推移や展開サービスの会員数推移など、企業の成長を具体的に可視化するKPI(主要業績評価指標)のリアルタイムな変動を積極的に開示していく姿勢が求められます。

これを実現するためには、各業務間のデータ連係が分断されることなく保たれ、統合的な分析を経て開示情報としてタイムリーに提供するガラス張りの経営管理システムが求められます。

リアルタイムなビジネスの進捗を可視化するシステムは、経営者のスピーディな意思決定をも促し、定性的な開示情報となる「中期経営計画」や「ビジネスモデルや戦略」の実効性を高めます。

②安定性;安定した収益構造の可視化

金融機関の融資審査においては、経営の安定性が最優先の判断事項となります。特に銀行の融資システムは財務諸表の数値を入力するだけで「定量的要因」から中長期的な経営の安定性を構造的に分析し、融資先の格付けを行います。

「定性的要因」の説得力を高めて有利な融資判断を導くためにも、経営者や財務責任者は市場環境の変化や経営変動要因をリアルタイムに把握しておく必要があります。

融資および投資の判断では過去の業績推移以上に中長期的な経営の安定性を保証するビジネススキームと経営層のマネジメント力が問われてきますので、経営の安定性とともに経営環境の変化に俊敏に対応可能な収益構造を構築し、その実効性を可視化する情報開示が求められます。

③成長性;成長を連鎖するビジネスモデルの構築

ソフトバンクの孫正義CEOが中国のEC市場に可能性を見いだし、20億円を出資したアリババの上場により8兆円の含み益を手にしたように、優れた投資家は企業の成長ポテンシャルを最重要視します。

こうした投資を導くためには、投資判断する側が将来の成長を確信できるビジネスモデルを提示する必要があり、そのためには現行ビジネスモデルの中に成長の連鎖を生むような仕組みが内在化されてなくてはなりません。

すなわち企業の創出する価値に対して全体最適の視点からプロセスを統合したビジネスモデルを構築し、企業の成長や経営環境の変化によってオートマティックにBPR(Business Process Re-engineering/ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を推進するBIツールの導入が有効となります。

④共感性;明快で革新的なビジョンの提示

投資判断でも融資審査においても、最終的には経営者の魅力で決定することが多分にあります。これは非科学的なことではなく、明快で共感性の高いビジョンとそれをわかりやすくビジョンを語れる強力なリーダーはそれだけで顧客や市場を魅了し、成長ポテンシャルを高めていくことができるからです。

特に新たな事業にチャレンジするために、過去に参考となるビジネスモデルや業務実績を示すことのできないベンチャー企業の場合は、新たに提起するイノベーショナルな価値をどう説明し共感させていくかが重要な鍵となります。

これにはビジネスの革新性をどのように収益に結びつけていけるかのかを具体的に明示することが求められ、そのためにも全体最適視点から統合され、投資家や金融機関に可視化できるビジネスモデルの提示が必然の課題となってきます。

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まとめ:選ばれる企業は“成長が目に見える企業”

企業の成長ポテンシャルを投資家や金融機関に明確に提示し、その実効性を高めて適正な価値評価を得るためには、安定した収益性を実現するビジネスモデルと全体最適視野から統合されたビジネスプロセスを構築し、その成果と進捗を透明性を以て開示していくことで、ステークホルダーと企業価値向上のプロセスを共有していく姿勢を示す必要があります。

財務会計/ERPCRM、プロフェッショナル・サービス・オートメーション (PSA) を統合されたひとつの事業管理ソフトウェアソリューションとして提供するNetSuiteは、経営の進捗のリアルタイムな可視化とビジネスインテリジェンス機能により企業のマネジメント力を向上させ、業務プロセスを全体最適視野から管理・統制して、成長への連鎖を生むPDCAサイクルの構築とステークホルダーとの価値共有を促します。

企業の成長ポテンシャルを的確に示す情報開示にお役立ていただければ、幸いです。

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